風邪やインフルエンザにかかって熱が出たとき、「いつもなら数日で下がるのに、今回はなかなか熱が下がらない」と不安になった経験はありませんか。発熱は私たちの体が病原体と戦うための自然な防御反応ですが、熱が長引く場合には、単なる風邪ではなく、他の病気が隠れている可能性も考えなければなりません。
本コラムでは、熱が下がらない原因として考えられる病気や、発熱のメカニズム、自宅でできる正しい対処法、そして医療機関を受診すべきタイミングについて詳しく解説します。発熱時の正しい知識を身につけることで、ご自身やご家族の健康管理にお役立ていただければ幸いです。

目次
- 発熱とは何か:体温の基礎知識
- 発熱のメカニズム:なぜ体は熱を出すのか
- 熱が下がらないのはなぜ?考えられる原因と病気
- 発熱時の正しい対処法
- 解熱剤の正しい使い方
- 医療機関を受診すべきタイミング
- まとめ
🌡️ 1. 発熱とは何か:体温の基礎知識
📊 1-1. 平熱と発熱の定義
私たちの正常体温、いわゆる平熱は個人差がありますが、一般的に36.5℃前後とされています。医学的には、体温が37.5℃以上になった状態を「発熱」と呼び、以下のように分類されます:
- 37.0℃〜37.4℃:微熱
- 37.5℃〜38.4℃:発熱
- 38.5℃以上:高熱
ただし、平熱には個人差があることを忘れてはいけません。普段から体温が35℃台という方もいれば、37℃近い方もいます。そのため、自分自身の平熱を把握しておくことは、発熱しているかどうかを正確に判断するうえで非常に重要です。
また、体温は一日の中でも変動し、早朝が最も低く、夕方から夜にかけて上昇する傾向があります。運動後や食事後、入浴後などにも一時的に体温が上昇することがあります。
⚙️ 1-2. 体温調節の仕組み
人体の細胞は約37℃で最も効率的に機能するよう設計されています。一方で、42℃以上の高温にさらされるとタンパク質が変性し、細胞死に至る可能性があります。このため、私たちの体には体温を一定に保つための精巧な調節機構が備わっています。
体温調節の司令塔となるのは、脳の視床下部にある「体温調節中枢」です。この中枢は、まるでサーモスタットのように働き、以下の機能を調整しています:
- 暑いとき:血管を拡張させて熱を逃がし、発汗を促進
- 寒いとき:血管を収縮させて熱の放散を防ぎ、筋肉を震わせて熱を産生
🔬 1-3. 発熱のパターンと特徴
発熱には、原因によって異なるパターンがあります:
- 持続性発熱:一日の体温変動が1℃以内の発熱
- 弛張性発熱:朝に下がり夕方に上がる体温変動
- 間歇性発熱:発熱と解熱が交互に現れる
🔬 2. 発熱のメカニズム:なぜ体は熱を出すのか
🛡️ 2-1. 発熱は体の防御反応
発熱は、体がウイルスや細菌などの病原体と戦うための重要な防御反応です。18〜19世紀に解熱剤が開発された当初は、発熱は病的な状態であり、すぐに体温を下げるべきだと考えられていました。しかし現在では、発熱は体が身を守るための生体防御機能の一つとして理解されるようになっています。
発熱が生体にとって有利に働く理由:
- 病原体の増殖を抑制:ウイルスや細菌の多くは高温よりも低温で繁殖しやすい
- 免疫細胞の活性化:白血球をはじめとする免疫細胞の働きが活性化
- 免疫応答の全体的な促進:体が病原体と効率的に戦えるようになる
発熱時の体の状態は、腸内環境と免疫の深い関係とも密接に関わっています。腸内環境が整っていると、免疫システムが効率的に働き、感染症からの回復も早くなる可能性があります。
🔄 2-2. 発熱が起こるメカニズム
細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入すると、以下の段階を経て発熱が起こります:
- 免疫細胞からサイトカインと呼ばれる物質が分泌
- プロスタグランジンE2という発熱物質が産生
- 視床下部の体温調節中枢に作用し、体温の設定温度(セットポイント)を上昇
- 血管が収縮し、筋肉が震えて熱を産生(この時に悪寒や寒気を感じる)
- 体温が新しい設定温度まで上昇
感染症が収束すると、サイトカインの産生が減少し、プロスタグランジンE2の量も低下します。すると体温の設定温度が正常に戻り、今度は「体温が高すぎる」と判断されて血管が拡張し、発汗が起こります。解熱時に汗をかくのは、このような生理的なメカニズムによるものです。
🌡️ 2-3. 発熱の段階と経過
発熱は以下の3つの段階に分けることができます:
- 上昇期:悪寒や寒気を感じ、体温が上昇
- 極期:高熱が続き、暑さを感じる
- 解熱期:発汗とともに体温が下降
🦠 3. 熱が下がらないのはなぜ?考えられる原因と病気
🔬 3-1. 感染症
発熱の原因として最も多いのは感染症です。通常の風邪であれば、発熱は3〜5日程度で自然に治まることが多いですが、以下のような感染症では発熱が長引くことがあります:
- 肺炎:高熱が数日間続き、咳や痰、息苦しさなどを伴う
- 結核:微熱や断続的な発熱が数週間から数か月続く
- 感染性心内膜炎:持続的な発熱が特徴で、心疾患の既往がある方に多い
- インフルエンザ:抗インフルエンザ薬が効かない場合や耐性ウイルスの感染
特に高齢者や基礎疾患のある方では重症化しやすいため、注意が必要です。また、免疫力が低下している方では、ウイルスを排除するのに時間がかかり、発熱期間が長くなることもあります。痰が絡む咳が長引く場合は、単なる風邪ではなく、より重篤な感染症の可能性も考慮する必要があります。
⚕️ 3-2. 膠原病(自己免疫疾患)
膠原病は、免疫系の異常により自分自身の体の組織を攻撃してしまう病気の総称です。発熱が持続する代表的な病気として知られており、不明熱の原因の約20%を占めるとされています。
発熱を伴うことの多い膠原病:
- 全身性エリテマトーデス(SLE):若い女性に多く、発熱・関節痛・皮疹・腎障害など
- 関節リウマチ:関節の炎症が主体だが、発熱や倦怠感を伴うことも
- 成人スチル病:高熱、関節痛、特徴的な皮疹を三大症状とする
- 血管炎症候群:巨細胞性動脈炎やリウマチ性多発筋痛症など
🎗️ 3-3. 悪性腫瘍(がん)と薬剤熱
悪性腫瘍が原因で起こる発熱を「腫瘍熱」と呼びます。以下のがんで腫瘍熱を起こしやすいとされています:
- 悪性リンパ腫
- 腎細胞がん
- 白血病
腫瘍熱の特徴として、体重減少や食欲低下、貧血、倦怠感などの症状を伴うことが多いです。不明熱の原因のうち、悪性腫瘍は15〜25%を占めるとする報告があります。
薬剤熱は、服用している薬剤の副作用として現れる発熱です。原因となりうる薬剤:
- 抗菌薬(抗生物質)
- 抗てんかん薬
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
🔍 3-4. その他の原因
上記以外にも、発熱が続く原因として以下のようなものが考えられます:
- 甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンの過剰分泌により微熱が続く
- 血栓性疾患:深部静脈血栓症や肺塞栓症など
- 心因性発熱:心理的なストレスが原因(解熱剤が効きにくい特徴)
🏠 4. 発熱時の正しい対処法
😴 4-1. 安静と休養
発熱時は体がウイルスや細菌と戦っている状態です。この戦いにエネルギーを集中させるため、安静にして体を休めることが最も重要です。
- できるだけ横になって静かに過ごす
- 十分な睡眠をとる
- 激しい運動や外出は控える
- 回復してきてもしばらくは無理をしない
質の良い睡眠は免疫機能の回復に重要な役割を果たします。深い眠りの理想的な時間を確保することで、体の回復力を高めることができます。
💧 4-2. 水分補給と体温調節
発熱時は体温が高くなることで発汗が増え、呼吸も速くなるため、普段よりも多くの水分が失われます。脱水症状を防ぐためにこまめな水分補給が欠かせません。
水分補給に適した飲み物:
- 水、麦茶、湯冷まし
- 経口補水液
- スポーツドリンク、イオン飲料
水分は一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに摂取することが大切です。市販の経口補水液が手元にない場合は、自宅で簡単に作れる経口補水液を活用することもできます。
🌡️ 4-3. 体を冷やす方法と食事
効率的に体を冷やすには、太い血管が通っている部位を冷やすとよいでしょう:
- 首の両側
- わきの下
- 足の付け根
発熱時は胃腸の働きが弱まり、食欲が低下することがあります。無理に食べる必要はありませんが、長時間何も食べない状態が続くと体力が回復しにくくなります。発熱時の食事は、風邪を早く治す食べ物を参考に、消化に良く栄養価の高いものを選ぶことが大切です。
💊 5. 解熱剤の正しい使い方
🎯 5-1. 解熱剤の役割と使用タイミング
解熱剤(解熱鎮痛剤)は、主にプロスタグランジンの産生を抑えることで、視床下部の体温設定温度を下げる作用があります。
重要なポイント:
- 解熱剤は一時的に熱を下げるだけ
- 病気の原因を治す薬ではない
- むやみに使用すると治癒期間が長くなる可能性
⏰ 5-2. 適切な使用間隔と注意点
解熱剤は、発熱による苦痛が強く、十分な休息や水分摂取、食事ができない場合に、症状を和らげる目的で使用するのが適切です。
市販の解熱剤の主な種類:
- アセトアミノフェン(カロナール、タイレノールなど):比較的安全性が高く、小児や妊婦にも使用可能
- イブプロフェン・ロキソプロフェン:強い鎮痛・抗炎症作用があるが、胃腸障害や腎機能への影響に注意
解熱剤の適切な使用間隔については、解熱剤は何時間あける?適切な間隔と安全な使い方で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
🏥 6. 医療機関を受診すべきタイミング
発熱があっても、水分が摂れていて元気がある場合には、まずは自宅で様子を見てもかまわない場合が多いです。しかし、以下のような場合には医療機関の受診を検討してください。
🚨 6-1. すぐに受診が必要な場合
以下の症状がある場合には、緊急性が高い可能性があります。夜間や休日であっても、救急外来を受診してください。
- 呼吸困難:呼吸が苦しい、呼吸が速い、顔色や唇の色が悪い
- 意識障害:意識がもうろう、名前を呼んでも反応が鈍い、受け答えがおかしい
- 脱水の進行:水分がまったく摂れない、嘔吐を繰り返す、尿が出ない
- 髄膜炎の疑い:激しい頭痛、首が硬くて動かせない
- けいれん:特に5分以上続く場合や意識が戻らない場合は救急車を呼ぶ
- 乳児の発熱:生後3か月未満で38℃以上の発熱
⏰ 6-2. 診療時間内に受診を検討すべき場合
以下のような場合には、翌日以降の診療時間内に医療機関を受診することをお勧めします:
- 発熱が3〜5日以上続いている
- 解熱剤が効かないまたは効果がすぐに切れる
- 二峰性発熱:一度下がった熱が再び上昇
- 他の症状を伴う:発疹、関節痛、リンパ節腫脹、体重減少など
- 高齢者や基礎疾患のある方:重症化しやすいため早めの受診
📝 6-3. 受診時の準備と情報整理
医療機関を受診する際には、以下の情報を医師に伝えると診察がスムーズに進みます:
- 発熱の期間:いつから始まったか
- 熱の変動パターン:朝は下がって夜に上がるなど
- 随伴症状:咳、痰、のどの痛み、腹痛、下痢、発疹、関節痛など
- 最近の状況:渡航歴、周囲での感染症流行
- 薬歴・既往歴:現在服用中の薬、アレルギーの有無

よくある質問
一般的に、発熱が3〜5日以上続く場合は医療機関の受診を検討してください。ただし、高熱(38.5℃以上)が続く、水分が摂れない、呼吸が苦しいなどの症状がある場合は、日数に関わらず早めに受診することが重要です。特に高齢者や基礎疾患のある方は、重症化しやすいため早めの対応をお勧めします。
解熱剤を服用しても熱が下がらない理由はいくつかあります。解熱剤の効果は通常1〜2℃程度の低下にとどまること、体温がまだ上昇途中での服用、脱水状態による発汗不足、心因性発熱などが考えられます。また、感染症が重篤な場合や、膠原病・悪性腫瘍などが原因の場合は、解熱剤が効きにくいことがあります。
発熱時でも、ぐったりしていない限りは入浴やシャワー浴は問題ありません。むしろ汗をかきやすいため、皮膚を清潔に保つことは大切です。ただし、熱いお湯に長時間浸かることは避け、ぬるま湯で短時間またはシャワーをさっと浴びる程度にとどめてください。高熱でぐったりしているときや水分が十分に摂れていないときは入浴を控えましょう。
子どもの発熱で特に注意すべき症状は、生後3か月未満で38℃以上の発熱、呼吸困難や顔色不良、意識がもうろうとしている、水分が摂れずぐったりしている、5分以上続くけいれんなどです。また、首が硬くて動かせない(髄膜炎の疑い)、発疹を伴う発熱なども要注意です。これらの症状がある場合は、夜間や休日でも救急外来を受診してください。
不明熱とは、38.3℃以上の発熱が3週間以上続き、3日間以上の入院精査または3回以上の外来診療を行っても原因が特定できない状態を指します。主な原因として感染症(30〜40%)、膠原病・リウマチ性疾患(20%)、悪性腫瘍(15〜25%)がありますが、詳細な検査を行っても約30%は診断がつかないとされています。近年は自己炎症性疾患も注目されています。
📋 7. まとめ
発熱は体が病原体と戦うための自然な防御反応であり、必ずしも悪いものではありません。多くの場合、風邪やインフルエンザなどの感染症による発熱は数日で自然に治まります。
しかし、熱が下がらないのはなぜか、その考えられる原因として、以下のような病気が隠れている可能性があります:
- 肺炎や結核などの感染症
- 膠原病
- 悪性腫瘍
- 薬剤熱
発熱が1週間以上続く場合や、発熱以外に気になる症状がある場合には、早めに医療機関を受診して原因を調べることが大切です。
発熱時の自宅でのケアの基本:
- 十分な休養と水分補給
- 適切な解熱剤の使用:症状を一時的に和らげる目的で
- 体温調節と環境整備
すぐに医療機関を受診すべき症状:
- 呼吸が苦しい
- 意識がもうろうとしている
- 水分が摂れない
- 生後3か月未満の乳児の発熱
特に高齢者や基礎疾患のある方は重症化しやすいため、早めの対応が重要です。
発熱に対する正しい知識を持ち、適切に対処することで、多くの場合は回復に向かうことができます。不安なことがあれば、遠慮なく医療機関にご相談ください。
📚 参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
発熱は確かに辛い症状ですが、体の自然な防御機能であることを理解することが重要です。むやみに解熱剤を使用するのではなく、水分補給と休養を基本として、症状が強い時に適切に使用するようにしましょう。特に3日以上発熱が続く場合は、風邪以外の原因も考えられるため、医療機関での診察をお勧めします。