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口周りにできるニキビは、多くの方が経験するお悩みの一つです。顔の中でも目立ちやすい部位であり、メイクで隠しにくく、食事や会話のたびに気になってしまうという方も少なくありません。実は口周りは、皮膚の構造やホルモンの影響を受けやすい特性から、ニキビが発生しやすく、また繰り返しやすい部位として知られています。思春期のニキビとは異なり、大人になってから口周りにニキビができる場合には、ストレスや生活習慣、胃腸の不調など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることが多いのが特徴です。本記事では、口周りニキビができる原因から、皮膚科での治療法、日常生活でできるセルフケアまで、専門的な視点から詳しく解説いたします。口周りのニキビにお悩みの方が、適切な対処法を見つけ、健やかな肌を取り戻すための一助となれば幸いです。


目次

  1. 口周りニキビとは
  2. 口周りの皮膚の特徴
  3. 口周りニキビができる主な原因
  4. ホルモンバランスと口周りニキビの関係
  5. 胃腸の不調と口周りニキビ
  6. マスクや摩擦による影響
  7. 口周りニキビの種類と進行段階
  8. 皮膚科での口周りニキビ治療
  9. 保険診療で受けられる治療
  10. 自由診療による治療オプション
  11. 日常生活でできるセルフケア
  12. 口周りニキビを防ぐ生活習慣
  13. 口周りニキビと間違えやすい疾患
  14. よくある質問
  15. まとめ

口周りニキビとは

ニキビは医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれる皮膚疾患です。日本人の約90%以上が生涯のうちに経験するとされており、非常に身近な肌トラブルといえます。ニキビは毛穴に皮脂や古い角質が詰まり、そこにアクネ菌が増殖して炎症を起こすことで発生します。

口周りのニキビは、顔の中でも「Uゾーン」と呼ばれる部位に含まれ、あごや頬の下部とともに大人ニキビができやすい代表的な場所として知られています。思春期に多いおでこや鼻などの「Tゾーン」のニキビとは発生メカニズムが異なり、ホルモンバランスの乱れやストレス、生活習慣の影響を強く受けやすいという特徴があります。

口周りのニキビは、一度できると治りにくく、同じ場所に繰り返しできやすい傾向があります。また、ニキビ痕(あと)として残りやすい部位でもあるため、早期からの適切な治療とケアが重要となります。あるアンケート調査では、ニキビ痕がある人のうち、口周りにニキビ痕があると回答した方は36%にのぼり、頬に次いで多い結果となっています。

口周りの皮膚の特徴

口周りにニキビができやすい理由を理解するためには、この部位の皮膚構造を知ることが重要です。口周りの皮膚には、ニキビを発生させやすいいくつかの特徴があります。

皮膚が薄く乾燥しやすい

口周りは顔の中でも特に皮膚が薄い部位です。皮膚が薄いということは、外部からの刺激に対してバリア機能が弱く、ダメージを受けやすいことを意味します。また、頬などと比較してスキンケアがおろそかになりがちな部位でもあり、保湿が不十分になりやすい傾向があります。

皮膚が乾燥すると、肌は失われた潤いを補おうとして皮脂を過剰に分泌します。この過剰な皮脂が毛穴に詰まることで、ニキビの原因となる「コメド(面皰)」が形成されやすくなります。つまり、乾燥がニキビの引き金になるという、一見矛盾するような現象が口周りでは起こりやすいのです。

汗腺が少なく皮脂腺が多い

口周りやあごを含むUゾーンは、汗腺の数が少なく、皮脂腺が多い部位という特徴を持っています。汗が少ないということは、皮膚表面の水分蒸発による自然な保湿効果が得られにくいことを意味します。一方で皮脂腺が多いため、皮脂の分泌量は多くなりやすい傾向があります。

この「乾燥しやすいのに皮脂は多い」という矛盾した状態が、口周りにニキビができやすい肌環境を作り出しています。さらに、過剰に分泌された皮脂が毛穴に詰まると、アクネ菌の増殖を促し、炎症を起こしやすくなります。

刺激を受けやすい部位

口周りは日常生活において、さまざまな刺激を受けやすい部位です。会話や食事の際によく動かす場所であり、無意識のうちに手で触ってしまうことも多くあります。食べ物の汚れが付着したり、口を拭く動作で摩擦が加わったりすることも日常的に起こります。

このような繰り返しの刺激は、毛穴周囲の角質を厚くし、毛穴詰まりを起こしやすくします。また、手についた雑菌が肌に付着することで、ニキビの悪化を招くこともあります。

口周りニキビができる主な原因

口周りのニキビは、単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発生することがほとんどです。主な原因として、以下のようなものが挙げられます。

ホルモンバランスの乱れ

口周りは男性の場合に髭が生える部位であることからもわかるように、性ホルモンの影響を受けやすい場所です。男性ホルモン(アンドロゲン)は皮脂腺の活動を活発にする作用があり、その分泌量が増えると皮脂の分泌も増加します。

女性の場合、生理周期に伴うホルモンバランスの変化が口周りのニキビに影響することがあります。特に生理前には黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増加し、皮脂分泌が活発になるため、この時期に口周りにニキビができやすくなる方も少なくありません。また、妊娠中や更年期などホルモンバランスが大きく変動する時期も、ニキビができやすくなる傾向があります。

ストレスと自律神経の乱れ

ストレスを受けると、体内では副腎からコルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは皮脂分泌を促進する働きがあるため、ストレスが続くと皮脂の過剰分泌につながります。また、ストレスは男性ホルモンの一種であるアンドロゲンの分泌も増加させるため、口周りのニキビを悪化させる要因となります。

さらに、ストレスは自律神経のバランスを乱し、胃腸の働きにも影響を及ぼします。自律神経が乱れると、肌のターンオーバー(新陳代謝)も乱れやすくなり、古い角質が毛穴に詰まりやすくなります。

睡眠不足

睡眠は肌の修復や再生が行われる重要な時間です。睡眠が不足すると、肌のターンオーバーが滞り、古い角質が蓄積しやすくなります。また、睡眠不足は自律神経やホルモンバランスの乱れを招き、皮脂分泌の増加につながることもあります。

質の高い睡眠をとることは、ニキビの予防・改善において非常に重要です。単に長時間眠るだけでなく、途中で目覚めることなく朝すっきりと起きられるような深い睡眠を心がけることが大切です。

食生活の乱れ

糖分や脂質の多い食事は、皮脂の分泌を増加させる原因となります。チョコレートや揚げ物、乳製品などを過剰に摂取すると、皮脂分泌が活発になり、ニキビができやすくなる可能性があります。また、香辛料やアルコールなどの刺激物は胃腸に負担をかけ、それが口周りのニキビとして現れることもあります。

栄養バランスの偏った食事を続けていると、肌の健康を維持するために必要なビタミンやミネラルが不足し、肌荒れやニキビの原因となることがあります。

不適切なスキンケア

メイクの落とし残しや洗顔不足は、毛穴詰まりの直接的な原因となります。特に口周りは凹凸があり、洗顔料やクレンジングが行き届きにくい部位です。また、リップメイクやファンデーションの成分が毛穴に詰まることもあります。

一方で、過度な洗顔も問題です。ゴシゴシと強くこすって洗顔したり、洗浄力の強い洗顔料を使いすぎたりすると、必要な皮脂まで奪われ、肌が乾燥します。その結果、肌を守ろうとして皮脂が過剰に分泌され、かえってニキビができやすくなることがあります。

ホルモンバランスと口周りニキビの関係

口周りのニキビとホルモンバランスには深い関係があります。この部位は性ホルモンの影響を特に受けやすく、ホルモンの変動によってニキビの発生や悪化が起こりやすいという特徴があります。

男性ホルモンの影響

男性ホルモンであるアンドロゲンは、皮脂腺の活動を活発にし、皮脂の分泌量を増加させます。口周りには皮脂腺が多く存在するため、アンドロゲンの影響を受けやすい部位といえます。

女性の体内でも男性ホルモンは分泌されており、ストレスや疲労、睡眠不足などによって男性ホルモンの分泌バランスが崩れると、口周りにニキビができやすくなります。また、思春期には性ホルモンの分泌が急激に変化するため、この時期に口周りを含む顔全体にニキビができやすくなることがあります。

女性ホルモンの変動

女性の場合、月経周期に伴うホルモンバランスの変化が口周りのニキビに大きく影響します。排卵後から月経前にかけては、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増加します。プロゲステロンには皮脂分泌を促進する作用があるため、この時期に口周りにニキビができやすくなる方が多いのです。

また、女性ホルモンの一種であるエストラジオールには、肌の水分保持やコラーゲン・エラスチンの合成を促進する作用があります。このエストラジオールの分泌が減少すると、肌のバリア機能が低下し、ニキビができやすくなることがあります。

ライフステージによる変化

妊娠中は女性ホルモンのバランスが大きく変化するため、これまでニキビができにくかった方でも口周りにニキビができることがあります。また、更年期には女性ホルモンの分泌が減少し、相対的に男性ホルモンの影響が強くなることで、ニキビができやすくなる方もいらっしゃいます。

婦人科系の疾患や冷え性なども、ホルモンバランスに影響を与え、口周りのニキビの原因となることがあります。ニキビが繰り返しできる場合や、月経周期と連動してニキビができる場合には、婦人科的な問題が隠れている可能性も考慮する必要があります。

胃腸の不調と口周りニキビ

口周りのニキビは、胃腸の機能低下と深い関わりがあるとされています。東洋医学では古くから「口周りのトラブルは胃腸の不調のサイン」と考えられてきました。現代医学的にも、胃腸の状態と口周りの肌荒れには関連があることがわかっています。

消化機能の低下と肌への影響

胃腸の働きが弱ると、消化不良が起こりやすくなります。食べたものが十分に消化・吸収されないと、腸内に老廃物が溜まりやすくなり、有害物質が発生します。これらの有害物質は腸から吸収されて血液に乗り、全身に運ばれます。皮膚にも運ばれた有害物質は、ニキビや肌荒れの原因となります。

特に口は消化器官である胃や腸と直接つながっているため、胃腸の不調は口周りの肌トラブルとして現れやすいと考えられています。暴飲暴食や不規則な食事、脂っこい食べ物の過剰摂取などは、胃腸に負担をかけ、口周りのニキビを悪化させる要因となります。

腸内環境とニキビの関係

腸内環境の悪化は、免疫力や抵抗力の低下を招きます。腸は「第二の脳」とも呼ばれ、全身の健康状態に大きな影響を与えています。腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れると、肌のターンオーバーにも影響が及び、ニキビが治りにくくなったり、炎症が悪化しやすくなったりします。

便秘も口周りのニキビの原因となることがあります。便秘になると腸内に老廃物が長時間留まり、有害物質の発生・吸収が促進されます。また、便秘はストレスの原因にもなり、それがさらにホルモンバランスを乱してニキビを悪化させるという悪循環に陥ることもあります。

薬の影響

空腹時に薬を服用すると、胃が荒れて口周りにニキビができやすくなることがあります。これは、胃が服用した薬を食べ物だと認識して過剰に胃酸を分泌し、胃粘膜を荒らしてしまうことが原因とされています。抗生剤や鎮痛剤など、胃に負担をかける薬を頻繁に服用している場合は注意が必要です。

マスクや摩擦による影響

近年、マスクの着用機会が増えたことにより、口周りのニキビに悩む方が増加しています。マスクによる肌への影響はさまざまな側面から口周りのニキビを悪化させる要因となります。

マスクによる摩擦

マスクを着用していると、会話や表情の変化に伴ってマスクが肌にこすれます。この繰り返しの摩擦は、肌のバリア機能を低下させ、外部刺激に対して敏感な状態を作り出します。また、摩擦によって毛穴周囲の角質が厚くなり、毛穴詰まりを起こしやすくなります。

特にマスクのゴムや縁が当たる部分は刺激を受けやすく、赤みやニキビが発生しやすくなります。また、マスクを着脱する際の摩擦も肌への負担となります。

蒸れと湿度

マスク内は呼気によって湿度が高くなりやすく、蒸れた状態が続きます。このような高湿度の環境は、ニキビの原因菌であるアクネ菌をはじめとする細菌が繁殖しやすい条件を作り出します。また、蒸れによって肌表面の常在菌のバランスが崩れることも、ニキビの発生・悪化の原因となります。

さらに、マスク内の蒸れは肌の水分蒸発を一時的に抑えますが、マスクを外すと急激に水分が蒸発し、肌の乾燥を招きます。この乾燥を補おうとして皮脂が過剰分泌され、ニキビができやすくなるという現象も起こります。

その他の摩擦・刺激

マスク以外にも、口周りは日常的にさまざまな摩擦や刺激を受けています。頬杖をつく癖がある方は、手や腕が口周りに当たって刺激となります。また、会話中に無意識に口元を触る癖がある方も多く、これらの習慣が口周りのニキビの原因となることがあります。

男性の場合、髭剃りも口周りへの大きな刺激となります。切れ味の悪いカミソリを使用したり、深剃りをしすぎたりすると、肌を傷つけてニキビの原因となることがあります。女性でも産毛の処理によって肌が傷つき、ニキビができやすくなることがあります。

口周りニキビの種類と進行段階

ニキビは進行段階によって種類が分けられ、それぞれ適切な治療法が異なります。口周りのニキビも同様に、初期段階での適切な対処が重要です。

白ニキビ(閉鎖面皰)

白ニキビは、ニキビの初期段階です。毛穴が皮脂や角質で詰まり、その上を皮膚が覆っている状態で、白くポツンとした見た目が特徴です。この段階では痛みや赤みがないことが多く、目立ちにくいため見過ごされがちです。

しかし、白ニキビを放置すると炎症を起こして赤ニキビや黄ニキビに進行する可能性があります。口周りは刺激を受けやすく、乾燥や摩擦、ホルモンの影響が重なりやすい部位であるため、白ニキビが悪化しやすい傾向があります。

黒ニキビ(開放面皰)

黒ニキビは、毛穴が開いた状態の面皰です。詰まった皮脂が空気に触れて酸化し、黒く見えることからこの名前がついています。白ニキビと同様に炎症は起きていない状態ですが、毛穴が開いているため汚れや雑菌が入りやすく、悪化するリスクがあります。

赤ニキビ(炎症性皮疹)

赤ニキビは、毛穴の内部でアクネ菌が増殖し、炎症が起きている状態です。赤く腫れて目立ち、触ると痛みを感じることもあります。この段階になると、体の免疫システムがアクネ菌と戦うために炎症反応を起こしています。

赤ニキビは適切に治療しないと、さらに悪化して膿を持った黄ニキビに進行したり、ニキビ痕として残ったりする可能性があります。特に口周りは皮膚が薄いため、炎症が周囲の組織に影響を与えやすく、痕が残りやすい部位です。

黄ニキビ(膿疱)

黄ニキビは、炎症がさらに進行し、毛穴の中に膿が溜まった状態です。見た目は赤みから黄色っぽく変化し、ジクジクと痛むことがあります。膿は、アクネ菌と戦って死んだ白血球の残骸が溜まったものです。

この段階では、まず炎症を抑えることが最優先となります。自分で膿を出そうとすると、周囲の組織を傷つけたり、雑菌が入って症状が悪化したりする危険性があるため、皮膚科での治療が推奨されます。

嚢腫・結節

重症化したニキビでは、皮膚の下に膿がたまった袋ができる「嚢腫(のうしゅ)」や、硬く大きく触れる「結節(けっせつ)」の状態になることがあります。これらは通常のニキビ治療では改善が難しく、専門的な治療が必要となります。

皮膚科での口周りニキビ治療

口周りのニキビは、早期に皮膚科を受診して適切な治療を受けることが、痕を残さずきれいに治すための近道です。皮膚科では、ニキビの状態や肌質、生活習慣などを総合的に判断し、一人ひとりに合った治療計画を立てます。

診察の流れ

初診では、ニキビができた時期や経過、体調や生活習慣などについて問診が行われます。その後、医師がニキビの状態を視診し、必要に応じて触診を行います。特別な検査は通常必要ありませんが、症状が重い場合や他の疾患が疑われる場合には、血液検査やホルモンバランスの検査が行われることもあります。

問診と診察の結果をもとに、医師がニキビ治療の全体像や治療目標を説明し、患者様のライフスタイルを考慮した治療計画を提案します。

治療の考え方

日本皮膚科学会が策定した「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、ニキビ治療を「急性炎症期」と「維持期」の2つに分けて考えています。急性炎症期は赤ニキビや黄ニキビなど炎症性の皮疹が多い時期で、炎症を抑えることが主な目標となります。維持期は炎症が落ち着いた後の時期で、再発を防ぎ、ニキビのできにくい肌を維持することが目標となります。

皮膚科医の考える治療のゴールは、単に今あるニキビを治すことではなく、「ニキビができにくい肌」を目指すことです。そのため、今あるニキビが治った後も、毛穴の詰まり(コメド)の治療を続けることで、新しいニキビができにくい状態を維持することが重要とされています。

保険診療で受けられる治療

皮膚科でのニキビ治療は、主に保険が適用される塗り薬(外用薬)で行われます。症状に応じて内服薬が処方されることもあります。保険適用のニキビ治療を受けた場合、初診料や再診料、お薬代などを含めても、一回の通院につき1,000円から3,000円程度に留まることがほとんどです。

外用薬(塗り薬)

現在、日本で保険適用されているニキビの外用薬には、大きく分けて「コメド治療薬」と「抗菌薬」の2種類があります。

コメド治療薬は、毛穴の詰まりを改善する薬です。アダパレン(ディフェリンゲル)は、表皮の角化を抑制して毛穴の詰まりを改善する作用があります。過酸化ベンゾイル(ベピオゲル、ベピオローション)は、アクネ菌を殺菌する作用と角質を剥離する作用を併せ持ち、毛穴の詰まりと炎症の両方に効果を発揮します。また、これらの成分を組み合わせた配合剤(エピデュオゲル、デュアックゲルなど)も使用されています。

抗菌外用薬は、ニキビの原因菌であるアクネ菌の増殖を抑える薬です。クリンダマイシンやナジフロキサシンなどが使用されています。ただし、抗菌薬単独での使用はガイドラインで推奨されておらず、コメド治療薬と併用することが一般的です。

これらの外用薬は、使い始めに乾燥による刺激症状(ヒリヒリ感、赤み、皮むけなど)が出ることがあります。そのため、しっかりと保湿した後に使用する、最初は少量から始めて徐々に塗る面積を広げていくなどの工夫が大切です。

内服薬(飲み薬)

炎症が強い中等症から重症のニキビでは、外用薬に加えて内服薬が処方されることがあります。抗菌薬の内服では、ドキシサイクリン塩酸塩水和物(ビブラマイシン)が推奨されています。ただし、抗菌薬の内服は急性炎症期のみに使用し、長くても3ヵ月程度に留めることが薬剤耐性菌の発生を防ぐために重要とされています。

その他、ビタミン剤や漢方薬が補助的に処方されることもあります。漢方薬は体質改善を目的として使用され、特に月経周期と連動してニキビができる場合などに効果が期待できることがあります。

面皰圧出

面皰圧出は、専用の器具を使って毛穴に詰まった皮脂や角質を押し出す処置です。コメドや軽い炎症のニキビに対して行われることがあります。自分で潰すと細菌が入ったり、周囲の組織を傷つけたりする危険性がありますが、医療機関で適切に行えば、ニキビの治りを早める効果が期待できます。

自由診療による治療オプション

保険診療で十分な効果が得られない場合や、より積極的な治療を希望される場合には、自由診療(自費診療)による治療オプションがあります。

ケミカルピーリング

ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を肌に塗布し、古い角質を溶かして除去する治療法です。サリチル酸やグリコール酸などが使用されます。角質層に溜まった古い角質を取り除くことで、皮脂分泌が正常化し、ニキビの改善やニキビ痕を薄くする効果が期待できます。

ピーリング後は肌が敏感になっているため、十分な保湿と紫外線対策が必要です。また、施術の頻度や濃度は肌の状態に合わせて調整されます。

イオン導入・エレクトロポレーション

イオン導入やエレクトロポレーションは、電気の力を利用して美容成分を肌の奥まで浸透させる治療法です。ビタミンCやトラネキサム酸などの成分を効率的に肌に届けることで、ニキビの改善や予防、ニキビ痕の軽減などの効果が期待できます。

レーザー治療・光治療

レーザーや光を照射して、炎症を鎮めたり、アクネ菌を殺菌したり、肌のターンオーバーを促進したりする治療法です。ニキビの改善だけでなく、ニキビ痕の改善にも効果が期待できるものがあります。治療法によって効果や適応が異なるため、医師と相談の上で選択することが重要です。

イソトレチノイン内服

イソトレチノインは、ビタミンA誘導体の一種で、重症ニキビに対して高い効果を示す内服薬です。皮脂腺の活動を抑制し、角質層のターンオーバーを促進することで、ニキビをできにくくする働きがあります。欧米では重症ニキビの第一選択薬として広く使用されていますが、日本では保険適用されておらず、自費診療となります。

イソトレチノインには、乾燥や催奇形性(胎児への影響)などの副作用があるため、使用には厳重な管理が必要です。特に妊娠中や妊娠の可能性がある女性には使用できません。服用を検討される場合は、専門医のもとで十分な説明を受けた上で判断することが重要です。

日常生活でできるセルフケア

皮膚科での治療と並行して、日常生活でのセルフケアを行うことで、口周りのニキビの改善・予防効果を高めることができます。

正しい洗顔方法

洗顔は1日2回、朝と夜に行うのが基本です。洗顔料をしっかりと泡立て、弾力のある泡で優しく包み込むように洗います。手でゴシゴシこするのではなく、泡の力で汚れを浮かせるイメージです。

口周りは凹凸があり洗い残しやすい部位なので、意識して丁寧に泡を行き渡らせましょう。すすぎは30秒程度、ぬるま湯を使って泡が残らないようにしっかりと洗い流します。熱いお湯は必要な皮脂まで奪ってしまうため避けてください。

メイクをしている場合は、クレンジングを使って優しくメイクを落とした後に洗顔を行います。口紅やアイメイクなどのポイントメイクは、専用のリムーバーで先に落としておくと良いでしょう。

保湿ケア

洗顔後はすぐに保湿を行います。ニキビがあると「皮脂が多いから保湿は不要」と思いがちですが、乾燥は皮脂の過剰分泌を招くため、ニキビ肌でも保湿は必要です。

化粧水で水分を補給した後、乳液やクリームで蓋をして水分の蒸発を防ぎます。口周りは乾燥しやすい部位なので、他の部分よりも重点的に保湿するのがポイントです。

ニキビ肌には「ノンコメドジェニックテスト済み」の表示がある化粧品を選ぶと良いでしょう。これは、ニキビの原因となるコメドができにくいことが確認された製品です。また、油分が多すぎる化粧品は毛穴を詰まらせる可能性があるため、使用感や肌との相性を確認しながら選ぶことが大切です。

紫外線対策

紫外線は肌の老化を促進するだけでなく、皮脂を酸化させたり角化異常を起こしたりして、ニキビを悪化させる要因にもなります。帽子やサングラスだけではあごやフェイスラインまでカバーできないため、一年を通して日焼け止めを塗ることが重要です。

日焼け止めを選ぶ際も、ノンコメドジェニックテスト済みのものを選ぶと安心です。また、使用後はしっかりとクレンジングで落とし、毛穴に残らないようにしましょう。

髭剃り・産毛処理の注意点

男性の場合、髭剃りは口周りのニキビに大きく影響します。切れ味の良いカミソリを使用し、シェービングクリームやジェルを塗って肌への摩擦を軽減しましょう。剃る前にはぬるま湯で洗顔し、肌と髭を柔らかくしておくことがポイントです。

剃り方は、髭の生えている方向に沿って剃る「順剃り」を基本とし、逆剃りは必要最小限にとどめます。深剃りのしすぎは肌を傷つける原因となります。髭剃り後は化粧水や乳液でしっかりと保湿し、傷ついた肌をケアしましょう。

女性の産毛処理も同様に、肌への刺激を最小限にすることが大切です。切れ味の良いカミソリを使用するか、肌に直接刃が触れない電気シェーバーを使用すると良いでしょう。処理後はしっかりと保湿を行ってください。

口周りニキビを防ぐ生活習慣

口周りのニキビを防ぐためには、スキンケアだけでなく、生活習慣全体を見直すことが重要です。

バランスの良い食事

胃腸に負担をかけない食生活を心がけましょう。暴飲暴食を避け、バランスの良い食事を1日3回、規則正しく摂ることが大切です。脂っこい食べ物や糖分の多い食べ物、香辛料やアルコールなどの刺激物は控えめにしましょう。

冷たい飲み物や食べ物は胃腸を冷やして機能を低下させるため、なるべく温かいものを摂るようにするとニキビの予防につながります。また、野菜や果物、発酵食品など、腸内環境を整える食品を積極的に取り入れることもおすすめです。

質の良い睡眠

睡眠中は肌の修復や再生が行われる重要な時間です。毎日決まった時間に就寝・起床することで、睡眠の質が向上し、ホルモンバランスも整いやすくなります。

就寝前はスマートフォンやパソコンの画面を見ないようにし、照明を暗めにして、リラックスした状態で眠りにつけるよう環境を整えましょう。寝具は清潔に保ち、枕カバーやシーツはこまめに洗濯して雑菌の繁殖を防ぐことも大切です。

ストレス管理

ストレスはホルモンバランスを乱し、口周りのニキビを悪化させる大きな要因です。完全にストレスをなくすことは難しいですが、自分なりのストレス発散方法を見つけて、溜め込まないようにすることが大切です。

適度な運動は、ストレス解消に効果的です。ウォーキングやヨガ、ストレッチなど、無理なく続けられる運動を取り入れてみましょう。また、趣味の時間を持つ、リラックスできる音楽を聴く、入浴でゆっくり体を温めるなど、自分に合ったリフレッシュ方法を実践してください。

口周りを触らない

無意識のうちに口周りを触る癖がある方は、意識して触らないようにしましょう。手には多くの雑菌が付着しており、それが肌に移ることでニキビを悪化させる原因となります。頬杖をつく癖も、口周りへの刺激となるため控えましょう。

ニキビができていると気になって触りたくなりますが、触ったり潰したりすると炎症が悪化したり、雑菌が入って症状がひどくなったりする危険性があります。ニキビには極力触れず、皮膚科での適切な治療を受けることが大切です。

清潔なマスクの使用

マスクを使用する場合は、清潔なマスクを使うことが重要です。使い捨てマスクは毎日新しいものに交換し、布マスクは毎日洗濯して清潔な状態を保ちましょう。可能であれば、肌に優しい素材のマスクを選ぶとよいでしょう。

マスクを外した後は、蒸れによって乾燥した肌を保湿ケアでいたわることが大切です。また、マスクを長時間着用する場合は、適度に外して肌を休ませる時間を作ることも有効です。

口周りニキビと間違えやすい疾患

口周りにできる皮膚トラブルは、必ずしもすべてがニキビとは限りません。ニキビと似た症状を示す別の疾患もあり、適切な治療のためには正しい診断が必要です。

口囲皮膚炎

口囲皮膚炎は、口の周りや鼻の周りに赤い丘疹や膿疱ができる皮膚炎です。ニキビと似た見た目をしていますが、毛穴とは関係なく発生する点が異なります。ステロイド外用薬の長期使用が原因となることがあり、治療法もニキビとは異なります。

口唇ヘルペス

口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症で、唇やその周囲に水ぶくれができます。チクチクした痛みやかゆみを伴うことが多く、水ぶくれが破れてかさぶたになって治っていきます。ウイルス感染症であるため、抗ウイルス薬による治療が必要です。

酒さ(しゅさ)

酒さは、顔の中央部(頬、鼻、額、あご)に赤みやニキビのような症状が現れる慢性の皮膚疾患です。毛細血管の拡張や炎症が特徴で、ニキビとは発症メカニズムや治療法が異なります。赤みが長期間続く、熱いものやアルコールを摂取すると悪化するなどの特徴がある場合は、酒さの可能性も考えられます。

口周りに繰り返しできものができる場合や、通常のニキビ治療で改善しない場合は、これらの疾患の可能性も含めて皮膚科で診察を受けることをおすすめします。

よくある質問

口周りニキビは皮膚科に行くべきですか?

口周りのニキビは、早期に皮膚科を受診することをおすすめします。ニキビは「尋常性ざ瘡」という皮膚疾患であり、医療機関での治療によって適切に対処することができます。特に口周りは炎症が悪化しやすく、ニキビ痕が残りやすい部位です。皮膚科では、肌の状態や症状に合わせた治療薬を処方してもらえるため、自己判断でのケアで悪化させるリスクを防ぐことができます。保険適用の治療であれば、一回の通院で1,000円から3,000円程度で受けられます。

口周りにニキビができやすいのはなぜですか?

口周りは、皮膚が薄く乾燥しやすい一方で皮脂腺が多いという特徴があり、ニキビができやすい条件が揃っています。また、性ホルモンの影響を受けやすい部位であるため、ストレスや生活習慣の乱れによるホルモンバランスの変動がニキビの発生につながりやすくなります。さらに、口周りは胃腸の不調が現れやすい場所とも言われており、食生活の乱れや胃腸の機能低下がニキビとして表れることもあります。加えて、マスクや食事、会話などで日常的に刺激を受けやすい部位であることも、ニキビができやすい原因の一つです。

口周りニキビの治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

口周りのニキビ治療は、ニキビの状態や個人差によって異なりますが、まずは3ヵ月程度の通院が目安とされています。皮膚科医の考える治療のゴールは単にニキビを治すことではなく、「ニキビができにくい肌」を作ることです。今あるニキビが改善した後も、毛穴の詰まり(コメド)を予防する治療を続けることで、再発を防ぎ、健やかな肌を維持することができます。治療期間や通院頻度は、症状や治療経過によって医師と相談しながら決めていきます。

口周りのニキビを早く治すにはどうすればいいですか?

口周りのニキビを早く治すためには、皮膚科での適切な治療と日常のセルフケアを両立させることが大切です。皮膚科では、症状に合った外用薬や内服薬を処方してもらえます。自宅では、正しい洗顔と十分な保湿を心がけ、ニキビを触ったり潰したりしないようにしましょう。また、バランスの良い食事、質の高い睡眠、ストレス管理といった生活習慣の改善も重要です。治療を始めてすぐに効果が現れないこともありますが、根気強く続けることが早く治すための近道です。

口周りニキビと胃腸の調子は関係ありますか?

はい、口周りのニキビと胃腸の状態には関係があると考えられています。暴飲暴食や偏った食生活、ストレスなどで胃腸の働きが弱ると、消化不良が起こり、腸内に老廃物が溜まりやすくなります。これらの有害物質は血液を通じて全身に運ばれ、肌荒れやニキビとして現れることがあります。特に口は胃腸と直接つながっているため、胃腸の不調は口周りの肌トラブルとして表れやすいとされています。胃腸に優しい食生活を心がけることが、口周りニキビの予防・改善につながります。

生理前に口周りにニキビができやすいのはなぜですか?

生理前に口周りにニキビができやすいのは、ホルモンバランスの変化が原因です。排卵後から月経前にかけて、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増加します。プロゲステロンには皮脂の分泌を促進する作用があり、この時期は皮脂が過剰に分泌されやすくなります。口周りは性ホルモンの影響を特に受けやすい部位であるため、生理前のホルモン変動の影響を受けてニキビができやすくなります。月経周期と連動してニキビができる場合は、皮膚科医に相談すると、適切なアドバイスや治療を受けることができます。

まとめ

口周りのニキビは、皮膚の特性、ホルモンバランス、胃腸の状態、生活習慣など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。乾燥しやすく刺激を受けやすい口周りの皮膚は、ニキビが発生・悪化しやすく、また痕が残りやすい部位でもあります。

口周りのニキビを改善し、繰り返さないためには、皮膚科での適切な治療と日常生活でのセルフケアの両方が重要です。皮膚科では、保険適用の外用薬や内服薬による治療が受けられ、一人ひとりの症状に合った治療計画を立ててもらえます。治療のゴールは単にニキビを治すことではなく、「ニキビができにくい肌」を作ることです。

日常生活では、正しい洗顔と保湿、紫外線対策といったスキンケアに加え、バランスの良い食事、質の高い睡眠、ストレス管理といった生活習慣の改善が大切です。また、口周りを触らない、清潔なマスクを使用するなど、日常的な刺激を減らす工夫も効果的です。

口周りのニキビでお悩みの方は、「ただのニキビ」と放置せず、早めに皮膚科を受診されることをおすすめします。適切な治療と日々のケアで、健やかで美しい肌を取り戻しましょう。当院では、患者様一人ひとりの症状や肌質に合わせた治療を提案しておりますので、お気軽にご相談ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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