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風邪やインフルエンザにかかって熱が出たとき、「いつもなら数日で下がるのに、今回はなかなか熱が下がらない」と不安になった経験はありませんか。発熱は私たちの体が病原体と戦うための自然な防御反応ですが、熱が長引く場合には、単なる風邪ではなく、他の病気が隠れている可能性も考えなければなりません。

本コラムでは、熱が下がらない原因として考えられる病気や、発熱のメカニズム、自宅でできる正しい対処法、そして医療機関を受診すべきタイミングについて詳しく解説します。発熱時の正しい知識を身につけることで、ご自身やご家族の健康管理にお役立ていただければ幸いです。


目次

  1. 発熱とは何か:体温の基礎知識
  2. 発熱のメカニズム:なぜ体は熱を出すのか
  3. 熱が下がらない原因として考えられる病気
  4. 発熱時の正しい対処法
  5. 解熱剤の正しい使い方
  6. 医療機関を受診すべきタイミング
  7. 長引く発熱と不明熱について
  8. まとめ

1. 発熱とは何か:体温の基礎知識

1-1. 平熱と発熱の定義

私たちの正常体温、いわゆる平熱は個人差がありますが、一般的に36.5℃前後とされています。医学的には、体温が37.5℃以上になった状態を「発熱」と呼び、37.0℃から37.4℃までを「微熱」、38.5℃以上を「高熱」と表現することが多いです。

ただし、平熱には個人差があることを忘れてはいけません。普段から体温が35℃台という方もいれば、37℃近い方もいます。そのため、自分自身の平熱を把握しておくことは、発熱しているかどうかを正確に判断するうえで非常に重要です。また、体温は一日の中でも変動し、早朝が最も低く、夕方から夜にかけて上昇する傾向があります。運動後や食事後、入浴後などにも一時的に体温が上昇することがあります。

1-2. 体温調節の仕組み

人体の細胞は約37℃で最も効率的に機能するよう設計されています。一方で、42℃以上の高温にさらされるとタンパク質が変性し、細胞死に至る可能性があります。このため、私たちの体には体温を一定に保つための精巧な調節機構が備わっています。

体温調節の司令塔となるのは、脳の視床下部にある「体温調節中枢」です。この中枢は、まるでサーモスタットのように働き、皮膚や体内の温度センサーからの情報を受け取り、体温を約37℃に維持するよう指令を出しています。暑いときには血管を拡張させて熱を逃がし、発汗を促します。逆に寒いときには血管を収縮させて熱の放散を防ぎ、筋肉を震わせて熱を産生します。

2. 発熱のメカニズム:なぜ体は熱を出すのか

2-1. 発熱は体の防御反応

発熱は、体がウイルスや細菌などの病原体と戦うための重要な防御反応です。18〜19世紀に解熱剤が開発された当初は、発熱は病的な状態であり、すぐに体温を下げるべきだと考えられていました。しかし現在では、発熱は体が身を守るための生体防御機能の一つとして理解されるようになっています。

発熱が生体にとって有利に働く理由として、以下のことが知られています。

まず、体温が上昇すると病原体の増殖が抑制されます。ウイルスや細菌の多くは高温よりも低温で繁殖しやすい特徴があり、体温を上げることで病原菌の活動を弱めることができます。

次に、体温上昇により白血球をはじめとする免疫細胞の働きが活性化されます。マクロファージなどの免疫細胞は、体温が上がると病原体を捕食する能力が高まることが研究で示唆されています。

さらに、発熱は免疫応答全体を活性化し、体が病原体と効率的に戦えるようになります。

2-2. 発熱が起こるメカニズム

細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入すると、免疫細胞からサイトカインと呼ばれる物質が分泌されます。このサイトカインの働きにより、プロスタグランジンE2という発熱物質が産生されます。プロスタグランジンE2は視床下部の体温調節中枢に作用し、体温の設定温度(セットポイント)を通常の37℃から、例えば39℃や40℃といった高い水準に引き上げます。

体温の設定温度が引き上げられると、体は「今の体温は低すぎる」と判断し、体温を上げるための反応を起こします。血管が収縮して熱の放散が抑えられ、筋肉が震えて熱が産生されます。この過程で私たちは悪寒や寒気を感じます。こうした反応により、体温は新しい設定温度に向かって上昇していきます。

感染症が収束し、サイトカインの産生が減少すると、プロスタグランジンE2の量も低下し、体温の設定温度が正常に戻ります。すると今度は「体温が高すぎる」と判断され、血管が拡張して熱が放散され、発汗が起こります。解熱時に汗をかくのは、このような生理的なメカニズムによるものです。

3. 熱が下がらない原因として考えられる病気

3-1. 感染症

発熱の原因として最も多いのは感染症です。風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などのウイルス感染症、扁桃炎や気管支炎、肺炎などの細菌感染症が代表的です。

通常の風邪であれば、発熱は3〜5日程度で自然に治まることが多いですが、以下のような感染症では発熱が長引くことがあります。

肺炎は、ウイルスや細菌などによって肺に炎症が起こる病気です。高熱が数日間続くことがあり、咳や痰、息苦しさなどの症状を伴います。特に高齢者や基礎疾患のある方では重症化しやすいため、注意が必要です。

結核は結核菌による慢性の感染症で、微熱や断続的な発熱が数週間から数か月にわたり続くことがあります。咳や痰、寝汗、体重減少などの症状を伴うことが多く、早期発見・早期治療が重要です。

感染性心内膜炎は、心臓の弁に細菌が感染して起こる病気です。持続的な発熱が特徴で、倦怠感や心雑音、皮下出血斑などを伴うことがあります。心疾患の既往がある方に多く、長期間の抗菌薬治療が必要です。

また、抗インフルエンザ薬を服用している場合でも、薬の効果が不十分であったり、薬に対する耐性を持つウイルスに感染した場合には、発熱が続くことがあります。免疫力が低下している方では、ウイルスを排除するのに時間がかかり、発熱期間が長くなることもあります。

3-2. 膠原病(自己免疫疾患)

膠原病は、免疫系の異常により自分自身の体の組織を攻撃してしまう病気の総称です。発熱が持続する代表的な病気として知られており、不明熱の原因の約20%を占めるとされています。

膠原病には様々な種類がありますが、発熱を伴うことの多い疾患として以下のものが挙げられます。

全身性エリテマトーデス(SLE)は、若い女性に多く見られる疾患で、発熱のほか、関節痛、皮疹、腎障害など多彩な症状を呈します。

関節リウマチは関節の炎症を主体とする疾患ですが、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。

成人スチル病は、高熱、関節痛、特徴的な皮疹を三大症状とする疾患で、40℃近い高熱が続くこともあります。

血管炎症候群は、血管に炎症が起こる疾患群で、巨細胞性動脈炎やリウマチ性多発筋痛症などが含まれます。

膠原病の多くは厚生労働省の特定疾患に指定されており、医療費の自己負担額軽減のための申請手続きが可能です。

3-3. 悪性腫瘍(がん)

悪性腫瘍が原因で起こる発熱を「腫瘍熱」と呼びます。がんの種類によって腫瘍熱を起こす頻度は異なりますが、悪性リンパ腫や腎細胞がん、白血病などは発熱を伴いやすいとされています。腫瘍熱の特徴として、体重減少や食欲低下、貧血、倦怠感などの症状を伴うことが多いです。

不明熱の原因のうち、悪性腫瘍は15〜25%を占めるとする報告があります。ただし、近年では超音波検査やCTなどの画像診断技術の進歩により、腫瘍が不明熱の原因として診断される頻度は減少してきています。

3-4. 薬剤熱

薬剤熱は、服用している薬剤の副作用として現れる発熱です。原因となりうる薬剤としては、抗菌薬(抗生物質)、抗てんかん薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが知られていますが、理論上はあらゆる薬剤で起こる可能性があります。

薬剤熱は、原因薬剤の投与を開始してから1〜2週間程度で出現することが多いですが、投与直後に現れることもあります。発熱のほかに、皮膚症状や筋肉痛などの症状を伴うこともあります。

薬剤熱が疑われる場合は、原因となっている薬剤を中止することで速やかに解熱することが多いです。何か新しい薬を飲み始めてから発熱が続いている場合には、処方医に相談することをお勧めします。

3-5. その他の原因

上記以外にも、発熱が続く原因として以下のようなものが考えられます。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、甲状腺ホルモンの過剰分泌により代謝が亢進し、微熱が続くことがあります。

深部静脈血栓症や肺塞栓症などの血栓性疾患でも発熱を生じることがあります。

また、心理的なストレスが原因で発熱することもあります。これは「心因性発熱」や「機能性高体温症」と呼ばれ、解熱剤が効きにくいという特徴があります。

4. 発熱時の正しい対処法

4-1. 安静と休養

発熱時は体がウイルスや細菌と戦っている状態です。この戦いにエネルギーを集中させるため、安静にして体を休めることが最も重要です。無理に眠る必要はありませんが、できるだけ横になって静かに過ごすことを心がけましょう。

発熱すると体力が消耗しやすいため、十分な睡眠をとることが回復への近道です。また、回復してきても熱がぶり返すことがありますので、しばらくは激しい運動や外出は控えることをお勧めします。

4-2. 水分補給

発熱時は体温が高くなることで発汗が増え、呼吸も速くなるため、普段よりも多くの水分が失われます。寝ているだけでも通常よりかなりの量の水分が失われていますので、脱水症状を防ぐためにこまめな水分補給が欠かせません。

水分補給に適した飲み物としては、水、麦茶、湯冷まし、経口補水液、スポーツドリンク、イオン飲料などがあります。発汗によりナトリウムやカリウムなどの電解質も失われているため、水だけでなく電解質も補給できる飲み物が望ましいです。

ただし、コーヒーや紅茶などカフェインを多く含む飲み物、アルコール類は利尿作用があり、かえって脱水を進行させる可能性があるため避けましょう。

水分は一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに摂取することが大切です。喉が渇いたと感じたときには、すでに脱水が始まっている可能性がありますので、喉の渇きを感じる前から意識的に水分を補給するようにしましょう。

4-3. 体温調節と環境整備

発熱時の体温調節は、発熱の時期によって対応が異なります。

熱が上がり始めの時期は、悪寒や寒気を感じることが多いです。これは体温の設定温度が上がり、現在の体温が「低すぎる」と判断されているためです。この時期は、毛布や布団を足したり、温かい服を着せたりして保温に努めましょう。

熱が上がりきると、今度は体が熱くなり、汗をかき始めます。この時期になったら、薄着に着替えたり、布団を薄くしたりして熱がこもらないようにします。汗をかいたら、こまめに拭いて着替えを行いましょう。汗で濡れた服のままでいると体が冷えてしまいます。

室温は夏場は25〜28℃、冬場は23〜25℃くらいを目安に調整しましょう。発熱とともに咳や喉の痛みがある場合は、空気の乾燥に注意が必要です。加湿器を使ったり、濡れタオルを室内に干したりして、湿度を40〜60%程度に保つとよいでしょう。

4-4. 体を冷やす方法

発熱時に体を冷やす方法として、氷枕や氷嚢、冷却シートなどがあります。ただし、熱が上がっている途中で体を冷やしても、体は設定温度を上げようとしているため効果は限定的です。冷やすのは、熱が上がりきった後が効果的です。

効率的に体を冷やすには、首の両側、わきの下、足の付け根など、太い血管が通っている部位を冷やすとよいでしょう。保冷剤や氷を使う場合は、直接肌に当てると凍傷を起こす可能性があるため、必ずタオルなどで包んでから使用してください。

なお、おでこに冷却シートを貼ることは、気持ちよさを感じて楽になる効果はありますが、実際に体温を下げる効果はあまり期待できません。

4-5. 食事について

発熱時は胃腸の働きが弱まり、食欲が低下することがあります。無理に食べる必要はありませんが、長時間何も食べない状態が続くと体力が回復しにくくなります。

食欲がある程度あれば、消化がよく胃腸に負担のかからないものを選びましょう。お粥、うどん、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、りんご、バナナなどがお勧めです。脂っこいものや繊維質の多いものは胃腸に負担がかかるため避けた方が無難です。

食欲がまったくない場合でも、水分と電解質、糖分は摂取するように心がけましょう。味噌汁やスープ、経口補水液などは、水分と電解質を同時に補給できるため有効です。

4-6. 入浴について

「熱があるときはお風呂に入ってはいけない」と言われることがありますが、医学的には必ずしもそうとは限りません。発熱時は汗をかきやすいため、ぐったりしているときを除けば、入浴やシャワー浴で皮膚を清潔に保つことは問題ありません。

ただし、入浴は体力を消耗するため、以下の点に注意しましょう。

熱いお湯に長時間浸かることは避け、ぬるま湯に短時間入るか、シャワーをさっと浴びる程度にとどめます。冬場は脱衣所や浴室を事前に温めておくと体への負担が軽減されます。入浴後は湯冷めしないよう、速やかに体を拭いて服を着ましょう。

高熱でぐったりしているときや、水分が十分に摂れていないときは、入浴を控えた方がよいでしょう。

5. 解熱剤の正しい使い方

5-1. 解熱剤の役割

解熱剤(解熱鎮痛剤)は、その名の通り体温を下げる薬です。主にプロスタグランジンの産生を抑えることで、視床下部の体温設定温度を下げる作用があります。

ここで重要なのは、解熱剤はあくまで一時的に熱を下げるだけであり、病気の原因を治す薬ではないということです。解熱剤で熱を下げても、病気そのものが治ったわけではありません。

発熱は体が病原体と戦うための重要な防御反応であるため、むやみに解熱剤を使用することは必ずしも得策ではありません。感染症にかかったときに早い段階で解熱剤を服用すると、治癒までの期間が長くなるなど、予後を悪くする可能性があるというデータも報告されています。

5-2. 解熱剤を使うタイミング

解熱剤は、発熱による苦痛が強く、十分な休息や水分摂取、食事ができない場合に、症状を和らげる目的で使用するのが適切です。具体的には、以下のような場合に使用を検討します。

発熱により体がつらくて眠れない場合、水分や食事が十分に摂れない場合、頭痛や関節痛、のどの痛みなどが強い場合などです。

一方、熱があっても元気で、水分や食事が摂れており、活気もある場合には、必ずしも解熱剤を使う必要はありません。

解熱剤を使うベストなタイミングは、熱が上がりきった後です。悪寒や寒気がして、これから熱が上がりそうなときに使用しても、体は体温を上げようとしている最中なので、十分な効果が得られません。手足が温かくなり、汗をかき始めたら熱が上がりきったサインです。このタイミングで使用すると効果的です。

目安としてよく言われるのは「38.5℃以上」ですが、これはあくまで目安であり、体温の数値だけで判断する必要はありません。38℃台前半でもつらそうであれば使用してもよいですし、39℃でも元気であれば使用しなくてもかまいません。

5-3. 解熱剤の種類と注意点

市販の解熱剤にはいくつかの種類があります。代表的なものとして、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどがあります。

アセトアミノフェン(商品名:カロナール、タイレノールなど)は、比較的安全性が高く、小児や妊婦、授乳中の方にも使用できます。インフルエンザなどの感染症の際には、この成分を含む解熱剤が最も安全とされています。

イブプロフェンやロキソプロフェンは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類され、解熱効果と同時に強い鎮痛・抗炎症作用があります。ただし、胃腸障害や腎機能への影響などの副作用に注意が必要です。

小児にはアセトアミノフェン以外の解熱剤は原則として使用しません。特に、アスピリン(アセチルサリチル酸)は15歳未満のインフルエンザや水痘(みずぼうそう)の患者には使用禁止とされています。

解熱剤を使用する際の一般的な注意点は以下の通りです。

解熱剤の効果は4〜6時間程度続きます。次に使用するまでは少なくとも4〜6時間、できれば6時間以上の間隔をあけましょう。すぐに熱が下がらないからといって追加で服用するのは避けてください。使用回数は1日2〜3回を目安とし、多くても1日4回程度にとどめます。

また、予防的に解熱剤を服用することは推奨されません。解熱剤には発熱を予防する効果はなく、不要な副作用のリスクを高めるだけです。

持病がある方や他の薬を服用している方は、解熱剤を使用する前に医師や薬剤師に相談することをお勧めします。

5-4. 解熱剤が効かない場合

解熱剤を服用しても熱が下がらないことがあります。考えられる理由としては以下のようなものがあります。

まず、解熱剤の解熱効果は通常1〜2℃程度です。39℃の熱が37℃に下がることを期待しても、37.5℃程度までしか下がらないこともあります。また、体温がまだ上昇している途中で服用した場合、見た目上は熱が下がらないように見えることがあります。

次に、脱水状態になっていると、発汗が十分に起こらず解熱剤の効果が発揮されにくくなります。解熱剤を服用する際には、十分な水分補給を心がけましょう。

さらに、心因性発熱(ストレスによる発熱)の場合は、プロスタグランジンを介さないメカニズムで発熱が起こっているため、通常の解熱剤は効きにくいとされています。

解熱剤を服用しても熱が続く場合や、症状が悪化する場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

6. 医療機関を受診すべきタイミング

発熱があっても、水分が摂れていて元気がある場合には、まずは自宅で様子を見てもかまわない場合が多いです。しかし、以下のような場合には医療機関の受診を検討してください。

6-1. すぐに受診が必要な場合

以下の症状がある場合には、緊急性が高い可能性があります。夜間や休日であっても、救急外来を受診してください。

呼吸が苦しい、呼吸が速い、顔色や唇の色が悪い(紫色になっている)場合は、肺炎や重症感染症の可能性があります。

意識がもうろうとしている、名前を呼んでも反応が鈍い、受け答えがおかしい場合は、脳炎や髄膜炎などの重篤な感染症、あるいは脱水が進行している可能性があります。

水分がまったく摂れない、嘔吐を繰り返して水分補給ができない、尿が出ない場合は、脱水が進行している可能性があります。

激しい頭痛がある、首が硬くて動かせない場合は、髄膜炎の可能性があります。

けいれんが起きた場合、特に5分以上続く場合や意識が戻らない場合は、すぐに救急車を呼んでください。

生後3か月未満の赤ちゃんが38℃以上の発熱をしている場合は、機嫌がよく哺乳ができていても、重症感染症の可能性があるため必ず受診が必要です。

6-2. 診療時間内に受診を検討すべき場合

以下のような場合には、翌日以降の診療時間内に医療機関を受診することをお勧めします。

発熱が3〜5日以上続いている場合は、風邪以外の原因が隠れている可能性があります。原因を特定するために受診しましょう。

解熱剤を使用しても熱が下がらない、または効果がすぐに切れてしまう場合も、受診を検討してください。

一度熱が下がったのに、再び高熱が出た場合(二峰性発熱)は、細菌感染などの合併症の可能性があります。

発熱以外にも気になる症状がある場合、例えば発疹、関節痛、リンパ節の腫れ、体重減少などがある場合には、膠原病や悪性腫瘍などの可能性も考慮して検査が必要になることがあります。

高齢者や基礎疾患のある方は、感染症が重症化しやすいため、早めの受診をお勧めします。

6-3. 受診時に伝えるべき情報

医療機関を受診する際には、以下の情報を医師に伝えると診察がスムーズに進みます。

いつから発熱が始まったか(発熱の期間)、熱の高さと変動のパターン(朝は下がって夜に上がるなど)、発熱以外の症状(咳、痰、のどの痛み、腹痛、下痢、発疹、関節痛など)、最近の渡航歴や周囲での感染症の流行状況、現在服用している薬やサプリメント、既往歴やアレルギーの有無などです。

これらの情報は、発熱の原因を特定するうえで重要な手がかりとなります。

7. 長引く発熱と不明熱について

7-1. 不明熱とは

医学的に「不明熱」とは、38.3℃以上の発熱が3週間以上続き、3日間以上の入院精査または3回以上の外来診療を行っても原因が特定できない状態を指します。

不明熱の原因として多いのは、感染症(約30〜40%)、膠原病・リウマチ性疾患(約20%)、悪性腫瘍(約15〜25%)の三大疾患です。しかし、詳細な検査を行っても約30%は診断がつかないとされています。

近年では、これら三大疾患に加えて「自己炎症性疾患」が第四の不明熱として注目されています。自己炎症性疾患は、免疫系の異常により全身性の炎症を繰り返す病気の総称で、家族性地中海熱などが含まれます。

7-2. 不明熱の診断

不明熱の診断には、丁寧な問診と身体診察、そして段階的な検査が必要です。

まず、血液検査で炎症の程度、肝臓や腎臓の機能、貧血の有無などを調べます。感染症が疑われる場合には、血液培養検査や各種抗体検査、PCR検査などを行います。

画像検査としては、超音波検査、CT検査、MRI検査などを用いて、体内に膿瘍(膿のたまり)や腫瘍がないかを調べます。必要に応じて、PET-CT検査やガリウムシンチグラフィーなどの核医学検査も行われることがあります。

膠原病が疑われる場合には、自己抗体検査を行います。悪性腫瘍が疑われる場合には、腫瘍マーカーの測定や、必要に応じて内視鏡検査、生検などを行います。

不明熱の診断には時間がかかることもありますが、診断が確定しなかった方々でも、約80%以上が1年以内に自然に解熱したというデータもあります。原因がわからないからといって過度に心配せず、主治医と相談しながら経過を見ていくことが大切です。

7-3. 長引く発熱への対処

原因不明の発熱が続く場合でも、基本的な対処法は変わりません。十分な休養と水分補給を心がけ、栄養のある食事を摂るようにしましょう。

発熱が続くと体力が消耗するため、解熱剤を適切に使用して症状を和らげることも重要です。ただし、解熱剤の使用は発熱の持続期間や程度、全身状態などを総合的に評価したうえで、医師と相談しながら判断することが望ましいです。

原因が特定された場合には、その原因に応じた治療が行われます。感染症であれば抗菌薬や抗ウイルス薬、膠原病であればステロイド薬や免疫調整薬、悪性腫瘍であれば手術や化学療法などが選択されます。

8. まとめ

発熱は体が病原体と戦うための自然な防御反応であり、必ずしも悪いものではありません。多くの場合、風邪やインフルエンザなどの感染症による発熱は数日で自然に治まります。

しかし、熱がなかなか下がらない場合には、単なる風邪ではなく、肺炎や結核などの感染症、膠原病、悪性腫瘍、薬剤熱など、様々な原因が考えられます。発熱が1週間以上続く場合や、発熱以外に気になる症状がある場合には、早めに医療機関を受診して原因を調べることが大切です。

発熱時の自宅でのケアとしては、十分な休養と水分補給が基本です。解熱剤は病気を治す薬ではなく、症状を一時的に和らげるものです。むやみに使用するのではなく、つらさを軽減して休息や水分摂取ができるようにする目的で、適切に使用しましょう。

呼吸が苦しい、意識がもうろうとしている、水分が摂れないなどの症状がある場合には、すぐに医療機関を受診してください。特に生後3か月未満の乳児や高齢者、基礎疾患のある方は重症化しやすいため、早めの対応が重要です。

発熱に対する正しい知識を持ち、適切に対処することで、多くの場合は回復に向かうことができます。不安なことがあれば、遠慮なく医療機関にご相談ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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