足の付け根、いわゆる「鼠径部(そけいぶ)」にできものやしこりを発見すると、多くの方が不安を感じることでしょう。この部位は下着や衣類で隠れる場所であるため、人に相談しにくく、受診をためらってしまう方も少なくありません。しかし、足の付け根にできるできものには様々な原因があり、中には早期の治療が必要なものも含まれています。
本記事では、足の付け根にできるできものの種類や原因、症状、そして適切な治療法について、形成外科・皮膚科の専門的な観点から詳しく解説します。八重洲・日本橋エリアで足の付け根のできものにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

📋 目次
- 鼠径部(足の付け根)とは
- 足の付け根にできるできものの種類
- 粉瘤(アテローム)について
- 鼠径ヘルニア(脱腸)について
- リンパ節の腫れについて
- 脂肪腫について
- 化膿性汗腺炎について
- その他のできもの
- 足の付け根のできものの診断方法
- 治療法と受診すべき診療科
- 放置するとどうなる?
- 予防とセルフケア
- まとめ
🔍 1. 鼠径部(足の付け根)とは
鼠径部とは、太ももの付け根のややくぼんだ部分から斜め上へと向かう線、いわゆるVライン(ビキニライン)付近とその内側のあたりを指します。この部位には「鼠径管」という細い管が存在することから、このように呼ばれています。
解剖学的には、鼠径部には以下の重要な構造物が存在しています:
- 鼠径靭帯
- 動脈・静脈
- リンパ管・リンパ節
- 神経
これらの構造物は体の免疫システムにおいても重要な役割を果たすため、この部位にできものが生じた場合、その原因は多岐にわたる可能性があります。
鼠径部は構造上、皮膚同士が密着しやすく、下着やズボンによる摩擦を受けやすい場所です。また、汗をかきやすく蒸れやすい環境にあるため、様々な皮膚トラブルが起こりやすい部位でもあります。特に女性の場合は、生理中のナプキンやガードルなどの締め付けが強い衣類の使用によって通気性が悪くなり、皮膚のバリア機能が低下しやすいため、より注意が必要です。
📊 2. 足の付け根にできるできものの種類
足の付け根にできるできものには、良性のものから注意が必要なものまで様々な種類があります。大まかに以下のように分類されます。
🟢 良性のできもの
- 粉瘤(アテローム)
- 脂肪腫
- 鼠径ヘルニア(脱腸)
- 静脈瘤
- ヌック管水腫(女性特有)
- 陰嚢水腫・精索水腫(男性特有)
⚠️ 注意が必要なできもの
- リンパ節の腫れ(感染症や悪性腫瘍の可能性)
- 化膿性汗腺炎
- 悪性リンパ腫
- がんのリンパ節転移
これらのできものは、見た目だけでは正確な診断が難しいことも多く、自己判断は禁物です。できものを見つけた場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
🎯 3. 粉瘤(アテローム)について
📖 粉瘤とは
粉瘤は、医学的には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」とも呼ばれる良性の皮下腫瘍です。皮膚の内側に袋状の構造物(嚢胞)ができ、その中に本来は皮膚から剥がれ落ちるはずの角質や皮脂が溜まることで発生します。形成外科や皮膚科で治療する機会が最も多い皮下腫瘍の一つです。
粉瘤は耳の後ろや顔、首、背中、お尻などにできやすい傾向がありますが、身体のどこにでも発生する可能性があります。足の付け根(鼠径部)は摩擦や蒸れが多く、粉瘤ができやすいハイリスク部位の一つです。
粉瘤についてより詳しく知りたい方は、粉瘤の大きさと手術目安に関する記事もご参照ください。
🩺 粉瘤の症状
粉瘤の症状は段階的に変化します:
- 初期症状: 皮膚の下にコロコロとした小さなしこりとして触れる
- 特徴的所見: しこりの中央に「へそ」と呼ばれる黒い点(開口部)
- 進行時: 内部に皮脂や角質が蓄積され、徐々に大きくなる
- 圧迫時: 開口部から不快なニオイを伴うドロドロとした内容物が出る
通常、粉瘤は痛みを伴いませんが、細菌感染を起こすと「感染性粉瘤」となり、患部が赤く腫れて痛みを生じます。さらに炎症が進行すると、皮膚の下に膿が溜まり「膿瘍(のうよう)」という状態になり、強い圧痛や熱感を伴うようになります。
粉瘤の痛みについて詳しく知りたい方は、粉瘤の痛みはなぜ起こる?症状の特徴と放置のリスクの記事をご覧ください。
🔬 粉瘤の原因
粉瘤が発生する正確な原因は、現時点では完全には解明されていません。以下のような要因が関与すると考えられています:
- 擦り傷やニキビ、ウイルスによるイボなどの外傷
- ヒトパピローマウイルスの感染
- 皮膚にできた外傷
- 体質的な要因
足の付け根は、下着やスキニーパンツ、ガードルなどの締め付けが強い衣類による刺激を受けやすく、これらが皮膚のターンオーバーを乱す要因になると考えられています。
⚕️ 粉瘤の治療法
粉瘤は自然に治ることはなく、完治させるためには手術で袋(嚢胞)ごと摘出する必要があります。内容物を注射器などで吸い出したり、切開して排膿したりしても、袋が残っている限り再び中身が溜まって再発してしまいます。
炎症を起こしていない粉瘤の場合:
- 局所麻酔を用いた日帰り手術で切除
- 皮膚腫瘍摘出術(皮膚を紡錘形に切開)
- くり抜き法(小さな穴を開けて摘出)
炎症を起こしている場合:
- まず抗生剤の内服で炎症を抑制
- 膿が溜まっている場合は切開排膿
- 炎症が落ち着いてから腫瘍を切除
粉瘤の手術費用は保険適用となり、部位や大きさによって異なりますが、3割負担で概ね1万円から1万5千円程度です。
粉瘤の手術方法について詳しく知りたい方は、粉瘤の切開法とくり抜き法の違いや粉瘤のくりぬき法のメリット・デメリットの記事をご参照ください。
🚨 4. 鼠径ヘルニア(脱腸)について
📖 鼠径ヘルニアとは
鼠径ヘルニアは、足の付け根(鼠径部)の筋肉に隙間(ヘルニア門)ができ、腸などの腹部の臓器がその隙間から皮膚の下に飛び出す病気です。一般的には「脱腸」とも呼ばれています。腹部に生じるヘルニアの約80%が鼠径ヘルニアであり、非常に一般的な病気です。
鼠径ヘルニアは小児にも見られますが、成人、特に40歳代以上の男性に多く発症します。研究報告によれば、男性の約3人に1人が生涯に一度は鼠径ヘルニアを発症するとされています。女性の場合は大腿ヘルニアという種類が多く、これは加齢や出産などで筋肉や筋膜が緩んだときに起こりやすいとされています。
🩺 鼠径ヘルニアの症状
鼠径ヘルニアの代表的な症状は、鼠径部にピンポン球大の膨らみ(しこり)が現れることです。この膨らみには以下のような特徴があります:
- 立っているときやお腹に力を入れたときに膨らみが大きくなる
- 横になったり手で押したりすると引っ込む
- 初期段階では痛みを伴わないことが多い
- 鼠径部に重苦しい感じや違和感がある
- 進行すると痛みを感じるようになる
- せきをしたり姿勢を変えたりしたときに不快感を引き起こす
⚠️ 嵌頓(かんとん)の危険性
鼠径ヘルニアを放置した場合に最も注意すべきなのが「嵌頓(かんとん)」です。嵌頓とは、飛び出した腸などの臓器が筋肉のすき間に挟まったまま戻らなくなる状態を指します。
嵌頓が起こると、以下のような深刻な事態につながる可能性があります:
- 腸閉塞が起こり、腹痛、吐き気、嘔吐などの症状
- 締め付けられた腸への血流が途絶え、腸が壊死(壊疽)
- 壊死が進行すると腸に穴が開き、腹膜炎を引き起こす
- 敗血症やショック状態に陥り、命に関わる危険な状態
嵌頓が起こる確率は発症後1〜2年で約1%と高くはありませんが、前触れなく突然に起こる点に注意が必要です。「戻らない」「すごく痛い」という症状が出た場合は、すぐに救急車を呼んで緊急手術が可能な病院を受診する必要があります。
⚕️ 鼠径ヘルニアの治療法
鼠径ヘルニアは薬や運動療法では治療できず、自然に治癒することもありません。治療の原則は手術です。
手術方法には以下の2種類があります:
- 鼠径部切開法: 鼠径部を3〜4cmほど切開
- 腹腔鏡下修復術: 腹腔内に腹腔鏡を挿入
近年は多くの症例でポリプロピレン製のメッシュを用いてヘルニア門を含む脆弱な組織を補強する方法が主流となっています。
嵌頓していない状態であれば、日帰り手術が可能なケースも多くあります。手術を受ければほとんどの方が1回の治療で完治し、再発リスクも1%以下といわれています。
🛡️ 5. リンパ節の腫れについて
📖 リンパ節とは
リンパ節は豆のような形をした小さな器官で、全身に数百個存在しています。体内を流れるリンパ管の途中にあり、ウイルスや細菌、腫瘍細胞などの異物を捕らえて処理する免疫システムの重要な拠点です。
リンパ節は全身に分布していますが、特に以下の部位の皮膚の下に多く集まっています:
- 首(頸部)
- わきの下(腋窩)
- 足の付け根(鼠径部)
これらの部位のリンパ節は体表から触れやすく、腫れた場合に自分で気づきやすい場所でもあります。
🔍 鼠径部のリンパ節が腫れる原因
足の付け根のリンパ節が腫れる原因は様々ですが、主に以下の3つのカテゴリーに分けられます:
🦠 感染症によるもの
- 足や陰部への細菌やウイルス侵入に対する免疫反応
- 性感染症(梅毒、クラミジア、性器ヘルペス、HIVなど)
- 多くの場合、数日間のうちに急に腫れて痛みを伴う
🔄 自己免疫疾患によるもの
- 関節リウマチ
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
- シェーグレン症候群
- 発熱や体のだるさ、関節痛などの全身症状を伴うことが多い
🎗️ 悪性腫瘍によるもの
- 悪性リンパ腫などの血液のがん
- 他の臓器のがんのリンパ節転移
- 通常は痛みを伴わず、週〜月単位で徐々に大きくなる
⚠️ リンパ節腫大の注意すべきサイン
リンパ節の腫れが1cm以下で痛みもなければ、正常な免疫反応の範囲内と考えられ、様子を見ても良いでしょう。しかし、以下のような場合は医療機関を受診することをお勧めします:
- しこりが2〜3cm以上に腫れている
- 腫れが1〜2カ月以上続く
- 痛みを伴わずに徐々に大きくなっている
- 発熱、体重減少、寝汗などの全身症状を伴う
- 複数箇所のリンパ節が同時に腫れている
🧈 6. 脂肪腫について
📖 脂肪腫とは
脂肪腫は、皮下に発生する良性の腫瘍で、成熟した脂肪細胞が増殖して形成されます。皮下にできる良性腫瘍の中で最も多くみられるもので、簡単にいうと脂肪の「できもの」です。
脂肪腫は身体のどこにでもできますが、以下の部位に好発します:
- 背部
- 肩
- 首
- 上腕
- 臀部
- 大腿部
足の付け根に発生することもあります。幼少期にでき始め、徐々に発育していくと考えられており、40〜50歳代で気づかれることが多いです。男女比では女性にやや多く、肥満の方に多くみられるともいわれています。
🩺 脂肪腫の症状
脂肪腫の特徴は以下のとおりです:
- 柔らかいゴムのような感触
- 押すと動くことが多い
- 通常、痛みはなし
- 大きさは数mm程度から10cm以上まで様々(一般的には2〜5cm程度)
- 少しずつ成長し、自然に消えることはない
まれに血管成分に富む「血管脂肪腫」では、つまむと痛みを伴うことがあります。また、脂肪腫が神経を圧迫している場合にも痛みやしびれを感じることがあります。
🔬 脂肪腫の原因
脂肪腫の発生原因ははっきりとは分かっていません。以下の要因が関与すると考えられています:
- 刺激を受けやすい場所での発症傾向
- 外傷との関連
- 肥満、高脂血症、糖尿病との関連
- 遺伝子異常(染色体異常)
- 家族性脂肪腫症などの遺伝性疾患
⚠️ 脂肪腫と脂肪肉腫の違い
脂肪腫は良性腫瘍ですが、見た目が似ている「脂肪肉腫」という悪性腫瘍があり、鑑別が重要です。脂肪肉腫は非常に稀ながんですが、以下のような特徴がある場合は注意が必要です:
- 腫瘍が5cm以上と大きい
- 急速に大きくなっている
- 硬い感触がある
- 痛みを伴う
- 深い場所(筋肉内など)にある
このような場合は、画像検査や病理組織検査による正確な診断が必要です。
⚕️ 脂肪腫の治療法
脂肪腫は良性であり、健康へのリスクは低いため、小さくて症状がない場合は経過観察でも問題ありません。しかし、以下のような場合は手術による摘出が検討されます:
- 見た目が気になる
- 痛みや不快感がある
- 急速に大きくなっている
- 日常生活に支障がある
手術は局所麻酔を用いた日帰り手術で行われることが多く、脂肪腫の直上を切開して被膜を破らないように周囲の組織から剥がして摘出します。手術時間は大きさにもよりますが、15〜45分程度です。脂肪腫の手術は保険適用となります。
💧 7. 化膿性汗腺炎について
📖 化膿性汗腺炎とは
化膿性汗腺炎は、毛包(毛根を包む組織)が長期間にわたって炎症を繰り返す慢性の皮膚疾患です。以前は「慢性膿皮症」と呼ばれていました。
この疾患は、以下の部位に発症します:
- 腋窩(わきの下)
- 鼠径部(足の付け根)
- 臀部(お尻)
- 乳房下
これらはアポクリン汗腺が集中する部位であり、人に見せるのが恥ずかしい場所にできることが多いため、受診が遅れて悪化してしまうケースも少なくありません。
化膿性汗腺炎は思春期以降の男女に発症することがほとんどで、特に日本では20〜40代が最も発症しやすいと言われています。女性は閉経後に発症することが珍しいため、女性ホルモンとの関係が疑われています。一方、男性の方が重症化しやすいとされています。
🩺 化膿性汗腺炎の症状
化膿性汗腺炎の症状は、通常、赤みや痛みを伴うしこり(結節)の形成から始まります。この疾患の特徴として、症状が治ったり再発したりを繰り返すことが挙げられます。
進行すると、以下のような状態になります:
- しこりが膿を持って膿瘍(膿のたまり)になる
- 膿が自然に破裂して排出される
- 皮膚の下にトンネル状の通路(瘻孔)ができる
- 瘻孔から膿や分泌物が排出される
- 炎症を繰り返すことで皮膚が硬くなり、瘢痕(傷あと)が残る
重症化すると、複数の瘻孔が連結して蜂巣状の構造を形成することもあり、痛みや悪臭により日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
🔬 化膿性汗腺炎の原因
化膿性汗腺炎の正確な発症メカニズムは完全には解明されていませんが、毛穴の詰まりが発症のきっかけとなることが分かっています。毛穴が何らかの理由で詰まると、毛包内の内容物が排出されなくなり、最終的には皮膚内で破裂して炎症を引き起こすと考えられています。
リスク因子としては以下が挙げられます:
- 喫煙: ニコチンが毛穴の詰まりを引き起こす
- 肥満: 皮膚への圧力や摩擦の増加、炎症物質の産生増加
- 機械的刺激: 窮屈な衣服による摩擦
- 遺伝的要因: γセクレターゼ遺伝子の異常
⚕️ 化膿性汗腺炎の治療法
化膿性汗腺炎の治療は重症度によって異なります:
軽症の場合
- 抗生剤の外用や内服(クリンダマイシン、ドキシサイクリンなど)
中等症から重症の場合
- 抗生剤の内服
- 生物学的製剤(アダリムマブ、ビメキズマブなど)の注射
外科的治療
- 膿瘍がある場合:切開して膿を排出
- 病変切除術
- 症状が広範囲に及ぶ場合:皮膚移植
生活習慣の改善
- 禁煙
- 体重管理
- 締め付けの強い衣服を避ける
➕ 8. その他のできもの
足の付け根には、上記以外にも様々なできものが発生することがあります。
🩸 静脈瘤
静脈瘤はふくらはぎに発症することが多いですが、足の付け根に発症することもあります。
- 症状: 足のむくみやだるさ、血管がボコボコと浮き出る
- 治療: 放置していても健康上の問題は少ないが、見た目が気になる場合は治療を検討
💧 ヌック管水腫(女性特有)
ヌック管水腫は、鼠径部にあるヌック管に液体が溜まることでできる小さなしこりです。
- 特徴: 通常は1歳ごろまでに閉鎖する組織が成人になっても残存
- 鑑別点: 押しても引っ込まない(鼠径ヘルニアとの違い)
- 注意: まれに子宮内膜症がヌック管に発生することがあり、その場合は治療が必要
🔵 陰嚢水腫・精索水腫(男性特有)
精巣や精索の周囲に液体が溜まることで陰嚢や鼠径部に膨らみが生じる状態です。
- 特徴: 痛みを伴わないことが多い
- 診断ポイント: 透光性(光を当てると透けて見える)
❤️ 大腿動脈瘤
大腿動脈に動脈瘤ができると、鼠径部にしこりとして触れることがあります。
- 特徴: 拍動を感じる
- 注意: 動脈瘤は破裂や血栓形成のリスクがあるため、発見された場合は精密検査が必要
🔍 9. 足の付け根のできものの診断方法
足の付け根にできものを発見した場合、正確な診断のためには医師による詳細な診察と検査が必要です。
📝 問診
以下の項目について詳しく確認します:
- 発症時期
- 症状の変化
- 痛みの有無
- 大きさの変化
- 発熱などの全身症状の有無
- 既往歴、家族歴
- 生活習慣
👁️ 視診・触診
できものの以下の特徴を確認します:
- 位置
- 大きさ
- 形状
- 硬さ
- 可動性
- 痛みの有無
- 立った状態と横になった状態での変化
📸 画像検査
- 超音波検査(エコー): 痛みがなく被ばくもない、しこりの内部構造を観察
- CT検査: より詳細な情報を取得
- MRI検査: ヘルニアや悪性腫瘍が疑われる場合に実施
🩸 血液検査
- 感染症や炎症の有無
- 腫瘍マーカー
🔬 病理検査(生検)
以下の場合に実施されます:
- 画像検査で悪性腫瘍との区別がつかない場合
- 診断を確定する必要がある場合
🏥 10. 治療法と受診すべき診療科
足の付け根のできものは、その原因によって適切な診療科と治療法が異なります。
🏥 皮膚科・形成外科を受診すべき場合
以下の疾患が疑われる場合:
- 粉瘤
- 脂肪腫
- 化膿性汗腺炎
特に手術が必要な場合、傷跡を目立たなくしたいのであれば、手術を専門とする形成外科の受診がおすすめです。
🏥 外科・消化器外科を受診すべき場合
鼠径ヘルニアが疑われる症状:
- 膨らみがあって押すと引っ込む
- 立っているときに大きくなり横になると小さくなる
この場合は、外科(ヘルニア外来)または消化器外科を受診します。
🏥 泌尿器科・婦人科を受診すべき場合
以下の症状がある場合:
- 性感染症が疑われる
- 排尿時の痛み
- 性交痛
- 女性で生理時に足の付け根にしこりができる(子宮内膜症の可能性)
🏥 血液内科を受診すべき場合
以下の症状がある場合:
- リンパ節の腫れが長期間続く
- 悪性リンパ腫などの血液の病気が疑われる
❓ 迷った場合は
どの診療科を受診すべきか迷う場合は、まずは以下を受診して相談することをお勧めします:
- かかりつけ医
- 近くの内科
- 形成外科
必要に応じて適切な専門科に紹介してもらうことができます。
⚠️ 11. 放置するとどうなる?
足の付け根のできものを放置した場合、その種類によって様々なリスクがあります。
🎯 粉瘤を放置した場合
- 自然に消えることはなく、時間とともに大きくなる
- 大きくなるほど手術の傷跡も大きくなり、術後のダウンタイムも長くなる
- 感染を起こして炎症性粉瘤になると、強い痛みや腫れが生じ、治療が複雑になる
- まれに、炎症を繰り返すことで有棘細胞癌などの悪性腫瘍に変化する可能性
粉瘤を放置するリスクについて詳しくは、粉瘤を放置すると危険?炎症・破裂のリスクと早期治療の重要性の記事をご参照ください。
🚨 鼠径ヘルニアを放置した場合
- 自然に治ることはなく、放置すると徐々に大きくなる
- 最も危険なのは嵌頓
- 腸閉塞や腸壊死を起こすと命に関わる緊急事態
- 嵌頓は前触れなく突然起こることがある
🛡️ リンパ節腫大を放置した場合
- 感染症による一時的なリンパ節腫大は自然に改善することが多い
- 悪性腫瘍によるものは放置すると進行し、治療が困難になる可能性
- 痛みのないしこりが徐々に大きくなる場合は特に注意が必要
🧈 脂肪腫を放置した場合
- 脂肪腫自体は良性であり、放置しても健康上の大きな問題はない
- 徐々に大きくなることで見た目の問題や日常生活への支障が生じることがある
- 大きくなるほど手術の傷跡も大きくなる
- 万が一、脂肪肉腫(悪性)であった場合は早急な治療が必要
🛡️ 12. 予防とセルフケア
足の付け根のできものを予防するために、日常生活で以下の点に注意することが大切です。
🧼 皮膚の清潔を保つ
- 鼠径部は汗をかきやすく蒸れやすい部位
- 毎日の入浴で清潔を保つ
- 汗をかいた後は早めに拭き取るか着替える
👕 締め付けの強い衣類を避ける
- スキニーパンツやガードルなど締め付けの強い衣類は皮膚への刺激となる
- 通気性の良い、ゆったりとした下着や衣類を選ぶ
⚖️ 適切な体重管理
- 肥満は鼠径ヘルニアや化膿性汗腺炎のリスク因子
- 適切な体重を維持することで、これらの疾患の予防につながる
🚭 禁煙
- 喫煙は化膿性汗腺炎のリスク因子
- 皮膚の健康にも悪影響を及ぼす
- 禁煙は様々な健康上のメリットがある
🔍 セルフチェック
- 定期的に足の付け根を触って、しこりや膨らみがないか確認
- 早期発見・早期治療が重要
⚠️ できものを見つけた場合の注意点
- 自分で潰したり、無理に内容物を絞り出そうとしてはいけない
- 感染や炎症を引き起こし、症状を悪化させる原因になる
- できものを見つけたら、早めに医療機関を受診

📝 13. まとめ
足の付け根(鼠径部)にできるできものには、粉瘤、鼠径ヘルニア、リンパ節腫大、脂肪腫、化膿性汗腺炎など様々な種類があります。それぞれ原因や症状、治療法が異なり、中には放置すると重篤な状態に進行するものもあります。
多くのできものは良性であり、適切な治療を受ければ完治が期待できます。しかし、自己判断で放置したり、自分で処置しようとしたりすることは避けるべきです。特に以下のような場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします:
- しこりが大きくなっている、または急速に成長している
- 痛みや熱感を伴う
- 膨らみが押しても元に戻らない
- 発熱や全身症状を伴う
- 膿や分泌物が出ている
デリケートな部位であるため受診をためらう方もいらっしゃいますが、医療機関ではプライバシーに配慮した診療が行われています。早期発見・早期治療が、より良い治療結果につながります。足の付け根のできものでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
よくある質問
足の付け根(鼠径部)にできものができる原因は様々です。最も多いのは粉瘤(アテローム)で、皮膚の下に袋状の構造ができて角質や皮脂が溜まることで発生します。その他、鼠径ヘルニア(脱腸)、リンパ節の腫れ、脂肪腫、化膿性汗腺炎などがあります。鼠径部は摩擦や蒸れが多く、下着や衣類による刺激を受けやすいため、皮膚トラブルが起こりやすい部位です。
足の付け根のしこりに痛みがある場合、感染性粉瘤、化膿性汗腺炎、感染症によるリンパ節腫大などが考えられます。粉瘤は通常痛みがありませんが、細菌感染を起こすと炎症性粉瘤となり、赤く腫れて強い痛みを生じます。化膿性汗腺炎では赤みや痛みを伴うしこりができ、進行すると膿瘍を形成します。感染症によるリンパ節の腫れも痛みを伴うことが多く、数日間で急に腫れることが特徴です。
鼠径ヘルニアの特徴的な症状は、鼠径部にピンポン球大の膨らみができることです。この膨らみは立っているときやお腹に力を入れたときに大きくなり、横になったり手で押したりすると引っ込むのが特徴です。初期段階では痛みを伴わないことが多く、鼠径部に重苦しい感じや違和感があります。咳をしたり姿勢を変えたりしたときに不快感を感じることもあります。膨らみが戻らなくなった場合は嵌頓の可能性があり、緊急受診が必要です。
足の付け根のできものの受診科は、症状によって異なります。粉瘤、脂肪腫、化膿性汗腺炎が疑われる場合は皮膚科または形成外科を受診してください。鼠径ヘルニアが疑われる場合(膨らみが押すと引っ込む)は外科または消化器外科を受診します。性感染症が疑われる場合や排尿時の痛みがある場合は泌尿器科または婦人科を受診してください。どの科を受診すべきか迷う場合は、まずかかりつけ医や内科で相談することをお勧めします。
足の付け根のできものを放置した場合のリスクは、その種類によって異なります。粉瘤は自然に治ることはなく、時間とともに大きくなり、感染を起こすと強い痛みや腫れが生じます。鼠径ヘルニアは最も危険で、嵌頓(腸が挟まって戻らない状態)を起こすと腸閉塞や腸壊死により命に関わることがあります。リンパ節の腫れが悪性腫瘍によるものの場合、放置すると進行して治療が困難になる可能性があります。早期発見・早期治療が重要です。
📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 皮膚疾患に関する診療ガイドライン
- 厚生労働省 – 医療安全情報・疾患情報
- 日本ヘルニア学会 – 鼠径ヘルニア診療ガイドライン
- 日本形成外科学会 – 皮膚腫瘍治療に関する指針
- MSDマニュアル – 医学情報・疾患解説
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
鼠径部のできものは「恥ずかしい場所だから」と受診を避ける患者さまが多いですが、中には緊急性の高い疾患も含まれています。早期の診断により、より侵襲の少ない治療が可能になることも多いため、躊躇せずに専門医にご相談いただくことが重要です。