口周りにできるニキビは、多くの方が経験するお悩みの一つです。顔の中でも目立ちやすい部位であり、メイクで隠しにくく、食事や会話のたびに気になってしまうという方も少なくありません。実は口周りは、皮膚の構造やホルモンの影響を受けやすい特性から、ニキビが発生しやすく、また繰り返しやすい部位として知られています。思春期のニキビとは異なり、大人になってから口周りにニキビができる場合には、ストレスや生活習慣、胃腸の不調など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることが多いのが特徴です。
本記事では、口周りニキビができる原因から、皮膚科での治療法、日常生活でできるセルフケアまで、専門的な視点から詳しく解説いたします。口周りのニキビにお悩みの方が、適切な対処法を見つけ、健やかな肌を取り戻すための一助となれば幸いです。

目次
- 口周りニキビとは・皮膚の特徴
- 口周りニキビの原因と治療法|主な発生要因
- ニキビの種類と皮膚科での治療法
- 日常でできる予防・ケア方法
- 間違えやすい疾患とよくある質問
- まとめ
🔍 口周りニキビとは・皮膚の特徴
ニキビは医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれる皮膚疾患です。日本人の約90%以上が生涯のうちに経験するとされており、非常に身近な肌トラブルといえます。ニキビは毛穴に皮脂や古い角質が詰まり、そこにアクネ菌が増殖して炎症を起こすことで発生します。 口周りのニキビは、顔の中でも「Uゾーン」と呼ばれる部位に含まれ、あごや頬の下部とともに大人ニキビができやすい代表的な場所として知られています。思春期に多いおでこや鼻などの「Tゾーン」のニキビとは発生メカニズムが異なり、ホルモンバランスの乱れやストレス、生活習慣の影響を強く受けやすいという特徴があります。📌 口周りの皮膚構造
口周りは顔の中でも特に皮膚が薄い部位です。皮膚が薄いということは、外部からの刺激に対してバリア機能が弱く、ダメージを受けやすいことを意味します。また、頬などと比較してスキンケアがおろそかになりがちな部位でもあり、保湿が不十分になりやすい傾向があります。 皮膚が乾燥すると、肌は失われた潤いを補おうとして皮脂を過剰に分泌します。この過剰な皮脂が毛穴に詰まることで、ニキビの原因となる「コメド(面皰)」が形成されやすくなります。💧 皮脂腺と汗腺の特徴
口周りやあごを含むUゾーンは、汗腺の数が少なく、皮脂腺が多い部位という特徴を持っています。汗が少ないということは、皮膚表面の水分蒸発による自然な保湿効果が得られにくいことを意味します。一方で皮脂腺が多いため、皮脂の分泌量は多くなりやすい傾向があります。 この「乾燥しやすいのに皮脂は多い」という矛盾した状態が、口周りにニキビができやすい肌環境を作り出しています。⚡ 刺激を受けやすい部位
口周りは日常生活において、さまざまな刺激を受けやすい部位です。会話や食事の際によく動かす場所であり、無意識のうちに手で触ってしまうことも多くあります。食べ物の汚れが付着したり、口を拭く動作で摩擦が加わったりすることも日常的に起こります。 このような繰り返しの刺激は、毛穴周囲の角質を厚くし、毛穴詰まりを起こしやすくします。🌟 口周りニキビの原因と治療法|主な発生要因
口周りニキビの原因は多岐にわたり、これらが複合的に作用することで繰り返すニキビトラブルが発生します。主な原因を理解することで、適切な治療法を選択することができます。⚖️ ホルモンバランスの影響
口周りは男性の場合に髭が生える部位であることからもわかるように、性ホルモンの影響を受けやすい場所です。男性ホルモン(アンドロゲン)は皮脂腺の活動を活発にする作用があり、その分泌量が増えると皮脂の分泌も増加します。 女性の場合、生理周期に伴うホルモンバランスの変化が口周りのニキビに影響することがあります。特に生理前には黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増加し、皮脂分泌が活発になるため、この時期に口周りにニキビができやすくなる方も少なくありません。😰 ストレスと胃腸の関係
ストレスを受けると、体内では副腎からコルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは皮脂分泌を促進する働きがあるため、ストレスが続くと皮脂の過剰分泌につながります。 また、胃腸の機能低下と深い関わりがあるとされています。東洋医学では古くから「口周りのトラブルは胃腸の不調のサイン」と考えられてきました。胃腸の働きが弱ると、消化不良が起こりやすくなり、腸内に老廃物が溜まって有害物質が発生し、これが血液を通じて肌荒れやニキビの原因となります。😷 マスクと摩擦による影響
近年、マスクの着用機会が増えたことにより、口周りのニキビに悩む方が増加しています。マスクによる摩擦は肌のバリア機能を低下させ、蒸れによって細菌が繁殖しやすい環境を作り出します。 マスク内は呼気によって湿度が高くなりやすく、この高湿度の環境はニキビの原因菌であるアクネ菌が繁殖しやすい条件を作り出します。📊 ニキビの種類と皮膚科での治療法
ニキビは進行段階によって種類が分けられ、それぞれ適切な治療法が異なります。口周りのニキビも同様に、初期段階での適切な対処が重要です。🔬 ニキビの進行段階
**白ニキビ(閉鎖面皰)** 白ニキビは、ニキビの初期段階です。毛穴が皮脂や角質で詰まり、その上を皮膚が覆っている状態で、白くポツンとした見た目が特徴です。 **赤ニキビ(炎症性皮疹)** 赤ニキビは、毛穴の内部でアクネ菌が増殖し、炎症が起きている状態です。赤く腫れて目立ち、触ると痛みを感じることもあります。 **黄ニキビ(膿疱)** 黄ニキビは、炎症がさらに進行し、毛穴の中に膿が溜まった状態です。見た目は赤みから黄色っぽく変化し、ジクジクと痛むことがあります。💊 保険診療による治療法
皮膚科でのニキビ治療は、主に保険が適用される塗り薬(外用薬)で行われます。現在、日本で保険適用されているニキビの外用薬には、「コメド治療薬」と「抗菌薬」の2種類があります。 **主な外用薬:** – アダパレン(ディフェリンゲル):表皮の角化を抑制して毛穴の詰まりを改善 – 過酸化ベンゾイル(ベピオゲル、ベピオローション):アクネ菌を殺菌し、角質を剥離する作用 – 配合剤(エピデュオゲル、デュアックゲルなど):上記成分を組み合わせた薬剤 **内服薬:** 炎症が強い中等症から重症のニキビでは、外用薬に加えて内服薬が処方されることがあります。抗菌薬の内服では、ドキシサイクリン塩酸塩水和物(ビブラマイシン)が推奨されています。✨ 自由診療による治療オプション
保険診療で十分な効果が得られない場合や、より積極的な治療を希望される場合には、自由診療(自費診療)による治療オプションがあります。 **主な治療法:** – ケミカルピーリング:酸性の薬剤を肌に塗布し、古い角質を溶かして除去 – イオン導入・エレクトロポレーション:電気の力を利用して美容成分を肌の奥まで浸透 – レーザー治療・光治療:炎症を鎮めたり、アクネ菌を殺菌 – イソトレチノイン内服:重症ニキビに対して高い効果を示す内服薬🧴 日常でできる予防・ケア方法
皮膚科での治療と並行して、日常生活でのセルフケアを行うことで、口周りのニキビの改善・予防効果を高めることができます。🧼 正しいスキンケア方法
**洗顔のポイント:** 洗顔は1日2回、朝と夜に行うのが基本です。洗顔料をしっかりと泡立て、弾力のある泡で優しく包み込むように洗います。口周りは凹凸があり洗い残しやすい部位なので、意識して丁寧に泡を行き渡らせましょう。 **保湿ケア:** 洗顔後はすぐに保湿を行います。ニキビがあると「皮脂が多いから保湿は不要」と思いがちですが、乾燥は皮脂の過剰分泌を招くため、ニキビ肌でも保湿は必要です。 **紫外線対策:** 紫外線は肌の老化を促進するだけでなく、皮脂を酸化させたり角化異常を起こしたりして、ニキビを悪化させる要因にもなります。一年を通して日焼け止めを塗ることが重要です。🌱 生活習慣の改善
**食事のポイント:** 胃腸に負担をかけない食生活を心がけましょう。脂っこい食べ物や糖分の多い食べ物を控えめにし、野菜や果物、発酵食品など、腸内環境を整える食品を積極的に摂取しましょう。 **睡眠の質:** 睡眠中は肌の修復や再生が行われる重要な時間です。毎日決まった時間に就寝・起床することで、睡眠の質が向上し、ホルモンバランスも整いやすくなります。 **ストレス管理:** ストレスはホルモンバランスを乱し、口周りのニキビを悪化させる大きな要因です。適度な運動や趣味の時間を持つなど、自分なりのストレス発散方法を見つけることが大切です。😷 マスク使用時の注意点
マスクを使用する場合は、清潔なマスクを使うことが重要です。使い捨てマスクは毎日新しいものに交換し、布マスクは毎日洗濯して清潔な状態を保ちましょう。可能であれば、肌に優しい素材のマスクを選ぶとよいでしょう。⚠️ 間違えやすい疾患とよくある質問
口周りにできる皮膚トラブルは、必ずしもすべてがニキビとは限りません。ニキビと似た症状を示す別の疾患もあり、適切な治療のためには正しい診断が必要です。🔍 類似疾患の見分け方
**口囲皮膚炎:** 口囲皮膚炎は、口の周りや鼻の周りに赤い丘疹や膿疱ができる皮膚炎です。ニキビと似た見た目をしていますが、毛穴とは関係なく発生する点が異なります。 **口唇ヘルペス:** 口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症で、唇やその周囲に水ぶくれができます。チクチクした痛みやかゆみを伴うことが多いです。 **酒さ(しゅさ):** 酒さは、顔の中央部(頬、鼻、額、あご)に赤みやニキビのような症状が現れる慢性の皮膚疾患です。毛細血管の拡張や炎症が特徴で、ニキビとは発症メカニズムが異なります。❓ よくある質問
口周りのニキビは、早期に皮膚科を受診することをおすすめします。ニキビは「尋常性ざ瘡」という皮膚疾患であり、医療機関での治療によって適切に対処することができます。特に口周りは炎症が悪化しやすく、ニキビ痕が残りやすい部位です。皮膚科では、肌の状態や症状に合わせた治療薬を処方してもらえるため、自己判断でのケアで悪化させるリスクを防ぐことができます。保険適用の治療であれば、一回の通院で1,000円から3,000円程度で受けられます。
口周りは、皮膚が薄く乾燥しやすい一方で皮脂腺が多いという特徴があり、ニキビができやすい条件が揃っています。また、性ホルモンの影響を受けやすい部位であるため、ストレスや生活習慣の乱れによるホルモンバランスの変動がニキビの発生につながりやすくなります。さらに、口周りは胃腸の不調が現れやすい場所とも言われており、食生活の乱れや胃腸の機能低下がニキビとして表れることもあります。加えて、マスクや食事、会話などで日常的に刺激を受けやすい部位であることも、ニキビができやすい原因の一つです。
口周りのニキビ治療は、ニキビの状態や個人差によって異なりますが、まずは3ヵ月程度の通院が目安とされています。皮膚科医の考える治療のゴールは単にニキビを治すことではなく、「ニキビができにくい肌」を作ることです。今あるニキビが改善した後も、毛穴の詰まり(コメド)を予防する治療を続けることで、再発を防ぎ、健やかな肌を維持することができます。治療期間や通院頻度は、症状や治療経過によって医師と相談しながら決めていきます。
口周りのニキビを早く治すためには、皮膚科での適切な治療と日常のセルフケアを両立させることが大切です。皮膚科では、症状に合った外用薬や内服薬を処方してもらえます。自宅では、正しい洗顔と十分な保湿を心がけ、ニキビを触ったり潰したりしないようにしましょう。また、バランスの良い食事、質の高い睡眠、ストレス管理といった生活習慣の改善も重要です。治療を始めてすぐに効果が現れないこともありますが、根気強く続けることが早く治すための近道です。
はい、口周りのニキビと胃腸の状態には関係があると考えられています。暴飲暴食や偏った食生活、ストレスなどで胃腸の働きが弱ると、消化不良が起こり、腸内に老廃物が溜まりやすくなります。これらの有害物質は血液を通じて全身に運ばれ、肌荒れやニキビとして現れることがあります。特に口は胃腸と直接つながっているため、胃腸の不調は口周りの肌トラブルとして表れやすいとされています。胃腸に優しい食生活を心がけることが、口周りニキビの予防・改善につながります。
生理前に口周りにニキビができやすいのは、ホルモンバランスの変化が原因です。排卵後から月経前にかけて、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増加します。プロゲステロンには皮脂の分泌を促進する作用があり、この時期は皮脂が過剰に分泌されやすくなります。また、プロゲステロンは角質を厚くする働きもあるため、毛穴が詰まりやすくなり、ニキビができやすい環境が整ってしまいます。生理前のニキビを予防するには、この時期は特に丁寧なスキンケアを心がけ、ストレスを溜めないよう注意することが大切です。

📞 まとめ
口周りのニキビは、皮膚の構造的特徴やホルモンバランス、胃腸の状態、生活習慣など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生する皮膚疾患です。単なる肌トラブルではなく、体の内側からのサインとして捉え、総合的なアプローチで治療・予防に取り組むことが重要です。 皮膚科での専門的な治療を受けながら、日常生活でのセルフケアを継続することで、口周りのニキビは改善できます。特に以下の点を心がけましょう: – **早期の皮膚科受診**: 症状が軽いうちに適切な治療を開始する – **正しいスキンケア**: 優しい洗顔と十分な保湿を継続する – **生活習慣の改善**: バランスの良い食事、質の高い睡眠、ストレス管理 – **刺激の回避**: マスクや摩擦による刺激を最小限に抑える – **継続的なケア**: 症状が改善した後も予防的なケアを続ける 口周りのニキビでお悩みの方は、一人で悩まずに皮膚科専門医にご相談ください。適切な診断と治療により、健やかで美しい肌を取り戻すことができます。📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023
- 厚生労働省 – 皮膚疾患に関する情報
- 日本美容皮膚科学会 – ニキビ治療に関するガイドライン
- 日本臨床皮膚科医会 – 尋常性ざ瘡の診療指針
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
口周りのニキビは、他の部位のニキビと比べて特に複合的な要因によって生じやすいのが特徴です。特にホルモンバランスの影響を受けやすく、ストレスや生活習慣の乱れが直接的に症状に現れやすい部位でもあります。患者さまには、外用薬による治療と合わせて、生活習慣の見直しをお勧めしています。特に睡眠や食生活の改善は、治療効果を高める上で非常に重要な要素となります。