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「風邪は治ったはずなのに、咳だけがいつまでも止まらない」「熱もないのに、夜になると咳き込んで眠れない」――こうした症状に悩まされている方は、決して少なくありません。

実は、熱がないのに咳が長引く場合、単なる風邪の名残ではなく、別の疾患が隠れている可能性があります。本記事では、大人の「熱はないのに咳が止まらない」という症状について、考えられる原因疾患から受診の目安、日常生活での対処法まで、詳しく解説いたします。


目次

  1. はじめに:なぜ熱がないのに咳が続くのか
  2. 咳の種類と分類について
  3. 熱がなく咳が止まらない場合に考えられる主な原因疾患
    • 咳喘息(せきぜんそく)
    • アトピー咳嗽(あとぴーがいそう)
    • 感染後咳嗽(かんせんごがいそう)
    • 逆流性食道炎(GERD)による咳
    • 副鼻腔炎・後鼻漏による咳
    • COPD(慢性閉塞性肺疾患)
    • 薬剤性咳嗽
    • 百日咳・マイコプラズマ感染症
  4. すぐに受診すべき危険な症状
  5. 医療機関を受診する目安
  6. 医療機関で行われる検査
  7. 日常生活でできるセルフケア
  8. 市販の咳止め薬との付き合い方
  9. 咳が止まらないときの受診科選び
  10. よくある質問(Q&A)
  11. まとめ

はじめに:なぜ熱がないのに咳が続くのか

咳は、気道に侵入した異物や病原体を体外に排出するための重要な生体防御反応です。風邪やインフルエンザなどの感染症では、発熱とともに咳が出ることが一般的ですが、感染症以外にもさまざまな原因で咳は引き起こされます。

特に注目すべきは、日本呼吸器学会の「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン」において、8週間以上続く慢性咳嗽の原因として、咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群の3つで80%以上を占めるとされている点です。これらの疾患では、多くの場合、発熱を伴いません。

つまり、「熱はないけど咳が止まらない」という状態は、むしろ感染症以外の原因を疑うべきサインといえるのです。


咳の種類と分類について

咳は、医学的にいくつかの観点から分類されます。適切な診断と治療のためには、この分類を理解することが重要です。

持続期間による分類

日本呼吸器学会のガイドラインでは、咳を持続期間によって以下のように分類しています。

分類持続期間主な原因
急性咳嗽3週間未満風邪、インフルエンザ、急性気管支炎など
遷延性咳嗽3週間以上8週間未満感染後咳嗽、咳喘息の初期など
慢性咳嗽8週間以上咳喘息、アトピー咳嗽、逆流性食道炎など

急性咳嗽の場合は感染症が原因であることが多いですが、咳が3週間以上続く場合は、感染症以外の原因を考慮する必要があります。

痰の有無による分類

咳は痰の有無によっても分類されます。

乾性咳嗽(かんせいがいそう)は、痰を伴わない「コンコン」「ケンケン」という乾いた咳です。咳喘息、アトピー咳嗽、逆流性食道炎、間質性肺炎、喉頭アレルギー、ACE阻害薬による咳などで見られます。

湿性咳嗽(しっせいがいそう)は、痰が絡む「ゴホゴホ」「ゲホゲホ」という湿った咳です。副鼻腔炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息、肺がんなどで見られます。

咳の性状を把握しておくことで、原因疾患の推測に役立ちます。


熱がなく咳が止まらない場合に考えられる主な原因疾患

熱がないのに咳が長引く場合、以下のような疾患が原因として考えられます。それぞれの特徴、症状、治療法について詳しく見ていきましょう。


咳喘息(せきぜんそく)

咳喘息は、長引く咳の原因として最も頻度が高い疾患です。「喘息」という名前がついていますが、一般的な気管支喘息とは異なり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴や息苦しさを伴わず、咳だけが続くのが特徴です。

咳喘息の主な特徴

咳喘息の症状には、痰を伴わない乾いた咳が3週間以上続くこと、夜間から早朝にかけて咳がひどくなること、季節の変わり目や寒暖差が激しい日に症状が悪化すること、タバコの煙やペットの毛、花粉などを吸い込むと咳が出ること、のどのイガイガ感やムズムズ感を伴うことなどがあります。

咳喘息の原因

咳喘息は、アレルギー体質の方に多く見られます。気道に慢性的な炎症が生じ、気道が過敏になることで、通常では咳が出ないような軽い刺激でも咳が出やすくなります。

主な誘因としては、ダニ、カビ、ハウスダスト、花粉などのアレルゲン、寒暖差、タバコの煙、香水や芳香剤などの強い香り、ストレスや疲労などが挙げられます。また、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの呼吸器感染症をきっかけに発症することも多いです。

咳喘息の診断

咳喘息の診断基準には、喘鳴を伴わない咳が8週間以上続いていること、これまで喘息と診断されたことがないこと、胸部X線検査で異常がないこと、気管支拡張薬の使用で症状が改善することなどが含まれます。

呼気中一酸化窒素(FeNO)検査では数値が高くなることが多く、気道のアレルギー性炎症の存在を示唆します。

咳喘息の治療

治療の基本は吸入ステロイド薬です。気道の炎症を抑えることで症状を改善し、さらに重要なこととして、気管支喘息への移行を予防します。

実は、咳喘息を放置すると、30~40%の患者さんが本格的な気管支喘息に移行してしまうとされています。早期に適切な治療を開始することで、この移行を防ぐことができます。

症状が改善しても、気道の炎症が完全に収まるまでには数ヶ月かかるため、自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従って治療を継続することが大切です。

参考:日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン」


アトピー咳嗽(あとぴーがいそう)

アトピー咳嗽は、咳喘息と同様にアレルギーが関与する咳ですが、病態や治療法が異なります。アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、花粉症などのアレルギー疾患を持つ方に多く見られ、特に中年女性に多いとされています。

アトピー咳嗽の主な特徴

アトピー咳嗽では、痰を伴わない乾いた咳が続き、のどのイガイガ感やかゆみを伴うことが特徴的です。咳は夕方から夜にかけて悪化することが多く、会話中やストレス(緊張)によって咳が誘発されることがあります。

咳喘息との違い

咳喘息とアトピー咳嗽は症状が似ていますが、重要な違いがあります。咳喘息では気管支拡張薬が有効であるのに対し、アトピー咳嗽では気管支拡張薬は無効です。

これは、咳喘息が気管支の深層にある平滑筋の収縮によって起こるのに対し、アトピー咳嗽は気管支の表層にある咳受容体の感受性が亢進することで起こるためです。

また、アトピー咳嗽は咳喘息と異なり、気管支喘息に移行することは稀とされています。

アトピー咳嗽の治療

治療には抗ヒスタミン薬が第一選択となります。アレグラやアレジオンといった薬剤で、アレルギー反応を抑制し咳症状を軽減します。抗ヒスタミン薬の有効率は約60%とされており、効果が十分でない場合には吸入ステロイド薬を追加することがあります。


感染後咳嗽(かんせんごがいそう)

感染後咳嗽は、風邪やインフルエンザなどの感染症が治った後も、咳だけが数週間続く状態を指します。「かぜ症候群後咳嗽」とも呼ばれ、非常に多くの方が経験する一般的な症状です。

感染後咳嗽の特徴

感染後咳嗽では、発熱や鼻水などの他の風邪症状は改善しているにもかかわらず、咳だけが3週間から8週間程度続きます。咳は乾いた咳であることが多く、夜間や朝方に悪化しやすい傾向があります。

なぜ感染後も咳が続くのか

感染によって気道の粘膜がダメージを受け、気道が過敏な状態になっています。そのため、通常では咳が出ないような軽い刺激でも咳が出やすくなっているのです。気道の粘膜が修復され、過敏性が正常に戻るまでに時間がかかることが、咳が長引く原因となります。

感染後咳嗽の経過

多くの場合、時間の経過とともに自然に改善しますが、改善までに3~8週間程度かかることがあります。8週間以上続くことは通常ありませんが、もし8週間を超えて咳が続く場合は、他の疾患(咳喘息など)の可能性を考える必要があります。

感染後咳嗽の治療

自然軽快することが多いですが、症状が強い場合は対症療法を行います。治療には、抗ヒスタミン薬、漢方薬(麦門冬湯など)、咳止め薬などが用いられます。


逆流性食道炎(GERD)による咳

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで胸やけなどの症状を引き起こす疾患ですが、実は長引く咳の原因としても重要です。欧米では長引く咳の原因の約3分の1を占めるとされており、日本でも近年増加傾向にあります。

なぜ逆流性食道炎で咳が出るのか

逆流性食道炎で咳が出るメカニズムには主に2つあります。

1つ目は、逆流した胃酸が食道上部まで上がってきて、喉や気管を直接刺激することで咳が出るパターンです。

2つ目は、胃酸が食道下部の迷走神経を刺激し、その刺激が反射的に気道の神経に伝わって咳が出るパターンです。この場合、胃酸が喉まで上がってこなくても咳が出ることがあります。

逆流性食道炎による咳の特徴

逆流性食道炎による咳には以下のような特徴があります。

胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がってくる感じ)と一緒に咳が出ることが多く、食後や就寝時に咳が出やすい傾向があります。横になると胃酸が逆流しやすくなるため、夜間に悪化することがあります。痰を伴わない乾いた咳であることが多く、市販の咳止め薬が効きにくいのも特徴です。

ただし、典型的な胸やけ症状がなく、咳だけが症状として現れる場合もあるため注意が必要です。

逆流性食道炎の治療

治療の中心は、胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカー)の服用です。ただし、胸やけなどの症状は比較的早く改善することが多いですが、咳の改善には2~3ヶ月程度かかることがあります。

生活習慣の改善も重要です。寝る前2~3時間は食事を避けること、食後すぐに横にならないこと、脂っこいものや刺激物を控えること、就寝時に上半身を少し高くして寝ることなどが有効です。


副鼻腔炎・後鼻漏による咳

副鼻腔炎(蓄膿症)やアレルギー性鼻炎などの鼻の疾患も、長引く咳の原因となることがあります。これは「後鼻漏(こうびろう)」と呼ばれる現象が関係しています。

後鼻漏とは

通常、鼻腔で作られる鼻水の一部は、鼻の後方から喉に流れ落ちていきます。健康な状態では1日に0.6~2リットル程度の鼻水が無意識のうちに喉に流れ、飲み込まれています。これは生理的な現象であり、通常は気になりません。

しかし、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎で鼻水の量が増えたり、粘り気が強くなったりすると、喉に流れ落ちる鼻水が気になるようになります。この鼻水が気管を刺激したり、喉に張り付いたりすることで、咳や痰がらみの症状が出現します。

後鼻漏による咳の特徴

後鼻漏による咳には以下のような特徴があります。

朝起きた時に痰がらみの咳が多く出ること、咳払いが止まらないこと、喉に何かが流れる感じや張り付く感じがあること、鼻づまりや鼻水などの鼻症状を伴うことが多いです。夜間、横になっている間に鼻水が喉にたまり、朝方に症状が悪化しやすい傾向があります。

副鼻腔気管支症候群

副鼻腔炎と気管支炎が併発する状態を「副鼻腔気管支症候群」といいます。この場合、鼻と気管支の両方に症状が出現し、黄色い痰を伴う湿った咳が続きます。治療には、副鼻腔炎の治療と気管支炎の治療を並行して行う必要があります。

治療

後鼻漏の治療は、原因となる疾患の治療が基本です。副鼻腔炎であれば抗菌薬やマクロライド系抗菌薬の少量長期投与、アレルギー性鼻炎であれば抗アレルギー薬や点鼻ステロイドなどが用いられます。

鼻うがいも有効なセルフケアです。生理食塩水で鼻腔を洗浄することで、鼻水の量を減らし、症状を軽減することができます。


COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、以前は「肺気腫」や「慢性気管支炎」と呼ばれていた疾患を含む概念です。主にタバコの煙などの有害物質を長年吸い込み続けることで、肺に慢性的な炎症が起こり、呼吸機能が低下する疾患です。

COPDの特徴

COPDは40歳以上の喫煙者または喫煙歴のある方に多く見られます。日本では40歳以上の約12人に1人、推計530万人以上がCOPDの患者であると考えられていますが、実際に診断・治療を受けているのはその一部にすぎません。

主な症状は、長引く咳と痰、労作時(階段の昇降や早歩きなど)の息切れです。症状がゆっくりと進行するため、「年のせい」「運動不足のせい」と見過ごされやすい疾患です。

COPDの原因

COPDの原因の約90%は喫煙です。タバコの煙に含まれる有害物質が気道や肺胞に炎症を起こし、長年の喫煙により肺の機能が徐々に低下していきます。

喫煙者の約15~20%がCOPDを発症するとされており、喫煙量や喫煙期間が長いほどリスクは高くなります。

早期発見の重要性

COPDでは、一度破壊された肺胞は元には戻りません。しかし、早期に発見して禁煙を実施すれば、症状の進行を抑制することができます。

長期の喫煙歴があり、咳や痰が続いている、坂道や階段で息切れするという方は、早めに呼吸器内科を受診することをお勧めします。

参考:一般社団法人日本呼吸器学会「COPD」


薬剤性咳嗽

服用している薬が原因で咳が出ることがあります。これを「薬剤性咳嗽」といいます。最も有名なのは、高血圧治療薬であるACE阻害薬による咳です。

ACE阻害薬による咳の特徴

ACE阻害薬(エナラプリル、リシノプリルなど)は、優れた降圧効果を持つ薬ですが、副作用として乾いた咳(空咳)が出ることがあります。

この咳は、ACE阻害薬が「ブラジキニン」や「サブスタンスP」という物質の分解を抑制するため、これらの物質が蓄積して咳反射を亢進させることで起こります。

特徴としては、痰を伴わない乾いた咳であること、喉の狭窄感や違和感を伴うことがあること、夜間に多いこと、女性や非喫煙者に起こりやすいことなどが挙げられます。

服用開始から数週間~数ヶ月後に出現することが多いですが、長期間服用していて今まで大丈夫だった場合でも突然出現することがあります。

対処法

ACE阻害薬による咳は、薬の服用を中止すると通常1~4週間以内に治まります。ただし、自己判断で薬を中止せず、必ず主治医に相談してください。ACE阻害薬以外の降圧薬(ARBなど)に変更することで、血圧のコントロールを維持しながら咳を改善することができます。


百日咳・マイコプラズマ感染症

発熱を伴わない長引く咳の原因として、百日咳やマイコプラズマ感染症などの感染症も考慮する必要があります。

百日咳

百日咳は百日咳菌による感染症で、その名の通り咳が約100日間続くことがあります。かつては小児の病気というイメージでしたが、近年は成人でも感染が見られるようになっています。

成人の百日咳では、小児のような典型的な発作性の咳(連続的な咳の後に「ヒュー」という吸気音がする)は起こりにくく、単に「しつこく長引く咳」として現れることが多いです。発熱も伴わないことが多いため、長引く風邪や気管支炎と誤診されやすい疾患です。

特に乳幼児に感染させると重症化するリスクがあるため、家庭に小さなお子さんがいる方で長引く咳がある場合は、早めの受診が推奨されます。

マイコプラズマ感染症

マイコプラズマは、風邪や肺炎を引き起こす病原体の一種です。マイコプラズマ肺炎は「歩く肺炎」とも呼ばれ、比較的元気な状態にもかかわらず頑固な咳が続くのが特徴です。

発熱と乾いた咳で発症し、熱が下がった後も咳だけが3~4週間続くことがあります。特に5~12歳の小児や若年成人に多いですが、成人でも感染します。


すぐに受診すべき危険な症状

咳が続いている場合、以下のような症状を伴う場合は、すぐに医療機関を受診してください。これらは重篤な疾患の可能性を示唆する「危険サイン」です。

今すぐ受診が必要な症状

  • 血痰が出る(咳と一緒に血が混じった痰が出る)
  • 呼吸困難や強い息苦しさがある
  • 胸痛を伴う
  • 急激な体重減少がある
  • 声がかすれて戻らない
  • 顔色が悪い、唇が紫色になる(チアノーゼ)
  • 意識がもうろうとする

これらの症状がある場合は、肺炎、肺がん、結核、心不全などの重篤な疾患の可能性があります。


医療機関を受診する目安

以下のような場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

  • 咳が2週間以上続いている
  • 夜間に咳がひどく眠れない
  • 市販の咳止め薬が効かない
  • 階段の昇降で息切れがする
  • 痰の色が黄色や緑色
  • 微熱が続いている
  • 長期の喫煙歴がある
  • 糖尿病や心臓病などの持病がある

特に咳が3週間以上続く場合は、風邪以外の原因を考える必要があります。「たかが咳」と軽視せず、専門医の診察を受けることが重要です。


医療機関で行われる検査

長引く咳の原因を調べるために、医療機関では以下のような検査が行われます。

問診・身体診察

まず、咳がいつから始まったか、どのような時に悪化するか、痰の有無や性状、喫煙歴、服用中の薬、アレルギーの有無などについて詳しく聞き取りを行います。聴診器で胸の音を聴き、異常な呼吸音がないかを確認します。

胸部X線検査・CT検査

肺炎、肺結核、肺がん、間質性肺炎などの器質的疾患がないかを調べます。咳喘息やアトピー咳嗽では通常、画像検査で異常は認められません。

呼吸機能検査(スパイロメトリー)

肺活量や1秒量を測定し、気道が狭くなっていないか、肺の機能が低下していないかを調べます。COPDや喘息の診断に重要な検査です。

呼気NO(FeNO)検査

吐いた息に含まれる一酸化窒素の濃度を測定します。気道にアレルギー性の炎症があると数値が高くなるため、咳喘息や喘息の診断に役立ちます。アトピー咳嗽では通常、数値は上昇しません。

血液検査

アレルギーの指標となる好酸球数やIgE値、特定のアレルゲンに対する抗体などを調べます。感染症が疑われる場合は、マイコプラズマや百日咳の抗体検査も行われます。

喀痰検査

痰がある場合は、細菌や結核菌の有無、細胞の種類などを調べます。


日常生活でできるセルフケア

咳が続いている間、以下のようなセルフケアを行うことで症状を和らげることができます。

室内環境を整える

部屋の湿度を50~60%程度に保つことで、気道の乾燥を防ぎ、咳を和らげることができます。加湿器の使用や、濡れタオルを室内に干すなどの方法が有効です。

また、ハウスダストやダニ、カビなどのアレルゲンを減らすために、こまめな掃除や寝具の管理を心がけましょう。

禁煙する

喫煙は咳を悪化させる最大の要因です。COPDの予防・進行抑制のためにも、禁煙は必須です。受動喫煙も避けるようにしましょう。

刺激を避ける

タバコの煙、香水や芳香剤などの強い香り、冷たい空気、ほこりなど、咳を誘発する刺激を避けるようにしましょう。外出時にはマスクを着用することも有効です。

温かい飲み物で喉を潤す

温かいお茶やはちみつ湯など、喉に優しい飲み物をこまめに摂取しましょう。はちみつには咳を和らげる効果があるとされています。ただし、1歳未満の乳児にははちみつを与えないでください。

咳を悪化させる食べ物を控える

以下の食べ物や飲み物は咳を悪化させる可能性があります。

辛い食べ物(唐辛子、わさびなど)、酸っぱい食べ物(柑橘類など)、冷たい飲み物、アルコール、カフェインの多い飲み物などは控えめにしましょう。

逆流性食道炎が原因の場合は、脂っこい食事や食べ過ぎを避け、就寝前の食事を控えることも重要です。

十分な睡眠と休養

免疫力を維持するために、十分な睡眠と休養を心がけましょう。ストレスや疲労は咳を悪化させる要因となります。

就寝時の姿勢を工夫する

後鼻漏や逆流性食道炎が原因の場合、寝る時に頭を少し高くすることで症状が和らぐことがあります。枕を高くするか、ベッドの頭側を少し上げるとよいでしょう。


市販の咳止め薬との付き合い方

市販の咳止め薬は、風邪などの急性咳嗽には一時的に有効なことがありますが、長引く咳に対しては注意が必要です。

市販薬が効かない咳

咳喘息、アトピー咳嗽、逆流性食道炎などが原因の慢性的な咳には、市販の咳止め薬はほとんど効果がありません。これらの疾患では、原因に応じた適切な治療(吸入ステロイド薬、抗ヒスタミン薬、胃酸分泌抑制薬など)が必要です。

市販薬で様子を見てよい期間

市販薬での対症療法は1週間程度にとどめ、改善しない場合は医療機関を受診してください。特に2週間以上咳が続く場合は、風邪以外の病気の可能性が高いため、早めの受診をお勧めします。

原因がわからないまま服用するリスク

咳の原因がわからないまま咳止め薬を長期間服用することには問題があります。原因疾患の発見が遅れる可能性があり、また、一部の咳止め薬には依存性のある成分が含まれているものもあります。


咳が止まらないときの受診科選び

咳が長引いている場合、何科を受診すればよいか迷う方も多いでしょう。

呼吸器内科がおすすめ

長引く咳の原因として最も多い咳喘息、アトピー咳嗽、COPDなどは呼吸器の疾患です。8週間以上続く慢性咳嗽の原因のほとんどが呼吸器の病気であるため、迷ったら呼吸器内科を受診することをお勧めします。

呼吸器内科では、呼吸機能検査やFeNO検査など、咳の原因を調べるための専門的な検査を受けることができます。

その他の選択肢

呼吸器内科が近くにない場合は、一般内科やアレルギー科でも対応可能です。

胸やけなどの消化器症状を伴う場合は、消化器内科も選択肢になります。鼻づまりや後鼻漏などの鼻症状を伴う場合は、耳鼻咽喉科の受診も考慮されます。


よくある質問(Q&A)

Q1:咳が止まらないけど熱がない時、新型コロナウイルス感染症の可能性はありますか?

A:新型コロナウイルス感染症では、発熱を伴わない咳症状が現れることもあります。特にオミクロン株以降は、発熱しない感染者も多く報告されています。咳以外にも、のどの痛み、倦怠感、味覚・嗅覚異常などの症状がある場合は、抗原検査や医療機関での検査を検討してください。

Q2:アレルギーがあると咳が出やすいですか?

A:はい、アレルギー体質の方は咳が出やすい傾向があります。咳喘息やアトピー咳嗽は、アレルギー性の気道炎症が関与する疾患です。花粉症やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患をお持ちの方は、これらの疾患にかかりやすいとされています。

Q3:咳で眠れない場合、どうすればいいですか?

A:就寝時の咳には、以下の対策が有効な場合があります。部屋の湿度を適切に保つこと、枕を少し高くして寝ること、就寝前に温かい飲み物で喉を潤すこと、寝る前2~3時間は食事を避けることなどです。ただし、夜間の咳が続く場合は、咳喘息や逆流性食道炎などの可能性がありますので、医療機関を受診することをお勧めします。

Q4:どのくらい咳が続いたら病院に行くべきですか?

A:2週間以上咳が続く場合は、医療機関の受診をお勧めします。特に3週間以上続く場合は、風邪以外の疾患の可能性が高くなります。また、血痰、息苦しさ、胸痛、急な体重減少などの症状がある場合は、期間に関わらず早急に受診してください。

Q5:喘息と咳喘息は違う病気ですか?

A:咳喘息は、気管支喘息(一般的な喘息)の前段階、または軽症型と考えられています。咳喘息では「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴や息苦しさがなく、咳だけが症状として現れます。咳喘息を放置すると30~40%が気管支喘息に移行するとされており、早期の治療が重要です。

Q6:タバコを吸っていますが、咳が続くのは関係ありますか?

A:タバコは咳の原因として非常に重要です。喫煙は気道を刺激し、慢性的な炎症を引き起こします。長期の喫煙歴があり、咳や痰が続いている場合は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の可能性があります。COPDは進行性の疾患ですが、禁煙により進行を遅らせることができます。早めの検査と禁煙をお勧めします。


まとめ

「熱はないのに咳が止まらない」という症状は、風邪の名残ではなく、別の疾患が原因である可能性があります。

本記事でご紹介した主な原因疾患には、咳喘息、アトピー咳嗽、感染後咳嗽、逆流性食道炎、副鼻腔炎・後鼻漏、COPD、薬剤性咳嗽、百日咳・マイコプラズマ感染症などがあります。

これらの疾患は、適切な診断と治療により症状を改善することができます。特に咳喘息は、早期に治療を開始することで気管支喘息への移行を予防できます。

咳が2週間以上続く場合は、「たかが咳」と軽視せず、呼吸器内科などの専門医を受診することをお勧めします。咳の原因を突き止め、原因に応じた適切な治療を受けることが、症状改善への近道です。


季節と咳の関係

咳の症状は季節によっても変化することがあります。季節ごとの特徴を知っておくと、咳の原因を推測する手がかりになります。

春(2月~5月)

春はスギ・ヒノキ花粉の飛散時期と重なります。花粉症をきっかけに咳喘息を発症する方も多く、くしゃみや鼻水とともに咳が続く場合は、花粉によるアレルギーが関与している可能性があります。

また、気温の変化が大きい時期でもあり、寒暖差による気道の刺激で咳が出やすくなることもあります。

夏(6月~8月)

梅雨時期から夏にかけては、カビやダニが繁殖しやすい時期です。これらのアレルゲンによって咳喘息やアトピー咳嗽が悪化することがあります。エアコンのフィルターにカビが繁殖している場合、エアコンの使用で咳が悪化することもあります。

また、冷房による急激な温度差も咳の原因となりえます。

秋(9月~11月)

秋は気温の変化が大きく、台風などによる気圧の変動も多い時期です。これらの環境変化は、咳喘息や気管支喘息の症状を悪化させることがあります。

また、ブタクサやヨモギなどの秋の花粉、ダニの死骸などのアレルゲンが増える時期でもあります。

冬(12月~2月)

冬は空気が乾燥し、インフルエンザや風邪などの呼吸器感染症が流行する時期です。感染後咳嗽で長引く咳に悩まされる方が増えます。

また、暖房による室内の乾燥、屋内外の温度差なども咳を悪化させる要因となります。


咳と生活の質(QOL)

長引く咳は、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

睡眠への影響

夜間の咳により十分な睡眠がとれないと、日中の眠気、集中力の低下、疲労感などが生じます。睡眠不足は免疫機能の低下にもつながり、咳の回復を遅らせる悪循環に陥ることがあります。

社会生活への影響

咳が止まらないことで、仕事中や会議中、電車内などで周囲の目が気になり、精神的なストレスを感じる方も多いです。また、「うつるのではないか」と周囲に心配されることもストレスの原因となります。

身体への影響

激しい咳を繰り返すことで、胸や背中の筋肉痛、肋骨の痛み、喉の痛みなどが生じることがあります。また、咳によって腹圧が上昇し、腹圧性尿失禁(咳やくしゃみで尿が漏れる)が起こることもあります。重篤な例では、咳による肋骨骨折が起こることもあります。

このように、咳は単なる症状にとどまらず、生活の質を大きく低下させる要因となります。「たかが咳」と軽視せず、早めに適切な治療を受けることが、QOLの維持・向上につながります。


咳に関する正しい知識を持ちましょう

咳に関して、いくつかの誤解や間違った認識があります。正しい知識を持つことで、適切な対処につながります。

誤解1:「咳は我慢すべき」

咳を無理に我慢する必要はありません。咳は気道を守るための生体防御反応です。ただし、激しい咳が長期間続く場合は、気道や体に負担がかかるため、適切な治療を受けることが大切です。

誤解2:「咳止めを飲めば治る」

市販の咳止め薬は対症療法であり、咳の原因を治療するものではありません。咳喘息や逆流性食道炎などが原因の場合、市販の咳止めでは効果がありません。原因に応じた適切な治療が必要です。

誤解3:「咳が続くのは肺が弱いから」

長引く咳の原因として最も多いのは咳喘息であり、肺そのものが弱いわけではありません。適切な治療により症状は改善します。

誤解4:「抗生物質を飲めば咳は治る」

細菌感染が原因の咳には抗生物質が有効ですが、ウイルス感染やアレルギーが原因の咳には抗生物質は効きません。不必要な抗生物質の使用は、薬剤耐性菌の問題にもつながります。医師の判断に従い、適切な薬を使用することが大切です。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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