はじめに
「健康診断で脂肪肝と言われたけれど、特に症状もないし大丈夫だろう」
そのように考えて放置していませんか?
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、ダメージを受けても痛みなどの自覚症状がほとんど現れません。しかし、脂肪肝を放置すると肝炎、肝硬変、さらには肝臓がんへと進行するリスクがあることが明らかになっています。
現在、日本人の約3人に1人が脂肪肝であるといわれており、特に中高年男性では約4割が該当するとされています。また、お酒を飲まない方でも発症する「非アルコール性脂肪肝」が増加傾向にあり、現代の生活習慣病の一つとして注目されています。
本記事では、脂肪肝の原因やリスクから、具体的な改善方法まで詳しく解説します。食事療法や運動療法など、今日から実践できる対策を知り、健康な肝臓を取り戻しましょう。

脂肪肝とは?基礎知識を理解しよう
脂肪肝の定義
脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。医学的には、肝細胞の30%以上(病理組織学的には5%以上)に脂肪が溜まっている状態が脂肪肝と定義されています。
肝臓は私たちの体で最も大きな臓器であり、成人では約1.2kgもの重さがあります。右上腹部の肋骨の下に位置し、以下のような重要な働きを担っています。
- 代謝・合成・貯蔵:食事から得た栄養素を分解・合成し、エネルギー源として貯蔵する
- 解毒作用:アルコールや薬物、老廃物などの有害物質を分解・無毒化する
- 胆汁の生成:脂質の消化を助ける胆汁を分泌する
これらの機能が正常に働くためには、肝臓が健康な状態を保つことが不可欠です。しかし、使い切れなかった糖分や脂肪が肝臓に蓄積し続けると、やがて脂肪肝となり、肝臓の機能に影響を及ぼすようになります。
脂肪肝の種類
脂肪肝は大きく2つの種類に分類されます。
アルコール性脂肪肝
長期間の過度な飲酒が原因で発症する脂肪肝です。アルコールを分解する過程で中性脂肪が合成されやすくなり、さらにアルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドが脂肪の分解を抑制することで、肝臓に中性脂肪が蓄積していきます。
一般的に、1日に純アルコール量で60g以上(ビールなら中瓶3本、日本酒なら3合程度)を5年以上継続して摂取すると、約9割の方がアルコール性脂肪肝になるといわれています。
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)
アルコールをほとんど飲まない、あるいは少量しか飲まないにもかかわらず発症する脂肪肝を「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)」と呼びます。NAFLDの定義上、男性では1日のエタノール摂取量が30g未満、女性では20g未満の方が対象となります。
NAFLDの主な原因は、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病です。日本人におけるNAFLDの有病率は男性で約32〜41%、女性で9〜18%と報告されており、男性に多い傾向があります。
NAFLDはさらに以下の2つに分けられます。
- 単純性脂肪肝(NAFL):肝臓に脂肪が溜まっているだけで、炎症や線維化がほとんどない状態。NAFLDの80〜90%がこれに該当
- 非アルコール性脂肪肝炎(NASH):脂肪蓄積に加えて炎症や肝細胞の損傷が進行している状態。肝硬変や肝臓がんに進展するリスクがある
疾患名の変更について
2024年8月、日本消化器病学会と日本肝臓学会は、世界的な動向に合わせて脂肪性肝疾患の日本語病名を正式に決定しました。
従来のNAFLDは「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:マッスルディー)」、NASHは「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH:マッシュ)」という名称に変更されています。
この変更の背景には、「non-alcoholic(非アルコール性)」や「fatty(脂肪の)」という言葉が患者さんへの偏見につながりかねないという国際的な議論がありました。新しい名称では、代謝異常(メタボリックシンドローム)との関連がより明確に示されています。
脂肪肝の症状と放置するリスク
ほとんど自覚症状がない
脂肪肝の最大の特徴は、自覚症状がほとんどないことです。肝臓には痛みを感じる神経がなく、多少のダメージを受けても正常に機能を維持する能力(代償能力)が高いため、初期から中期にかけては無症状で経過することがほとんどです。
一部の方では、以下のような症状を感じることがあります。
- 疲労感、倦怠感
- 肩こり
- 右上腹部の違和感
- 集中力の低下
しかし、これらは肝臓特有の症状ではないため、脂肪肝が原因とは気づきにくいのが現状です。多くの場合、健康診断の血液検査や腹部超音波検査(エコー)で偶然発見されます。
放置すると深刻な病気に進行
脂肪肝を放置すると、以下のような深刻な疾患へと進行する可能性があります。
脂肪肝炎(MASH/NASH)
脂肪が蓄積した状態でさらに負担がかかると、肝細胞に炎症が起こります。NASHに進行した場合、5〜10年で5〜20%の方が肝硬変へと進展するといわれています。
肝硬変
肝細胞の破壊と修復が繰り返されることで、肝臓が線維化(硬くなる)していきます。肝硬変になると元の状態に戻すことは非常に困難です。進行すると黄疸、腹水、むくみ、意識障害(肝性脳症)などの症状が現れます。
肝臓がん
肝硬変まで進行すると、年率で数%の割合で肝臓がんが発生するリスクがあります。近年では、肝硬変に至る前の脂肪肝炎の段階でも肝臓がんが発症することが報告されています。
心血管疾患
脂肪肝はメタボリックシンドロームと密接に関連しており、動脈硬化を進行させることがわかっています。そのため、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの心血管疾患のリスクも高まります。実際に、脂肪肝の患者さんでは、肝臓の合併症よりも心血管疾患による死亡率の方が高いという報告もあります。
脂肪肝の原因
食べ過ぎ・栄養過多
脂肪肝の最も多い原因は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る「栄養過多」の状態です。食事で摂取した糖質や脂質が消費しきれずに余ると、中性脂肪として肝臓に蓄積されていきます。
特に問題となるのは以下のような食習慣です。
- 高脂肪・高カロリーな食事の継続
- 糖質(炭水化物、砂糖)の過剰摂取
- 甘い飲み物(ジュース、炭酸飲料、缶コーヒーなど)の習慣的な摂取
- 夜遅い時間の食事
- 早食い
運動不足
運動不足は、消費エネルギーの低下を招き、体内に余分な脂肪が蓄積しやすくなります。また、筋肉量の低下は基礎代謝を下げ、さらに脂肪が燃焼しにくい体質を作ります。
全身の糖質の約7割は骨格筋で消費されるといわれており、筋肉量の減少はインスリン抵抗性の悪化にもつながります。
肥満
肥満、特に内臓脂肪型肥満は脂肪肝の主要なリスク因子です。BMI25以上の方では約30%以上に、BMI30以上では約80%に脂肪肝が認められるという報告があります。
ただし、見た目が痩せている方でも脂肪肝になることがあります。実際に、肥満でない方の7〜20%は脂肪肝であるといわれており、「隠れ脂肪肝」として注意が必要です。
アルコールの過剰摂取
アルコールは肝臓で代謝される際に中性脂肪の合成を促進し、同時に脂肪の分解を抑制します。そのため、過度な飲酒は脂肪肝の直接的な原因となります。
糖尿病・インスリン抵抗性
糖尿病や糖尿病予備群の方は、インスリンの働きが低下しているため、肝臓に脂肪が蓄積しやすくなります。特に糖尿病を合併している方は、脂肪肝から肝硬変や肝臓がんへと進展するリスクが高いことがわかっています。
その他の原因
- 脂質異常症(高脂血症)
- 高血圧
- 急激なダイエット(低栄養性脂肪肝)
- 一部の薬剤
- 遺伝的要因
- ホルモン異常(甲状腺機能低下症など)
- 睡眠時無呼吸症候群
脂肪肝の診断方法
血液検査
健康診断で行われる血液検査では、以下の項目が肝機能の指標として用いられます。
AST(GOT)・ALT(GPT)
肝細胞が壊れると血液中に漏れ出す酵素です。正常値は両方とも30 IU/L未満で、これを超えると肝障害が疑われます。脂肪肝ではALTがASTより高くなることが多いのが特徴です。
ただし、血液検査で異常がなくても画像検査で脂肪肝が見つかることがあるため、注意が必要です。
γ-GTP
アルコールによる肝障害で上昇しやすい酵素です。51 IU/L以上で要注意とされます。
血小板数
肝臓の線維化が進むと血小板数が低下します。NAFLDでは18万/μL以下で要注意、15万/μL以下では肝硬変の可能性があります。
画像検査
腹部超音波検査(エコー)
最も一般的に行われる検査です。脂肪が蓄積した肝臓は、正常な肝臓と比べて白く輝いて見えます(bright liver)。非侵襲的で繰り返し行えるため、経過観察にも適しています。
CT検査・MRI検査
超音波検査では判断が難しい場合に行われます。脂肪沈着の程度や肝臓の形態をより詳細に評価できます。
線維化の評価
肝臓がどの程度硬くなっているか(線維化の進行度)を評価することは、予後を判断する上で非常に重要です。
FIB-4 index
年齢、AST、ALT、血小板数から算出される指標で、肝線維化の程度を簡便に推定できます。
超音波エラストグラフィ・MRエラストグラフィ
超音波やMRIを用いて肝臓の硬さを測定する検査です。肝生検をせずに線維化の程度を評価できるため、患者さんへの負担が少ない方法として普及しています。
肝生検
確定診断や重症度の詳細な評価が必要な場合に行われます。肝臓に針を刺して組織を採取し、顕微鏡で観察します。入院が必要で侵襲的な検査のため、必要な場合に限り実施されます。
脂肪肝を改善する食事療法
脂肪肝の治療の基本は、食事療法と運動療法による生活習慣の改善です。現時点では脂肪肝に特化した治療薬は保険適用されておらず、まずは生活習慣の見直しが最も重要な治療法となります。
体重減少の重要性
脂肪肝改善の鍵を握るのが体重減少です。研究によると、5%の体重減少で肝機能が改善し始め、7%以上の減量で肝脂肪化や炎症が軽減、10%の減量で線維化の改善も期待できるとされています。
2023年の研究では、脂肪肝と診断されてから1〜2年間で5%以上の体重減少を達成した方は、肝臓の炎症を示すALT値が大きく低下し、その効果は4〜5年後まで持続していたことが報告されています。さらに、最初に5%の減量に成功した方の約60%は、その後も体重を維持できていました。
カロリー制限
肥満を伴う脂肪肝の方には、カロリー制限食が推奨されます。一般的には、通常のカロリーより30%程度低下させた食事が目安とされています。
1日に必要なエネルギー量は、標準体重×25〜30kcalで計算できます。標準体重は、身長(m)×身長(m)×22で求められます。
例えば、身長170cmの方の場合、標準体重は1.7×1.7×22=約64kgとなり、1日の必要エネルギーは1600〜1920kcal程度となります。
具体的な食事のポイント
1. 糖質を控えめにする
糖質の過剰摂取はインスリン分泌を増加させ、中性脂肪の蓄積を促進します。ご飯やパン、麺類などの主食は適量に抑え、甘いお菓子や清涼飲料水は控えましょう。
特に注意したいのがジュースや缶コーヒーなどの甘い飲み物です。液体で摂取する糖質は吸収が速く、血糖値を急上昇させやすいため、脂肪肝の悪化につながります。
2. 食物繊維を積極的に摂る
食物繊維には、糖質や脂質の吸収を緩やかにする効果があります。また、満腹感を得やすく、食べ過ぎ防止にも役立ちます。
野菜、海藻、きのこ類を毎食取り入れましょう。特に緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜、にんじん、かぼちゃなど)にはビタミンやミネラルが豊富で、肝細胞の保護にも効果的です。
3. 良質なタンパク質を適量摂る
タンパク質は肝臓の修復に必要な栄養素です。鶏むね肉、ささみ、魚、豆腐、納豆など、脂質が少なく良質なタンパク質を選びましょう。
18〜64歳の男性は1日65g、65歳以上の男性は60g、18歳以上の女性は50gのタンパク質摂取が目安です。
4. 脂質の質に注意する
飽和脂肪酸(バター、生クリーム、脂身の多い肉など)やトランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング)は控えめにしましょう。一方、青魚に含まれるオメガ3脂肪酸(EPA、DHA)は肝臓の脂肪代謝を促進し、脂肪肝の改善に役立つとされています。
5. 食事のタイミングと食べ方
- 1日3食を規則正しく摂る
- 朝食を抜かない(昼食後の血糖値急上昇を防ぐ)
- 夜遅い時間の食事は控える
- ゆっくりよく噛んで食べる
- 野菜から先に食べる(ベジファースト)
おすすめの食材
- 野菜類:キャベツ、ブロッコリー(デトックス作用)、緑黄色野菜全般
- きのこ類:しいたけ、舞茸、エリンギ(β-グルカン、食物繊維)
- 海藻類:わかめ、昆布、ひじき(フコイダン、食物繊維)
- 魚類:サバ、イワシ、サケ(オメガ3脂肪酸)
- 大豆製品:豆腐、納豆(良質な植物性タンパク質)
- 鶏肉:むね肉、ささみ(高タンパク・低脂質)
コーヒーの効果
複数の研究で、コーヒーが脂肪肝の発症予防や進行抑制に効果がある可能性が示されています。日本人を対象とした研究では、コーヒーを習慣的に飲む方は脂肪肝になるリスクが約29%低く、肝臓の線維化リスクも約30%低下することが報告されています。
1日2〜3杯程度のコーヒー摂取が適量とされていますが、午後3時以降はカフェインによる睡眠への影響を考慮し、カフェインレスコーヒー(デカフェ)にするのがおすすめです。なお、砂糖やミルクをたっぷり入れると余分なカロリー摂取につながるため、ブラックで飲むのが理想的です。
避けたい食品
- 甘い飲み物(ジュース、炭酸飲料、加糖コーヒー)
- お菓子、スイーツ
- 揚げ物、脂っこい料理
- 脂身の多い肉(豚バラ、牛カルビなど)
- 加工肉(ベーコン、ウインナーなど)
- 白米、白パン(食べ過ぎに注意)
脂肪肝を改善する運動療法
運動の効果
運動療法は脂肪肝改善において非常に重要です。研究によると、体重が減らなくても運動を継続することで肝臓の脂肪が減少することが確認されています。
運動によって脂肪肝が改善するメカニズムは以下の通りです。
- 筋肉が脂肪酸を燃焼してエネルギーとして消費する
- インスリン抵抗性が改善し、肝臓での脂質合成が低下する
- 内臓脂肪が減少し、肝臓への脂質供給が減る
- 基礎代謝が向上し、痩せやすい体質になる
推奨される運動量
日本肝臓学会の「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020」では、以下の運動量が推奨されています。
- 有酸素運動:週に250分以上(1日約35分×7日、または1日50分×5日)
- 頻度:週3〜4回以上
- 期間:12週間(約3か月)以上継続
- 強度:中等度〜やや強め(少し息が上がる程度、会話ができる程度)
3か月の有酸素運動で、肝内脂肪が平均20〜30%減少するという報告もあります。
有酸素運動
脂肪を燃焼させるには、酸素を取り込みながら行う有酸素運動が効果的です。
おすすめの有酸素運動には、ウォーキング(速歩)、ジョギング、サイクリング、水泳、踏み台昇降などがあります。
まずは1日20分程度から始め、徐々に時間を延ばしていくのがおすすめです。理想は毎日20分以上ですが、週3回以上であれば効果は期待できます。また、1日の運動を数回に分けて行っても効果があります。
筋力トレーニング(レジスタンス運動)
有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングも脂肪肝改善に効果的です。研究では、レジスタンス運動はエネルギー消費量が有酸素運動より低いにもかかわらず、肝脂肪化を改善することが報告されています。
筋力トレーニングのメリットとして、筋肉量が増えて基礎代謝が向上すること、運動後も最大48時間エネルギー消費が増加すること、心肺への負担が比較的少なく高度肥満の方でも取り組みやすいこと、転倒予防や体力向上にもつながることが挙げられます。
おすすめの筋力トレーニングには、スクワット、腕立て伏せ、片足立ち、かかと上げ、ダンベル体操などがあります。特にスクワットは、大きな筋肉である太ももやお尻を鍛えられるため、効率的に基礎代謝を上げることができます。1日1分のスクワットでも効果があるとされています。
運動を効果的に行うポイント
順番を意識する
筋力トレーニングを先に行い、その後に有酸素運動を行うと、脂肪燃焼効果が高まります。
無理をしない
急に激しい運動を始めると、心臓や関節に負担がかかります。最初は軽い運動から始め、徐々に強度を上げていきましょう。
継続が最も重要
脂肪肝の改善には継続が欠かせません。楽しく続けられる運動を選び、生活の中に習慣として取り入れましょう。
日常生活でも体を動かす
特別な運動時間が取れない場合でも、日常生活の中で活動量を増やすことができます。例えば、エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩く、家事をこまめに行う、座っている時間を減らして立ち上がる機会を増やすなどの工夫が有効です。
運動を控えるべき場合
以下に該当する方は、運動を始める前に必ず主治医に相談してください。
- コントロールが不十分な高血圧、糖尿病、肝障害、腎障害がある
- 心血管疾患の症状がある
- 急性感染症がある
- BMI35以上の高度肥満
アルコールとの付き合い方
アルコール性脂肪肝の場合
アルコールが原因で脂肪肝になっている場合、まず禁酒が最優先です。アルコール性脂肪肝は初期段階であれば、禁酒によって1〜2か月程度で改善が期待できます。
禁酒1年につき肝臓がんのリスクが約6〜7%低下するという報告もあります。完全に禁酒することが難しい場合でも、まずは飲酒量を減らすことから始めましょう。
非アルコール性脂肪肝の場合
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)であっても、飲酒は控えめにすることが推奨されます。アルコールは脂肪肝の炎症を悪化させる可能性があるためです。
飲む場合は1日の純アルコール量を20g以内に抑えましょう。これはビール中瓶1本、日本酒1合、ワイン2杯程度に相当します。また、週に2日以上の休肝日を設けることも大切です。
脂肪肝改善の目標と期間
3か月で改善を目指す
脂肪肝は内臓脂肪や皮下脂肪と比べて落ちやすいことがわかっています。適切な食事と運動を継続すれば、3か月程度で改善が期待できます。
専門外来のデータでは、食事指導によって8割以上の患者さんが3か月で脂肪肝を改善したという報告もあります。糖尿病を併発していない場合、成功率は9割に達するとされています。
具体的な目標設定
体重目標
まずは現在の体重から5%減を目指しましょう。体重80kgの方なら4kg減、60kgの方なら3kg減が目標です。
最終的には7〜10%の減量を目指すと、より確実な改善が期待できます。
生活習慣の目標
- 週250分以上の運動
- カロリー30%減の食事
- 糖質・脂質の摂り過ぎを控える
- アルコールは控えめに(または禁酒)
- 規則正しい生活リズム
継続のコツ
- 無理な目標を立てない
- 小さな成功を積み重ねる
- 毎日体重を記録する
- 仲間やアプリを活用してモチベーションを維持する
- 定期的に健康診断を受けて効果を確認する
医療機関を受診すべきタイミング
早めの受診が重要
脂肪肝は自覚症状がないため放置されがちですが、以下のような場合は早めに医療機関を受診しましょう。
- 健康診断で肝機能異常(AST、ALT、γ-GTPの上昇)を指摘された
- 腹部エコーで脂肪肝を指摘された
- 肥満やメタボリックシンドロームがある
- 糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病がある
- 体重が増加傾向にある
専門医への紹介基準
かかりつけ医から肝臓専門医への紹介が必要となる目安には以下のようなものがあります。
- FIB-4 indexが2.67以上(高度線維化の可能性)
- 血小板数が15万/μL以下
- ALTが100 IU/L以上が持続
- 生活習慣の改善を3〜6か月続けても改善しない

まとめ
脂肪肝は現代の日本人に非常に多い疾患ですが、自覚症状がないため軽視されがちです。しかし、放置すると肝硬変や肝臓がん、心血管疾患など命に関わる疾患へと進行するリスクがあります。
一方で、脂肪肝は生活習慣の改善によって3か月程度で改善が期待できる「治せる病気」でもあります。
脂肪肝改善のためのポイントをまとめると以下の通りです。
- 5〜10%の体重減少を目指す
- カロリーを控えめにし、糖質・脂質の過剰摂取を避ける
- 野菜、食物繊維、良質なタンパク質を積極的に摂る
- 週250分以上の有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる
- アルコールは控えめに、できれば禁酒する
- コーヒーを1日2〜3杯程度飲む習慣は予防に役立つ可能性がある
健康診断で脂肪肝を指摘された方、肝機能の数値が気になる方は、まずは生活習慣を見直してみましょう。今日からできることを一つずつ始めることが、健康な肝臓を取り戻すための第一歩です。
気になる症状がある場合や、自己管理だけでは改善が難しい場合は、早めに医療機関を受診してください。当院では、脂肪肝をはじめとする生活習慣病に関するご相談を承っております。
参考文献
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂肪肝」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-033.html
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」 https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/nafld_2020.pdf
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASHガイド2023 患者さんとご家族のための」 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/nafld_2023.pdf
- 日本消化器病学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」(2024年8月) https://www.jsge.or.jp/news/20240820-3/
- 日本肝臓学会「肝臓リハビリテーション指針」 https://www.jsh.or.jp/medical/committeeactivity/shakaihoken/fatty.html
- 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」 https://www.kanen.jihs.go.jp/cont/010/shibousei.html
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000809/
- 船津和夫ほか「長期縦断的調査からみたコーヒーの脂肪肝発生と臨床検査値への影響」人間ドック Vol.34 No.4, 2019 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendock/34/4/34_572/_article/-char/ja/
- 糖尿病ネットワーク「危険な『脂肪肝』は3つの方法で改善できる 肥満でない人も要注意」 https://dm-net.co.jp/calendar/2017/026793.php
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務