はじめに
足の裏にできるほくろについて、気になったことはありませんか?普段あまり目にすることのない足の裏だからこそ、ほくろができていても気づかないことがあります。しかし、足の裏のほくろは、実は他の部位のほくろよりも注意深く観察する必要があります。
なぜなら、足の裏は悪性黒色腫(メラノーマ)という皮膚がんが発生しやすい部位の一つだからです。日本人を含むアジア系の人種では、特に手のひらや足の裏にメラノーマができやすいという特徴があります。
この記事では、足の裏のほくろについて、基本的な知識から危険なサインの見分け方、治療法まで、分かりやすく詳しく解説していきます。正しい知識を身につけることで、早期発見・早期治療につなげることができます。

足の裏のほくろの基本知識
ほくろとは何か
ほくろ(色素性母斑)は、メラニン色素を作るメラノサイトという細胞が集まってできた良性の腫瘍です。医学的には「色素性母斑」と呼ばれており、生まれつきあるもの(先天性色素性母斑)と、生まれた後にできるもの(後天性色素性母斑)があります。
ほくろは通常、以下のような特徴を持っています:
- 境界がはっきりしている
- 左右対称の形をしている
- 色が均一である
- 直径が6mm以下である
- 形や色、大きさが変わらない
足の裏のほくろの特殊性
足の裏は体の中でも特殊な部位です。常に体重がかかり、摩擦や圧迫を受けやすい環境にあります。また、普段は靴下や靴に覆われているため、変化に気づきにくいという問題もあります。
足の裏にできるほくろには、以下のような特徴があります:
1. 発見が遅れやすい 足の裏は自分では見えにくい場所にあるため、ほくろができても気づくのが遅れることがあります。特に高齢者や体が硬い方は、足の裏を確認することが困難な場合があります。
2. 刺激を受けやすい 歩行時の圧迫や靴による摩擦など、常に物理的な刺激を受けています。この刺激が、ほくろの変化に影響を与える可能性があります。
3. メラノーマの好発部位 日本人を含むアジア系の人種では、足の裏や手のひらなど、日光の当たらない部位にメラノーマができやすいという特徴があります。これは欧米人とは異なる傾向です。
良性のほくろと悪性の見分け方
足の裏にできたほくろが良性なのか悪性なのかを見分けることは、一般の方には困難です。しかし、危険なサインを知っておくことで、早期に医療機関を受診するきっかけになります。
ABCDEルール
皮膚科医が使用する「ABCDEルール」は、メラノーマの可能性を判断する際の重要な指標です。
A(Asymmetry:非対称性) 良性のほくろは通常、左右対称の形をしています。しかし、メラノーマは非対称的な形をしていることが多いです。ほくろの中心で線を引いたとき、左右が異なる形をしている場合は注意が必要です。
B(Border:境界) 良性のほくろは境界がはっきりしており、なめらかです。一方、メラノーマは境界が不規則で、ギザギザしていたり、にじんだような境界を持つことがあります。
C(Color:色調) 良性のほくろは通常、均一な茶色や黒色をしています。メラノーマは、一つのほくろの中に複数の色(茶色、黒色、青色、赤色、白色など)が混在することがあります。
D(Diameter:直径) 直径6mm以上のほくろは注意が必要です。ただし、メラノーマでも6mm以下のものがあるため、大きさだけで判断することはできません。
E(Evolving:変化) 形、色、大きさに変化がある場合は要注意です。特に短期間(数週間から数か月)での急激な変化は、メラノーマの可能性を示唆します。
足の裏特有の注意点
足の裏のほくろを観察する際は、以下の点にも注意してください:
1. 色の変化
- 黒色が濃くなる
- 色にムラができる
- 赤みを帯びる
- 色素が周囲に広がる
2. 形の変化
- 大きくなる
- 厚くなる(隆起する)
- 表面がざらざらする
- 潰瘍ができる
3. 症状の出現
- かゆみ
- 痛み
- 出血
- じくじくする
4. 周囲の変化
- 周囲の皮膚に色素が広がる
- 周囲が腫れる
- 衛星病変(小さなほくろが周囲にできる)
危険なほくろの特徴
悪性黒色腫(メラノーマ)について
悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラノサイト(色素細胞)ががん化した皮膚がんです。皮膚がんの中でも最も悪性度が高く、早期に転移する可能性があります。しかし、早期に発見し適切な治療を行えば、完治が期待できるがんでもあります。
日本人におけるメラノーマの特徴
日本人のメラノーマには、欧米人とは異なる特徴があります:
1. 発生部位
- 足の裏(約30-40%)
- 爪の下(約20-25%)
- 手のひら(約5-10%)
- 日光の当たらない部位に多い
2. 年齢分布
- 50-70歳代に多い
- 高齢になるほど発症率が高くなる
3. 種類 末端黒子型メラノーマ(ALM:Acral Lentiginous Melanoma)が最も多く、全体の約60-70%を占めます。
足の裏のメラノーマの初期症状
足の裏のメラノーマは、初期には痛みやかゆみなどの自覚症状がないことが多いため、見た目の変化に注意を払うことが重要です。
初期の変化
- 境界不明瞭な茶色や黒色の斑点
- 色調にムラがある
- 少しずつ大きくなる
- 形が不規則
進行時の変化
- 隆起してくる(結節型への変化)
- 潰瘍形成
- 出血しやすくなる
- 痛みを伴うことがある
診断と検査方法
皮膚科での診察
足の裏のほくろが気になる場合は、皮膚科専門医による診察を受けることが重要です。皮膚科では以下のような検査を行います。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピー(皮膚鏡)は、皮膚の表面を拡大して観察する器具です。肉眼では見えない細かい構造や色調の変化を確認することができます。
ダーモスコピーで確認できること
- 色素の分布パターン
- 血管の構造
- 表皮の構造
- 真皮の変化
メラノーマに特徴的なダーモスコピー所見
- 不規則な色素ネットワーク
- ブルーホワイトベール
- 不規則な点状・球状構造
- 血管構造の異常
組織生検
ダーモスコピーで悪性が疑われる場合や、診断が困難な場合には、組織生検が行われます。
パンチ生検 直径3-4mmの円筒形の器具を使用して、病変の一部を採取する方法です。局所麻酔下で行われ、痛みはほとんどありません。
切除生検 病変全体を切除して組織検査を行う方法です。小さな病変の場合は、診断と治療を同時に行うことができます。
画像検査
メラノーマが疑われる場合や、すでに診断が確定した場合には、転移の有無を調べるために以下の検査が行われることがあります。
超音波検査 リンパ節の腫大や転移の有無を調べます。
CT検査・MRI検査 全身の転移の有無を詳しく調べます。
PET-CT検査 がん細胞の代謝活性を利用して、全身の転移を調べる検査です。
治療方法
良性ほくろの治療
良性のほくろであっても、以下のような場合には治療が検討されます:
- 外観上の理由で除去を希望する場合
- 靴や靴下との摩擦で炎症を繰り返す場合
- 大きくなって歩行に支障をきたす場合
- 悪性化のリスクが高い場合
1. 切除縫合術 メスでほくろを切除し、縫合する方法です。組織検査も同時に行うことができます。
適応
- 悪性の可能性がある場合
- 深い部分まで色素細胞がある場合
- 確実に除去したい場合
利点
- 完全切除が可能
- 再発のリスクが低い
- 組織検査ができる
欠点
- 手術跡が残る
- 縫合が必要
2. 炭酸ガスレーザー治療 炭酸ガスレーザーを使用してほくろを蒸散させる方法です。
適応
- 表面に限局した良性のほくろ
- 小さなほくろ
- 多発性のほくろ
利点
- 出血が少ない
- 治癒が早い
- 複数のほくろを同時に治療できる
欠点
- 組織検査ができない
- 深い部分の除去が困難
- 再発の可能性がある
3. 冷凍凝固術 液体窒素を使用してほくろを凍結させる方法です。
適応
- 表面の薄いほくろ
- 高齢者や手術が困難な患者
利点
- 簡便な治療
- 外来で施行可能
欠点
- 複数回の治療が必要な場合がある
- 色素沈着のリスク
悪性黒色腫の治療
メラノーマと診断された場合は、以下のような治療が行われます。
1. 外科的切除 メラノーマの標準治療は外科的切除です。病変部を十分な切除マージン(安全域)をつけて切除します。
切除マージンの目安
- 上皮内メラノーマ:0.5-1cm
- 浸潤の厚さが1mm以下:1cm
- 浸潤の厚さが1-2mm:1-2cm
- 浸潤の厚さが2mm以上:2cm
2. センチネルリンパ節生検 メラノーマから最初に転移するリンパ節(センチネルリンパ節)を調べる検査です。転移の有無によって、その後の治療方針が決まります。
3. リンパ節郭清 センチネルリンパ節に転移が認められた場合や、リンパ節が腫大している場合に行われます。
4. 薬物療法 進行したメラノーマに対しては、以下のような薬物療法が行われます:
- 免疫チェックポイント阻害薬
- 分子標的治療薬
- 化学療法
- インターフェロン療法
5. 放射線治療 手術が困難な場合や、転移巣に対して行われることがあります。
足の裏のほくろの予防法
日常的なセルフチェック
足の裏のほくろを早期発見するためには、定期的なセルフチェックが重要です。
チェックの頻度 月に1回程度、足の裏を詳しく観察しましょう。
チェックの方法
- 明るい場所で、足の裏全体を観察する
- 鏡を使って見えにくい部分も確認する
- ほくろの形、色、大きさを記録する
- 写真を撮って変化を記録する
チェックポイント
- 新しいほくろができていないか
- 既存のほくろに変化はないか
- 色の変化はないか
- 大きさの変化はないか
- かゆみや痛みはないか
生活習慣での注意点
1. 適切な靴の選択
- サイズの合った靴を選ぶ
- 通気性の良い材質を選ぶ
- 長時間の使用は避ける
2. 足の清潔を保つ
- 毎日足を洗う
- よく乾かす
- 清潔な靴下を着用する
3. 外傷を避ける
- 裸足での歩行を避ける
- 足に外傷を負った場合は適切に処置する
定期検診の重要性
皮膚科検診 年に1回は皮膚科での検診を受けることをお勧めします。特に以下の方は定期的な検診が重要です:
- 家族歴にメラノーマがある方
- 多数のほくろがある方
- 50歳以上の方
- 過去にメラノーマの治療歴がある方

よくある質問と回答
Q1: 足の裏にほくろができる原因は何ですか?
A1: 足の裏のほくろの原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関係していると考えられています:
- 遺伝的要因: 生まれつきの体質や遺伝子の影響
- 物理的刺激: 歩行時の圧迫や摩擦
- 加齢: 年齢とともに出現することが多い
- ホルモンの影響: 妊娠や思春期などホルモンバランスの変化
日本人を含むアジア系の人種では、紫外線の影響を受けにくい手のひらや足の裏にもメラノーマができやすいという特徴があります。
Q2: 子供の足の裏にほくろができた場合、心配ありませんか?
A2: 小児期に足の裏にほくろができることは珍しくありません。多くの場合は良性の色素性母斑です。しかし、以下の場合は皮膚科での検査をお勧めします:
- 生後6か月以内に出現した場合
- 急速に大きくなる場合
- 色調にムラがある場合
- 形が不規則な場合
- 直径が6mmを超える場合
小児のメラノーマは非常に稀ですが、全くないわけではありません。心配な場合は早めに皮膚科専門医に相談してください。
Q3: 足の裏のほくろを除去したいのですが、どのような方法がありますか?
A3: 足の裏のほくろの除去方法には以下があります:
切除縫合術
- 最も確実な方法
- 組織検査が可能
- 手術跡が残る
炭酸ガスレーザー
- 小さな良性のほくろに適している
- 組織検査はできない
- 比較的きれいに仕上がる
冷凍凝固術
- 表面の薄いほくろに適している
- 複数回の治療が必要な場合がある
どの方法が最適かは、ほくろの大きさ、形、良性・悪性の可能性などを総合的に判断して決定します。まずは皮膚科専門医にご相談ください。
Q4: 足の裏のほくろから出血した場合、どうすればよいですか?
A4: 足の裏のほくろから出血した場合は、以下の対応を取ってください:
応急処置
- 清潔なガーゼで圧迫止血する
- 絆創膏などで保護する
- 感染を避けるため清潔に保つ
医療機関への受診 以下の場合は速やかに皮膚科を受診してください:
- 外傷がないのに出血した場合
- 繰り返し出血する場合
- 出血と同時にほくろの形や色が変化している場合
- 痛みを伴う場合
ほくろからの出血は、悪性化のサインの一つとして重要です。自己判断せずに専門医の診察を受けることをお勧めします。
Q5: 家族にメラノーマの人がいます。足の裏のほくろが心配です。
A5: 家族歴がある場合は、メラノーマのリスクが高くなる可能性があります。以下の点に注意してください:
リスク要因
- 遺伝的素因
- 環境要因への感受性の増加
- 多数のほくろの存在
推奨事項
- 月1回のセルフチェック
- 年1回の皮膚科検診
- 変化があった場合の迅速な受診
- ダーモスコピーによる詳細な観察
家族歴がある場合でも、適切な予防と早期発見により、メラノーマは十分に治療可能です。過度に心配せず、定期的なチェックを心がけてください。
Q6: 妊娠中に足の裏のほくろが大きくなりました。問題ありませんか?
A6: 妊娠中はホルモンの影響により、ほくろが大きくなったり色が濃くなったりすることがあります。多くの場合は生理的な変化ですが、以下の点に注意が必要です:
正常な変化
- 既存のほくろの軽度の拡大
- 色調の変化
- 妊娠終了後に元に戻ることが多い
注意が必要な変化
- 急激な拡大(数週間で明らかに大きくなる)
- 形の不規則な変化
- 色調のムラ
- 症状(かゆみ、痛み、出血)の出現
妊娠中でも皮膚科の診察は可能です。心配な変化がある場合は、産婦人科医と相談の上、皮膚科を受診してください。
Q7: 高齢の親の足の裏にほくろを見つけました。どうすればよいですか?
A7: 高齢者の足の裏のほくろは、以下の理由で注意が必要です:
高齢者の特徴
- メラノーマのリスクが高い年代
- セルフチェックが困難
- 変化に気づきにくい
対応方法
- 定期的な観察: 家族が定期的にチェックする
- 記録: 写真を撮って変化を記録
- 早期受診: 少しでも変化があれば皮膚科を受診
- プロフェッショナルケア: 定期的な皮膚科検診
高齢者のメラノーマは進行が早い場合があります。「年齢だから仕方ない」と考えずに、積極的な対応をお勧めします。
最新の診断・治療技術
AIを活用した診断支援
近年、人工知能(AI)を活用した皮膚病変の診断支援システムが開発されています。これらのシステムは、大量の皮膚病変画像を学習し、メラノーマと良性病変を区別する精度が向上しています。
AIシステムの特徴
- 高い診断精度
- 迅速な判定
- 客観的評価
- スクリーニングツールとしての活用
ただし、AIによる診断はあくまで補助的なものであり、最終的な診断と治療方針の決定は、必ず皮膚科専門医が行います。
デジタルダーモスコピー
従来のダーモスコピーをデジタル化し、画像の保存や比較が可能になりました。
利点
- 経時的変化の記録
- 遠隔診断の可能性
- 教育・研究への活用
- 患者への説明の向上
非侵襲的診断技術
組織生検を行わずに診断する技術の開発が進んでいます。
反射型共焦点顕微鏡
- 細胞レベルでの観察が可能
- 非侵襲的
- リアルタイム診断
光コヒーレンストモグラフィー(OCT)
- 皮膚の断層像を撮影
- 浸潤の深さの評価
- 治療効果の判定
メラノーマの最新治療
免疫チェックポイント阻害薬
近年、メラノーマ治療において免疫チェックポイント阻害薬が大きな成果を上げています。
主な薬剤
- ニボルマブ(オプジーボ)
- ペムブロリズマブ(キートルーダ)
- イピリムマブ(ヤーボイ)
作用機序 がん細胞が免疫系の攻撃から逃れるメカニズムを阻害し、免疫系によるがん細胞の攻撃を活性化します。
効果 進行したメラノーマでも長期生存が期待できるようになりました。
分子標的治療
メラノーマの遺伝子変異を標的とした治療薬も開発されています。
BRAF阻害薬
- ダブラフェニブ(タフィンラー)
- ベムラフェニブ(ゼルボラフ)
MEK阻害薬
- トラメチニブ(メキニスト)
- コビメチニブ(コテリック)
これらの薬剤を組み合わせることで、治療効果の向上が期待されています。
足の裏のほくろと靴の関係
靴による刺激とほくろの変化
足の裏のほくろは、靴による慢性的な刺激を受けやすい環境にあります。不適切な靴の着用は、ほくろに以下のような影響を与える可能性があります。
物理的刺激の影響
- 摩擦による慢性的な刺激
- 圧迫による血流の阻害
- 繰り返される外傷
刺激によるほくろの変化
- 炎症の発生
- 色調の変化
- 大きさの変化
- 形状の変化
適切な靴の選び方
足の裏にほくろがある方は、特に靴選びに注意が必要です。
サイズ選び
- 足の長さだけでなく幅も考慮
- 夕方の足のむくみを考慮してサイズを選ぶ
- つま先に1-1.5cmの余裕を持たせる
材質
- 通気性の良い素材を選ぶ
- 吸湿性のある材質
- 適度な柔軟性のある素材
形状
- 足の形に合った靴型
- つま先の圧迫が少ないもの
- アーチサポートがあるもの
インソール
- クッション性のあるインソールの使用
- ほくろの部分に当たる場合は穴を開ける
- 定期的な交換
足の裏のほくろと職業
職業による影響
職業によっては、足の裏への刺激が増加し、ほくろに影響を与える可能性があります。
リスクの高い職業
- 長時間立ち仕事をする職業(販売員、料理人など)
- 歩行量の多い職業(配達員、看護師など)
- 安全靴を着用する職業(建設作業員、製造業など)
- スポーツ関連の職業(選手、指導者など)
対策
- 適切な作業靴の選択
- インソールの活用
- 休憩時の足のケア
- 定期的な足の観察
スポーツと足の裏のほくろ
スポーツ活動は足への負荷が大きく、特に注意が必要です。
影響の大きいスポーツ
- 長距離走
- サッカー
- バスケットボール
- テニス
- バレーボール
スポーツ時の対策
- 適切なスポーツシューズの選択
- 高機能インソールの使用
- テーピングやパッドによる保護
- 活動後の足の観察
予後と生活の質
メラノーマの予後
足の裏のメラノーマの予後は、発見時の病期により大きく異なります。
病期別5年生存率
- ステージ0(上皮内がん):99%以上
- ステージI:95-100%
- ステージII:70-95%
- ステージIII:40-70%
- ステージIV:10-25%
これらの数字からも、早期発見の重要性がわかります。
治療後の生活の質
メラノーマの治療後は、以下の点に注意して生活の質の維持・向上を図ります。
身体的側面
- 手術跡のケア
- 歩行機能の維持
- 痛みの管理
- 定期的なフォローアップ
心理的側面
- 再発への不安の軽減
- 社会復帰への支援
- 家族とのコミュニケーション
- メンタルヘルスケア
社会的側面
- 職場復帰への支援
- 経済的な支援
- 社会保障制度の活用
家族・周囲の人へのアドバイス
家族ができること
足の裏のほくろが心配な家族に対して、周囲の人ができることは多くあります。
観察の支援
- 定期的な足の裏の観察を手伝う
- 変化を記録する
- 医療機関受診への付き添い
心理的支援
- 不安に対する理解と共感
- 正しい情報の共有
- 前向きな気持ちの維持
日常生活の支援
- 適切な靴選びの手伝い
- 足のケアの援助
- 健康的なライフスタイルの維持
早期発見のための啓発
身近な人に対する啓発活動も重要です。
啓発のポイント
- 足の裏のほくろの特殊性の説明
- セルフチェックの方法の指導
- 危険なサインの認識
- 受診の重要性の理解
まとめ
足の裏のほくろは、他の部位のほくろよりも特別な注意が必要です。日本人を含むアジア系の人種では、足の裏にメラノーマができやすいという特徴があり、この部位の変化を見逃すことは命に関わる可能性があります。
重要なポイント
- 定期的な観察: 月に1回は足の裏を詳しく観察し、ほくろの状態をチェックしましょう。
- ABCDEルールの活用: 非対称性、境界、色調、直径、変化の5つのポイントで、危険なサインを見逃さないようにしましょう。
- 早期受診: 少しでも変化や気になることがあれば、迷わず皮膚科専門医を受診しましょう。
- 適切な靴選び: 足への刺激を最小限に抑えるため、自分に合った靴を選び、適切なケアを行いましょう。
- 家族の協力: 自分では見えにくい部分だからこそ、家族の協力を得て、定期的なチェックを行いましょう。
メラノーマは確かに恐ろしい病気ですが、早期に発見し適切な治療を受ければ、完治が期待できる病気でもあります。最新の医療技術により、診断精度は向上し、治療法も大きく進歩しています。
足の裏のほくろについて正しい知識を持ち、適切な対応を取ることで、健康な生活を維持することができます。心配なことがあれば、一人で悩まずに専門医に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。足の裏のほくろについてご心配なことがございましたら、お気軽にご相談ください。早期発見・早期治療により、患者様の健康をお守りすることが私たちの使命です。
参考文献
- 日本皮膚科学会ガイドライン「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/guides/
- 国立がん研究センター「がん情報サービス」 https://ganjoho.jp/
- 厚生労働省「がん対策情報」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/index.html
- 日本メラノーマ学会 http://www.melanoma.gr.jp/
- がん研究振興財団「がんの統計」 https://www.fpcr.or.jp/publication/statistics.html
- 日本皮膚科学会雑誌「足底メラノーマの診断と治療」 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/dermatol/-char/ja
- 日本癌治療学会「がん診療ガイドライン」 https://www.jsco-cpg.jp/
- 皮膚科診療「ダーモスコピーによる皮膚腫瘍診断」 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/dermatology/-char/ja
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務