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はじめに

2025年夏、日本国内で新型コロナウイルス感染症の感染者数が再び増加傾向にあります。その背景にあるのが、新たな変異株「ニンバス(NB.1.8.1株)」の流行です。ニュースやSNSでこの名前を目にした方も多いのではないでしょうか。

「ニンバスって何?」「今までのコロナと何が違うの?」「強烈な喉の痛みが特徴って本当?」このような疑問を持つ方は少なくありません。本記事では、アイシークリニック東京院が、ニンバス株の意味や特徴、症状、予防策について、一般の方にもわかりやすく解説していきます。

ニンバスの意味と名称の由来

ニンバス(Nimbus)という言葉の意味

「ニンバス(Nimbus)」という言葉は、もともとラテン語に由来し、「雨雲」や「嵐雲」を意味します。気象学の分野では、乱層雲(Nimbostratus)や積乱雲(Cumulonimbus)といった用語にも使われている言葉です。また、西洋の宗教美術においては、聖者や神聖な人物の頭上に描かれる「後光」や「光輪」を指す言葉としても知られています。

さらに、ポピュラーカルチャーでは、「ハリー・ポッター」シリーズに登場する魔法のホウキの名前としても有名です。このように、ニンバスという言葉は多様な文脈で使用されてきた歴史があります。

新型コロナ変異株としてのニンバス

新型コロナウイルスの変異株「NB.1.8.1」に対して「ニンバス」という愛称が付けられたのは、この株の正式名称が覚えにくく、一般の人々やメディアが議論する際に不便だったためです。この愛称は、カナダの進化生物学者であるT. Ryan Gregory教授によって提唱されました。

Gregory教授は、著名な変異株に対して記憶に残りやすく、かつ特定の地域への偏見を生まない愛称を付ける慣行を推進してきました。過去にも「クラーケン」「エリス」「ケルベロス」といった神話由来の愛称が変異株に付けられた例があります。これらは公式な科学的分類ではなく、あくまで公衆が理解しやすくするためのニックネームです。

ニンバス株(NB.1.8.1株)とは

正式名称と分類

ニンバスの正式な系統名は「NB.1.8.1」です。この株は、2021年末に最初に確認されたオミクロン変異株から派生した組み換えウイルスです。オミクロン株は、新型コロナウイルスの中でも特に感染力が強く、世界中で主流となった変異株ですが、その後も遺伝子変異を繰り返し、さまざまな派生株が生まれています。

ニンバス株は、特に2024年冬に感染拡大で優勢となったJN.1系統から派生した新しい性質を持つ変異株です。JN.1系統から複数の異なるウイルス系統の遺伝情報が混ざり合ってできたもので、系統樹上ではやや外れた位置に記載されています。

WHO(世界保健機関)による分類

世界保健機関(WHO)は、2025年5月23日にニンバス株を「監視下の変異株(VUM: Variant Under Monitoring)」に分類しました。これは、ウイルスの特性変化や公衆衛生上のリスクを評価するために継続的な監視が必要とされる変異株を指します。

ただし、「監視下の変異株」は「懸念される変異株(VOC)」ほど高いリスクレベルではありません。現時点では、ニンバス株が特別に重症化しやすい、あるいは既存のワクチンや治療法が効かないという明確な証拠は示されていません。

検出時期と流行の経緯

ニンバス株は2025年1月に初めて検出されました。その後、急速に世界各地に広がり、5月中旬までには22カ国以上で確認されています。特にアジア圏での流行が顕著で、日本では2025年5月以降に本格的な検出が始まりました。

国立健康危機管理研究機構の調査によると、2025年7月中旬時点で日本国内の新型コロナ感染者の約40%以上をニンバス株が占めるようになり、夏季には主流株に置き換わったと報告されています。一方、米国ではXFG株という別の変異株が流行の中心となっていますが、アジアではニンバス株が席巻する形となっています。

ニンバス株の特徴と性質

感染力の強さ

ニンバス株の最大の特徴の一つは、従来の変異株よりも感染力が強い点です。東京大学医科学研究所の解析によると、NB.1.8.1はXECやLP.8.1といった他の主流株よりも実効再生産数(1人の感染者が平均して何人に感染させるかを示す値)が高く、伝播力が増している可能性が示されています。

培養実験では、LP.8.1株を上回る感染能力が確認されました。この高い感染力により、2025年夏にかけて全国的な感染拡大が確認されており、特に人の移動が増える時期と重なったことで流行に拍車がかかりました。東京都の報告では、6月以降にニンバス株の割合が急増し、現在では主流株になっています。

免疫逃避能力

ニンバス株の免疫逃避能力(既存の免疫をすり抜ける能力)については、従来のオミクロン系統変異株と同程度であることが報告されています。これは重要なポイントで、過去の感染やワクチン接種によって得られた免疫が、ニンバス株に対しても一定の防御効果を発揮することを意味します。

東京都医学総合研究所によると、ニンバス株はこれまでの免疫を大きく回避する能力は持っておらず、これまでのワクチンや感染で得た免疫が引き続き重症化予防につながるとされています。液性免疫逃避能は従来株と同等で、自然感染やワクチン接種で誘導された中和抗体による抑制は同様に可能であると報告されています。

ウイルスの付着特性

ニンバス株は、喉(咽頭)の粘膜に特に強く付着しやすい性質を持つと考えられています。これが、後述する「強烈な喉の痛み」という特徴的な症状につながっているとされています。ウイルスが咽頭や口腔の粘膜細胞へ直接感染し、重度の炎症を引き起こすことで、激しい咽頭痛が生じるのです。

オミクロン株以降の変異株は、初期のデルタ株などと比べて上気道(鼻や喉)に症状が出やすく、肺まで達して重い肺炎を起こすケースが少ないという特徴があります。ニンバス株もこの傾向を受け継いでいます。

ニンバス株の症状

最大の特徴「強烈な喉の痛み」

ニンバス株による感染の最大の特徴として、多くのメディアや医療機関で報告されているのが「カミソリを飲み込んだような」「ガラスの破片を飲むような」と形容される極めて強い喉の痛みです。

実際の患者からは、「剃刀の刃でのどを切られたような痛み」「水を飲むだけで声を上げてしまうほど痛かった」「つばを飲むのも辛い」といった訴えが報告されています。このような強烈な痛みのため、水分や食事の摂取が困難になるケースもあり、特に子どもや高齢者では脱水症状のリスクが高まります。

ただし、重要なのは、全ての感染者にこのような激しい喉の痛みが現れるわけではないという点です。多くの臨床医が報告しているように、確かに喉の痛みが強い患者もいますが、「少しのどがイガイガする」「風邪をひいたかな?」程度の軽症で済むケースも少なくありません。

その他の主な症状

ニンバス株による感染では、喉の痛み以外にも以下のような症状が現れます。

発熱は主要な症状の一つで、多くの場合38度以上の高熱が出ます。突然の発熱や悪寒を伴うことが多く、インフルエンザに似た急激な発症が特徴です。体温が39度を超えることもあり、解熱剤の使用が必要になることもあります。

咳や鼻水といった上気道症状も一般的です。特に、アレルギー様の鼻水やくしゃみが顕著に現れることがあり、夏風邪や花粉症と間違えやすい症状です。初期段階では軽い喉の違和感や咳、鼻水など、夏風邪に似た症状から始まることが多く、この段階では新型コロナ感染だと気づきにくいことがあります。

全身症状としては、強い倦怠感や関節痛、筋肉痛が挙げられます。「体が重い」「動くのがつらい」といった訴えが多く、日常生活に支障をきたすこともあります。頭痛も比較的よく見られる症状で、頭全体が重く感じる鈍痛から、ズキズキとした痛みまでさまざまです。

消化器症状として、下痢や吐き気を訴える患者もいます。これは以前の変異株でも報告されていた症状ですが、ニンバス株でも一定数の患者に現れています。

なお、初期の新型コロナで特徴的だった味覚障害や嗅覚障害は、オミクロン系統以降は比較的稀になっており、ニンバス株でも起こりにくいとされています。

症状の経過パターン

ニンバス株感染の典型的な経過パターンとしては、まず軽い喉の違和感や咳、鼻水といった症状から始まります。この段階では「ちょっと風邪っぽいかな」程度にしか感じないことも多いでしょう。

しかし、その後1〜2日で症状が急激に悪化し、強烈な喉の痛みや高熱が現れるケースが報告されています。「風邪だと思っていたのに、急にのどの痛みが強まった」という場合は、自己判断で済ませず、医療機関の受診を検討することが大切です。

潜伏期間は2〜5日程度とされており、感染してから発症するまでの期間は比較的短いです。また、発症前後が最も感染力が強い時期とされているため、無症状や軽症の段階でも他者への感染リスクがあることを認識しておく必要があります。

多くの感染者は発熱や強烈な喉の痛みなどの症状を呈しながらも、自宅療養で回復しています。症状の持続期間は個人差がありますが、一般的には数日から1週間程度で改善することが多いです。

重症化リスクと注意が必要な方

一般的な重症化リスク

ニンバス株について、現時点で専門家は「特別に重症化しやすいという明確なデータはない」と評価しています。WHO(世界保健機関)も2025年6月時点でニンバス株を「注目すべき変異株」に指定し、経過を監視していますが、他の株と比べて入院者数や死亡者数が増えている傾向は見られないと報告しています。

2025年8月現在、ニンバス株による重症化はほとんど確認されていません。オミクロン株以降、新型コロナ全体の重症化率や致死率は低下傾向にあり、ニンバス株もその傾向を引き継いでいます。多くの人にとっては、命に関わるような重症化は起こりにくいとされています。

他の症状も風邪に近く、「のどが痛いけど高熱は出ない」「息苦しさもない」という軽症で済むケースが大半です。特にワクチン接種や過去の感染で免疫を持っている人は、重症化を防ぐ効果が期待できます。

高リスク群の方々

ただし、「軽症が多い」と油断するのは危険です。以下のような方々は、依然として注意が必要です。

高齢者、特に65歳以上の方は、若い世代と比較して死亡リスクが大幅に高いと報告されています。加齢に伴う免疫機能の低下や、複数の基礎疾患を持っていることが多いため、感染すると重症化するリスクが高まります。

基礎疾患を持つ方も注意が必要です。具体的には、糖尿病、心臓病、高血圧、呼吸器疾患(喘息、COPD)、腎臓病、肝臓病、悪性腫瘍などの疾患がある方は、新型コロナウイルスに感染した場合、持病の悪化や肺炎などによる重症化のリスクが高くなります。

免疫抑制状態にある方も高リスク群に含まれます。がん治療中、臓器移植後、免疫抑制剤を使用中の方などは、免疫系が弱まっているため、ウイルス感染に対して脆弱になっています。

妊娠中の方も、妊娠期間中は免疫状態が変化し、感染症に対する抵抗力が低下することがあります。特に妊娠後期は注意が必要です。

子どもへの影響

子どもの場合は、体の免疫機能が完全に発達しておらず、大人であれば耐えられる症状でも重く感じることがあります。特に、強烈な喉の痛みによって水分や食事が十分にとれなくなり、脱水症状を引き起こす危険性があることは見過ごせません。

2025年夏頃には10歳未満の子どもの感染が増えているとの報告がありました。ただし、子どもは基礎疾患がなければ重症化しにくい点はこれまでの新型コロナと同様です。子どもは回復が早いことが多いですが、脱水や呼吸のしんどさに注意が必要です。

喉が痛くて水分が取れないと、特に夏の暑さでは熱中症にもなりかねません。「いつもと違う」と感じたら、迷わず医療機関に相談することが重要です。

流行状況と感染経路

日本国内の流行状況

厚生労働省の定点医療機関報告によると、2025年夏に新型コロナウイルスの感染者数が連続して増加しました。2025年第33週(8月11日〜8月17日)の全国約3,000の医療機関から報告された感染者数は、1医療機関あたり6.3人で、9週連続で増加しており、報告総数は22,288人と2万人を超えています。

地域別では、東京都、大阪府、愛知県、福岡県など人口の多い都市部で増加傾向が顕著です。一部地域では病院や高齢者施設での集団感染も報告されています。ただし、2024年の同時期と比べると患者数は相対的に低い水準にあります。

2020〜2022年のような大規模流行はありませんが、地域ごとに「小さな流行を繰り返す」のが最近の特徴です。夏休みやお盆の帰省など人の移動が活発化したこと、初期症状が軽いため気づかずに感染を広げやすいこと、そして感染力の強さが重なったことで、ニンバス株の感染は急速に広がりました。

感染経路

ニンバス株の感染経路は、これまでの新型コロナウイルスと基本的に同じです。

飛沫感染は、感染者が咳やくしゃみ、会話をした際に飛び散る飛沫(しぶき)を、近くにいる人が口や鼻から吸い込むことで感染します。特に至近距離(1〜2m以内)での会話や、マスクなしでの接触が危険です。

エアロゾル感染(空気感染に近い)は、微小な飛沫核が空気中に浮遊し、それを吸い込むことで感染します。特に換気の悪い密閉空間では、長時間にわたって感染性のあるエアロゾルが漂うことがあり、リスクが高まります。

接触感染は、感染者の鼻やのどの分泌物が手や物(ドアノブ、手すり、スイッチなど)に付着し、それに触れた手で自分の目、鼻、口に触れることで感染します。

潜伏期間は2〜5日程度で、発症前後が最も感染しやすいとされています。個人差がありますが、新型コロナウイルス感染症は発症2日前から発症後7〜10日間にわたり感染性ウイルスを、鼻やのどから排出します。発症後3日間は、ウイルスの排出量が非常に多く、5日間経過後は大きく減少するとされています。

予防策と対策

基本的な感染予防策

ニンバス株に対する予防策は、従来の新型コロナウイルスと基本的に変わりません。以下の対策が有効です。

手洗いは最も基本的で効果的な予防法です。石けんと流水で「10秒もみ洗い+15秒すすぎ」を心がけましょう。手の甲、指先、親指、手首までしっかりと洗います。外出先では、アルコール消毒薬を十分量使用することも効果的です。ただし、手が目に見えて汚れているときは、必ず石けんと流水で汚れを落としてから消毒をしましょう。

マスクの着用は、特に混雑した場所や換気の悪い室内、医療機関や高齢者施設を訪問する際に推奨されます。自分が感染している可能性がある場合や、発熱などの症状がある場合は、他者への感染を防ぐためにマスクを着用しましょう。

換気は、室内の空気を入れ替えることでウイルス濃度を下げる重要な対策です。定期的に窓を開けて換気を行いましょう。特にエアコン使用時は空気が循環しにくいため、意識的な換気が必要です。

三密(密閉、密集、密接)の回避も引き続き重要です。人が密集する場所への長時間の滞在を避け、他者との距離を適度に保つよう心がけましょう。

体調管理と早期発見

自分自身の体調管理も重要な予防策の一つです。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、免疫力を維持しましょう。

体調に異変を感じたら、早めに対応することが大切です。発熱やのどの痛み、咳などの症状が現れた場合は、無理せず会社や学校を休み、自宅で安静にしましょう。症状が軽くても、重症化リスクの高い持病のある人や高齢者との接触は控えることが推奨されます。

特に以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

  • 息苦しさがある
  • ぐったりして元気がない
  • 水分がとれない
  • 顔色が悪い
  • けいれんがある
  • 高熱が続く(38度以上が3日以上)
  • 喉の痛みが激しく、水も飲めない

感染拡大防止のための行動

もし新型コロナウイルスに感染した場合、または感染の可能性がある場合は、以下の点に注意しましょう。

厚生労働省は、発症日を0日目として5日間は外出を控えることを推奨しています。これは、特に発症後5日間が他人にうつしてしまうリスクが高いためです。

また、5日目であっても症状が続いていた場合は、熱が下がって、喉の痛みや痰といった症状が軽くなってから丸1日(24時間)が経過するまで、外出を控えることが推奨されています。

2023年5月に新型コロナウイルスは「5類感染症」に位置づけられました。これは、季節性インフルエンザなどと同様の扱いです。5類感染症に移行したことで、行政による感染者への就業制限(出勤停止)はなくなり、出勤を控えるかどうかは個人の判断に委ねられるようになりました。

ただし、これは「感染しても出勤してよい」ということではありません。感染拡大を防ぐため、企業が独自の就業規則やガイドラインを定めている場合もありますので、確認が必要です。

ワクチンと治療法

ワクチンの効果

ニンバス株に対するワクチンの効果について、厚生労働省は、既存の新型コロナワクチンでも重症化予防の効果が期待できると報告しています。これは、ニンバス株が従来株と比べて特別に免疫をすり抜ける能力(免疫逃避能)が強いわけではなく、ワクチンや過去の感染でできた抗体が十分に役立つ可能性が高いという意味です。

2024年秋から日本で使用された新型コロナワクチンの発症予防に関する有効率は、65歳以上で52.5%、60歳以上の入院予防効果も63.2%であったことが報告されています。

2025年から2026年にかけての秋冬シーズンに向けたLP.8.1対応ワクチンが、8月7日に承認されました。このワクチンは、従来のJN.1ワクチンよりもニンバスを含む複数の変異株に対する中和抗体の生成能力に優れていることが、非臨床試験で示されています。

厚生労働省は、2024年度から65歳以上の高齢者と、特定の基礎疾患をもつ60歳から64歳の人を対象に定期接種を実施しています。該当者は重症化を予防するために、毎年秋冬に1回の追加接種を受けることができます。この定期接種はあくまで任意であり、強制や勧奨の規定はありませんが、日本政府は高齢者のワクチン接種を引き続き奨励しています。

治療薬と治療方針

ニンバス株が主要な抗ウイルス治療薬に対して耐性を持つことを示唆するエビデンスはありません。特に、ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド)は、その作用機序がこの系統では大きく変異していないウイルス酵素を標的としているため、有効性を維持すると、WHOでは報告されています。

また、経口治療薬「パキロビッド」などの抗ウイルス薬に対する耐性も確認されておらず、治療方針を変更する必要はないとされています。

症状があまりに辛い方や高齢などの重症化リスクがある方は、抗ウイルス薬を検討してもよいでしょう。ぜひ「放置すれば治るだろう」などと考えず、医療機関に受診することが推奨されます。

自宅での対処法としては、以下のような方法が効果的です。

鎮痛薬の使用について、喉の炎症を抑える作用があるイブプロフェンが特に推奨されますが、アセトアミノフェンも有効です。用法用量を守って使用しましょう。

水分補給は非常に重要です。喉の痛みで飲みにくい場合は、冷たい飲み物やアイスクリーム、ゼリーなど、のど越しの良いものを少しずつ摂取しましょう。脱水症状を防ぐため、経口補水液の利用も効果的です。

室内の湿度を適切に保つことも喉の乾燥を防ぎ、痛みを和らげる助けになります。加湿器を使用したり、濡れタオルを室内に干すなどの工夫が有効です。

うがいも症状の緩和に役立ちます。塩水や市販のうがい薬を使用して、定期的にうがいをすることで、喉の炎症を軽減できます。

ただし、これらは一時的な緩和策であり、根本的な治療ではありません。症状が続く場合は必ず医療機関を受診してください。

他の感染症との見分け方

インフルエンザとの違い

ニンバス株による感染症状は、季節性インフルエンザと似ている部分が多くあります。両方とも発熱、咳、倦怠感、関節痛などの全身症状が現れます。

しかし、いくつかの違いがあります。ニンバス株では、ガラスを飲むような激しい喉の痛みが初期から現れることが多く、アレルギー様の鼻水や咳を伴うことがあります。一方、インフルエンザは、38度以上の高熱、強い関節痛・筋肉痛など全身症状が急激に現れるのが特徴で、喉の痛みは比較的軽度なことが多いです。

夏風邪との違い

夏風邪は、喉のイガイガ感、鼻水など局所的な症状から始まり、発熱は軽度なことが多いです。ニンバス株の感染初期は夏風邪に似た症状を示すこともありますが、その後急激に症状が悪化し、強烈な喉の痛みが現れる点が異なります。

ただし、自己判断は難しいため、確定診断には医療機関での検査が不可欠です。新型コロナウイルスの抗原検査やPCR検査を受けることで、正確な診断が可能になります。

後遺症(罹患後症状)について

一般的な新型コロナの後遺症

新型コロナウイルス感染症の後遺症(罹患後症状、Long COVID)は、感染から回復した後も続く、または新たに出現する症状のことを指します。一般的に、急性期の症状が消失した後も、4週間以上にわたって症状が続く場合に「罹患後症状」と呼ばれます。

代表的な後遺症としては、倦怠感、息切れ、集中力低下(ブレインフォグ)、嗅覚・味覚障害、頭痛、睡眠障害、関節痛などがあります。これらの症状は数ヶ月から、場合によっては1年以上続くこともあります。

ニンバス株特有の後遺症

現時点の報告では、ニンバス株特有の後遺症は確認されていないと考えられています。コロナといえば、嗅覚障害・味覚障害・ブレインフォグといった後遺症が注目されていましたが、ニンバス株において特別に新しい後遺症が報告されているわけではありません。

ただし、月日が経つことで、新たに報告される後遺症が出てくる可能性があるため、いずれにせよ感染には注意が必要です。喉の強い痛みが長期間続く可能性については、今後の経過観察が必要とされています。

今後の見通しと注意点

流行の見通し

過去の新型コロナの流行パターンを見ると、新型コロナは「夏と冬の年2回流行するパターン」を繰り返しており、夏の流行は2025年も例外ではありませんでした。

新型コロナの流行は12週周期で推移する傾向があるとされ、専門家は「9月上旬ごろまでは増加傾向が続く」と予測していました。過去の感染者数の推移をみると、夏場の流行は9月初旬〜中旬ごろまで続いています。ニンバス株の流行もしばらく続く可能性があると考えられています。

社会との共存

新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類感染症」に引き下げられてから、街の風景は一変しました。かつてのようにマスクを着用せずに人々が行き交う姿が日常の光景となり、かつて社会を覆った緊張感はすっかり薄れつつあります。海外旅行や大規模イベントも復活し、感染症との共存が社会に根づいたかのように見えます。

しかし、新型コロナウイルスは依然として変異を繰り返しており、完全な収束には至っていません。現在の状況は、社会の”慣れ”と新株の登場が交差する局面にあるといえます。

個人でできること

手洗い・換気・場面に応じたマスクというシンプルな基本を、無理のない範囲で続けていくことが重要です。体調の悪い時は無理せず外出や仕事を控え、早めに医療機関を受診することが推奨されます。

一人ひとりが予防や適切な治療を受けることで、感染拡大を防ぐことができます。ご自身がリスクが低い場合でも、ご家族や周囲の方に感染し重症化させてしまうこともあります。

各自治体から出されている情報もこまめに確認し、地域の感染状況に応じた適切な行動を心がけましょう。

まとめ

ニンバス(NB.1.8.1株)は、2025年夏に日本で主流株となった新型コロナウイルスの変異株です。その名称はラテン語で「雨雲」を意味する言葉に由来し、覚えやすい愛称として広く使われています。

この変異株の主な特徴は以下の通りです。

オミクロン株から派生した組み換えウイルスで、WHO(世界保健機関)が監視下の変異株に指定しています。従来株よりも感染力が強く、急速に主流株に置き換わりました。免疫逃避能力は従来株と同程度で、既存のワクチンや過去の感染による免疫が一定の効果を持ちます。

症状としては、「カミソリを飲み込んだような」強烈な喉の痛みが特徴とされていますが、全ての感染者に現れるわけではありません。その他、発熱、咳、鼻水、倦怠感、関節痛などの症状が見られます。現時点では特別に重症化しやすいという明確なデータはなく、多くは軽症で回復します。ただし、高齢者や基礎疾患のある方は引き続き注意が必要です。

予防策としては、手洗い、マスクの適切な使用、換気、三密の回避など、基本的な感染対策が有効です。体調不良時は無理せず休養し、症状が強い場合や長引く場合は早めに医療機関を受診しましょう。

新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら存在し続けています。過度に恐れる必要はありませんが、基本的な予防策を継続し、自分と周囲の人々の健康を守る意識を持ち続けることが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. ニンバス株とは何ですか?

A1. オミクロン株の派生型「NB.1.8.1」で、日本国内で2025年夏に流行が進んでいる株です。ニンバス(Nimbus)という愛称は、ラテン語で「雨雲」を意味する言葉に由来します。

Q2. 症状はこれまでの株と違いますか?

A2. 発熱、咳、倦怠感、喉の痛みなどが一般的です。特に「カミソリを飲み込んだような強烈な喉の痛み」が報告されていますが、全ての感染者に現れるわけではありません。

Q3. 重症化しやすいのですか?

A3. 現時点では、特別に重症化しやすいという明確なデータはありません。ただし、高齢者や基礎疾患のある方は引き続き注意が必要です。

Q4. 感染対策は従来と同じですか?

A4. はい。手洗い、マスク、換気、体調不良時の接触回避など、基本的な対策が有効です。

Q5. ワクチンは効きますか?

A5. 既存のワクチンでも重症化予防の効果が期待できます。特に高齢者や基礎疾患のある方には、定期的な追加接種が推奨されています。

Q6. 感染したらどうすればいいですか?

A6. 厚生労働省は、発症日を0日目として5日間は外出を控えることを推奨しています。症状が強い場合や長引く場合は、医療機関を受診してください。

Q7. 後遺症はありますか?

A7. 現時点では、ニンバス株特有の後遺症は確認されていません。ただし、一般的な新型コロナの後遺症(倦怠感、ブレインフォグなど)には注意が必要です。

Q8. 体調不良時に受診先が分からない場合は?

A8. 厚生労働省の「医療情報ネット ナビイ」などで休日・夜間対応の医療機関を検索できます。

参考文献

本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました。

  1. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」
  2. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況)2025年」
  3. 国立感染症研究所「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報」
  4. 東京都医学総合研究所「新型コロナウイルス変異株情報」
  5. 日本経済新聞「新型コロナ、変異ウイルス『ニンバス』流行拡大 強烈な喉の痛み」
  6. WIRED.jp「日本でも感染拡大、新型コロナウイルスの新たな変異株『ニンバス』について知っておくべきこと」
  7. 丸石製薬株式会社「感染対策コンシェルジュ」
  8. 食環境衛生研究所「新型コロナ『ニンバス』が流行 感染したら何日休む?出勤停止?」

本記事は2025年11月時点の情報に基づいて作成されています。新型コロナウイルスに関する情報は日々更新されていますので、最新の情報については厚生労働省や各自治体の公式サイトをご確認ください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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