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鏡を見てニキビを発見したとき、「早く治したい」という思いから、つい指で潰してしまいたくなる気持ちは多くの方が経験するものです。実際に、ニキビ患者さんを対象としたアンケート調査では、約9割の方が「ニキビをひっかいている」、さらに約6割の方が「洗顔時にニキビを潰している」と回答しています。膿を出せば少しスッキリした気分になるかもしれませんが、自分でニキビを潰す行為は、ニキビの悪化やニキビ跡の原因となる危険性があります。

本記事では、ニキビを自分で潰すことのリスクや、皮膚科で行われる正しい治療法、そしてニキビ跡を残さないための予防策について、医学的な観点から詳しく解説します。ニキビにお悩みの方が適切なケアと治療を選択できるよう、最新のガイドラインに基づいた情報をお伝えします。


目次

  1. ニキビとは何か?発症のメカニズムを理解する
  2. ニキビの種類と進行段階
  3. ニキビを自分で潰してはいけない理由
  4. 自分で潰すとどうなる?起こりうるリスク
  5. 皮膚科で行う面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)とは
  6. 自分で潰すのと皮膚科での治療は何が違う?
  7. ニキビ跡の種類と特徴
  8. ニキビ跡を残さないための予防と対策
  9. 皮膚科で受けられるニキビ治療の種類
  10. 日常生活でできるニキビ予防のポイント
  11. まとめ:ニキビは潰さず、早めに皮膚科へ相談を

1. ニキビとは何か?発症のメカニズムを理解する

ニキビは医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれる皮膚の慢性炎症性疾患です。日本人の約90%以上が一生のうちに経験するとされており、思春期から青年期にかけて特に多く見られますが、成人になっても症状が続くケースも少なくありません。

ニキビが発症する4つの要因

ニキビの発症には、主に以下の4つの要因が複雑に絡み合っています。

1つ目は、皮脂の過剰分泌です。思春期になると性ホルモンの分泌が活発になり、皮脂腺が刺激されて皮脂の分泌量が増加します。女性の場合は月経周期によるホルモンバランスの変動も影響します。また、ストレスや睡眠不足、脂質の多い食事なども皮脂分泌を促進する要因となります。

2つ目は、毛穴の詰まり(角化異常)です。通常、皮膚は約28日のサイクルで古い角質が剥がれ落ち、新しい皮膚細胞に生まれ変わる「ターンオーバー」を繰り返しています。しかし、ホルモンバランスの乱れやストレス、乾燥などによってターンオーバーが乱れると、本来剥がれ落ちるはずの古い角質が毛穴の入り口に蓄積し、毛穴を塞いでしまいます。

3つ目は、アクネ菌の増殖です。アクネ菌(Cutibacterium acnes)は私たちの皮膚に常在している細菌で、通常は肌を弱酸性に保ち、病原菌から皮膚を守る役割を果たしています。しかし、毛穴が詰まって酸素の少ない環境になると、皮脂を栄養源としてアクネ菌が過剰に増殖し始めます。

4つ目は、炎症反応です。増殖したアクネ菌が産生する酵素(リパーゼ)によって皮脂が分解されると、遊離脂肪酸という物質が作られます。この遊離脂肪酸が周囲の組織に炎症を引き起こし、赤く腫れたニキビとなります。また、アクネ菌の存在を免疫細胞が異物として認識し、炎症性サイトカインを放出することで炎症がさらに強くなります。

ニキビができやすい部位

ニキビは皮脂腺が発達している部位に好発します。顔面では額、鼻、頬、顎などのいわゆるTゾーンやUゾーンに多く見られます。これらの部位には「脂腺性毛包」と呼ばれる、毛が細く皮脂が詰まりやすい毛包が多く存在しているためです。また、前胸部や上背部にもニキビができやすく、体のニキビに悩む方も少なくありません。


2. ニキビの種類と進行段階

ニキビは「白ニキビ」から「黒ニキビ」、「赤ニキビ」、そして「黄ニキビ」へと進行していきます。各段階のニキビには特徴があり、適した治療法も異なります。

白ニキビ(閉鎖面皰)

白ニキビは、毛穴の入り口が閉じた状態で、皮脂や古い角質が毛穴の中に溜まっている初期段階のニキビです。医学的には「閉鎖面皰(コメド)」と呼ばれます。肌の表面に小さく白っぽい膨らみとして現れ、触るとザラザラとした手触りがあります。この段階ではまだ炎症は起きておらず、痛みもほとんどありません。白ニキビの段階で適切なケアを行えば、炎症を起こさずに改善させることが可能です。

黒ニキビ(開放面皰)

黒ニキビは、毛穴が開いた状態で皮脂や角質が詰まっているニキビです。「開放面皰」または「ブラックコメド」とも呼ばれます。毛穴に溜まった皮脂の表面が空気に触れて酸化し、黒く変色して見えるのが特徴です。白ニキビと同様に、この段階ではまだ炎症は起きていません。しかし、放置するとアクネ菌が増殖し、炎症を起こして赤ニキビへと悪化する可能性があります。

赤ニキビ(紅色丘疹)

赤ニキビは、白ニキビや黒ニキビにアクネ菌が増殖し、炎症を起こした状態のニキビです。医学的には「紅色丘疹」と呼ばれます。皮膚が赤く腫れ上がり、痛みや熱感を伴うことがあります。炎症が強くなると周囲の組織にもダメージが及び、ニキビ跡として残りやすくなります。赤ニキビの段階では、炎症を抑える治療を急ぐことが重要です。

黄ニキビ(膿疱)

黄ニキビは、赤ニキビがさらに悪化し、毛穴の中に膿が溜まって膨れ上がった状態のニキビです。「膿疱」とも呼ばれ、ニキビの最終段階にあたります。黄白色の膿が透けて見え、触ると痛みがあります。この段階まで悪化すると、真皮層にまで炎症が及んでいる可能性が高く、クレーター状の凹みや色素沈着などのニキビ跡が残りやすくなります。


3. ニキビを自分で潰してはいけない理由

「ニキビは潰した方が早く治る」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。確かに、膿を出し切ることでニキビの治りが早くなる可能性はあります。しかし、これはあくまでも適切な医療環境と専門的な技術があって初めて成立する話であり、自分で潰すことには多くのリスクが伴います。

衛生面の問題

私たちが日常生活で使う指先には、目に見えない様々な雑菌が付着しています。一見きれいに見えても、黄色ブドウ球菌をはじめとする病原菌が存在している可能性があります。ニキビを指で潰すと、これらの雑菌がニキビの傷口から侵入し、二次感染を引き起こす恐れがあります。感染が起こると炎症がさらに悪化し、元のニキビよりも大きく腫れ上がってしまうこともあります。

皮膚へのダメージ

ニキビを自分で潰そうとすると、必要以上に力が入ってしまい、周囲の正常な皮膚組織まで傷つけてしまうことがあります。皮膚の表面だけでなく、真皮層という深い部分にまでダメージが及ぶと、コラーゲンやエラスチンといった肌の弾力を保つ成分に影響が生じ、肌の修復能力が低下します。これがニキビ跡が残りやすくなる原因の一つです。

適切な判断ができない

どのニキビを潰してよいのか、どのタイミングで潰すべきなのかを一般の方が正確に判断することは非常に困難です。炎症が活発な赤ニキビや、皮膚の深い部分に炎症があるしこりニキビなどは、潰すことで症状が悪化する可能性が高く、専門家でなければ見極めることができません。


4. 自分で潰すとどうなる?起こりうるリスク

ニキビを自分で潰した場合に起こりうる具体的なリスクについて、詳しく見ていきましょう。

ニキビの悪化

ニキビを指で潰すと、中の膿や皮脂が飛び出すだけでなく、その周りの健康な肌まで傷つけてしまいます。その傷口は新たな細菌の温床となり、さらなる炎症を引き起こす可能性があります。軽症だった白ニキビが炎症を起こして赤ニキビに悪化したり、赤ニキビや黄ニキビの炎症がさらにひどくなったりして、ニキビが長引く原因となります。

色素沈着

ニキビの炎症によって皮膚がダメージを受けると、メラノサイト(色素細胞)が活性化してメラニン色素が大量に生成されます。これが皮膚に沈着すると、ニキビが治った後も紫や暗い赤、茶色などの色素沈着として残ってしまいます。特に、自分で潰して炎症を長引かせた場合は、色素沈着が起こりやすくなります。

クレーター状のニキビ跡

ニキビの炎症が真皮層にまで達すると、皮膚の組織が破壊されてしまいます。炎症が治まった後、破壊された組織は瘢痕組織(硬い繊維組織)に置き換わり、皮膚が凹んだ状態で治癒します。これがいわゆる「クレーター」と呼ばれるニキビ跡です。クレーター状のニキビ跡は自然回復が非常に難しく、一度できてしまうと一生残る場合もあります。

ケロイド・肥厚性瘢痕

体質によっては、ニキビ跡が赤く盛り上がった状態(ケロイドや肥厚性瘢痕)になることがあります。特にフェイスラインや背中などにできやすく、見た目にも目立ちやすいため、大きな悩みの種となります。自分でニキビを潰して組織にダメージを与えることで、このような瘢痕形成のリスクが高まります。

炎症の拡大

ニキビを潰す際に、膿や皮脂が毛穴の外だけでなく、皮膚の内側(真皮側)にも押し出されてしまうことがあります。これにより、炎症が周囲に拡大し、元のニキビの周辺にも新たなニキビができてしまうことがあります。一つのニキビを潰したつもりが、複数のニキビに増えてしまうという最悪の事態を招くこともあるのです。


5. 皮膚科で行う面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)とは

皮膚科では、ニキビの中に詰まっている皮脂や膿を押し出す「面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)」という治療が行われています。自分でニキビを潰すのはNGですが、皮膚科での面皰圧出は適切な治療法として広く行われており、日本皮膚科学会のガイドラインにも記載されています。

面皰圧出の手順

面皰圧出は以下のような手順で行われます。

まず、患部の消毒を行います。治療部位を清潔にし、細菌感染のリスクを最小限に抑えます。

次に、医療用の細い針やレーザーを使って、ニキビの先端に非常に小さな穴を開けます。この穴は最小限の大きさに抑えられるため、周囲の皮膚へのダメージが少なく済みます。

そして、コメドプッシャーなどの専用器具を使用して、毛穴の中に詰まっている皮脂や膿、古い角質を衛生的に押し出します。専門的な技術により、適切な力加減で内容物を排出するため、周囲の組織を傷つけることなく処置が行えます。

面皰圧出の効果

面皰圧出は物理的にニキビの原因物質を取り除くため、治療効果がすぐに現れるというメリットがあります。毛穴の中の皮脂や膿を除去することで、炎症の原因となるアクネ菌のエサがなくなり、炎症の鎮静化が促されます。また、内部の圧力が減少することで、痛みの改善も期待できます。

面皰圧出の対象となるニキビ

面皰圧出は基本的にどのようなニキビにも適用できますが、特に以下のような場合に効果的です。

白ニキビや黒ニキビ(面皰)の段階では、炎症が起こる前に皮脂や角質を取り除くことで、赤ニキビへの進行を防ぐことができます。また、膿が溜まった黄ニキビでは、膿を排出することで炎症を速やかに鎮静化させることができます。

一方、炎症が活発な赤ニキビや、皮膚の深い部分にしこりがあるタイプのニキビは、面皰圧出だけでは十分な効果が得られないことがあり、外用薬や内服薬による治療が優先されます。

保険適用について

面皰圧出は保険診療で受けることができます。健康保険が適用されるため、患者さんの負担は3割程度となります。初診料や再診料を含めても、一回の受診で1,000円から3,000円程度で治療を受けられることが多いでしょう。


6. 自分で潰すのと皮膚科での治療は何が違う?

「面皰圧出もニキビを潰す治療なら、自分でやっても同じではないか」と思われる方もいるかもしれません。しかし、自分で潰すのと皮膚科での治療には、いくつかの重要な違いがあります。

衛生環境の違い

皮膚科での処置は、消毒された清潔な環境で行われます。使用する器具もすべて滅菌されており、感染のリスクが最小限に抑えられています。一方、自宅で自分の指や針を使って潰す場合、どれだけ気をつけても雑菌の侵入を完全に防ぐことは困難です。

開ける穴の大きさの違い

皮膚科では医療用の非常に細い針やレーザーを使用して、最小限の大きさの穴を開けます。穴が小さければ小さいほど、皮膚へのダメージは少なく、傷跡も残りにくくなります。自分で針を使って穴を開けようとすると、穴が大きくなりすぎたり、適切な場所に穴を開けられなかったりして、余計な傷を作ってしまう恐れがあります。

処置の適切さの判断

皮膚科医は、そのニキビが面皰圧出に適しているかどうか、今がベストなタイミングかどうかを専門的な知識と経験に基づいて判断します。潰すべきでないニキビを無理に潰そうとすると、かえって症状を悪化させてしまいます。また、ニキビに見えて実は別の皮膚疾患だったという場合もあり、専門家の診断は非常に重要です。

力加減の違い

皮膚科医は専用の器具を使い、適切な力加減で内容物を押し出します。強すぎる力をかけると周囲の組織を傷つけたり、内容物が皮膚の深い部分に押し込まれたりしてしまいます。一般の方が自分で行う場合、この力加減を適切にコントロールすることは非常に難しいのです。

追加治療の提案

皮膚科を受診することで、面皰圧出だけでなく、外用薬や内服薬の処方、生活習慣のアドバイスなど、ニキビを根本から改善するための総合的な治療を受けることができます。自分で潰すだけでは、ニキビができる根本原因は解決されないため、繰り返しニキビができ続けることになります。


7. ニキビ跡の種類と特徴

ニキビを不適切に潰したり、炎症を放置したりすると、ニキビ跡として残ってしまうことがあります。ニキビ跡には主に4つの種類があり、それぞれ特徴と治療のアプローチが異なります。

赤みが残るニキビ跡

ニキビの炎症によって毛細血管が拡張し、赤みが残った状態のニキビ跡です。炎症後紅斑とも呼ばれます。ニキビ自体は治っていても、拡張した血管が元に戻るまでには時間がかかるため、赤みがしばらく残り続けます。比較的軽度のニキビ跡で、時間の経過とともに自然に薄くなっていくことが多いですが、数か月から1年程度かかることもあります。

色素沈着によるニキビ跡

ニキビの炎症によってメラノサイトが活性化し、メラニン色素が過剰に生成されて皮膚に沈着した状態です。茶色や暗褐色のシミのように見えます。紫外線を浴びると色素沈着が悪化する恐れがあるため、日焼け止めなどのUV対策が重要です。肌のターンオーバーによって徐々に改善していきますが、半年から1年以上かかることもあります。

クレーター状のニキビ跡(萎縮性瘢痕)

ニキビの炎症が真皮層にまで達し、皮膚の組織が破壊されて凹んだ状態で治癒したニキビ跡です。いわゆる「クレーター」と呼ばれ、ニキビ跡の中でも最も治療が困難なタイプです。クレーターには形状によって3つのタイプがあります。

アイスピック型は、開口部が小さく、アイスピックで刺したように奥に深いタイプです。真皮を超えて深く凹んでおり、最も治療が難しいとされています。

ボックスカー型は、底が平らで辺縁がはっきりした四角い形状のクレーターです。浅いものから深いものまであり、比較的治療しやすいタイプです。

ローリング型は、辺縁が緩やかで波打つような凹みです。真皮の下の組織が癒着して皮膚が引っ張られることで生じます。

ケロイド・肥厚性瘢痕

ニキビ跡が赤く盛り上がった状態です。過剰なコラーゲン修復反応によって組織が過度に増殖し、皮膚が隆起します。ケロイド体質の方に起こりやすく、フェイスラインや背中、胸などにできやすい傾向があります。


8. ニキビ跡を残さないための予防と対策

ニキビ跡は一度できてしまうと治療が難しいため、予防が非常に重要です。ニキビ跡を残さないために心がけたいポイントをご紹介します。

ニキビを自分で触らない、潰さない

本記事でお伝えしてきた通り、ニキビを自分で潰すことはニキビ跡の大きな原因となります。ニキビができると気になって触りたくなりますが、触ることで雑菌が付着したり、刺激によって炎症が悪化したりする恐れがあります。無意識にニキビを触ってしまう癖がある方は、爪を短く切っておくなどの対策を心がけましょう。

早期に皮膚科を受診する

ニキビは軽症のうちに治療を始めることで、炎症を最小限に抑え、ニキビ跡を予防することができます。「ニキビくらいで皮膚科に行くのは大げさ」と思う方もいるかもしれませんが、ニキビは尋常性ざ瘡という皮膚疾患であり、適切な治療によって効果的に改善できます。特に赤ニキビや黄ニキビができた場合は、早めに受診することをお勧めします。

炎症を長引かせない

ニキビの炎症が長引くほど、真皮へのダメージが大きくなり、ニキビ跡が残りやすくなります。処方された薬を指示通りに使用し、炎症を速やかに鎮静化させることが大切です。また、炎症を悪化させる要因(不規則な生活、ストレス、偏った食事など)を見直すことも重要です。

紫外線対策を行う

紫外線はメラニン色素の生成を促進し、色素沈着を悪化させます。また、紫外線によるダメージは肌の修復力を低下させ、ニキビ跡が残りやすい状態を作ります。日焼け止めを毎日塗る習慣をつけ、帽子や日傘なども活用して紫外線対策を行いましょう。

適切なスキンケアを継続する

正しいスキンケアを継続することで、ニキビのできにくい肌環境を整えることができます。洗顔は朝晩2回、泡立てた洗顔料で優しく洗い、すすぎ残しがないように丁寧にすすぎます。また、保湿をしっかり行い、肌のバリア機能を保つことも大切です。油分の多いスキンケア製品は毛穴を詰まらせる可能性があるため、「ノンコメドジェニック」と表記された製品を選ぶとよいでしょう。


9. 皮膚科で受けられるニキビ治療の種類

皮膚科で受けられるニキビ治療には、保険診療で受けられるものと自費診療のものがあります。それぞれの治療法について詳しくご紹介します。

保険診療で受けられる治療

外用薬(塗り薬)は、ニキビ治療の基本となる治療法です。現在のガイドラインでは、アダパレンや過酸化ベンゾイルを含む外用薬が推奨されています。アダパレンは毛穴の詰まりを改善する作用があり、白ニキビや黒ニキビの段階から使用できます。過酸化ベンゾイルには殺菌作用と角質剥離作用があり、アクネ菌を減少させて炎症を抑える効果があります。また、両者を配合した合剤も使用されています。炎症のある赤ニキビや黄ニキビには、抗菌薬の外用薬(クリンダマイシン、ナジフロキサシンなど)も併用されます。

内服薬(飲み薬)は、炎症が強い場合や広範囲にニキビがある場合に処方されます。抗菌薬の内服薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)はアクネ菌の増殖を抑え、炎症を軽減します。ただし、長期間の使用は耐性菌の出現リスクがあるため、通常は2〜3か月を目安に使用されます。また、体質やホルモンバランスを整える目的で漢方薬が処方されることもあります。荊芥連翹湯、十味敗毒湯、清上防風湯などがニキビ治療によく用いられる漢方薬です。

面皰圧出は、前述の通り、ニキビの中に詰まった皮脂や膿を専用器具で押し出す治療法です。保険適用で受けることができ、薬物療法と併用することでより効果的な治療が期待できます。

自費診療で受けられる治療

ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を肌に塗布し、古い角質を剥離させる治療法です。毛穴の詰まりを改善し、肌のターンオーバーを促進する効果があります。グリコール酸やサリチル酸マクロゴールなどが使用されます。通常2〜4週間おきに複数回の施術を行います。

レーザー治療には様々な種類があり、ニキビの炎症を抑えるものやニキビ跡を改善するものがあります。フラクショナルレーザーは、皮膚に微細な穴を開けてコラーゲンの再生を促し、クレーター状のニキビ跡の改善に用いられます。

イオン導入やエレクトロポレーションは、ビタミンCなどの有効成分を肌の深部に浸透させる治療法です。抗酸化作用や皮脂分泌抑制作用により、ニキビの改善やニキビ跡の予防に効果があります。

光治療(IPL)は、特殊な光を照射することでアクネ菌を殺菌し、炎症を抑える効果があります。また、ニキビ跡の赤みや色素沈着の改善にも用いられます。


10. 日常生活でできるニキビ予防のポイント

ニキビを予防し、できてしまったニキビを悪化させないために、日常生活で心がけたいポイントをご紹介します。

正しい洗顔を心がける

洗顔はニキビケアの基本ですが、やり方を間違えるとかえって逆効果になることがあります。洗顔料をしっかり泡立て、泡で優しく洗うようにしましょう。ゴシゴシこすったり、熱いお湯で洗ったりすると、肌への刺激になったり、必要な皮脂まで落としてしまったりします。すすぎは人肌程度のぬるま湯で丁寧に行い、洗顔料が残らないようにしましょう。洗顔は朝晩2回が基本ですが、洗いすぎも禁物です。過度な洗顔は肌の乾燥を招き、かえって皮脂分泌を促進してしまうことがあります。

適切な保湿を行う

肌が乾燥すると、肌を守ろうとして皮脂が過剰に分泌されるようになります。また、乾燥によって皮膚のバリア機能が低下すると、外部刺激に敏感になってニキビができやすくなります。洗顔後は化粧水や乳液で保湿を行い、肌の水分と油分のバランスを整えましょう。油分の多いクリームやオイルは毛穴を詰まらせる可能性があるため、「ノンコメドジェニックテスト済み」や「ハイポコメドジェニックテスト済み」と記載された製品を選ぶのがおすすめです。

メイクの注意点

ファンデーションや下地などのメイク用品は毛穴を塞ぎやすいため、帰宅後はできるだけ早くメイクオフすることが大切です。クレンジングは肌に優しいタイプを選び、ゴシゴシこすらずに丁寧に落としましょう。ニキビができている部分には、できるだけメイクを控えるか、薄く仕上げるようにしましょう。コンシーラーで隠したくなる気持ちはわかりますが、厚塗りは毛穴を詰まらせてニキビを悪化させる原因になります。

生活習慣の見直し

睡眠不足やストレス、不規則な生活は、ホルモンバランスや自律神経の乱れを引き起こし、ニキビの原因となります。できるだけ規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとるようにしましょう。睡眠中には成長ホルモンが分泌され、肌の新陳代謝が促進されます。ストレスは皮脂分泌を促進する男性ホルモンの分泌を増やすため、適度なリフレッシュやストレス解消法を見つけることも大切です。

食事のバランス

偏った食生活もニキビの原因になります。糖分や脂肪分の多い食事は皮脂分泌を促進し、毛穴の詰まりにつながります。ビタミンB群やビタミンCは皮脂分泌のコントロールや肌の新陳代謝に関わる重要な栄養素です。緑黄色野菜や果物、魚などをバランスよく摂取するよう心がけましょう。また、便秘もニキビの悪化因子となることがあるため、食物繊維を十分に摂取して腸内環境を整えることも大切です。

肌への刺激を避ける

頬杖をつく癖がある方や、睡眠中に横向きやうつ伏せで寝る方は、肌に雑菌が付着しやすくなります。また、髪の毛が常に顔に触れているヘアスタイルもニキビの刺激になります。できるだけ肌への接触を減らし、枕カバーやシーツなどの寝具は清潔に保つようにしましょう。マスクを長時間着用する場合も、肌への刺激や蒸れがニキビの原因になることがあるため、通気性の良い素材を選んだり、こまめに取り替えたりする工夫が必要です。


11. まとめ:ニキビは潰さず、早めに皮膚科へ相談を

ニキビを自分で潰すことは、細菌感染のリスクや皮膚へのダメージによって、ニキビの悪化やニキビ跡の原因となります。「早く治したい」という気持ちから潰してしまいたくなりますが、自己流のケアはかえって事態を悪化させる可能性が高いのです。

皮膚科では、面皰圧出という専門的な処置により、衛生的かつ安全にニキビの内容物を取り除くことができます。また、外用薬や内服薬による治療、生活習慣のアドバイスなど、ニキビを根本から改善するための総合的なケアを受けることができます。

ニキビは「青春のシンボル」として軽視されがちですが、適切な治療を受けずに放置すると、ニキビ跡として一生残ってしまうこともあります。特に、炎症の強い赤ニキビや膿を持った黄ニキビができた場合は、できるだけ早く皮膚科を受診することをお勧めします。

アイシークリニック東京院では、ニキビでお悩みの患者様に対して、一人ひとりの肌の状態や症状に合わせた最適な治療をご提案しています。軽度のニキビから重度のニキビ跡まで、幅広い症状に対応しております。ニキビのことでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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