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はじめに

鏡を見たときに、顔にしこりのようなものができていることに気づいたことはありませんか。触れると少し盛り上がっていて、時には痛みを感じることもある、そんな症状に心当たりがある方もいらっしゃるかもしれません。それは「粉瘤(ふんりゅう)」である可能性があります。

粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まってしまう良性の腫瘍です。医学的には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」や「アテローム」とも呼ばれ、皮膚科で最もよく見られる皮膚腫瘍の一つとなっています。

特に顔にできた粉瘤は、見た目の問題から多くの方が悩みを抱えています。また、顔は目立つ部位であるため、治療の際の傷跡についても気になるところでしょう。本記事では、顔にできた粉瘤について、その原因から症状、診断方法、治療法、そして予防策まで、医学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。

粉瘤とは何か

粉瘤の基本的な仕組み

粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造(嚢腫)ができ、その中に本来であれば皮膚表面から剥がれ落ちるはずの角質や皮脂が溜まってしまう状態です。この袋の内側は、正常な皮膚と同じように表皮細胞で覆われており、これらの細胞が常に角質を産生し続けます。

しかし、袋の中には出口がないため、産生された角質や皮脂は外に排出されることができず、どんどん袋の中に蓄積していきます。その結果、時間の経過とともに粉瘤は徐々に大きくなっていく傾向があります。

粉瘤ができる原因

粉瘤ができる明確な原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。

外傷や打撲などによって皮膚が傷つき、その際に表皮の一部が皮下に入り込んでしまうことが、粉瘤形成の一つのきっかけとなります。また、毛穴が何らかの理由で閉塞し、その部分が袋状に変化することもあります。

さらに、ニキビや毛嚢炎などの炎症が治った後に、粉瘤が形成されることもあります。遺伝的な要因も関係している可能性が指摘されており、家族内で粉瘤ができやすい傾向がある場合もあります。

ホルモンバランスの変化も粉瘤の発生に影響を与える可能性があります。特に思春期以降に粉瘤ができやすくなるのは、皮脂の分泌が活発になることと関連していると考えられています。

粉瘤の疫学的特徴

粉瘤は年齢や性別を問わず誰にでもできる可能性がありますが、特に20代から40代の方に多く見られる傾向があります。男女比では、やや男性に多いという報告もありますが、大きな差はありません。

日本皮膚科学会の統計によると、皮膚科を受診する患者さんの中でも、粉瘤は非常に一般的な疾患の一つとなっています。多くの場合、痛みや不快感がなければ放置されることも多いですが、顔にできた場合は美容的な理由から早期に受診される方が多いのが特徴です。

顔にできる粉瘤の特徴

顔にできやすい部位

顔の粉瘤は、顔のどの部位にもできる可能性がありますが、特にできやすい部位があります。

頬や額、こめかみ、まぶた、耳の周辺、顎などが代表的です。これらの部位は皮脂腺が多く、毛穴も密集しているため、粉瘤ができやすい環境にあります。

特に耳たぶや耳の後ろは粉瘤の好発部位として知られており、この部位にできる粉瘤は比較的大きくなりやすい傾向があります。また、鼻の周辺や眉間なども粉瘤ができやすい部位です。

顔の粉瘤に特有の症状

顔にできた粉瘤は、最初は小さなしこりとして始まることが多く、触るとコリコリとした硬さがあります。大きさは数ミリから数センチまで様々で、時間の経過とともに徐々に大きくなっていくのが一般的です。

粉瘤の中央には、「へそ」と呼ばれる小さな開口部が見られることがあります。これは黒い点のように見え、粉瘤を見分ける重要なポイントの一つです。この開口部から、時折白っぽいドロドロとした内容物が出てくることもあります。この内容物は独特の臭いを伴うことが多く、これも粉瘤の特徴的な症状です。

通常、粉瘤自体は痛みを伴いませんが、細菌感染を起こすと炎症性粉瘤(感染性粉瘤)となり、赤く腫れて痛みを伴うようになります。この状態を「炎症性粉瘤」や「感染性粉瘤」と呼び、早急な対応が必要となります。

顔の粉瘤の心理的影響

顔は常に人目に触れる部位であるため、顔にできた粉瘤は患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を与えることがあります。

見た目への不安から、人と会うことに消極的になったり、外出を控えるようになったりする方もいらっしゃいます。特に若い世代では、自己イメージの低下やストレスの原因となることもあります。

また、粉瘤が大きくなると化粧でカバーすることも難しくなり、さらに精神的な負担が増すこともあります。このような心理的な側面も含めて、顔の粉瘤は単なる美容的な問題だけでなく、総合的に対応すべき医療課題と言えるでしょう。

粉瘤の症状と診断

粉瘤の典型的な症状

粉瘤の症状は、その状態によって大きく異なります。

非炎症性の粉瘤の場合、主な症状は以下のようなものです。まず、皮膚の下にしこりを感じます。このしこりは可動性があり、皮膚の上から押すと少し動くのが特徴です。触った感触は、比較的硬く、境界がはっきりしています。

粉瘤の表面は通常、正常な皮膚と同じ色をしていますが、大きくなると皮膚が少し盛り上がって見えます。中央部に小さな黒い点(開口部)が見られることが多く、これを圧迫すると白色または黄白色のドロドロとした内容物が出てくることがあります。

一方、炎症を起こした粉瘤では、症状が大きく変わります。患部が赤く腫れ上がり、触ると熱を持っているように感じられます。痛みが強く、特に触ったり圧迫したりすると激しく痛みます。炎症が進行すると、膿が溜まって波動感(押すとプヨプヨした感触)を感じることもあります。

他の皮膚疾患との鑑別

顔にできるしこりには、粉瘤以外にも様々な疾患があり、正確な診断が重要です。

脂肪腫は、粉瘤と間違えられやすい良性腫瘍の一つです。脂肪腫は脂肪細胞が増殖してできた腫瘍で、触るとやわらかく、粉瘤よりも境界が不明瞭な場合が多いです。また、中央に開口部がないのも特徴です。

皮様嚢腫も粉瘤に似た嚢腫性病変ですが、先天的にできることが多く、主に眼窩周囲や鼻根部に発生します。粉瘤よりも深い位置にでき、皮膚との癒着が少ないのが特徴です。

リンパ節の腫れも、しこりとして触れることがあります。しかし、リンパ節は通常、耳の前や顎の下、首などの特定の場所に存在し、風邪や感染症の際に腫れることが多いです。粉瘤のような開口部はなく、全身症状を伴うこともあります。

毛包炎やせつ(おでき)も、赤く腫れて痛みを伴うため、炎症性粉瘤と似た症状を示すことがあります。しかし、これらは通常、粉瘤よりも急速に発症し、自然に破れて膿が出ることが多いです。

基底細胞癌や脂腺癌などの皮膚悪性腫瘍も、初期には粉瘤と似た外観を呈することがあります。特に高齢者で新しくできたしこりや、急速に大きくなるしこりには注意が必要です。

診断方法

粉瘤の診断は、主に視診と触診によって行われます。

経験豊富な皮膚科医であれば、しこりの外観、触った感触、中央の開口部の有無などから、多くの場合は診察だけで粉瘤と診断することができます。

しかし、診断が難しい場合や、他の疾患との鑑別が必要な場合には、超音波検査(エコー検査)が有用です。超音波検査では、しこりの内部構造や深さ、周囲組織との関係を詳しく観察することができます。粉瘤は超音波検査で特徴的な像を示すため、診断の確定に役立ちます。

また、MRI検査やCT検査が必要になることもあります。特に深い位置にある粉瘤や、大きな粉瘤、悪性腫瘍との鑑別が必要な場合には、これらの画像検査が有用です。

最終的な確定診断は、摘出した粉瘤を病理組織学的に検査することで行われます。手術で摘出した組織を顕微鏡で観察し、嚢腫壁が表皮細胞で覆われていることを確認することで、粉瘤の診断が確定します。

粉瘤の治療方法

保存的治療と経過観察

小さく、症状のない粉瘤の場合、すぐに治療が必要というわけではありません。定期的に経過を観察しながら、大きさの変化や症状の出現に注意を払う方法もあります。

しかし、粉瘤は自然に消失することはなく、多くの場合、時間とともに徐々に大きくなっていきます。また、いつ炎症を起こすか予測することは困難です。そのため、症状がなくても早めに摘出することを推奨する医師も多くいます。

炎症を起こした粉瘤に対しては、まず炎症を抑える治療が必要です。抗生物質の内服や外用により、細菌感染をコントロールします。炎症が強い場合には、切開して膿を排出する処置を行うこともあります。

ただし、これらは対症療法であり、粉瘤の袋(嚢腫壁)が残っている限り、再発する可能性が高いです。そのため、炎症が落ち着いた後に、根治的な手術を行うことが推奨されます。

手術療法の種類

粉瘤の根治的治療は、嚢腫を完全に摘出する手術です。手術方法には、主に以下のようなものがあります。

伝統的な切開法(小切開摘出術)は、最も一般的な方法です。粉瘤の直径よりもやや大きめに皮膚を紡錘形に切開し、嚢腫を周囲組織から剥離して完全に摘出します。嚢腫壁を破らずに摘出することが重要で、壁が残ると再発の原因となります。

摘出後は、皮下組織を吸収糸で縫合し、皮膚を丁寧に縫い合わせます。この方法は再発率が低く、確実な治療法として広く行われています。

くり抜き法(パンチ法)は、近年注目されている方法です。トレパンやパンチという特殊な器具を使って、粉瘤の中央部に小さな穴を開け、そこから内容物を絞り出した後、嚢腫壁を摘出します。

この方法の利点は、切開線が小さく済むため、術後の傷跡が目立ちにくいことです。特に顔面の粉瘤では、美容的な観点から選択されることが多くなっています。

ただし、嚢腫が大きい場合や炎症を起こしている場合、深い位置にある場合には、この方法が適さないこともあります。

CO2レーザーを用いた治療も一部の医療機関で行われています。レーザーで小さく開けた穴から内容物を除去し、嚢腫壁を焼灼する方法です。出血が少なく、治療時間が短いという利点がありますが、嚢腫壁の完全な除去が難しい場合もあり、再発のリスクがやや高くなる可能性があります。

手術の実際の流れ

粉瘤の手術は、通常、外来で局所麻酔下に行われます。手術時間は粉瘤の大きさや場所によりますが、一般的には15分から30分程度です。

まず、手術部位を消毒し、清潔な布で覆います。次に、局所麻酔を注射します。麻酔の注射時には少し痛みを感じますが、その後は手術中の痛みはほとんどありません。

麻酔が十分に効いたことを確認した後、切開法であれば皮膚を切開し、くり抜き法であればパンチで小さな穴を開けます。そして、周囲組織から丁寧に嚢腫を剥離し、嚢腫壁を破らないように注意しながら完全に摘出します。

摘出した嚢腫は、病理検査に提出されます。嚢腫を摘出した後の空洞には、出血がないことを確認し、必要に応じて止血処置を行います。

その後、皮下組織を吸収糸で縫合し、皮膚を細い糸で丁寧に縫い合わせます。顔面の場合は、特に美容的な仕上がりを考慮し、傷跡が目立ちにくくなるよう工夫して縫合します。

最後に、抗生物質軟膏を塗布し、ガーゼで保護して手術は終了です。

術後の経過とケア

手術当日は、患部を濡らさないように注意します。シャワーは翌日から可能ですが、手術部位を直接濡らさないようにガーゼで保護します。

手術翌日には、創部の状態を確認するため、再度受診していただくことが一般的です。問題がなければ、以降は自宅での処置となります。毎日、ガーゼ交換を行い、清潔に保つことが重要です。

抜糸は、通常、術後5日から7日程度で行われます。顔面の場合は、傷跡を目立たせないために、やや早めに抜糸することもあります。

抜糸後も、しばらくは傷跡のケアが必要です。テープ固定を数週間続けることで、傷跡が広がるのを防ぎ、よりきれいな仕上がりになります。また、紫外線対策も重要で、日焼け止めの使用や帽子での遮光が推奨されます。

術後の腫れや内出血は、通常、1週間から2週間程度で改善します。ただし、個人差があり、完全に目立たなくなるまでには数か月かかることもあります。

傷跡は時間とともに徐々に目立たなくなっていきますが、完全には消えません。ただし、適切な手術と術後管理により、ほとんど目立たない程度まで改善することが期待できます。

顔の粉瘤手術における特別な配慮

美容的側面への配慮

顔の粉瘤手術では、機能的な問題だけでなく、美容的な仕上がりが非常に重要です。

切開線の方向は、できる限り皮膚のしわの方向(リラクセーションライン)に沿って計画されます。これにより、傷跡が目立ちにくくなります。また、眉毛や髪の生え際など、傷跡が隠れやすい位置を選んで切開することも検討されます。

縫合には、極めて細い糸を使用し、真皮縫合と表皮縫合を組み合わせることで、段差のないきれいな仕上がりを目指します。特に顔面では、形成外科的な縫合技術が重要となります。

くり抜き法を選択する場合には、傷跡をより小さくできる可能性がありますが、粉瘤の大きさや位置、皮膚の状態などを総合的に判断して、最適な方法を選択します。

顔面の解剖学的特徴への配慮

顔には、表情筋、顔面神経、血管など、重要な構造が複雑に走行しています。粉瘤の手術では、これらの構造を傷つけないよう、細心の注意を払う必要があります。

特に、顔面神経の枝は顔の表情を司る重要な神経で、損傷すると顔面麻痺の原因となります。眼の周囲、こめかみ、頬、口角付近などでは、神経の走行を意識した慎重な操作が求められます。

また、顔面には豊富な血管が分布しており、手術中の出血のコントロールも重要です。適切な止血処置により、術後の腫れや内出血を最小限に抑えることができます。

眼の近くや鼻の近くなど、特にデリケートな部位の粉瘤については、より専門的な技術や経験が必要となる場合があります。

部位別の特徴と注意点

まぶたの粉瘤は、眼に非常に近い位置にあるため、手術には特別な注意が必要です。眼球を保護しながら手術を行う必要があり、場合によっては眼科との連携が必要になることもあります。

耳周辺の粉瘤は比較的多く見られますが、耳の後ろや耳たぶの粉瘤は、しばしば大きくなる傾向があります。この部位は傷跡が目立ちにくい一方で、眼鏡やピアスの邪魔になることもあります。

鼻や鼻周辺の粉瘤は、顔の中心部にあるため特に目立ちやすく、患者さんの美容的な関心も高い部位です。この部位では、切開線の方向や長さに特に配慮が必要です。

頬の粉瘤は、顔面神経の枝が多く走行する部位であるため、神経損傷に注意しながら手術を行います。また、頬は表情の動きが大きいため、傷跡が広がりやすい傾向があります。

炎症性粉瘤(感染性粉瘤)の対応

炎症性粉瘤の特徴

炎症性粉瘤は、粉瘤に細菌感染が起こった状態です。通常の粉瘤が突然赤く腫れ、痛みを伴うようになります。

炎症の初期段階では、患部が赤くなり、熱を持つようになります。触ると痛みがあり、周囲と比べて温かく感じます。炎症が進行すると、腫れが大きくなり、痛みも強くなります。

さらに炎症が進むと、粉瘤の内部に膿が溜まり、大きく腫れ上がります。この段階では、皮膚が薄くなって透けて見えることもあり、触ると波動感(中に液体が入っているような感触)を感じます。

場合によっては、自然に皮膚が破れて膿が排出されることもあります。また、発熱や全身倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。

炎症性粉瘤の治療

炎症性粉瘤の治療は、炎症の程度によって異なります。

炎症の初期段階では、抗生物質の内服により炎症をコントロールすることを試みます。同時に、患部を冷やしたり、安静にしたりすることも重要です。

しかし、膿が溜まっている場合には、切開排膿が必要となります。局所麻酔下で皮膚に小さな切開を加え、溜まった膿を排出します。この処置により、痛みや腫れは比較的速やかに改善します。

切開排膿後は、開けた穴から膿が出続けるため、毎日の洗浄とガーゼ交換が必要です。抗生物質の内服も並行して行います。

炎症が完全に落ち着くまでには、通常1週間から2週間程度かかります。ただし、この段階では嚢腫の袋はまだ残っているため、炎症が治まった後に根治的な手術を行うことが推奨されます。

炎症が落ち着いてから手術を行うまでの期間は、通常2か月から3か月程度とされています。この期間を待つことで、炎症による組織の癒着が軽減し、手術がしやすくなります。

炎症性粉瘤の予防

粉瘤の炎症を予防するためには、いくつかの注意点があります。

まず、粉瘤を自分で無理に押し出そうとしないことが重要です。内容物を絞り出そうと強く圧迫すると、嚢腫壁が破れて周囲組織に内容物が漏れ出し、炎症を引き起こす原因となります。

また、粉瘤をいじったり、頻繁に触ったりすることも避けるべきです。手には多くの細菌が付着しているため、触ることで感染のリスクが高まります。

粉瘤がある部位を清潔に保つことも大切です。ただし、過度の洗浄は皮膚のバリア機能を低下させる可能性があるため、適度な洗浄を心がけます。

外傷にも注意が必要です。粉瘤がある部位に強い刺激や圧迫が加わると、嚢腫壁が破れて炎症を起こすことがあります。

粉瘤の再発と予防

粉瘤の再発について

適切に手術が行われた場合、粉瘤の再発率は比較的低いとされています。しかし、いくつかの要因により再発することがあります。

最も多い再発の原因は、手術時に嚢腫壁の一部が残ってしまうことです。嚢腫壁を完全に摘出できなかった場合、残った壁から再び粉瘤が形成されることがあります。特に炎症を起こした後の粉瘤や、嚢腫壁が周囲組織と強く癒着している場合には、完全な摘出が難しくなることがあります。

また、体質的に粉瘤ができやすい方は、同じ場所ではなく別の場所に新しく粉瘤ができることもあります。これは厳密には再発ではなく、新たな粉瘤の発生と考えられます。

再発した場合には、再度の手術が必要となります。再発粉瘤の手術は、初回の手術よりも難しくなることが多く、瘢痕組織との癒着などにより、より慎重な操作が求められます。

粉瘤の予防方法

粉瘤の発生を完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすためにできることがあります。

皮膚を清潔に保つことは基本的ですが、過度の洗浄は逆効果になることもあります。適度な洗浄と保湿により、健康な皮膚状態を維持することが大切です。

外傷を避けることも重要です。特に顔面では、ぶつけたり、強くこすったりしないよう注意します。また、ニキビを無理に潰すことも避けるべきです。

生活習慣の改善も粉瘤の予防に役立つ可能性があります。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動などにより、全身の健康状態を良好に保つことが、皮膚の健康にもつながります。

ストレスの管理も重要です。ストレスはホルモンバランスに影響を与え、皮脂の分泌を増加させることがあります。適切なストレス管理により、皮膚の状態を整えることができます。

よくある質問

粉瘤は放置しても大丈夫ですか

粉瘤は良性の腫瘍であり、がん化することはほとんどありません。そのため、医学的には必ずしもすぐに治療が必要というわけではありません。
しかし、粉瘤は自然に消失することはなく、多くの場合、時間とともに徐々に大きくなっていきます。また、いつ炎症を起こすかを予測することは困難です。
炎症を起こした場合、痛みや腫れなどの症状が出現し、日常生活に支障をきたすこともあります。また、炎症後に手術を行う場合、炎症が落ち着くまで待つ必要があり、治療期間が長くなります。
さらに、大きくなってから手術を行う場合、切開線も長くなり、傷跡も大きくなる可能性があります。特に顔面の場合、美容的な観点からも、小さいうちに治療することが推奨されます。

手術の痛みはありますか

手術は局所麻酔下で行われるため、手術中の痛みはほとんどありません。

麻酔の注射時には、針を刺す際の痛みと、麻酔薬が入る際の圧迫感がありますが、これは一時的なものです。麻酔が十分に効いた後は、切開や摘出の際に引っ張られる感じはあっても、痛みはありません。

術後、麻酔が切れた後には、多少の痛みを感じることがあります。痛みの程度は個人差がありますが、多くの場合、軽度から中等度の痛みで、処方された鎮痛剤で十分にコントロール可能です。

痛みは通常、2日から3日程度で改善していきます。激しい痛みが続く場合や、痛みが徐々に強くなる場合には、感染などの合併症の可能性もあるため、早めに受診することが重要です。

手術の傷跡は残りますか

手術による傷跡は、完全には消えませんが、時間とともに徐々に目立たなくなっていきます。

傷跡の目立ち方は、粉瘤の大きさ、手術方法、術後のケア、個人の体質など、様々な要因によって異なります。一般的に、小さな粉瘤で、くり抜き法などの低侵襲な方法で手術を行った場合、傷跡は比較的目立ちにくくなります。

顔面の手術では、特に美容的な配慮がなされます。切開線をしわの方向に沿って計画したり、形成外科的な縫合技術を用いたりすることで、傷跡を最小限に抑える工夫がされます。

術後のケアも重要です。テープ固定や紫外線対策を適切に行うことで、傷跡の改善を促すことができます。また、必要に応じて瘢痕治療薬やレーザー治療などを併用することもあります。

傷跡の成熟には、通常6か月から1年程度かかります。この間に傷跡は徐々に薄く、平らになっていきます。最終的な傷跡の状態は、この成熟過程を経た後に評価されます。

保険診療で治療できますか

粉瘤の手術は、健康保険の適用対象となります。医学的に必要と判断される場合には、保険診療で治療を受けることができます。

ただし、美容的な理由のみで、医学的に問題のない小さな粉瘤を予防的に摘出する場合などには、自費診療となることもあります。診察時に、保険適用の可否について確認することをお勧めします。

手術の費用は、粉瘤の大きさや手術方法によって異なりますが、3割負担の場合、数千円から1万円程度が一般的です。初診料や再診料、処方薬の費用などは別途かかります。

粉瘤とニキビの違いは何ですか

粉瘤とニキビは、どちらも皮膚にできるしこりや腫れですが、全く異なる疾患です。

ニキビ(尋常性痤瘡)は、毛穴に皮脂が詰まり、そこに細菌が増殖して炎症を起こす状態です。思春期に多く見られ、通常は自然に治癒します。

一方、粉瘤は皮膚の下に袋ができ、その中に角質などが溜まる良性腫瘍です。自然に治癒することはなく、根治には手術が必要です。

見た目の違いとしては、粉瘤には中央に黒い点(開口部)が見られることが多く、触るとしこりとして触れます。ニキビは通常、開口部はなく、炎症による赤みや膿が見られます。

また、大きさも異なります。ニキビは通常、数ミリ程度ですが、粉瘤は数センチに達することもあります。

ただし、炎症を起こした粉瘤は赤く腫れて、ニキビやおできに似た外観を呈することがあり、鑑別が難しい場合もあります。正確な診断のためには、皮膚科専門医の診察を受けることが重要です。

治療を受けるタイミング

早期治療のメリット

粉瘤は良性の腫瘍であり、緊急性はありませんが、早期に治療を受けることには多くのメリットがあります。

小さいうちに治療すれば、手術の侵襲も小さく済み、傷跡も最小限に抑えることができます。特に顔面の場合、美容的な観点からも早期治療が推奨されます。

また、炎症を起こす前に治療することで、痛みや腫れなどの症状を経験せずに済みます。炎症を起こしてからでは、まず炎症を治療し、それから数か月待って手術を行うという、長い治療期間が必要になります。

さらに、炎症を起こした粉瘤の手術は、炎症を起こしていない粉瘤の手術よりも難しくなることが多く、再発のリスクも高くなる可能性があります。

こんな時はすぐに受診を

以下のような症状がある場合には、できるだけ早く皮膚科を受診することをお勧めします。

粉瘤が急に大きくなった場合、特に短期間で大きくなる場合には、炎症を起こしている可能性があります。また、まれではありますが、悪性腫瘍の可能性も考慮する必要があります。

粉瘤が赤く腫れて痛みがある場合は、炎症性粉瘤の可能性が高いです。早期に治療を開始することで、症状の悪化を防ぐことができます。

粉瘤から膿や血液が出てくる場合も、感染を起こしている可能性があります。自然に破れた場合でも、適切な処置が必要です。

発熱や強い痛み、広範囲の赤みや腫れなどの全身症状を伴う場合には、感染が広がっている可能性もあり、緊急の対応が必要になることがあります。

また、粉瘤かどうか判断に迷う場合や、不安がある場合にも、専門医の診察を受けることをお勧めします。

アイシークリニック東京院での治療

当院の特徴

アイシークリニック東京院では、粉瘤をはじめとする皮膚腫瘍の診断と治療に豊富な経験を持つ医師が診療にあたっています。

顔面の粉瘤治療では、機能的な問題の解決だけでなく、美容的な仕上がりにも細心の注意を払っています。患者様一人一人の状態やご希望に合わせて、最適な治療方法を提案させていただきます。

手術は清潔な手術室で、適切な感染対策のもとで行われます。局所麻酔を使用するため、通常は日帰りでの手術が可能です。

術後のケアについても、丁寧にご説明し、不安なく回復期間を過ごしていただけるようサポートいたします。

診療の流れ

まず、初診時には詳しく診察を行い、粉瘤の診断と治療方針についてご説明いたします。必要に応じて超音波検査などの検査を行い、正確な診断を行います。

手術が必要と判断された場合、手術の方法、リスク、術後のケアなどについて詳しくご説明し、患者様のご理解とご同意をいただいた上で治療を進めます。

手術日程については、患者様のご都合に合わせて調整いたします。緊急性の高い炎症性粉瘤の場合には、できるだけ早く対応させていただきます。

手術後は、定期的に経過を観察し、問題がないか確認いたします。何か気になることがあれば、いつでもご相談いただけます。

まとめ

顔にできた粉瘤は、多くの方が経験する一般的な皮膚疾患です。良性の腫瘍であり、健康上の大きな問題になることは少ないですが、見た目の問題や炎症のリスクなど、患者様の生活の質に影響を与えることがあります。

粉瘤の根治的な治療は手術による摘出です。小さいうちに治療することで、手術の侵襲を最小限に抑え、傷跡も目立ちにくくすることができます。特に顔面の粉瘤では、美容的な配慮が重要となります。

炎症を起こすと、痛みや腫れなどの症状が出現し、治療も複雑になります。そのため、症状がないうちに治療を検討することをお勧めします。

粉瘤かどうか判断に迷う場合や、治療について詳しく知りたい場合には、お気軽に皮膚科専門医にご相談ください。適切な診断と治療により、安心して日常生活を送ることができます。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会
  2. 厚生労働省「医療安全対策について」
  3. 国立がん研究センター「皮膚腫瘍について」
  4. 日本形成外科学会
  5. 国立国会図書館デジタルコレクション「医学文献」

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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