はじめに
ふとした時に脇の下を触って、しこりのようなものに気づいたことはありませんか。脇の下にできるしこりは、多くの方が一度は経験する症状の一つです。シャワーを浴びているときや、腕を上げた際に偶然発見することが多く、「これは何だろう」「もしかして重い病気では」と不安になる方も少なくありません。
脇の下は、リンパ節や汗腺、皮脂腺などが集まる場所であり、様々な原因でしこりができやすい部位です。しこりの原因は良性のものから、まれに悪性のものまで多岐にわたります。そのため、しこりを見つけた際には、その特徴をよく観察し、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。
本記事では、脇の下にできるしこりについて、考えられる原因、症状の特徴、診断方法、治療法などを詳しく解説します。アイシークリニック東京院での診療経験を踏まえながら、一般の方にもわかりやすく説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。

脇の下のしこりとは
脇の下のしこりとは、腋窩部(えきかぶ)と呼ばれる脇の下の部分に触れることができる硬い塊や腫れを指します。医学用語では「腋窩腫瘤」と呼ばれることもあります。
しこりの大きさは数ミリ程度の小さなものから、数センチに及ぶものまで様々です。触った感触も、柔らかいものから硬いもの、可動性があるものから固定されているものまで多様です。また、痛みを伴う場合と痛みがない場合があり、これらの特徴は原因によって異なります。
脇の下は皮膚が薄く、リンパ節、血管、神経、汗腺、毛包などが密集している場所です。そのため、これらの組織のどれかに異常が生じると、しこりとして現れることがあります。
脇の下のしこりの主な原因
脇の下にできるしこりには、様々な原因があります。ここでは代表的なものを詳しく見ていきましょう。
リンパ節の腫れ
脇の下のしこりの原因として最も多いのが、リンパ節の腫れです。リンパ節は体内の免疫システムの一部であり、細菌やウイルスなどの異物と戦う役割を担っています。
風邪やインフルエンザ、上気道感染症などにかかると、体の免疫反応としてリンパ節が腫れることがあります。特に腕や手の傷口から細菌が侵入した場合、その領域のリンパ液が流れ込む脇の下のリンパ節が反応性に腫れることがあります。
このようなリンパ節の腫れは、原因となる感染症が治癒すれば自然に小さくなることが多いです。ただし、数週間経っても腫れが引かない場合や、徐々に大きくなる場合は、他の原因を考える必要があります。
粉瘤(アテローム)
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まってしこり状になったものです。正式には「表皮嚢腫」と呼ばれます。
粉瘤は体のどこにでもできる可能性がありますが、脇の下は皮脂腺が多く、摩擦も多い部位であるため、比較的できやすい場所の一つです。通常は痛みがありませんが、細菌感染を起こすと急激に赤く腫れ上がり、強い痛みを伴うことがあります。これを「炎症性粉瘤」または「感染性粉瘤」と呼びます。
粉瘤は自然に治ることはほとんどなく、完治させるには手術による摘出が必要です。
脂肪腫
脂肪腫は、皮下の脂肪細胞が増殖してできる良性の腫瘍です。柔らかく、触ると動く特徴があります。痛みを伴わないことがほとんどですが、大きくなると圧迫感や違和感を感じることがあります。
脂肪腫は全身のどこにでもできますが、脇の下にも比較的よく見られます。多くの場合、経過観察で問題ありませんが、サイズが大きい場合や美容的に気になる場合は、手術による摘出を検討します。
副乳・副乳腺
副乳とは、正常な乳房以外の場所に存在する乳腺組織のことです。人間の胎児期には「乳線」と呼ばれる線状の構造があり、通常はこの一部だけが発達して乳房となりますが、まれにそれ以外の部分が残存することがあります。
副乳は脇の下にできることが最も多く、女性では月経周期やホルモンバランスの変化によって腫れたり痛みを感じたりすることがあります。特に妊娠中や授乳期には、副乳腺が発達してしこりとして目立つようになることがあります。
副乳自体は病的なものではありませんが、痛みが強い場合や美容的に気になる場合は、手術による切除を検討することもあります。
毛包炎・せつ(おでき)
毛包炎は、毛穴に細菌が感染して炎症を起こした状態です。脇の下は毛が多く、汗や皮脂の分泌も多いため、毛包炎が起こりやすい部位です。特にムダ毛の処理をしている方は、カミソリや毛抜きによる刺激で毛包が傷つき、細菌感染を起こしやすくなります。
毛包炎が進行すると、せつ(おでき)と呼ばれる膿を持った腫れになることがあります。せつは赤く腫れ上がり、触ると痛みがあります。複数のせつが融合して大きくなったものを癰(よう)と呼びます。
化膿性汗腺炎
化膿性汗腺炎は、アポクリン汗腺が慢性的に炎症を起こす疾患です。脇の下、鼠径部、臀部などアポクリン汗腺が多い部位に好発します。
初期には毛包炎に似た小さな腫れから始まりますが、繰り返し炎症を起こすことで膿瘍を形成したり、瘻孔(トンネル状の穴)ができたりします。治療が難しい疾患で、抗生物質の内服や外用、重症例では手術が必要になることもあります。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、リンパ球が悪性化する血液のがんです。リンパ節が腫れる症状が特徴的で、脇の下のリンパ節に最初に現れることもあります。
悪性リンパ腫によるリンパ節の腫れは、通常痛みがなく、硬く、徐々に大きくなる傾向があります。また、発熱、体重減少、寝汗などの全身症状を伴うこともあります。リンパ節の腫れが数週間以上続く場合は、医療機関での精査が必要です。
乳がんのリンパ節転移
乳がんは、がん細胞がリンパ管を通ってリンパ節に転移することがあります。乳がんの場合、まず脇の下のリンパ節に転移することが多いため、脇の下のしこりが乳がんの発見につながることもあります。
乳がんのリンパ節転移によるしこりは、硬く、動きにくい特徴があります。特に乳房にしこりや変化がある場合は、早急に乳腺外科を受診することが重要です。
その他の原因
上記以外にも、脇の下のしこりの原因として以下のようなものがあります。
- 神経鞘腫:神経を包む鞘から発生する良性腫瘍
- 血管腫:血管が異常に増殖してできる腫瘍
- 軟部肉腫:脂肪組織や筋肉などの軟部組織から発生する悪性腫瘍(まれ)
- 皮膚がん:基底細胞がん、有棘細胞がんなど(まれ)
しこりの症状と特徴の見分け方
脇の下のしこりは、その特徴を観察することで、ある程度原因を推測することができます。以下のポイントに注目してみましょう。
大きさと形
しこりの大きさは原因によって様々です。リンパ節の腫れは通常1〜2センチ程度ですが、粉瘤や脂肪腫は数センチから10センチ以上になることもあります。
形については、リンパ節は楕円形、粉瘤は球形、脂肪腫は不定形であることが多いです。ただし、これらは目安であり、確定診断には医療機関での検査が必要です。
硬さと可動性
しこりを触ったときの硬さも重要な情報です。脂肪腫は柔らかく、リンパ節や粉瘤は弾力性があり、悪性腫瘍は硬い傾向があります。
可動性とは、しこりを指で押したときに動くかどうかです。粉瘤や脂肪腫は比較的よく動きますが、悪性腫瘍や炎症で周囲組織と癒着したものは動きにくくなります。
痛みの有無
痛みの有無も原因を推測する手がかりになります。
痛みを伴うしこりの例:
- 炎症を起こした粉瘤
- 毛包炎、せつ
- 化膿性汗腺炎
- 急性のリンパ節炎
痛みを伴わないしこりの例:
- 脂肪腫
- 慢性的なリンパ節の腫れ
- 悪性リンパ腫
- 乳がんのリンパ節転移
ただし、痛みがないからといって安心できるわけではありません。悪性腫瘍の多くは初期には痛みを伴わないことが多いためです。
皮膚の変化
しこりの上の皮膚に変化がある場合、それも重要な情報となります。
- 発赤:炎症を起こしている可能性
- 開口部:粉瘤に特徴的な黒い点状の開口部
- 皮膚のくぼみ:乳がんの皮膚浸潤で見られることがある
- 色の変化:血管腫では赤や青紫色を呈することがある
経過
しこりがいつ頃からあるのか、大きさの変化、症状の変化なども診断の参考になります。
- 急速に大きくなる:炎症性疾患や一部の悪性腫瘍
- ゆっくり大きくなる:良性腫瘍や一部の悪性腫瘍
- 大きさが変わらない:古い粉瘤や脂肪腫
- 時々大きくなったり小さくなったりする:副乳、リンパ節の反応性腫大
随伴症状
しこり以外の症状も重要です。
- 発熱:感染症や炎症性疾患、悪性リンパ腫
- 体重減少、倦怠感:悪性腫瘍の可能性
- 乳房の変化:乳がんの可能性
- 腕や手の傷:リンパ節炎の原因となる感染源
診断方法
脇の下のしこりの正確な診断には、問診、視診・触診、そして必要に応じた検査が必要です。
問診
医師はまず、以下のような質問を通じて情報を収集します。
- いつ頃からしこりがあるか
- 大きさの変化はあるか
- 痛みやその他の症状はあるか
- 最近の感染症や怪我の有無
- 既往歴や家族歴
- 使用している薬剤
これらの情報は、原因を推測する上で非常に重要です。
視診・触診
医師は実際にしこりを見て、触って診察します。以下のような点を確認します。
- しこりの大きさ、形、硬さ
- 可動性の有無
- 圧痛の有無
- 皮膚の変化
- 周囲のリンパ節の腫れ
- 乳房の診察(特に女性の場合)
経験豊富な医師であれば、視診・触診である程度の診断をつけることができます。
超音波検査(エコー検査)
超音波検査は、しこりの内部構造を確認するのに有用な検査です。痛みがなく、放射線被曝もないため、第一選択の画像検査として広く行われています。
超音波検査では以下のような情報が得られます。
- しこりの正確な大きさや位置
- 内部が液体か固形か
- 血流の有無
- 周囲組織との関係
粉瘤、脂肪腫、リンパ節の腫れなどは、超音波検査で特徴的な所見を示すため、診断に役立ちます。
CT検査・MRI検査
超音波検査だけでは診断が難しい場合や、悪性腫瘍が疑われる場合には、CT検査やMRI検査を行うことがあります。
これらの検査では、しこりの詳細な構造や周囲組織への広がり、他の部位への転移の有無などを評価できます。ただし、放射線被曝(CTの場合)や検査時間、費用などの問題もあるため、必要性を十分に検討した上で実施されます。
穿刺吸引細胞診・針生検
しこりの内容物や細胞を採取して顕微鏡で調べる検査です。悪性腫瘍が疑われる場合や、画像検査だけでは診断がつかない場合に行われます。
穿刺吸引細胞診では、細い針を刺してしこりの内容物を吸引し、細胞を調べます。針生検では、やや太い針を使って組織の一部を採取します。針生検の方がより多くの情報が得られますが、侵襲性も高くなります。
血液検査
悪性リンパ腫や感染症が疑われる場合には、血液検査を行うことがあります。白血球数、CRP(炎症反応)、LDH(細胞の破壊を示す指標)などを測定します。
また、乳がんが疑われる場合には、腫瘍マーカー(CEA、CA15-3など)を測定することもあります。ただし、腫瘍マーカーは必ずしも上昇するわけではなく、他の検査と組み合わせて総合的に判断します。
病理組織検査
最終的な確定診断には、摘出したしこりを顕微鏡で詳しく調べる病理組織検査が必要になることがあります。良性か悪性か、どのようなタイプの腫瘍かなどを正確に診断できます。
治療法
脇の下のしこりの治療法は、原因によって大きく異なります。
リンパ節の腫れに対する治療
感染症によるリンパ節の腫れは、原因となる感染症の治療を行います。細菌感染が原因の場合は抗生物質を、ウイルス感染の場合は対症療法を行います。多くの場合、感染症が治癒すればリンパ節の腫れも自然に引いていきます。
ただし、悪性リンパ腫などが原因の場合は、専門的な治療が必要になります。
粉瘤の治療
粉瘤の根本的な治療は手術による摘出です。袋状の構造物(嚢腫壁)を完全に取り除かないと再発するため、しっかりとした切除が必要です。
炎症を起こしていない粉瘤の場合は、局所麻酔下で比較的簡単に摘出できます。小さな切開で内容物を取り出し、嚢腫壁を丁寧に剥離して摘出します。
炎症を起こしている粉瘤の場合は、まず抗生物質の投与や切開排膿で炎症を鎮めてから、数週間後に根治手術を行うのが一般的です。ただし、最近では炎症期でも特殊な方法で摘出を試みることもあります。
アイシークリニック東京院では、粉瘤の日帰り手術に対応しており、傷跡を最小限にする工夫も行っています。
脂肪腫の治療
脂肪腫は良性腫瘍であり、無症状で小さいものであれば経過観察でも問題ありません。ただし、以下のような場合は手術による摘出を検討します。
- サイズが大きく、美容的に気になる
- 圧迫感や違和感がある
- 大きくなる傾向がある
- 悪性の脂肪肉腫との鑑別が必要
手術は局所麻酔下で行われることが多く、腫瘍を被膜ごと摘出します。
副乳の治療
副乳は病的なものではないため、症状がなければ治療の必要はありません。ただし、以下のような場合は手術による切除を検討することがあります。
- 月経周期や授乳期に痛みや腫れが気になる
- 美容的に気になる
- 副乳腺内に腫瘍ができた
手術は局所麻酔または全身麻酔下で行われ、副乳組織を完全に切除します。
毛包炎・せつの治療
軽度の毛包炎であれば、患部を清潔に保ち、抗菌薬の外用で治癒することが多いです。せつに進行した場合は、抗生物質の内服が必要になることがあります。
膿が溜まっている場合は、切開して排膿することもあります。切開排膿後は、創部の洗浄や抗生物質の投与を行います。
予防策として、脇の下を清潔に保つこと、ムダ毛処理の際に皮膚を傷つけないようにすることが重要です。
化膿性汗腺炎の治療
化膿性汗腺炎は治療が難しい疾患です。軽症例では、抗生物質の長期投与や外用薬で症状をコントロールします。生物学的製剤が有効な場合もあります。
膿瘍が形成された場合は切開排膿を行いますが、瘻孔ができて繰り返す場合は、病変部の広範囲切除が必要になることもあります。
禁煙、体重管理、皮膚の清潔保持なども重要な治療の一環です。
悪性腫瘍の治療
悪性リンパ腫や乳がんなどの悪性腫瘍が原因の場合は、専門医による治療が必要です。
悪性リンパ腫の治療は、タイプや進行度によって異なりますが、化学療法、放射線療法、場合によっては造血幹細胞移植などが行われます。
乳がんのリンパ節転移の場合は、乳がんの治療と併せてリンパ節の郭清(切除)が行われることがあります。近年では、センチネルリンパ節生検という方法で、必要最小限のリンパ節切除で済むケースも増えています。
保存的治療と手術のタイミング
すべてのしこりに手術が必要なわけではありません。以下のような場合は経過観察を選択することもあります。
- 明らかに良性で、症状がない
- 小さくて美容的にも問題ない
- 自然に縮小する可能性がある(一部のリンパ節の腫れなど)
一方、以下のような場合は早めの手術を検討します。
- 悪性腫瘍の可能性がある
- 感染を繰り返す
- 大きくなる傾向がある
- 症状がある
- 美容的に気になる
治療方針は、患者さんの希望も考慮しながら決定していきます。
受診のタイミングと診療科の選び方
脇の下のしこりを見つけた場合、どのタイミングで医療機関を受診すべきか、また何科を受診すべきか迷う方も多いでしょう。
こんな症状があればすぐに受診を
以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
- しこりが急速に大きくなる
- しこりが硬く、動かない
- しこりとともに、乳房にしこりや変化がある
- しこりとともに、発熱、体重減少、倦怠感などの全身症状がある
- しこりが数週間以上続いている
- 痛みが強く、日常生活に支障がある
- しこりの上の皮膚が赤く腫れている
特に悪性腫瘍は早期発見・早期治療が重要です。気になる症状があれば、早めに受診しましょう。
様子を見てもよい場合
以下のような場合は、数日から1〜2週間程度様子を見てから受診を検討してもよいでしょう。
- 小さくて柔らかいしこり
- 痛みがなく、大きさが変わらない
- 風邪などの感染症に伴って出現したしこり(感染症が治れば自然に小さくなることがある)
ただし、様子を見ている間に症状が悪化したり、しこりが大きくなったりした場合は、すぐに受診してください。
受診する診療科
脇の下のしこりで受診する診療科は、症状や原因によって異なります。
一般的には以下の診療科が対応します。
- 皮膚科:粉瘤、脂肪腫、毛包炎など皮膚関連のしこり
- 形成外科:粉瘤、脂肪腫、副乳などの手術的治療
- 外科:粉瘤、脂肪腫、リンパ節の腫れなど
- 乳腺外科:乳がんの可能性がある場合、副乳など
女性で乳房にも異常を感じる場合は、乳腺外科を受診するのがよいでしょう。また、発熱などの全身症状がある場合は、内科での診察も検討します。
アイシークリニック東京院では、皮膚科・形成外科の専門医が診察を行い、粉瘤や脂肪腫などの日帰り手術にも対応しています。しこりの原因や治療法について丁寧に説明し、患者さんに最適な治療を提供いたします。
予防とセルフケア
脇の下のしこりをすべて予防することは難しいですが、以下のような対策で発生リスクを減らすことができます。
皮膚の清潔を保つ
脇の下は汗や皮脂の分泌が多く、細菌が繁殖しやすい場所です。毎日入浴し、特に夏場はこまめに汗を拭き取るなど、清潔を保つことが重要です。
ムダ毛処理の方法に注意
カミソリや毛抜きでムダ毛を処理すると、皮膚や毛穴を傷つけ、毛包炎の原因になることがあります。以下の点に注意しましょう。
- カミソリは清潔なものを使用する
- シェービングクリームなどで肌を保護する
- 毛の流れに沿って優しく剃る
- 処理後は保湿する
- 頻繁に処理しすぎない
医療レーザー脱毛や光脱毛で永久脱毛すると、毛穴のトラブルを予防できます。
制汗剤・デオドラントの使用に注意
制汗剤やデオドラントは、毛穴を詰まらせたり、皮膚を刺激したりすることがあります。肌に合わないものは使用を控え、使用後はしっかり洗い流すようにしましょう。
適切な体重管理
肥満は化膿性汗腺炎のリスク因子の一つです。適切な体重を維持することも予防につながります。
禁煙
喫煙も化膿性汗腺炎のリスク因子とされています。禁煙は多くの健康効果があり、皮膚の健康にもよい影響を与えます。
定期的な自己チェック
脇の下を定期的に観察し、しこりがないかチェックする習慣をつけましょう。特に女性は、乳房の自己検診と併せて脇の下もチェックすることをお勧めします。
早期発見・早期治療が、重大な疾患の予防や症状の軽減につながります。

よくある質問
しこりの性質によります。急速に大きくなる、硬い、痛みが強い、全身症状を伴うなどの場合は早めの受診をお勧めします。一方、小さくて柔らかく、痛みもない場合は、1〜2週間程度様子を見てから受診を検討してもよいでしょう。ただし、不安がある場合は早めに受診してください。
複数のしこりがある場合、それぞれ異なる原因の可能性もあれば、同じ原因で複数できている可能性もあります。脂肪腫は複数できることがありますし、リンパ節も複数腫れることがあります。いずれにしても、医療機関で診察を受けることをお勧めします。
しこりが痛くなったり痛くなくなったりするのはなぜですか
粉瘤の場合、普段は痛みがありませんが、炎症を起こすと急に痛くなり、炎症が治まると痛みも軽減します。また、副乳の場合は月経周期に伴って痛みが変動することがあります。リンパ節も、感染症の活動性によって痛みが変化することがあります。
しこりをマッサージしてもよいですか
しこりを強くマッサージすることは避けてください。特に炎症を起こしている場合や、悪性腫瘍の可能性がある場合は、刺激を与えることで症状が悪化したり、がん細胞が広がったりするリスクがあります。気になる場合は、触らずに早めに医療機関を受診しましょう。
手術の傷跡は残りますか
手術による傷跡は、手術の方法、しこりの大きさや位置、個人の体質などによって異なります。形成外科専門医による手術では、傷跡を最小限にする工夫が行われます。脇の下は比較的傷跡が目立ちにくい部位ですが、完全に傷跡をなくすことは困難です。術後のケアも重要で、医師の指示に従ってください。
再発することはありますか
原因によって再発リスクは異なります。粉瘤は嚢腫壁を完全に摘出すれば再発しませんが、不完全な摘出では再発の可能性があります。脂肪腫も完全に摘出すれば再発しません。一方、化膿性汗腺炎は病変部を広範囲に切除しても再発することがあります。毛包炎は、皮膚を清潔に保つことで再発を予防できます。
まとめ
脇の下のしこりは、粉瘤、脂肪腫、リンパ節の腫れ、副乳など様々な原因で生じます。多くは良性のもので、適切な治療により改善が期待できます。ただし、まれに悪性腫瘍が原因のこともあるため、しこりを見つけたら自己判断せず、医療機関を受診することが大切です。
しこりの特徴(大きさ、硬さ、痛みの有無、経過など)を観察し、特に以下のような症状がある場合は早めに受診してください。
- しこりが急速に大きくなる
- しこりが硬く、動かない
- 痛みが強い
- 全身症状を伴う
- 数週間以上続いている
アイシークリニック東京院では、皮膚科・形成外科の専門医が丁寧に診察し、適切な診断と治療を提供しています。粉瘤や脂肪腫などの日帰り手術にも対応しており、傷跡を最小限にする工夫も行っています。
脇の下のしこりでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。早期発見・早期治療により、より良い結果が期待できます。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる医療情報源を参考にしました。
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」
https://www.dermatol.or.jp/qa/ - 厚生労働省「がん情報サービス」
https://ganjoho.jp/public/index.html - 日本形成外科学会「一般の皆様へ」
https://www.jsprs.or.jp/general/ - 国立がん研究センター「がん情報サービス – 乳がん」
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/ - 日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」
https://jbcs.gr.jp/guideline/ - 日本リンパ網内系学会
https://www.lymphoma.gr.jp/
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務