はじめに
冬になると流行するインフルエンザ。「A型」「B型」という言葉を耳にすることがあるかと思いますが、「どちらの方がきついのだろう」「症状に違いはあるの?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
インフルエンザは毎年多くの方が感染する感染症で、高熱や全身倦怠感など辛い症状を引き起こします。A型とB型では流行時期や症状の現れ方に特徴があり、それぞれに注意すべきポイントがあります。
本記事では、インフルエンザA型とB型の違いについて、症状の特徴、重症度、流行時期、予防法、治療法まで詳しく解説していきます。正しい知識を身につけることで、適切な予防と早期対応ができるようになります。

インフルエンザとは
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症です。普通の風邪とは異なり、突然の高熱や全身症状が特徴的で、重症化すると肺炎や脳症などの合併症を引き起こすこともあります。
インフルエンザウイルスの種類
インフルエンザウイルスには大きく分けてA型、B型、C型の3つの型が存在します。このうち、季節性インフルエンザとして毎年流行するのは主にA型とB型です。
C型インフルエンザは多くの場合、幼児期に感染して免疫を獲得するため、成人では問題になることは少なく、症状も軽いとされています。そのため、一般的に「インフルエンザ」と言えばA型とB型を指すことがほとんどです。
感染経路と潜伏期間
インフルエンザは主に飛沫感染と接触感染によって広がります。感染者の咳やくしゃみによって飛び散ったウイルスを吸い込んだり、ウイルスが付着した物や手を介して口や鼻の粘膜から体内に侵入します。
潜伏期間は通常1〜3日程度で、この期間を経て突然症状が現れます。感染力が強いのは発症前日から発症後3〜7日間程度とされており、特に発症後3日間程度までは感染力が高い状態が続きます。
インフルエンザA型の特徴
A型の基本的な性質
インフルエンザA型は、ヒト以外にも鳥類や豚などの動物にも感染するという特徴があります。この性質により、動物の体内でウイルスが変異し、新型インフルエンザとして人間社会に広がる可能性を持っています。
A型ウイルスは表面にある2種類のタンパク質、ヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)の組み合わせによってさらに細かく分類されます。H1N1型やH3N2型など、様々な亜型が存在し、これらが毎年少しずつ変異しながら流行します。
A型の主な症状
インフルエンザA型の症状は、突然の高熱(38℃以上)から始まることが特徴です。主な症状として以下のようなものが挙げられます。
38〜40℃の高熱が3〜4日間続くことが多く、解熱後も数日間は倦怠感が残ります。頭痛は激しく、特に額から後頭部にかけて痛みを感じることが多いです。筋肉痛や関節痛も全身に現れ、特に背中や腰、四肢に強い痛みを感じることがあります。
全身倦怠感は非常に強く、起き上がることすら困難に感じる方も少なくありません。寒気や悪寒も初期症状として現れることが多く、高熱の前触れとして感じられます。
呼吸器症状としては、咳、鼻水、喉の痛みなどが見られますが、これらは発熱などの全身症状に比べると後から現れることが多いです。消化器症状として、吐き気や下痢、腹痛を伴うこともあります。
A型の流行時期と特徴
日本におけるインフルエンザA型の流行時期は、主に12月から3月にかけての冬季です。特に1月から2月にかけてピークを迎えることが多く、この時期には学校や職場で集団感染が発生することもあります。
A型は変異しやすいという性質から、毎年少しずつウイルスの性質が変化します。そのため、過去に感染したことがある人や、ワクチン接種を受けた人でも、変異したウイルスに対しては免疫が十分に働かず、再び感染してしまう可能性があります。
また、A型は世界的なパンデミックを引き起こす可能性があることでも知られています。2009年に流行した新型インフルエンザ(H1N1)もA型の一種でした。
インフルエンザB型の特徴
B型の基本的な性質
インフルエンザB型は、基本的にヒトにのみ感染するウイルスです。A型のように動物に感染することがないため、動物の体内での変異を通じて新型ウイルスが生まれる心配はありません。
B型ウイルスは山形系統とビクトリア系統の2つの系統に大きく分けられます。どちらの系統が流行するかは年によって異なりますが、両方が同時に流行することもあります。
B型の主な症状
インフルエンザB型の症状は、A型と比較すると若干穏やかな傾向があるとされています。しかし、個人差が大きく、B型でも重症化するケースは十分にあります。
発熱は37〜39℃程度のことが多く、A型ほど高熱にならないケースもあります。ただし、発熱期間はA型と同様かやや長めに続くこともあります。頭痛や筋肉痛、関節痛もA型と同様に見られますが、痛みの程度は比較的軽めと感じる方が多いようです。
B型の特徴的な点として、消化器症状が比較的多く見られることが挙げられます。特に子供では、嘔吐や下痢、腹痛などの症状が目立つことがあります。このため、最初は胃腸炎と誤認されることもあります。
呼吸器症状としては、A型と同様に咳や鼻水、喉の痛みが現れます。咳は比較的長引きやすく、解熱後も2週間程度続くことがあります。
B型の流行時期と特徴
インフルエンザB型の流行時期は、A型よりもやや遅れて2月から3月にかけてピークを迎えることが多いです。場合によっては4月頃まで流行が続くこともあり、春先の感染にも注意が必要です。
B型はA型に比べて変異のスピードが遅いため、過去に感染した経験やワクチン接種による免疫が比較的効きやすいとされています。そのため、大規模な流行になることは少ない傾向があります。
ただし、近年では山形系統とビクトリア系統が交互に流行したり、両方が同時に流行したりするケースも見られ、一度B型に感染しても別の系統のB型に感染する可能性があります。
A型とB型、どっちがきついのか
症状の重さの比較
「どちらがきついか」という質問に対しては、一般的にはインフルエンザA型の方が症状が強く出やすいとされています。しかし、これはあくまでも統計的な傾向であり、個人差が非常に大きいことを理解しておく必要があります。
A型では高熱や全身症状が急激に現れ、最初の数日間は非常に辛い状態が続きます。体温が40℃近くまで上がることも珍しくなく、頭痛や筋肉痛も激しいことが多いです。ただし、ピークを過ぎると比較的早く回復に向かう傾向があります。
一方、B型は発熱や全身症状がA型ほど激しくないことが多いものの、症状が長引きやすいという特徴があります。特に消化器症状が出る場合は、食事が十分に取れずに体力を消耗することもあります。また、咳が長期間続くことで日常生活に支障をきたすこともあります。
年齢による違い
症状の重さは、感染者の年齢によっても大きく異なります。
乳幼児や小児では、A型でもB型でも重症化のリスクがあります。特にA型では急性脳症の発症リスクが高く、意識障害やけいれんなどの神経症状に注意が必要です。B型では消化器症状が強く出やすく、脱水症状に陥るリスクがあります。
成人では、A型の方が高熱や全身症状が強く出やすく、発症直後の数日間は非常に辛い状態になることが多いです。B型は比較的症状が穏やかなことが多いものの、症状が長引くことで仕事や日常生活への影響が大きくなることがあります。
高齢者では、A型でもB型でも肺炎などの合併症のリスクが高くなります。特に基礎疾患を持っている方は、インフルエンザをきっかけに持病が悪化することもあるため、注意が必要です。
合併症のリスク
インフルエンザの「きつさ」を考える上で、合併症のリスクも重要な要素です。
A型もB型も、肺炎や気管支炎などの呼吸器系の合併症を起こす可能性があります。特に高齢者や慢性呼吸器疾患を持つ方では注意が必要です。
小児では、インフルエンザ脳症という重篤な合併症のリスクがあります。これはA型でもB型でも発症する可能性がありますが、A型の方がやや多いとされています。発熱後すぐに意識障害やけいれん、異常行動などが見られた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
心筋炎や心膜炎などの心疾患、横紋筋融解症、ライ症候群など、まれではありますが重篤な合併症が起こることもあります。これらはA型でもB型でも発症する可能性があります。
個人差が大きい理由
同じ型のインフルエンザに感染しても、人によって症状の重さが大きく異なる理由は、いくつかの要因が関係しています。
まず、免疫力の状態が大きく影響します。過去に同じ型やよく似たウイルスに感染したことがある場合、ある程度の免疫が残っていることで症状が軽くなることがあります。また、ワクチン接種によって獲得した免疫も、発症予防効果は完全ではないものの、重症化を防ぐ効果が期待できます。
年齢、基礎疾患の有無、栄養状態、睡眠不足やストレスなどの体調、ウイルスの量なども症状の重さに影響します。同じ家族内で感染しても、症状の現れ方が全く異なることがあるのはこのためです。
インフルエンザの診断と検査
医療機関での診断
インフルエンザが疑われる症状がある場合、医療機関を受診することが推奨されます。特に高熱や強い全身症状がある場合、発症後48時間以内に受診することで、抗インフルエンザ薬による治療効果が期待できます。
診断は、症状の問診、身体診察、そして必要に応じて迅速抗原検査によって行われます。流行時期に典型的な症状がある場合、検査をせずに臨床診断される場合もあります。
迅速抗原検査
インフルエンザの迅速抗原検査は、鼻や喉から検体を採取し、15分程度でA型かB型かを判定できる検査です。多くの医療機関で実施可能で、その場で結果がわかるため、診断と治療方針の決定に役立ちます。
ただし、この検査にも限界があります。発症直後で体内のウイルス量が少ない時期には、感染していても陰性と出ることがあります(偽陰性)。一般的には、発症から12時間以上経過してから検査を受けると、より正確な結果が得られるとされています。
また、検査で陰性だったとしても、症状や流行状況から総合的に判断して、インフルエンザと診断されることもあります。
A型とB型の判別の意義
迅速抗原検査では、A型かB型かを判別することができます。この判別には、いくつかの意義があります。
まず、流行状況の把握に役立ちます。どちらの型が流行しているかを知ることで、感染対策や公衆衛生上の対応を適切に行うことができます。
また、症状の経過を予測する上でも参考になります。A型では急激な発症と高熱、B型では消化器症状や咳の長期化など、型による特徴を知っていることで、今後の経過を予測しやすくなります。
ただし、治療方針という点では、A型でもB型でも使用する抗インフルエンザ薬は同じであり、型による治療法の違いはありません。
インフルエンザの治療
抗インフルエンザ薬
インフルエンザの治療には、抗インフルエンザ薬が使用されることがあります。これらの薬は、ウイルスの増殖を抑えることで、発熱期間を短縮し、症状を軽減する効果があります。
日本で使用されている主な抗インフルエンザ薬には、オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、バロキサビル(ゾフルーザ)などがあります。これらはA型にもB型にも効果があります。
抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に使用を開始することが重要です。ウイルスの増殖が最も活発な時期に使用することで、最大の効果が期待できます。48時間を過ぎると効果が限定的になりますが、重症化リスクが高い方では、48時間を過ぎても使用が検討されることがあります。
ただし、抗インフルエンザ薬は必ずしも全ての患者に必要というわけではありません。健康な成人であれば、対症療法だけで十分回復することも多くあります。使用の判断は、年齢、基礎疾患の有無、症状の重さなどを考慮して、医師が総合的に行います。
対症療法
インフルエンザの基本的な治療は対症療法です。体がウイルスと戦い、自然に回復するのを助けることが大切です。
発熱や痛みに対しては、解熱鎮痛薬が使用されます。ただし、15歳未満の小児にはアスピリンやアスピリン系の薬剤は使用できません。これらの薬剤は、インフルエンザ脳症やライ症候群という重篤な合併症のリスクを高める可能性があるためです。小児にはアセトアミノフェンが推奨されます。
咳や鼻水などの症状に対しては、必要に応じて咳止めや去痰薬などが処方されることがあります。喉の痛みには、トローチやうがい薬が有効です。
自宅での療養
インフルエンザに感染した場合、自宅での療養が基本となります。適切な療養によって、早期回復と周囲への感染拡大防止の両方が期待できます。
安静と休息が最も重要です。高熱や全身症状がある間は、できるだけ安静にして、十分な睡眠をとることが大切です。無理をして活動すると、回復が遅れたり、合併症のリスクが高まったりする可能性があります。
水分補給も非常に重要です。発熱によって体から多くの水分が失われるため、こまめに水分を摂取する必要があります。水やお茶、スポーツドリンク、経口補水液などがおすすめです。特に小児や高齢者では脱水症状に注意が必要です。
栄養補給については、食欲がない場合は無理に食べる必要はありませんが、少しでも食べられるようであれば、消化の良いものを選んで食べましょう。おかゆ、うどん、バナナ、ヨーグルトなどが適しています。
室内の環境も大切です。適度な湿度(50〜60%)を保つことで、喉や鼻の粘膜を保護し、ウイルスの活動を抑制できます。加湿器を使用したり、濡れたタオルを干したりするのも効果的です。
いつまで休む必要があるか
インフルエンザに感染した場合、学校や職場をいつまで休むべきかは、学校保健安全法や各職場の規定によって定められています。
学校保健安全法では、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」が出席停止期間とされています。これは、この期間が最も感染力が高く、他者への感染リスクが大きいためです。
職場については法的な規定はありませんが、多くの企業が学校保健安全法に準じた基準を設けています。周囲への感染拡大を防ぐためにも、十分に回復するまで休養することが推奨されます。
咳などの症状が残っている場合は、マスクを着用するなどの配慮が必要です。完全に症状がなくなるまでには1〜2週間程度かかることもあります。
インフルエンザの予防
ワクチン接種
インフルエンザ予防の最も効果的な方法は、ワクチン接種です。毎年10月頃から接種が始まり、流行シーズン前の11月中旬までに接種を済ませることが推奨されています。
インフルエンザワクチンには、その年に流行が予測されるA型2種類とB型2種類の計4種類の株が含まれています(4価ワクチン)。これにより、A型にもB型にも対応できるようになっています。
ワクチンの効果は、発症を完全に防ぐものではありませんが、発症を50〜60%程度減らし、重症化を予防する効果があります。特に高齢者や基礎疾患を持つ方では、重症化予防効果が重要です。
ワクチンの効果は接種後2週間程度から現れ、約5ヶ月間持続するとされています。そのため、シーズンごとに毎年接種することが推奨されます。
子供(13歳未満)では、2回接種することで効果が高まります。1回目と2回目の間隔は2〜4週間が推奨されますが、できれば4週間あけるとより効果的です。
日常生活での予防対策
ワクチン接種に加えて、日常生活での予防対策も重要です。
手洗いは最も基本的で効果的な予防法です。外出後、食事前、トイレ後などには必ず石鹸を使って丁寧に手を洗いましょう。指の間や爪の周り、手首まで洗うことが大切です。流水で15秒以上かけて洗い流すことが推奨されます。
アルコール消毒も効果的です。外出先で手洗いができない場合は、アルコール手指消毒薬を使用しましょう。ただし、手が明らかに汚れている場合は、まず手洗いをすることが優先されます。
マスクの着用は、自分が感染するリスクを下げるだけでなく、自分が感染源となって他者にうつすリスクも下げます。人混みや密閉空間では特に着用が推奨されます。
咳エチケットも重要です。咳やくしゃみをする際は、マスクやティッシュ、袖で口と鼻を覆いましょう。手のひらで覆うと、その手でドアノブなどに触れることで感染を広げてしまう可能性があります。
生活習慣と免疫力の維持
インフルエンザに対する抵抗力を高めるためには、日頃から免疫力を維持することが大切です。
十分な睡眠をとることは、免疫機能を正常に保つために重要です。睡眠不足は免疫力を低下させ、感染しやすくなります。個人差はありますが、7〜8時間程度の睡眠が推奨されます。
バランスの良い食事も免疫力の維持に欠かせません。特にビタミンやミネラル、タンパク質をしっかり摂取しましょう。ビタミンCやビタミンD、亜鉛などは免疫機能をサポートします。
適度な運動は、免疫機能を高める効果があります。激しい運動は逆効果になることもあるため、ウォーキングや軽いジョギングなど、適度な運動を継続することが大切です。
ストレスの管理も重要です。慢性的なストレスは免疫力を低下させます。リラックスできる時間を作ることも、インフルエンザ予防につながります。
室内の適度な湿度(50〜60%)を保つことで、粘膜の防御機能を維持し、ウイルスの活動を抑制できます。また、こまめな換気によって室内のウイルス濃度を下げることも効果的です。
感染拡大を防ぐために
もし自分や家族がインフルエンザに感染した場合、周囲への感染拡大を防ぐことも重要な責任です。
症状がある間は外出を控え、特に発症後3日間程度は最も感染力が高いため、できるだけ他者との接触を避けましょう。やむを得ず外出する場合は必ずマスクを着用します。
家庭内での感染を防ぐためには、患者は可能であれば個室で療養し、タオルや食器などは共有しないようにします。看病する人はマスクを着用し、こまめに手洗いをしましょう。
患者が使用した部屋や触れた場所は、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムで消毒すると効果的です。特にドアノブ、スイッチ、リモコンなどよく触れる場所は重点的に消毒しましょう。
特に注意が必要な方
重症化リスクが高い方
インフルエンザは誰でも感染する可能性がありますが、特に重症化しやすい方がいます。
65歳以上の高齢者は、免疫機能の低下により重症化しやすく、肺炎などの合併症のリスクが高くなります。厚生労働省でも、高齢者へのワクチン接種が強く推奨されています。
慢性呼吸器疾患(喘息、COPD など)、慢性心疾患、糖尿病、腎機能障害などの基礎疾患を持つ方も、インフルエンザによって持病が悪化したり、合併症を起こしやすくなります。
妊婦さんも重症化のリスクが高いとされています。特に妊娠後期では重症化しやすく、母体だけでなく胎児にも影響が及ぶ可能性があります。妊娠を予定している方や妊婦さんは、医師と相談の上、ワクチン接種を検討することが推奨されます。
小児のインフルエンザ
小児、特に乳幼児では、インフルエンザが重症化しやすく、特有の合併症のリスクもあります。
インフルエンザ脳症は、主に5歳以下の小児に見られる重篤な合併症で、意識障害、けいれん、異常行動などが急速に進行します。発熱後すぐにこれらの症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。A型でもB型でも発症する可能性がありますが、A型でやや多いとされています。
熱性けいれんは、38℃以上の発熱に伴って起こるけいれんで、比較的よく見られます。多くは数分以内に自然に止まりますが、5分以上続く場合や繰り返す場合は医療機関を受診してください。
子供では脱水症状にもなりやすいため、水分補給に特に注意が必要です。おしっこの回数が極端に減る、唇が乾燥する、涙が出ない、ぐったりしているなどの症状が見られたら、速やかに受診しましょう。
異常行動にも注意が必要です。特に抗インフルエンザ薬の服用に関わらず、発熱後2日間程度は、突然走り出す、飛び降りようとするなどの異常行動が報告されています。子供が一人にならないように見守り、窓やベランダの施錠を確認するなどの対策が推奨されます。

よくある質問
A型とB型の同時感染は理論的には可能ですが、実際には非常にまれです。通常、どちらか一方に感染すると、その型の免疫反応が起こり、もう一方の型に同時に感染することは少ないとされています。
ただし、A型に感染して回復した後、同じシーズン内にB型に感染することは十分にあり得ます。A型とB型は別のウイルスですので、一方への免疫があっても、もう一方には効果がありません。
治療の観点からは、A型でもB型でも使用する薬は同じですので、型を知らなくても治療に支障はありません。多くの場合、症状の経過や流行状況から総合的に判断して治療が行われます。
型を知ることの意味は、主に症状の経過予測や、家族内での感染対策の参考にする程度です。医師が必要と判断した場合には検査が行われますが、必ずしも全ての患者に必要というわけではありません。
Q3: 熱が下がったらすぐに学校や仕事に行っても良いですか?
いいえ、熱が下がってもすぐに登校・出勤するのは避けるべきです。学校保健安全法では、「解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」が出席停止期間とされています。
これは、解熱後もしばらくは体内にウイルスが残っており、他者に感染させる可能性があるためです。個人の回復だけでなく、周囲への感染拡大防止のためにも、適切な期間は休養することが大切です。
Q4: ワクチンを接種したのにインフルエンザにかかりました。ワクチンは意味がないのですか?
インフルエンザワクチンは、発症を100%防ぐものではありません。しかし、発症リスクを50〜60%程度減らし、さらに重症化を予防する効果があります。
ワクチンを接種していても感染することはありますが、ワクチンを接種していない場合と比べて、症状が軽く済んだり、回復が早かったりすることが多いです。特に高齢者や基礎疾患を持つ方では、重症化や死亡を予防する効果が重要です。
Q5: 家族がインフルエンザになりました。予防的に薬を飲むことはできますか?
予防投与として抗インフルエンザ薬を使用することは可能ですが、原則として次のような条件を満たす場合に限られます。
- インフルエンザ患者と濃厚接触した、または同居している
- 重症化リスクが高い(高齢者、基礎疾患がある、妊婦など)
- ワクチン接種を受けていない、または接種後2週間以内で十分な免疫がない
予防投与は保険適用外となることが多く、医師の判断で行われます。また、予防投与を受けても100%発症を防げるわけではありません。基本的な感染対策(手洗い、マスク着用など)を併用することが重要です。
Q6: インフルエンザと普通の風邪はどう違いますか?
インフルエンザと普通の風邪は、原因ウイルスも症状も異なります。
普通の風邪は、主に鼻や喉の症状(鼻水、鼻づまり、喉の痛み)から始まり、発熱しても37〜38℃程度のことが多いです。全身症状は比較的軽く、徐々に症状が現れます。
一方、インフルエンザは突然の高熱(38℃以上)で始まり、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感などの全身症状が強く現れます。症状は急激に進行し、最初の数日間は非常に辛い状態が続きます。
Q7: 自然療法や漢方薬でインフルエンザは治せますか?
インフルエンザに対して、科学的に効果が証明されているのは、対症療法と抗インフルエンザ薬です。一部の漢方薬(麻黄湯など)には症状緩和の効果があるとする報告もありますが、抗インフルエンザ薬のような直接的な抗ウイルス効果はありません。
自然療法や民間療法の中には、症状を和らげる効果があるものもあるかもしれませんが、科学的根拠は限定的です。特に重症化リスクが高い方や、症状が重い場合には、適切な医療機関を受診することが重要です。
補完的に漢方薬や自然療法を取り入れたい場合は、医師や薬剤師に相談してから使用することをおすすめします。
まとめ
インフルエンザA型とB型の「どちらがきついか」という問いに対しては、一般的にA型の方が症状が強く出やすいものの、個人差が非常に大きいというのが答えです。
A型は高熱や全身症状が急激に現れ、最初の数日間は非常に辛い状態が続きます。一方、B型は症状が比較的穏やかなことが多いものの、消化器症状が出やすく、咳が長引きやすいという特徴があります。また、B型の方が症状が長期化する傾向もあります。
しかし、どちらの型でも重症化する可能性はあり、年齢や基礎疾患の有無、免疫状態などによって症状の重さは大きく変わります。特に小児、高齢者、基礎疾患を持つ方は、A型でもB型でも注意が必要です。
インフルエンザの予防には、ワクチン接種が最も効果的です。ワクチンは発症を完全に防ぐものではありませんが、発症リスクを減らし、重症化を予防する効果があります。加えて、手洗い、マスク着用、適度な湿度の維持、十分な睡眠とバランスの良い食事など、日常生活での予防対策も重要です。
もしインフルエンザに感染した場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。特に発症後48時間以内であれば、抗インフルエンザ薬の効果が期待できます。自宅では安静と十分な水分補給を心がけ、周囲への感染拡大を防ぐために、出席停止期間を守りましょう。
インフルエンザは毎年多くの方が感染する身近な感染症ですが、正しい知識と適切な対策によって、発症や重症化のリスクを減らすことができます。A型もB型も、侮ることなく、しっかりとした予防と早期対応を心がけましょう。
参考文献
- 厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html - 国立感染症研究所「インフルエンザとは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu.html - 日本感染症学会「インフルエンザ診療ガイド」
https://www.kansensho.or.jp/guidelines/ - 国立感染症研究所「インフルエンザ流行レベルマップ」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-map.html - 厚生労働省「インフルエンザQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html - 日本小児科学会「インフルエンザ脳症」
https://www.jpeds.or.jp/
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務