
夏のアウトドアやキャンプ、川遊びなどで突然「チクッ」とした痛みを感じた経験はありませんか?そのとき刺したのはアブだったのか、ブヨだったのか、よくわからないまま過ごしている方も多いのではないでしょうか。アブとブヨはどちらも血を吸う虫ですが、その生態や刺し方、刺された後の症状には大きな違いがあります。適切に対処するためには、まずどちらの虫に刺されたのかを把握することが重要です。この記事では、アブとブヨの違いを生態・症状・対処法の観点から詳しく解説するとともに、刺されてしまった時の正しい応急処置と、病院を受診すべきタイミングについてもご説明します。
目次
- アブとブヨはそもそも何者?基本的な生態の違い
- 見た目の違い:アブとブヨを見分けるポイント
- 刺し方の違い:なぜ痛みの感じ方が異なるのか
- 刺された後の症状の違い:アブ刺傷とブヨ刺傷の特徴
- 症状が悪化するケース:アナフィラキシーや感染症のリスク
- 刺された直後の正しい応急処置
- 市販薬での対処法と注意点
- 病院を受診すべき症状とタイミング
- アブとブヨに刺されないための予防策
- まとめ
この記事のポイント
アブは刺直後に鋭い痛み、ブヨは数時間後から激しい痒みと腫れが特徴。刺されたら流水で洗浄し冷やして掻かないことが基本。アナフィラキシー症状は即救急受診が必要。
🎯 1. アブとブヨはそもそも何者?基本的な生態の違い
アブとブヨは、どちらも人間や動物の血を吸う「吸血性の昆虫」です。しかし、分類上は全く異なるグループに属しています。まずはそれぞれの基本的な生態について整理してみましょう。
🦠 アブの生態
アブはハエ目アブ科に属する昆虫です。日本には約90種類ものアブが生息しているとされており、ウシアブやメクラアブなどがよく知られています。体長は種類によって異なりますが、1センチメートルから3センチメートル程度のものが多く、昆虫の中ではかなり大きい部類に入ります。
アブが活発に活動するのは主に6月から9月にかけての夏場です。特に気温が高く、日差しの強い日中に活動することが多く、川辺や林道、牧草地など自然の多い場所でよく見られます。血を吸うのはメスのみで、卵を産むための栄養源として吸血を行います。オスは花の蜜を吸って生活しています。
アブは飛行速度が速く、人間が逃げようとしても追いかけてくることがあります。また、黒や濃い色に引き寄せられる習性があるため、ダークカラーの服装は特に注意が必要です。二酸化炭素や体温、汗の匂いにも引き寄せられることがわかっています。
👴 ブヨの生態
ブヨはハエ目ブユ科に属する昆虫で、地域によってはブユ、ブト、グロとも呼ばれます。体長は1ミリメートルから5ミリメートル程度と非常に小さく、体の形がずんぐりとしているのが特徴です。日本には約80種類が生息しているとされています。
ブヨが活動する時期はアブと同様に春から秋にかけてですが、特に4月から6月の春先と、9月から10月の秋口に活発になる種類も多くあります。アブが日中に活動するのに対して、ブヨは朝方や夕方などの薄暗い時間帯に活動することが多い傾向があります。
ブヨの幼虫は水の中で成長するため、成虫も清流や渓流の近くに多く生息しています。川遊びや渓流釣りをする人がよく被害を受けるのはこのためです。体が非常に小さいため、虫よけネットをかいくぐって服の隙間などから入り込んでくることもあります。
Q. アブとブヨの刺し方はどう違うの?
アブは口器で皮膚を切り裂いて吸血するため、刺された瞬間に鋭い痛みを感じます。一方ブヨは皮膚を溶かす唾液を注入しながら吸血するため、刺直後はほぼ無痛です。この仕組みの違いが、刺された後の症状の現れ方の大きな差につながっています。
📋 2. 見た目の違い:アブとブヨを見分けるポイント
現場でアブとブヨを見分けることができれば、刺された後の対処もスムーズに行えます。ただし、実際に刺された瞬間に虫の姿をじっくり観察する余裕はなかなかないため、刺された後に症状から判断することが多いのも実情です。それでも、見た目の特徴を知っておくことは役立ちます。
🔸 アブの見た目
アブはハエと似た外見をしていますが、ハエよりも一回り以上大きく、体が頑丈な印象を与えます。体色は種類によって様々で、黒褐色のものや、黄色と黒のしま模様があるもの、緑色がかったものなど多岐にわたります。目が大きくて複眼が発達しており、頭部の大部分を占めているのが特徴的です。翅(はね)は透明で、飛んでいる時には独特の羽音を立てます。
体長が大きいだけあって、視覚的にもはっきりと確認できる虫です。もしも近くにこのような大きなハエのような虫が飛んでいたら、アブを疑ってください。
💧 ブヨの見た目
ブヨは非常に小さく、体長が数ミリメートル程度しかないため、肉眼では見落としやすい虫です。体の形がずんぐりとしていて、こぶのように背中が丸く盛り上がっているのが特徴です。色は黒っぽいものが多く、翅は幅広で透明です。
ブヨは飛ぶ時に羽音がほとんどしないため、気づかないうちに近づいてきて刺されることが多くあります。群れで飛んでいることもあり、目の前に小さな虫が複数ふわふわ漂っているように見える場合はブヨの可能性があります。
💊 3. 刺し方の違い:なぜ痛みの感じ方が異なるのか
アブとブヨでは、血を吸う仕組みが根本的に異なります。この違いが、刺された時の痛みや症状の違いに直結しています。
✨ アブの刺し方:口器で皮膚を切り裂く
アブは口器(こうき)と呼ばれる鋭い器官を使って皮膚を切り裂き、にじみ出てきた血液を舐め取るように吸血します。文字通り「切る」動作が入るため、刺された瞬間に鋭い痛みを感じます。「チクッ」というよりも「スパッ」と切られたような感覚に近い痛みです。
刺された部位は出血することもあり、刺し口が比較的大きい傾向があります。アブに刺された直後はかなり強い痛みがありますが、その後の腫れや痒みはブヨに比べると軽めな場合が多いです。ただし、個人の体質や刺された部位によっても症状は変わります。
📌 ブヨの刺し方:皮膚を溶かして吸血する
ブヨも口器で皮膚を傷つけますが、その後に皮膚や毛細血管を溶かす唾液を注入しながら吸血します。このため、刺された直後はほとんど痛みを感じないことが多く、気づかないうちに吸血されているケースが多いのです。
ブヨの唾液には抗凝固物質や溶血性の毒素が含まれており、これが皮膚の中に留まることで後から強い炎症反応を引き起こします。刺された直後は無症状でも、数時間後から猛烈な痒みと腫れが現れるのがブヨ刺傷の大きな特徴です。
Q. ブヨに刺された後の症状の特徴は?
ブヨに刺された場合、刺直後は無症状であることが多く、3〜5時間後から激しい痒みと腫れが現れます。腫れは非常に強く、患部に水疱が生じることもあります。症状は1〜2週間続く場合があり、掻き壊すと細菌感染やリンパ管炎に発展するリスクがあるため注意が必要です。
🏥 4. 刺された後の症状の違い:アブ刺傷とブヨ刺傷の特徴
アブとブヨでは、刺された後に現れる症状のタイミングや種類が大きく異なります。ここでは、それぞれの症状について詳しく解説します。
▶️ アブに刺された後の症状
アブに刺された直後は、鋭い痛みが走ります。刺し口から出血することもあり、すぐに赤みや腫れが現れることが多いです。痒みも伴うことがありますが、症状の中心は痛みと腫れです。
腫れは刺された部位を中心に広がりますが、多くの場合は数日以内に落ち着いてきます。ただし、体質によってはより強い炎症反応が出ることがあり、患部が硬く腫れ上がったり、熱を持ったりすることもあります。
また、アブに刺されると稀にアナフィラキシー反応が起こることがあります。アレルギー反応が強い人では、刺された後に全身症状が現れることがあるため注意が必要です。
🔹 ブヨに刺された後の症状
ブヨに刺された直後はほとんど症状がありませんが、数時間後(一般的には3〜5時間後)から猛烈な痒みと腫れが現れます。この「遅発性の反応」がブヨ刺傷の最大の特徴です。
腫れは非常に強く、患部がパンパンに膨れ上がることもあります。刺された部位によっては、目の周りが腫れて目が開けられなくなったり、手の甲がグローブをはめたように腫れ上がったりすることもあります。痒みも激しく、「ムズムズとした痒み」が何日も続くことがあります。
症状が強い場合には、患部に水疱(水ぶくれ)が形成されることもあります。また、掻き壊してしまうと皮膚に傷ができ、そこから細菌が感染して「とびひ」(伝染性膿痂疹)になったり、リンパ管炎やリンパ節炎に発展したりするリスクがあります。
腫れや痒みは個人差が大きく、初めて刺された場合は症状が軽いことがありますが、何度も刺されると過去の刺傷で感作(アレルギー反応が起こりやすい状態になること)が進み、症状が強くなることがあります。逆に何度も刺されているうちに耐性ができて症状が軽くなる人もいます。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、夏のレジャーシーズンになるとアブやブヨによる虫刺されでご来院される患者様が増える傾向にあります。特にブヨ刺傷は「刺された直後は気づかなかった」というケースが多く、数時間後から強い腫れと痒みが出て初めて受診される方が少なくありません。市販薬を試しても症状が改善しない場合や、患部の腫れが広範囲に及ぶ場合はお早めにご相談いただくことで、より早期の回復につながりますので、どうぞお気軽にご来院ください。」
⚠️ よくある質問
アブは口器で皮膚を切り裂くため、刺された瞬間に鋭い痛みを感じます。一方、ブヨは皮膚を溶かす唾液を注入しながら吸血するため、刺直後はほとんど痛みがありません。数時間後(3〜5時間後)から激しい痒みと腫れが現れるのがブヨ刺傷の大きな特徴です。
ブヨに刺された場合、激しい痒みや腫れが1〜2週間続くことがあります。掻き壊してしまうと二次感染のリスクが高まるため、市販の虫刺され薬を早めに使用し、掻かないようにすることが重要です。症状が改善しない場合は皮膚科への受診をお勧めします。
全身に広がる蕁麻疹・顔や喉の腫れ・息苦しさ・動悸・強いめまい・意識が遠くなるなどの症状はアナフィラキシーの疑いがあり、命に関わる緊急事態です。これらの症状が刺された後10〜30分以内に現れた場合は、ただちに救急車を呼んでください。
まず流水で患部をしっかり洗い流し、皮膚表面に残った唾液や毒素を除去します。次にタオルで包んだ保冷剤などで15〜20分ほど冷やして炎症を抑えましょう。口で毒を吸い出す行為は感染リスクが高まるため推奨されません。その後、市販の虫刺され薬を使用してください。
長袖・長ズボンで肌の露出を抑え、アブが引き寄せられる黒や濃い色の服装を避けることが基本です。DEETやイカリジンを含む虫よけスプレーの使用も効果的です。ブヨが多い川辺では朝方・夕方の活動を控え、目の細かい虫よけネットの活用もお勧めします。
📍 アブとブヨの症状比較まとめ
アブに刺された場合は、刺された直後から痛みが強く出て、腫れや赤みが比較的すぐに現れる一方、数日で症状が落ち着くことが多いです。一方、ブヨに刺された場合は、刺直後は無症状で数時間後から激しい痒みと腫れが始まり、症状が1〜2週間にわたって続くことがあります。この「症状の現れ方のタイムラグ」がアブとブヨを区別する重要なポイントです。
Q. アブやブヨに刺された直後の応急処置は?
まず流水で患部をしっかり洗い、皮膚表面の唾液や毒素を除去します。次にタオルで包んだ保冷剤で15〜20分冷やし、炎症と痒みを抑えましょう。口で毒を吸い出す行為は感染リスクが高まるため推奨されません。その後、市販の虫刺され薬を使用し、患部を掻かないようにすることが重要です。
🔍 5. 症状が悪化するケース:アナフィラキシーや感染症のリスク
アブやブヨに刺された場合、多くはローカルな炎症反応(刺された部位だけの症状)で収まりますが、場合によっては深刻な状態に発展することがあります。特に注意が必要なのが、アナフィラキシー反応と二次感染です。
💫 アナフィラキシー反応
アナフィラキシーとは、アレルギー反応が全身に及ぶ重篤な状態のことです。アブやブヨの唾液に含まれるタンパク質に対して強いアレルギーを持っている人が刺されると、刺された部位の症状だけでなく、全身にわたるアレルギー反応が起こることがあります。
アナフィラキシーの症状としては、全身の蕁麻疹・顔や喉の腫れ・呼吸困難・声のかすれ・動悸・めまい・吐き気・血圧低下・意識障害などがあります。これらの症状が刺された後数分から30分以内に現れる場合は、アナフィラキシーを強く疑う必要があります。
アナフィラキシーは命に関わる緊急事態です。このような症状が現れた場合は、ただちに救急車を呼んでください。以前にハチやアブ・ブヨなどに刺されて全身症状が出た経験のある方は、特に注意が必要で、医療機関でアレルギー検査を受けることをお勧めします。
🦠 二次感染(細菌感染)
ブヨに刺された場合は特に激しい痒みが続くため、無意識に掻いてしまうことがあります。掻き壊しによって皮膚に傷ができると、そこから黄色ブドウ球菌などの細菌が入り込み、感染症を引き起こすことがあります。
二次感染が起こると、患部の赤みや腫れ・熱感がさらに強くなり、膿が出てきたり、傷の周囲に赤い線が現れたりすることがあります。リンパ管炎やリンパ節炎に発展した場合は、脇の下や股の付け根などのリンパ節が腫れて痛むこともあります。こうした症状が現れた場合は、早めに皮膚科や内科を受診することが大切です。
👴 感染症のリスク(海外の場合)
日本国内においては、アブやブヨが直接ウイルスや寄生虫を媒介するリスクは低いとされていますが、海外では話が変わります。熱帯・亜熱帯地域に分布するブユの一部は、「オンコセルカ症(河川盲目症)」という寄生虫感染症を媒介することが知られています。海外旅行や海外でのアウトドア活動の際には、より一層の注意が必要です。
📝 6. 刺された直後の正しい応急処置
アブやブヨに刺されてしまった時、まず何をすべきかを知っておくことが重要です。早期の適切な処置が、その後の症状の悪化を防ぐことにつながります。
🔸 ステップ1:患部を流水で洗い流す
刺された後はまず、流水で患部をしっかりと洗い流すことが大切です。これにより、皮膚表面に残っている唾液や毒素を物理的に除去することができます。特にブヨに刺された場合は、虫の唾液成分が炎症反応の主な原因となるため、できるだけ早く洗い流すことで症状の軽減が期待できます。
💧 ステップ2:冷やして炎症を抑える
洗浄後は、清潔なタオルに包んだ保冷剤や氷などで患部を冷やしましょう。冷やすことで血管が収縮し、炎症反応や痒み・痛みを和らげる効果があります。ただし、直接氷を当てると凍傷の危険があるため、必ずタオルなどで包んで使用してください。
冷やす目安は1回15〜20分程度で、それを数回繰り返すのが効果的です。氷嚢がなければ、濡らして絞ったハンカチを当てるだけでも一定の効果があります。
✨ ステップ3:掻かないようにする
刺された部位が痒くなっても、できるだけ掻かないようにすることが重要です。掻くことで皮膚を傷つけ、二次感染のリスクが高まります。また、掻くことで皮膚内にある毒素成分がさらに広がり、炎症がひどくなることがあります。痒みを抑えるためにも、早めに市販の虫刺され薬などを使用することをお勧めします。
📌 アブの毒を「吸い出す」は効果があるか?
アブに刺された後に口で毒を吸い出す行為を行う人もいますが、医学的にはこれは推奨されていません。口の中にも細菌は多く存在しており、逆に感染症のリスクが上がる可能性があります。また、ブヨの場合はそもそも針を刺すわけではなく皮膚を溶かして吸血するため、吸い出す行為は意味がありません。
市販のポイズンリムーバー(毒素吸引器)は、ハチに刺された場合には一定の効果があるとされていますが、アブやブヨの場合は毒素の性質が異なるため、あまり効果は期待できないとされています。
Q. アブやブヨに刺されないための予防策は?
長袖・長ズボンで肌の露出を減らし、アブが引き寄せられる黒など濃い色の服装を避けることが基本です。DEETやイカリジン配合の虫よけスプレーも有効で、汗や水で効果が落ちるためこまめに塗り直してください。ブヨが多い川辺では朝方・夕方の活動を控え、目の細かい虫よけネットの活用も効果的です。
💡 7. 市販薬での対処法と注意点
応急処置の後は、市販の薬を適切に使用することで症状を和らげることができます。ただし、薬の選び方や使い方にはいくつかの注意点があります。
▶️ 虫刺され用の外用薬(塗り薬)
ドラッグストアで購入できる虫刺され用の塗り薬には、いくつかの成分が含まれています。ステロイド成分(ヒドロコルチゾンなど)が含まれているものは、炎症や痒みを抑える効果が高く、アブやブヨによる炎症反応に対して有効です。ただし、ステロイド薬は長期間・広範囲に使用すると副作用のリスクがあるため、用法用量を守って使用することが大切です。
また、抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミンなど)が含まれているものは痒み止めとして働きます。これらを組み合わせた製品も多く販売されています。
🔹 内服薬(飲み薬)
症状が強い場合は、抗ヒスタミン薬の内服薬を使用することも選択肢の一つです。市販の抗アレルギー薬(アレグラFXやクラリチンEXなど)は、アレルギー反応による痒みや腫れを内側から抑える効果があります。
ただし、内服薬は眠気が出るものもあるため、服用後に車の運転などをする予定がある場合は注意が必要です。
📍 市販薬では対応できないケース

市販薬を使用しても症状が改善しない場合や、腫れがひどくなっていく場合、傷から膿が出ている場合などは、市販薬での対処を続けるのではなく、医療機関を受診することが重要です。自己判断で長期間市販薬を使い続けることで、適切な治療の開始が遅れる場合があります。
✨ 8. 病院を受診すべき症状とタイミング
アブやブヨに刺された場合、多くのケースは自然に治癒しますが、以下のような症状が現れた場合は早急に医療機関を受診することをお勧めします。
💫 すぐに救急へ行くべき症状(アナフィラキシーの疑い)
刺された後に以下の症状が現れた場合は、アナフィラキシーの可能性があり、命に関わる緊急事態です。ただちに救急車を呼ぶか、最寄りの救急医療機関を受診してください。
具体的には、全身に広がる蕁麻疹・顔や唇・喉の腫れ・息苦しさや声のかすれ・動悸や胸の痛み・強いめまいや立ちくらみ・吐き気や嘔吐・意識が遠くなる感覚・血圧の急激な低下などが挙げられます。これらの症状は刺された後10〜30分以内に現れることが多いですが、数時間後に出ることもあります。
🦠 数日以内に皮膚科・内科を受診すべき症状
緊急ではないものの、以下のような症状が見られる場合は、なるべく早めに皮膚科や内科を受診することをお勧めします。
患部の腫れが非常に広範囲に及ぶ場合や、市販薬を使用しても痒みや腫れが改善しない場合、刺された後に発熱がある場合、患部から黄色や緑色の膿が出ている場合、患部の周囲に赤い線が広がっている場合(リンパ管炎の可能性)、水疱(水ぶくれ)ができている場合などです。
👴 医療機関での治療法
医療機関では、症状の程度に応じて以下のような治療が行われます。軽症の場合は、ステロイド外用薬(塗り薬)や抗ヒスタミン薬の内服薬が処方されます。症状が強い場合は、経口ステロイド薬が使用されることもあります。
二次感染が起きている場合は、抗生物質(抗菌薬)の内服が必要になります。また、アナフィラキシー反応に対しては、アドレナリン(エピネフリン)の注射が行われます。
「たかが虫刺され」と思って放置しがちですが、ブヨに刺された場合は特に症状が長引きやすく、適切な治療を受けることで回復が早まることがあります。症状が気になる場合は遠慮なく医療機関を受診してください。
📌 9. アブとブヨに刺されないための予防策
虫刺されへの最善の対策は、そもそも刺されないようにすることです。アブとブヨの習性を踏まえた効果的な予防策をご紹介します。
🔸 服装での対策
アウトドアや山林・川辺に行く際は、なるべく肌の露出を減らすことが基本的な予防策です。長袖・長ズボンを着用し、靴下を履いて足首まで覆うようにしましょう。アブは黒や濃い色に引き寄せられる習性があるため、明るい色の服装を選ぶと効果的です。
ブヨは非常に小さいため、目の細かい素材の服や手袋を着用することが有効です。特に川辺や渓流付近ではブヨが多いため、露出の少ない服装を心がけましょう。
💧 虫よけスプレーの使用
市販の虫よけスプレーを使用することも効果的な予防策です。有効成分として「DEET(ディート)」を含むものは高い忌避効果があり、アブやブヨに対しても一定の効果があります。ただし、DEETは小さな子供への使用に年齢制限があるため、使用前に成分と対象年齢を確認してください。
DEETを含まないものとしては、「イカリジン」を有効成分とする製品があり、こちらは小さな子供にも使用しやすいとされています。虫よけスプレーは汗をかいたり、水に濡れたりすると効果が落ちるため、こまめに塗り直すことが大切です。
✨ 時間帯と場所を選ぶ
アブは日中の日差しの強い時間帯に活発に活動するため、昼間の活動を控えることが予防になります。ブヨは朝方や夕方などの薄暗い時間帯に特に活発になるため、これらの時間帯に川辺や渓流沿いに行く際は特に注意が必要です。
また、アブもブヨも流水の近くに多く生息しているため、川沿いや湿った場所での活動には注意が必要です。風が吹いている日は虫の活動が抑えられる傾向があるため、比較的被害を受けにくいと言われています。
📌 虫よけネットの活用
渓流釣りや山でのキャンプなど、ブヨが多い環境で活動する場合は、顔周りを覆う虫よけネット(ヘッドネット)の使用が非常に有効です。目の細かいネットであれば、ブヨのような小さな虫も通過させません。ウェア型のネットも販売されており、アウトドア用品店で手に入れることができます。
▶️ 匂いへの注意
アブやブヨは人体の二酸化炭素や体温、汗の匂いなどに引き寄せられます。強い香りの香水やヘアスプレーを使用すると虫を引き寄せることがあるため、アウトドアでは香りの強い製品の使用を控えることも一つの対策です。また、体臭(汗)を抑えるために、活動中はこまめに汗を拭き取ることも効果的です。
🔹 子供や高齢者への注意
子供や高齢者は免疫反応の特性から、刺された後の症状が大人よりも強く出ることがあります。子供は皮膚が薄くてデリケートなため炎症反応が強くなりやすく、高齢者は免疫機能の変化から症状の回復に時間がかかることがあります。これらの方が外出する際は、より一層の予防対策を心がけ、刺された場合は早めに医療機関を受診することをお勧めします。
🎯 まとめ
アブとブヨは、どちらも夏のアウトドアで被害を受けやすい吸血性の昆虫ですが、その生態・刺し方・症状には大きな違いがあります。アブは体が大きく、刺された直後に強い痛みが走るのが特徴で、ブヨは体が小さく、刺された直後は無症状でも数時間後から激しい痒みと腫れが現れるのが特徴です。
刺されてしまった場合は、まず流水で患部を洗い流し、冷やして炎症を抑えることが基本の対処法です。痒くても掻かないようにして、市販の虫刺され薬で症状を和らげましょう。ただし、全身症状が現れた場合(アナフィラキシーの疑い)はただちに救急受診が必要です。腫れが著しい場合や、二次感染の徴候がある場合、市販薬で改善しない場合は皮膚科や内科への受診をお勧めします。
予防としては、肌の露出を抑えた服装と虫よけスプレーの使用、活動する時間帯と場所への配慮が重要です。楽しいアウトドアを安全に過ごすためにも、アブとブヨの知識と正しい対処法を身につけておくことが大切です。虫刺されに関する症状でお悩みの際は、アイシークリニック東京院へお気軽にご相談ください。
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📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 虫刺されの皮膚症状(炎症・腫れ・水疱・二次感染など)の診断基準や治療方針、ステロイド外用薬・抗ヒスタミン薬の使用法に関する医学的根拠として参照
- 国立感染症研究所 – ブユ(ブヨ)が媒介するオンコセルカ症などの感染症リスク、アブ・ブヨの生態と疾病との関連性に関する疫学的情報として参照
- 厚生労働省 – アナフィラキシー反応の症状・緊急対応の基準、虫刺され予防策および市販薬・医薬品の適正使用に関する公的ガイダンスとして参照
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務