冬の訪れとともに、毎年話題になるインフルエンザ。中でもインフルエンザA型は、高熱や強い全身症状を引き起こすことで知られています。この記事では、インフルエンザA型の特徴から症状、診断、治療、そして予防方法まで、一般の方にもわかりやすく解説していきます。
🔍 インフルエンザA型とは?基本的な特徴と症状
🦠 インフルエンザA型とは何か
インフルエンザA型は、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性の呼吸器感染症です。インフルエンザウイルスには大きく分けてA型、B型、C型の3つの型があり、その中でもA型は最も感染力が強く、症状も重くなりやすいという特徴があります。
インフルエンザという名前の由来は、16世紀のイタリアで、占星家たちがこの病気を星や寒気の影響(influence)によるものと考えたことに由来しています。インフルエンザは普通の風邪とは明確に区別すべき疾患で、今なお人類に残されている重要な感染症の一つとされています。
💪 A型の特別な性質と他の型との違い
インフルエンザA型の最大の特徴は、他の型に比べて感染力が極めて強いことです。また、ウイルス自体が変異を起こしやすいため、一度感染して免疫を獲得しても、次の年には変異したウイルスに再び感染してしまう可能性があります。
インフルエンザA型ウイルスは、表面に突き出た2種類のタンパク質(ヘマグルチニンとノイラミニダーゼ)の組み合わせによって、さまざまな亜型が存在します。現在、日本で流行している主なA型ウイルスは、A(H1N1)pdm2009型とA(H3N2)香港型の2種類です。
インフルエンザA型の特徴として、ヒトだけでなく鳥類やブタ、ウマなどの動物にも感染することが挙げられます。これに対して、B型はほぼヒトにしか感染しません。この特性が、新型インフルエンザの出現や世界的大流行(パンデミック)につながる可能性があるため、常に警戒が必要とされています。
🌡️ 主な症状と経過
インフルエンザA型の症状は、普通の風邪と比べて急激かつ全身に現れるのが特徴です。
感染後、1日から3日程度の潜伏期間を経て、以下のような症状が急激に現れます。
- 高熱(38度以上、多くは38度から40度)
- 悪寒・寒気
- 全身倦怠感
- 頭痛
- 関節痛・筋肉痛
これらの全身症状が比較的急速に、ほぼ同時に現れることが、普通の風邪との大きな違いです。
📊 2024-2025シーズンの流行状況と診療動向
📈 今シーズンの特徴
2024-2025年シーズンのインフルエンザは、新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いてきた影響で、例年より早い時期からの流行が予想されています。厚生労働省の発表によると、今シーズンは以下のような特徴が見られています。
- A(H1N1)pdm2009型とA(H3N2)香港型の両方が流行
- 南半球での流行状況から、中等度から高い流行レベルが予測
- ワクチン株と流行株の一致度が良好で、ワクチン効果が期待される
- コロナ禍で免疫が低下している可能性があり、重症化リスクに注意が必要
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太医師(当院治療責任者)より
「今シーズンは例年より早い11月初旬からインフルエンザA型の患者さんが増加しています。特に20代から40代の働き盛りの方で、高熱と強い全身症状を訴える方が多く見られます。コロナ禍で3年間インフルエンザの流行が抑制されていた影響で、免疫が低下している可能性があり、症状が重く出る傾向があります。早期診断・早期治療が重要ですので、疑わしい症状があれば迷わず受診してください。」

🔬 診断方法と検査のタイミング
⚡ 迅速診断キット
現在、最も一般的に使用されている検査方法です。綿棒で鼻や喉の奥の粘膜を採取し、インフルエンザウイルスの抗原を検出します。
特徴:
- 検査時間:約5分から15分
- A型とB型の判別が可能
- 外来診療で広く使用されている
注意点:
発熱から12時間から24時間経過しないと、ウイルス量が少なく正確な結果が出ない場合があります。そのため、症状が出てすぐに検査をすると、感染していても陰性と判定されることがあります。ただし、臨床症状からインフルエンザが強く疑われる場合は、検査結果が陰性でも治療を開始することがあります。
🧬 その他の診断方法
鼻や喉の奥を拭って採取した液を検体とし、インフルエンザウイルスの遺伝子を検出するPCR検査もあります。ウイルスの型や構造を詳細に調べることができるため、新型ウイルスかどうかの判定が可能です。ただし、通常の診療では迅速診断キットが主流です。
血液検査によって抗体価を測定する血清診断は、急性期と回復期(2週間から3週間後)の抗体価を比較し、4倍以上の上昇があれば感染と診断します。確定診断には時間がかかるため、主に研究や疫学調査で用いられます。
💊 治療方法と使用薬剤
💉 抗インフルエンザ薬について
抗インフルエンザ薬は、インフルエンザ発症から48時間以内に使用することで、発熱などの症状が消えるまでの期間を短縮し、体外に排出されるウイルスの量を減らす効果があります。
現在、日本で使用されている主な抗インフルエンザ薬は以下の5種類です。
1. タミフル(オセルタミビル)
剤型:カプセルまたはドライシロップ
使用方法:1日2回、5日間服用
特徴:
- 最も使用実績が多い抗インフルエンザ薬
- 新生児(生後2週間以上)から使用可能
- ジェネリック医薬品があり、コストを抑えられる
- かつて10代への投与が制限されていたが、2018年より制限が解除された
2. リレンザ・イナビル(吸入薬)
リレンザ:1日2回、5日間吸入
イナビル:1回の吸入で治療完結
特徴:
- 5歳以上で使用可能
- A型、B型ともに安定した効果
- 吸入が正しくできることが必要
- 喘息のある方は使用に注意が必要
- イナビルは1回の吸入で済むため、飲み忘れの心配がない
3. ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)
剤型:錠剤
使用方法:1回の服用で治療完結
特徴:
- 2018年に発売された新しい薬
- 従来の薬とは異なる作用機序(ウイルスの増殖自体を抑える)
- ウイルス排出期間が短い
- 体重に応じて用量が異なる
- やや価格が高い
- 小児での耐性ウイルス出現が報告されている
ゾフルーザの効果については、こちらの記事「ゾフルーザの効果が出るまでの時間は?特徴や服用時の注意点を解説」で詳しく解説しています。
🩹 対症療法と自宅療養
抗インフルエンザ薬とともに、症状に応じた治療も行われます。
- 解熱鎮痛薬:高熱や頭痛、筋肉痛に対して使用
- 鎮咳薬:咳がひどい場合に使用
- 去痰薬:痰が切れにくい場合に使用
注意:小児や未成年者に対しては、アスピリンやジクロフェナクナトリウムなどの解熱鎮痛薬は使用できません。これらの薬は、インフルエンザ脳症を重症化させる可能性があるためです。解熱剤の適切な使用間隔については、「解熱剤は何時間あける?適切な間隔と安全な使い方を医師が解説」で詳しく解説しています。
- 安静と十分な睡眠
学校や仕事は休み、体力の回復に努めましょう。 - 水分補給
発熱により体の水分が失われやすいため、こまめに水分を摂取しましょう。お茶、スポーツドリンク、スープなどがおすすめです。 - 栄養補給
食欲がない場合も、消化の良いものを少しずつ食べるよう心がけましょう。 - 周囲への配慮
マスクを着用し、咳エチケットを守りましょう。こまめな手洗いも重要です。
経口補水液の作り方については、こちらの記事「経口補水液の作り方|自宅で簡単にできるレシピと正しい飲み方を解説」で詳しく解説しています。
🔄 感染経路・流行時期・合併症
🌊 感染経路と潜伏期間
インフルエンザA型の感染経路は、主に以下の2つです。
- 飛沫感染
感染者のくしゃみや咳、会話などによって飛び散った飛沫(つばなど)を、鼻や口から吸い込むことで感染します。飛沫は1メートルから2メートル程度飛ぶため、近距離での接触が感染リスクを高めます。 - 接触感染
感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手でドアノブ、手すり、スイッチなどに触れると、ウイルスが付着します。他の人がそれに触れ、その手で口や鼻、目を触ることで感染します。
インフルエンザA型の潜伏期間は、通常1日から3日程度です。この潜伏期間中は無症状ですが、発症前日頃からすでにウイルスを排出し始めていることがあります。
📅 流行時期と予測
日本では、インフルエンザA型は毎年11月下旬から12月上旬頃に発生し始め、翌年の1月から3月頃に患者数が増加し、4月から5月にかけて減少していくパターンを示します。流行のピークは例年1月から2月頃です。
北半球の冬季のインフルエンザ流行を予測する上で、南半球の流行状況が参考になります。南半球では北半球と季節が逆なため、オーストラリアなどでの流行状況を見ることで、次の冬の流行を予測することができます。
⚠️ 合併症について
インフルエンザA型は、特定の方々で重症化したり、合併症を引き起こしたりすることがあります。
🫁 主な合併症
肺炎:インフルエンザによる肺炎は、ウイルス性肺炎と細菌の二次感染による細菌性肺炎があります。高齢者や呼吸器疾患のある方に起こりやすく、注意が必要です。
インフルエンザ脳症:主に5歳以下の乳幼児に見られる重篤な合併症です。日本では、毎年50人から200人のインフルエンザ脳症患者が報告されており、約10%から30%が死亡しています。呼びかけに答えないなどの意識障害、意味不明の言動、持続性のけいれんなどの症状が見られた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。
- 65歳以上の高齢者
- 5歳以下の乳幼児(特に2歳未満)
- 妊婦
- 慢性呼吸器疾患(喘息など)のある方
- 心疾患のある方
- 糖尿病などの代謝性疾患のある方
- 腎機能障害のある方
- 免疫機能が低下している方
🛡️ 予防方法とワクチン接種
💉 インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンは、発病の可能性を減らすとともに、発病しても重症化を予防する効果が期待できます。
効果の例:
- 65歳以上の高齢者:発病を34%から55%阻止、死亡を82%阻止
- 6歳未満の小児:発病防止の有効率は60%
現在使用されているインフルエンザワクチンは、A型2種類とB型2種類の計4種類のウイルス株を含む4価ワクチンです。
- 接種時期:10月から12月頃が推奨されます
- 接種回数:13歳以上は1回、13歳未満は2回(2週間から4週間の間隔)
🧼 日常生活での予防対策
手洗いと咳エチケット
ウイルスを物理的に除去する最も基本的で効果的な方法です。流水で手を濡らし、石鹸を泡立て、手のひら、手の甲、指の間、親指、指先、手首をしっかり洗う(20秒から30秒)ことが重要です。
咳やくしゃみをする際は、マスクを着用し、マスクがない場合は、ティッシュやハンカチで口と鼻を覆い、とっさの時は袖や上着の内側で覆います。手のひらで覆うのは避ける(ウイルスが手に付着し、接触感染の原因となる)ことが大切です。
咳エチケットの正しい方法については、こちらの記事「咳エチケットのやり方を徹底解説!正しい方法で感染症を予防しよう」で詳しく解説しています。
環境整備と生活習慣
空気が乾燥すると、喉の粘膜の防御機能が低下します。加湿器などを使って、室内の湿度を50%から60%に保つことが効果的です。また、体の抵抗力を高めるために、日頃から十分な睡眠と栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
家族がインフルエンザに感染した場合の対策については、こちらの記事「家族がインフルエンザに感染!うつらない方法と家庭内での予防対策を医師が解説」で詳しく解説しています。
🚨 異常行動と注意事項
🔍 異常行動の特徴と対策
インフルエンザにかかった際、特に小児や未成年者において異常行動が報告されることがあります。
以下のような行動が異常行動として報告されています:突然立ち上がって部屋から出ようとする、興奮して窓を開けて外に出ようとする、意味不明な言動、幻覚を見るなどです。
💊 異常行動と薬の関係
かつて、タミフルを服用した小児や未成年者の異常行動が問題視されましたが、その後の調査で、抗インフルエンザ薬の服用の有無や種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には異常行動が発現することが明らかになっています。
厚生労働省は、以下のような対策を呼びかけています:少なくとも発熱後2日間は、小児・未成年者を一人にしない、玄関や窓の施錠を確実に行う、ベランダに面した部屋では寝かせない、窓に格子を設置するなどの対策を行うことです。

❓ よくある質問
はい、インフルエンザA型は何回でもかかる可能性があります。これは、A型ウイルスが変異しやすく、毎年異なる型のウイルスが流行するためです。また、同じシーズン内でもH1N1型とH3N2型の両方に感染することがあります。一度感染しても、翌年以降も予防接種を受けることが重要です。
発熱から12〜24時間経過した後が最適です。発症直後はウイルス量が少なく、正確な結果が得られない場合があります。ただし、症状が強い場合や重症化リスクの高い方は、検査結果を待たずに治療を開始することもあります。高熱や強い全身症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
学校保健安全法では「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで」が出席停止期間とされています。職場復帰についても、この基準を参考にすることが推奨されます。ただし、咳や倦怠感が残っている場合は、周囲への感染を防ぐため、マスク着用や体調管理に注意が必要です。
10月〜12月頃の接種が推奨されます。ワクチンの効果が現れるまでに約2週間かかるため、流行期(12月〜3月)に入る前の接種が理想的です。13歳以上は1回、13歳未満は2〜4週間間隔で2回接種します。毎年接種することで、その年の流行株に対する免疫を獲得できます。
両者とも発熱や咳、倦怠感などの症状が現れますが、インフルエンザA型は急激な発症と高熱(38℃以上)、強い筋肉痛・関節痛が特徴的です。新型コロナウイルスは嗅覚・味覚障害が特徴的で、症状の進行がやや緩やかな傾向があります。ただし、症状だけでの判別は困難なため、医療機関での検査が必要です。
感染拡大を防ぐため、以下の対策が重要です:①患者の隔離(できれば個室)、②マスクの着用、③こまめな手洗い・手指消毒、④室内の換気、⑤タオルや食器の共用を避ける、⑥湿度を50〜60%に保つ。また、家族も体調変化に注意し、症状が現れたら早めに医療機関を受診してください。
🏥 まとめ
インフルエンザA型は、高い感染力と重篤な症状を特徴とする感染症です。適切な予防対策を講じることで感染リスクを下げることができますが、感染してしまった場合は早期診断・早期治療が重要です。
特に今シーズンは、コロナ禍の影響で免疫力が低下している可能性があるため、例年以上に注意が必要です。ワクチン接種と日常的な感染対策を組み合わせて、インフルエンザから身を守りましょう。
疑わしい症状が現れた場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診することをお勧めします。
📚 参考文献
- 厚生労働省 – インフルエンザQ&A
- 国立感染症研究所 – インフルエンザ流行レベルマップ
- 日本小児科学会 – インフルエンザ診療ガイドライン
- 日本呼吸器学会 – 呼吸器感染症に関するガイドライン
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA) – 抗インフルエンザ薬の適正使用について
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務