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「熱が何日も下がらない」「コロナやインフルエンザは陰性だったのに発熱が続く」——このような症状でお悩みの方は少なくありません。新型コロナウイルス感染症が流行して以降、発熱するとまずコロナを疑う方が多くなりましたが、熱が出る病気はコロナ以外にもたくさん存在します。本記事では、コロナ以外で発熱が続く原因として考えられる疾患について、一般的な感染症から不明熱と呼ばれる原因特定が難しいケース、さらには心理的ストレスによる発熱まで幅広く解説します。また、発熱時の正しい対処法や医療機関を受診すべきタイミングについてもお伝えしますので、ご自身やご家族の健康管理にお役立てください。


目次

  1. 発熱とは何か——体温の基礎知識
  2. コロナ以外で発熱を引き起こす主な感染症
  3. 長引く発熱の原因——三大不明熱疾患とは
  4. 膠原病による発熱の特徴
  5. 悪性腫瘍と発熱の関係
  6. 薬剤が原因で起こる発熱(薬剤熱)
  7. ストレスが原因の発熱——心因性発熱(機能性高体温症)
  8. 子どもの発熱で注意すべきポイント
  9. 発熱時の正しい対処法
  10. 解熱剤の使い方と注意点
  11. 医療機関を受診すべきタイミング
  12. まとめ

1. 発熱とは何か——体温の基礎知識

発熱について正しく理解するためには、まず体温の基本的な知識を押さえておくことが大切です。

正常体温と発熱の定義

私たちの正常体温(平熱)は一般的に36.5℃前後とされていますが、個人差があり、35℃台が平熱の方もいれば37℃近くが平熱という方もいます。また、体温は1日のうちでも変動しており、通常は早朝が最も低く、夕方に向けて徐々に上昇し、午後4時頃にピークを迎える傾向があります。

日本の感染症法では、37.5℃以上を「発熱」、38.0℃以上を「高熱」と定義しています。医学的には37℃から37.4℃を微熱、38.5℃以上を高熱と表現することもあります。ただし、平熱には個人差があるため、何度で体がつらく感じるかは人それぞれです。

発熱のメカニズム

発熱は、体内に侵入したウイルスや細菌などの病原体を排除するための免疫反応の一つです。感染が起こると、免疫細胞が活性化し、「サイトカイン」という物質が脳の体温調節中枢(視床下部)を刺激して、意図的に体温を上げる命令を出します。

体温が上昇すると、免疫細胞の働きが活発になり、病原体の増殖が抑制されます。つまり、発熱は体が病原体と闘うための防御反応であり、単純に「悪いもの」ではないのです。ただし、高熱が長時間続くと体力を消耗し、食事や睡眠が十分にとれなくなるなど、かえって回復を妨げることもあります。

発熱と高体温の違い

一般的に「発熱」と呼ばれるものには、実は2種類のメカニズムがあります。

一つは、感染症や炎症性疾患によって引き起こされる「炎症性の発熱」です。これは体内で炎症反応が起こり、サイトカインやプロスタグランジンといった物質を介して体温が上昇するもので、一般的な風邪やインフルエンザによる発熱がこれに当たります。

もう一つは、「非炎症性の高体温」です。これは体温調節機構そのものに不調が生じて体温が高くなる状態で、熱中症や甲状腺機能亢進症、そして心理的ストレスによる心因性発熱などがこれに該当します。両者はメカニズムが異なるため、治療法や対処法も異なってきます。


2. コロナ以外で発熱を引き起こす主な感染症

新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが陰性であっても、発熱を引き起こす感染症は数多く存在します。いわゆる「風邪」と呼ばれるものの約70%はウイルス感染が原因とされており、その中でもライノウイルスが最も多く、RSウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなども報告されています。

ウイルス性感染症

コロナやインフルエンザ以外にも、発熱を引き起こすウイルスは多数存在します。

EBウイルス(エプスタイン・バーウイルス)は、若年者に多い伝染性単核球症の原因となるウイルスです。高熱、咽頭痛、リンパ節の腫れなどの症状が特徴で、発熱が数週間続くこともあります。

サイトメガロウイルスも成人で原因不明の発熱を引き起こすことがあり、特に免疫力が低下している方では注意が必要です。

アデノウイルスは、咽頭炎、扁桃炎、結膜炎などを引き起こし、特に夏場のプール熱(咽頭結膜熱)の原因として知られています。39度を超える高熱が数日間続くことも珍しくありません。

細菌性感染症

細菌感染による発熱も重要です。

マイコプラズマ肺炎は、特に若年者に多く見られる肺炎で、長引く咳と発熱が特徴です。通常の風邪薬では改善しないことが多く、適切な抗菌薬による治療が必要になります。

溶連菌感染症は、A群溶血性連鎖球菌による感染症で、急な発熱、強い咽頭痛、扁桃腺の腫れと白い膿の付着などが特徴です。放置すると腎炎やリウマチ熱などの合併症を起こすことがあるため、抗菌薬での治療が重要です。

尿路感染症(腎盂腎炎など)も発熱の原因となります。特に女性に多く、発熱とともに腰痛や排尿時の痛み、頻尿などの症状を伴うことがあります。

その他の感染症

結核は、かつては「過去の病気」と思われていましたが、現在でも日本国内で年間1万人以上が新たに発症しています。微熱が数週間から数か月にわたって続き、咳、痰、寝汗、体重減少などを伴うことが特徴です。特に高齢者や免疫力が低下している方では再発や新規感染に注意が必要です。

感染性心内膜炎は、心臓の弁に細菌が感染して起こる病気で、持続的な発熱が特徴です。倦怠感、心雑音、皮膚の出血斑などを伴うことがあり、心臓に持病がある方では特に注意が必要です。診断には血液培養検査や心エコー検査が重要で、長期間の抗菌薬治療が必要となります。


3. 長引く発熱の原因——三大不明熱疾患とは

38.3℃以上の発熱が3週間以上続き、病院での検査を行っても原因がわからない場合、医学的には「不明熱」と呼ばれます。不明熱の原因として特に重要視されているのが、感染症、悪性腫瘍、膠原病の三つで、これらは「三大不明熱疾患」と呼ばれています。

不明熱の定義と原因の割合

不明熱の正式な定義は以下の通りです。

  • 38.3℃以上の発熱が3週間以上持続すること
  • 3日間の入院精査、あるいは3回の外来診療で原因が特定できないこと

不明熱の原因として報告されている疫学データを見ると、感染症が約30~40%、膠原病などの非感染性炎症疾患が約20%、悪性腫瘍が約15~25%を占めています。また、約30%は詳細な検査を行っても診断が確定しないまま経過することもあります。

近年は血液検査や画像診断の技術が進歩したことで、以前より感染症や悪性腫瘍の診断が早期に可能になっています。一方で、膠原病などの非感染性炎症疾患や、診断未確定の疾患の割合は相対的に増加しているとされています。

見逃されやすい感染源

不明熱の原因となる感染症の中でも、診断がつきにくいものがいくつかあります。

深部膿瘍は、腹腔内や後腹膜など体の深い部分に膿がたまった状態で、通常の診察では見つけにくいことがあります。CT検査やMRI検査が診断に有用です。

骨髄炎は、骨の中に細菌が感染して起こる病気で、発熱と局所の痛みが続きますが、初期には診断が難しいことがあります。

前立腺炎や歯槽膿漏など、一般的な検査では見落とされやすい感染源も不明熱の原因となることがあります。

第四の不明熱——自己炎症性疾患

近年、従来の三大不明熱疾患に加えて、「自己炎症性疾患」が第四の不明熱として注目されています。代表的なものとして家族性地中海熱があります。

自己炎症性疾患は、免疫システムの中でも自然免疫に関わる部分の異常によって、周期的な発熱や全身の炎症を繰り返す疾患群です。1999年に提唱された比較的新しい概念で、現在も毎年のように新しい疾患が報告されています。

家族性地中海熱の特徴は、無治療でも自然に軽快する周期性の発熱、腹痛、胸痛、関節炎などです。発熱は通常3日以内で消失することが多いとされています。診断には遺伝子検査が用いられ、コルヒチンという薬が治療に効果的です。


4. 膠原病による発熱の特徴

膠原病は、不明熱の重要な原因の一つです。膠原病という名称は一つの病気を指すのではなく、免疫システムの異常によって全身のさまざまな臓器に炎症を起こす疾患群の総称です。

膠原病とは

「膠」という字は「にかわ(接着剤)」を意味し、私たちの体には膠の役割を担う「結合組織」が全身に広がっています。膠原病は、この結合組織を含む様々な臓器に原因不明の炎症が起こる疾患です。

膠原病の多くは、本来は体を守るはずの免疫システムが誤って自分自身の組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」に分類されます。原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因が複合的に関与していると考えられています。

膠原病で発熱を起こす主な疾患

全身性エリテマトーデス(SLE)は、若い女性に多い膠原病の代表的疾患です。発熱、関節痛、皮疹(特に頬の蝶形紅斑)、腎障害などさまざまな症状を呈します。発熱は疾患活動期に認められることが多く、38度以上の高熱が続くこともあります。

成人スチル病(成人発症スチル病)は、39度以上の高熱が1日のうちに大きく変動することが特徴的な疾患です。発熱とともに、サーモンピンク色の皮疹、関節痛、咽頭痛、リンパ節腫脹などを伴います。血液検査でフェリチンが著しく高値になることが診断の手がかりとなります。

関節リウマチは関節の痛みや腫れが主症状ですが、活動期には微熱を伴うこともあります。

リウマチ性多発筋痛症は、50歳以上の高齢者に多く見られる疾患で、肩や腰周りの筋肉痛、こわばりとともに発熱を伴います。側頭動脈炎を合併することがあり、その場合は頭痛や視力障害に注意が必要です。

血管炎症候群は、血管の壁に炎症が起こる疾患群で、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状に加え、侵される血管の種類によってさまざまな臓器症状を呈します。

膠原病を疑うサイン

原因不明の発熱が続く場合、以下のような症状があれば膠原病を疑う必要があります。

  • 関節の痛みや腫れ
  • 皮膚の発疹や紅斑
  • リンパ節の腫れ
  • 口内炎の繰り返し
  • 手指の冷えやしびれ(レイノー現象)
  • 筋肉痛や筋力低下
  • 原因不明の体重減少

膠原病の診断には、血液検査(自己抗体検査を含む)、画像検査、場合によっては組織生検などが必要です。診断が確定すれば、ステロイド薬や免疫抑制薬などによる治療が行われます。多くの膠原病は厚生労働省の指定難病に認定されており、医療費助成の対象となっています。


5. 悪性腫瘍と発熱の関係

悪性腫瘍(がん)も不明熱の重要な原因の一つです。がんによる発熱は「腫瘍熱」と呼ばれ、がん患者の40%以上が経験するとも報告されています。

腫瘍熱のメカニズム

腫瘍熱が起こるメカニズムには、いくつかの要因が考えられています。

腫瘍細胞そのものが発熱物質(サイトカインなど)を産生する場合や、腫瘍に対する免疫反応として発熱物質が放出される場合があります。また、腫瘍組織が壊死(細胞が死ぬこと)を起こした際にも発熱が生じることがあります。

発熱を起こしやすい悪性腫瘍

悪性腫瘍の種類によって、発熱を起こす頻度は異なります。

悪性リンパ腫は、発熱を起こしやすい代表的な悪性腫瘍です。特に「B症状」と呼ばれる発熱、盗汗(寝汗)、体重減少の三つの症状は、悪性リンパ腫を疑う重要なサインとされています。

白血病も発熱を伴うことが多い疾患です。白血病では正常な白血球が減少するため、感染症を合併しやすく、それによる発熱も起こりえます。

腎細胞癌(腎臓がん)は、発熱を初発症状とすることがある腫瘍として知られています。血尿や腰痛を伴わない場合もあり、発見が遅れることがあります。

肝細胞癌(肝臓がん)も発熱を伴うことがある腫瘍です。慢性肝炎や肝硬変のある方では定期的な検査が重要です。

その他、卵巣がん、心房粘液腫(心臓にできる良性腫瘍)、転移性悪性腫瘍なども不明熱の原因となることがあります。

腫瘍熱を疑うサイン

原因不明の発熱が続く場合、以下のような症状があれば悪性腫瘍の可能性も考慮する必要があります。

  • 原因不明の体重減少(特に6か月で5%以上の減少)
  • 食欲不振が続く
  • 寝汗をかく
  • 倦怠感が強い
  • リンパ節が腫れている

近年は超音波検査やCT検査の普及により、悪性腫瘍が不明熱の初期評価で発見されやすくなっています。しかし、血液のがん(悪性リンパ腫、白血病など)は画像検査だけでは診断できないこともあり、血液検査や骨髄検査が必要になることもあります。


6. 薬剤が原因で起こる発熱(薬剤熱)

発熱の原因として見落とされやすいものの一つに、薬剤による発熱(薬剤熱)があります。薬剤熱は、あらゆる薬剤によって引き起こされる可能性があり、原因薬剤の投与開始後、比較的早期に発症することが多いとされています。

薬剤熱を起こしやすい薬

特に薬剤熱の原因となりやすい薬剤には以下のようなものがあります。

抗菌薬(抗生物質)は、感染症の治療に用いられる薬ですが、皮肉にも発熱の原因となることがあります。ペニシリン系、セフェム系、サルファ剤などが薬剤熱を起こしやすいとされています。

抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピンなど)も薬剤熱の原因となることがあります。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、本来は解熱・鎮痛目的で使用される薬ですが、まれに発熱を引き起こすことがあります。

その他、抗不整脈薬、抗がん剤、生物学的製剤なども薬剤熱の原因となりえます。

薬剤熱の特徴と診断

薬剤熱の特徴的な点として、発熱以外に明らかな原因がなく、全身状態が比較的良好であることが多いことが挙げられます。また、発熱とともに皮疹や筋肉痛を伴うこともあります。

薬剤熱を診断するためには、薬剤投与の開始時期と発熱の出現時期を詳細に確認することが重要です。薬剤熱が疑われた場合、原因と考えられる薬剤を中止することで、多くの場合24~72時間以内に解熱します。

ただし、自己判断で薬を中止することは危険です。薬剤熱が疑われる場合は、必ず主治医に相談してから対応してください。


7. ストレスが原因の発熱——心因性発熱(機能性高体温症)

コロナやインフルエンザなどの検査で異常がなく、血液検査でも炎症反応が上昇していないのに発熱が続く場合、心理社会的ストレスが原因である可能性があります。これは「心因性発熱」または「機能性高体温症」と呼ばれる状態です。

心因性発熱とは

心因性発熱は、主にストレスが原因となって起こる体温上昇のことを指します。厳密には「発熱」ではなく「高体温」であり、風邪などの感染症による発熱とは異なるメカニズムで生じます。

風邪などの炎症性発熱では、サイトカインという物質が関与しており、アセトアミノフェンやロキソプロフェンなどの解熱鎮痛剤が効果を発揮します。一方、心因性発熱は交感神経の作用で起こるため、解熱鎮痛剤が効かないことが大きな特徴です。

ある調査によると、原因不明の発熱で受診した患者のうち約2.5%が心因性発熱と診断されたという報告があります。心因性発熱は性別や年齢を問わず起こりえますが、特に10代や若年成人に多い傾向があります。

心因性発熱のタイプ

心因性発熱には主に二つのタイプがあります。

急性型は、ストレスに反応して一時的に高体温になるタイプです。大事な試験や発表の当日に急に39度を超える高熱が出るものの、その用事がなくなったとわかった途端に熱が下がるというようなケースが典型的です。子どもでは、特定の授業の時間に体温が上がり、保健室に行くと下がるというパターンが見られることもあります。

慢性型は、慢性的なストレス環境下で微熱(37度台)が持続するタイプです。過重労働や介護疲れ、人間関係のストレスなどが原因となることが多く、成人に多いとされています。

心因性発熱の診断

心因性発熱の診断は、「除外診断」と「積極診断」の両面から行われます。

除外診断では、発熱の原因となる身体疾患がないかを確認します。感染症、膠原病、悪性腫瘍などの可能性を血液検査や画像検査で否定することが重要です。

積極診断では、発熱の前にストレスにさらされる状況があったか、解熱剤を使用しても熱が下がらないかなどを確認します。また、発熱以外に明らかな感染症状(鼻水、咳、下痢など)がないことも診断の手がかりとなります。

心因性発熱かもしれないと思ったら、まずは内科(子どもの場合は小児科)で身体疾患の有無を確認することが大切です。その上で心因性発熱が疑われる場合は、心療内科での専門的な治療が必要になります。

心因性発熱の治療と対処法

心因性発熱の治療で重要なのは、解熱剤の投与ではなく、患者が抱えるストレスへの対処です。単一の治療法では不十分なことが多く、多面的なアプローチが必要となります。

具体的には、病態の説明、生活指導、環境調整、心理療法、リラクセーショントレーニング、必要に応じた薬物療法などを組み合わせて行います。

日常生活では、十分な睡眠をとること、バランスの良い食事を摂ること、適度な運動をすることなどが自律神経を整えるのに役立ちます。また、ストレスの原因を特定し、可能な範囲で環境を調整することも重要です。


8. 子どもの発熱で注意すべきポイント

子どもは大人に比べて発熱しやすいという特徴があります。これは、子どもの体温調節機能がまだ未熟であることや、免疫システムが発達途上にあるためです。

子どもの発熱の特徴

子どもは大人よりも高い熱を出しやすく、39度を超える高熱も珍しくありません。しかし、熱の高さだけで重症度を判断することはできません。40度の熱があっても、意識がはっきりしていて、水分も取れていて、機嫌もそれほど悪くなければ、必ずしも緊急の対応が必要とは限りません。

一方で、熱がそれほど高くなくても、ぐったりしていたり、水分が取れなかったり、呼吸が苦しそうだったりする場合は、早めの受診が必要です。

子どもの発熱で注意すべき症状

以下のような症状がある場合は、早急に医療機関を受診してください。

  • 意識状態が悪い、呼びかけに対する反応が鈍い
  • けいれんを起こしている
  • ぐったりして元気がない
  • 水分が全く取れない
  • 呼吸が速い、呼吸が苦しそう
  • 顔色が悪い(青白い、土色など)
  • 発疹が出ている(特に紫色の点状出血)
  • 生後3か月未満の赤ちゃんで38度以上の発熱がある

特に乳児(特に生後2か月未満)の発熱は、重症感染症のリスクが高いため、速やかな受診が必要です。

子どもの発熱への対応

子どもが発熱した場合の基本的な対応は、安静にして水分をしっかり取らせることです。

熱が上がり始めて寒気がしているときは、布団や衣類で温めてあげましょう。熱が上がりきって汗をかき始めたら、布団を薄くして、こまめに着替えさせてあげてください。

解熱剤は、熱によるつらさを和らげるために使用します。「何度以上で使う」と決めるのではなく、子どもの様子を見て、つらそうにしているとき、水分が取れないとき、眠れないときなどに使用を検討しましょう。

子どもに使用する解熱剤は、アセトアミノフェン(カロナール、アンヒバなど)が最も安全とされています。イブプロフェンも使用されることがありますが、アスピリンは15歳未満のインフルエンザや水痘には使用禁止となっています。


9. 発熱時の正しい対処法

発熱時には、適切なケアを行うことで体の回復を助けることができます。ここでは、発熱時の正しい対処法について解説します。

安静と休養

発熱時には体がウイルスや細菌と闘っており、多くのエネルギーを消費しています。体を休めることで、免疫機能を最大限に発揮させることができます。熱があるときに無理をして活動すると、回復が遅れるだけでなく、症状が悪化することもあります。

仕事や学校を休んで安静にすることが大切です。また、感染症の場合は他人にうつすリスクもあるため、医師の指示に従って休養をとりましょう。

水分補給

発熱時は汗をかいたり、呼吸が速くなったりして、体から水分が失われやすくなります。脱水症状を防ぐためにも、こまめな水分補給が重要です。

水やお茶のほか、経口補水液やスポーツドリンクなども適しています。冷たすぎる飲み物は胃腸に負担をかけることがあるため、常温か少し温かい飲み物がおすすめです。

一度にたくさん飲むよりも、少量ずつこまめに飲む方が体に吸収されやすくなります。

体を冷やす

熱が上がりきった後(寒気がなくなり、手足が温かくなって汗をかき始めた段階)は、体を冷やすことで楽になることがあります。

氷枕や冷却シートを使って頭を冷やしたり、首の両側、脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている部分を冷やしたりすると効果的です。ただし、これはあくまで一時的な対処法であり、発熱の原因を治すものではありません。

栄養補給

発熱時は食欲が落ちることが多いですが、体の回復にはエネルギーが必要です。無理に食べる必要はありませんが、消化の良いものを少しずつ食べるようにしましょう。

おかゆ、うどん、豆腐、卵料理、果物、ゼリーなどが食べやすいでしょう。食欲がないときは、水分だけでもしっかり摂るようにしてください。

室温と湿度の管理

部屋の温度と湿度を適切に保つことも大切です。暑すぎず寒すぎない、快適な温度(20~25度程度)に保ち、乾燥しすぎないように適度な湿度(50~60%程度)を維持しましょう。加湿器がない場合は、濡れタオルを干すなどの工夫も有効です。


10. 解熱剤の使い方と注意点

解熱剤は、発熱に伴うつらさを和らげるための薬です。正しく使えば体の回復を助けてくれますが、使い方を誤ると効果が十分に得られなかったり、副作用のリスクが高まったりすることがあります。

解熱剤の役割

解熱剤は、発熱そのものを止める薬ではなく、一時的に熱を下げて体を楽にする薬です。発熱の原因(感染症など)を治す薬ではないため、解熱剤だけで病気が治ることはありません。

解熱剤を使う目的は、高熱による体力の消耗を防ぎ、水分や食事を摂りやすくし、睡眠をとりやすくすることです。体を楽にすることで、回復に必要な休息や栄養補給ができるようになります。

解熱剤を使うタイミング

解熱剤を使うタイミングは、「何度以上」と体温で決めるのではなく、症状で判断することが大切です。

発熱に伴うだるさ、頭痛、関節痛などがつらいとき、水分や食事が取れないとき、眠れないときなどに使用を検討しましょう。逆に、熱があっても比較的元気で、水分も取れているのであれば、無理に使う必要はありません。

また、熱が上がっている途中(悪寒や寒気がしているとき)に解熱剤を使うと、体が熱を上げようとしている働きを妨げることになり、効果が十分に得られないことがあります。熱が上がりきって、手足が温かくなり汗をかき始めた段階で使用するのがより効果的です。

解熱剤の種類

市販の解熱剤や医療機関で処方される解熱剤には、主に以下の種類があります。

アセトアミノフェン(カロナール、タイレノールなど)は、脳の体温調節中枢に作用して熱を下げます。胃に優しく、空腹時でも服用しやすいのが特徴です。子どもや妊婦にも比較的安全に使用できます。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)には、ロキソプロフェン(ロキソニンなど)、イブプロフェン(ブルフェンなど)などがあります。炎症を抑える作用もあり、解熱効果は強めですが、胃腸障害などの副作用に注意が必要です。

解熱剤使用時の注意点

解熱剤を使用する際は、以下の点に注意してください。

用法・用量を守ることが大切です。効果がないからといって、決められた量以上を服用したり、服用間隔を短くしたりしないでください。一般的に、解熱剤は4~6時間以上の間隔をあけて使用し、1日2~3回を目安とします。

水分が不足していると、汗が出にくくなり、解熱剤の効果が十分に発揮されないことがあります。解熱剤を使用する際は、十分な水分補給を心がけましょう。

心因性発熱(ストレスによる発熱)の場合は、解熱剤が効かないことがあります。これは発熱のメカニズムが異なるためです。

解熱剤を使っても熱が下がらない、または使用後に再び高熱が出る場合は、原因疾患が治っていない可能性があります。症状が改善しない場合は、医療機関を受診してください。


11. 医療機関を受診すべきタイミング

発熱の多くは風邪などの軽症の感染症によるもので、数日で自然に改善します。しかし、中には重大な病気が隠れていることもあるため、適切なタイミングで医療機関を受診することが大切です。

すぐに受診すべき緊急症状

以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

  • 呼吸困難、強い息苦しさ
  • けいれん
  • 意識障害(意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しないなど)
  • 41度以上の高熱
  • 激しい頭痛(今まで経験したことのないような頭痛)
  • 激しい胸痛や腹痛
  • 皮膚に紫色の点状出血や発疹が出ている
  • 首が硬くなって前に曲げられない(髄膜炎の可能性)

これらの症状は、緊急性の高い病気のサインである可能性があります。

早めに受診すべき症状

以下のような場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

  • 発熱が3~4日以上続いている
  • 高熱が続いて食事や水分が十分に取れない
  • 咳や痰がひどく、息苦しさがある
  • 排尿時の痛みや頻尿がある
  • 強い倦怠感が続く
  • 市販の解熱剤を使用しても症状が改善しない

また、糖尿病、がん、免疫抑制剤を使用中などの基礎疾患がある方は、発熱時に重症化しやすいため、早めの受診をお勧めします。

1週間以上発熱が続く場合

発熱が1週間以上続く場合は、単なる風邪ではない可能性が高くなります。感染症が重症化している可能性や、膠原病、悪性腫瘍などの他の原因が隠れている可能性があるため、必ず医療機関を受診して詳しい検査を受けてください。

特に高齢者や免疫力が低下している方では、重篤な病気の可能性があるため、早めの受診が推奨されます。

受診時に伝えるべきこと

医療機関を受診する際は、以下の情報を医師に伝えると診断の助けになります。

  • いつから発熱しているか
  • 体温の推移(熱型表があれば持参)
  • 発熱以外の症状(咳、鼻水、頭痛、腹痛、発疹など)
  • 現在服用している薬
  • 持病やアレルギーの有無
  • 最近の旅行歴や動物との接触歴
  • 周囲に同様の症状の人がいるか

12. まとめ

発熱は体の防御反応であり、さまざまな原因で起こります。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが陰性であっても、発熱を引き起こす原因は多岐にわたります。

一般的な感染症(ウイルス性・細菌性)のほか、長引く発熱の原因としては三大不明熱疾患(感染症、膠原病、悪性腫瘍)が重要です。また、薬剤による発熱や、ストレスが原因の心因性発熱も見落とされやすい原因として覚えておきましょう。

発熱時には、安静と水分補給を心がけ、つらい症状には解熱剤を適切に使用することで体の回復を助けることができます。ただし、解熱剤は一時的に症状を和らげるものであり、原因を治す薬ではありません。

発熱が3~4日以上続く場合、高熱で食事や水分が取れない場合、呼吸困難やけいれん、意識障害などの緊急症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。特に発熱が1週間以上続く場合は、風邪以外の原因が隠れている可能性があるため、詳しい検査が必要です。

原因不明の発熱が続くと不安になりますが、適切な検査と診断を受けることで、多くの場合は原因が特定され、適切な治療につなげることができます。気になる症状がある場合は、お早めに医療機関にご相談ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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