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湿疹とダニ:症状写真で学ぶ診断と対策

はじめに

現代社会において、皮膚のトラブルに悩む方は年々増加傾向にあります。特に、ダニによる湿疹は多くの方が直面する身近な健康問題でありながら、適切な診断や対策方法が十分に理解されていないのが現状です。

湿疹は単なる皮膚の症状と考えられがちですが、実際には生活の質(QOL)に大きな影響を与える疾患です。強いかゆみによる睡眠障害、外見への悩み、集中力の低下など、その影響は多岐にわたります。特にダニが原因となる湿疹は、適切な環境管理により大幅な症状改善が期待できるため、正しい知識を身につけることが極めて重要です。

本記事では、湿疹とダニの関係性、症状の特徴、診断方法、効果的な治療法、そして日常生活における予防策まで、医学的根拠に基づいて詳しく解説いたします。症状の見分け方についても、具体的な特徴を交えながらご説明し、読者の皆様が適切な対処法を選択できるよう支援いたします。

湿疹の基本知識

湿疹とは何か

湿疹(エクゼマ)は、皮膚に起こる炎症反応の総称です。医学的には「皮膚炎」とも呼ばれ、皮膚のバリア機能が低下することで、外部からの刺激に対して過敏な反応を示すようになった状態を指します。

健康な皮膚は、外界からの様々な刺激や病原体から身体を守る重要なバリア機能を持っています。このバリア機能は、皮膚の最外層である角質層と、その表面を覆う皮脂膜によって形成されています。しかし、何らかの原因でこのバリア機能が低下すると、通常では問題とならない軽微な刺激でも炎症反応が起こりやすくなります。

湿疹の種類と分類

湿疹は原因や症状の特徴により、以下のように分類されます:

1. 接触皮膚炎

外部物質との接触によって起こる湿疹です。化粧品、洗剤、金属、植物などが原因となることが多く、接触した部位に限局して症状が現れるのが特徴です。接触皮膚炎はさらに、アレルギー性接触皮膚炎と刺激性接触皮膚炎に分けられます。

2. アトピー性皮膚炎

遺伝的な体質(アトピー素因)とアレルゲンの関与によって起こる慢性的な湿疹です。幼児期から成人期まで長期間にわたって症状が続くことが特徴で、良くなったり悪くなったりを繰り返します。

3. 脂漏性皮膚炎

皮脂の分泌が多い部位に起こる湿疹で、頭皮、顔面、胸部などによく見られます。マラセチア菌というカビの一種が関与していると考えられています。

4. 皮脂欠乏性皮膚炎

皮脂の分泌低下により皮膚が乾燥することで起こる湿疹です。特に高齢者や冬季に多く見られ、すねや腕などに亀甲状の乾燥とかゆみが現れます。

湿疹の症状

湿疹の症状は病期により変化します:

急性期

  • 紅斑(赤み)
  • 丘疹(小さな盛り上がり)
  • 水疱(水ぶくれ)
  • びらん(皮膚の表面がめくれた状態)
  • 滲出液(ジクジクとした液体の分泌)

亜急性期

  • 紅斑
  • 鱗屑(皮膚のかけら)
  • 痂皮(かさぶた)

慢性期

  • 皮膚の肥厚(厚くなること)
  • 苔癬化(ごわごわとした状態)
  • 色素沈着
  • 乾燥

ダニによる皮膚症状の特徴

ダニの種類と皮膚への影響

皮膚症状を引き起こすダニには、大きく分けて以下の種類があります:

1. チリダニ(ヒョウヒダニ)

最も一般的な室内ダニで、人の皮膚を直接刺すことはありません。しかし、その死骸や糞に含まれるタンパク質がアレルゲンとなり、アトピー性皮膚炎や湿疹の悪化要因となります。体長は0.2-0.4mmと非常に小さく、肉眼では確認困難です。

2. ツメダニ

体長0.3-1.0mmほどの小さなダニです。通常は他のダニや小昆虫を捕食しますが、間違って人を刺すことがあります。刺された直後は自覚症状がありませんが、翌日以降に強いかゆみと赤い腫れが現れ、1週間程度持続するのが特徴です。

3. イエダニ

ネズミに寄生するダニですが、宿主となるネズミがいなくなると人を刺すことがあります。体長は約1mmで、主に夜間に活動します。刺されると強いかゆみと赤い発疹が現れます。

4. ヒゼンダニ(疥癬)

皮膚の角質層に寄生するダニで、疥癬という感染症を引き起こします。極めて強いかゆみが特徴で、特に夜間に症状が悪化します。感染力が強く、直接的な皮膚接触により感染が拡大します。

ダニアレルギーのメカニズム

ダニアレルギーは、ダニの死骸や糞に含まれるタンパク質(Der p 1、Der f 1など)が原因となって起こります。これらのアレルゲンが呼吸や皮膚を通じて体内に侵入すると、免疫システムがそれを異物と認識し、IgE抗体を産生します。

再度同じアレルゲンに曝露されると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症メディエーターが放出され、以下のような症状が現れます:

  • 皮膚:湿疹、じんましん、かゆみ
  • 呼吸器:くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、咳、喘息
  • 眼:充血、かゆみ、涙

ダニ湿疹の症状の特徴

ダニによる湿疹には以下のような特徴的な症状があります:

症状の現れ方

  • 赤い丘疹や小水疱が散在性に現れる
  • 強いかゆみを伴い、特に夜間に悪化する傾向
  • 掻破により皮膚が肥厚し、苔癬化することが多い
  • 症状は慢性的で、季節を問わず一年中続く

好発部位

ダニ湿疹は以下の部位に現れやすい傾向があります:

  1. 衣服で覆われやすい部位
    • 首まわり
    • 腋の下
    • 肘の内側
    • 膝の裏
    • 腰まわり
  2. 皮膚が薄く敏感な部位
    • 顔面(特に目の周囲)
    • 手首
    • 足首
  3. 摩擦を受けやすい部位
    • 下着のゴム部分
    • 靴下の履き口
    • ベルトが当たる部分

これらの部位は、寝具や衣服を通じてダニアレルゲンとの接触機会が多く、さらに摩擦や汗による皮膚バリア機能の低下が重なることで、症状が現れやすくなります。

症状の見分け方と診断

ダニ湿疹と間違えやすい皮膚疾患

ダニ湿疹の正確な診断のためには、類似の症状を示す他の皮膚疾患との鑑別が重要です。

1. あせも(汗疹)

特徴

  • 高温多湿の環境で大量に汗をかいた際に発症
  • 汗腺の詰まりによる小さな水疱や丘疹
  • 首、胸、背中など汗をかきやすい部位に好発
  • 涼しい環境で比較的短期間に改善

ダニ湿疹との違い

  • 季節性があり、主に夏季に限定
  • 発症部位が汗をかきやすい場所に限られる
  • 環境改善により速やかに軽快

2. 蚊刺症

特徴

  • 蚊に刺された直後から数時間以内に症状出現
  • 中央に刺し口がある膨疹
  • 露出部位に限局
  • 数日以内に自然治癒

ダニ湿疹との違い

  • 刺咬の時期が明確
  • 症状の持続期間が短い
  • 露出部位のみに限局

3. じんましん

特徴

  • 突然出現する膨疹(ミミズ腫れ)
  • 強いかゆみ
  • 数時間から24時間以内に消失
  • 出没を繰り返す

ダニ湿疹との違い

  • 症状の出没パターン
  • 膨疹の性状(境界明瞭で盛り上がりが顕著)
  • 持続時間が短い

4. 接触皮膚炎

特徴

  • 特定の物質との接触後に発症
  • 接触部位に一致した皮疹の分布
  • 原因物質の除去により改善

ダニ湿疹との違い

  • 明確な接触歴
  • 皮疹の分布が接触部位に限定
  • 原因除去による速やかな改善

診断に必要な検査

1. 問診

詳細な問診は診断の基盤となります:

  • 症状の発症時期と経過
  • かゆみの程度と日内変動
  • 悪化・改善要因
  • 住環境(築年数、湿度、ペットの有無など)
  • 寝具の種類と手入れ方法
  • 家族歴・既往歴
  • 現在使用中の薬物

2. 皮膚所見の観察

  • 皮疹の性状、分布、程度
  • 掻破痕の有無
  • 二次感染の有無
  • 皮膚の乾燥程度

3. アレルギー検査

血液検査(特異的IgE抗体検査)

  • ダニアレルゲン(Der p 1、Der f 1など)に対するIgE抗体の測定
  • 総IgE値の測定
  • その他のアレルゲン(花粉、食物、ハウスダストなど)

皮膚テスト

  • プリックテスト:アレルゲンエキスを皮膚に滴下し、針で軽く刺して反応を観察
  • パッチテスト:接触アレルギーの診断に使用
  • 皮内テスト:より感度の高い検査法

4. 環境調査

住環境におけるダニの生息状況を調査することも重要です:

  • ダニアレルゲン量の測定
  • 湿度・温度の測定
  • 寝具や室内環境の評価

診断基準

ダニ湿疹の診断には、以下の要素を総合的に評価します:

  1. 臨床症状
    • 慢性的なかゆみを伴う湿疹
    • 特徴的な分布パターン
    • 季節性の乏しさ
  2. 検査所見
    • ダニアレルゲンに対する特異的IgE抗体陽性
    • 皮膚テストでの陽性反応
  3. 環境要因
    • ダニが繁殖しやすい住環境
    • 寝具や室内のダニアレルゲン濃度の高さ
  4. 治療反応
    • 環境改善による症状の軽快
    • 抗アレルギー薬への反応

治療法

基本的な治療方針

ダニ湿疹の治療は、以下の3つの柱から構成されます:

  1. 薬物療法:現在の症状を抑制
  2. 環境整備:原因となるダニアレルゲンの除去
  3. スキンケア:皮膚バリア機能の回復と維持

薬物療法

1. 外用薬

ステロイド外用薬 炎症を抑制し、かゆみを軽減する最も重要な治療薬です。症状の程度に応じて強さを選択します:

  • ウィーク(弱い):顔面や首などの敏感な部位
  • ミディアム(中程度):体幹や四肢
  • ストロング(強い):慢性化した病変
  • ベリーストロング(非常に強い):重篤な症状

使用方法:

  • 1日1-2回、症状のある部位に薄く塗布
  • 症状改善後も炎症が完全に沈静化するまで継続
  • 段階的に弱いランクへ移行、または回数を減らす

カルシニューリン阻害薬

  • タクロリムス軟膏、ピメクロリムスクリーム
  • ステロイドとは異なる機序で炎症を抑制
  • 顔面や首など、ステロイドの長期使用が懸念される部位に有効
  • 皮膚萎縮などの副作用が少ない

抗ヒスタミン薬外用薬

  • 軽度のかゆみに対して使用
  • ステロイドとの併用で効果を増強

2. 内服薬

抗ヒスタミン薬

  • かゆみの軽減が主な効果
  • 第2世代抗ヒスタミン薬(セチリジン、ロラタジンなど)が推奨
  • 眠気が少なく、長時間作用する特徴

ステロイド内服薬

  • 重症例や急性悪化時に短期間使用
  • 長期使用は副作用のリスクが高いため避ける

免疫抑制薬

  • シクロスポリンなど
  • 重症例で他の治療が無効な場合に検討

3. 新しい治療選択肢

JAK阻害薬

  • バリシチニブ、ウパダシチニブなど
  • 細胞内のシグナル伝達を阻害し、炎症を抑制
  • 中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対して使用

生物学的製剤

  • デュピルマブ(抗IL-4/IL-13受容体抗体)
  • トラロキヌマブ(抗IL-13抗体)
  • 重症アトピー性皮膚炎に対する注射薬

免疫療法

舌下免疫療法(SLIT)

ダニアレルゲンを含む薬剤を舌の下に投与し、徐々に体を慣れさせる治療法です。

適応

  • ダニアレルギー性鼻炎
  • 5歳以上(安全性が確立されている年齢)

治療スケジュール

  • 初期増量期:1-2週間で目標量まで増量
  • 維持期:3-5年間継続

効果

  • アレルギー症状の軽減
  • 薬物使用量の減少
  • 生活の質(QOL)の改善

副作用

  • 口の中のかゆみや腫れ
  • のどの違和感
  • まれにアナフィラキシー

皮下免疫療法(SCIT)

ダニアレルゲンを皮下注射により投与する治療法です。

適応

  • ダニアレルギー性鼻炎、喘息
  • 舌下免疫療法が困難な場合

特徴

  • 月1回程度の通院が必要
  • 舌下免疫療法より高い効果が期待される場合がある
  • アナフィラキシーのリスクがやや高い

維持療法の重要性

症状が改善しても、治療を急に中止すると再発のリスクが高くなります。以下の維持療法が重要です:

  1. プロアクティブ療法
    • 症状がない状態でも定期的に抗炎症薬を使用
    • ステロイド外用薬を週2-3回塗布
    • 再発予防に効果的
  2. リアクティブ療法
    • 症状が現れてから治療を開始
    • 従来の治療方針だが、再発を繰り返しやすい
  3. スキンケアの継続
    • 保湿剤の毎日使用
    • 適切な入浴・洗浄方法の継続

予防と環境対策

ダニの生態と繁殖条件

効果的な予防策を実施するには、ダニの生態を理解することが重要です。

ダニの生活環

  1. 卵期(3-5日):雌ダニは一生の間に50-100個の卵を産みます
  2. 幼虫期(3-7日):6本足の幼虫として孵化
  3. 若虫期(3-7日):8本足に発達、脱皮を繰り返す
  4. 成虫期(30-100日):繁殖が可能な状態

繁殖に適した環境条件

  • 温度:20-30℃(最適25℃前後)
  • 湿度:60-80%(最適70%前後)
  • :人のフケ、垢、食べかす、カビなど
  • 生息場所:布団、カーペット、ソファ、ぬいぐるみなど

住環境の管理

1. 湿度管理

目標湿度:50-60%以下

具体的な方法

  • 除湿機の使用
  • エアコンの除湿機能の活用
  • 換気の徹底(1日2回、各15分以上)
  • 結露の防止

湿度計の設置

  • 寝室とリビングに湿度計を設置
  • デジタル式で最高・最低湿度が記録できるものが便利

2. 掃除の実施

掃除機がけ

  • 頻度:週2-3回以上
  • 方法:20秒/m²の時間をかけて丁寧に
  • 対象:床面だけでなく、家具の隙間、マットレスの表面も
  • フィルター:HEPAフィルター付きの掃除機が効果的

水拭き掃除

  • フローリングは掃除機後に水拭き
  • ダニアレルゲンの除去に効果的

3. 寝具の管理

洗濯

  • 頻度:シーツは週1回以上、布団カバーは2週間に1回以上
  • 水温:55℃以上の高温洗濯が効果的
  • 乾燥:十分に乾燥させる(できれば乾燥機使用)

天日干し

  • 布団の表面温度を50℃以上に上げることでダニを死滅
  • 黒い布で覆うとより効果的
  • 干した後は掃除機がけを実施

布団乾燥機

  • 60℃以上の高温で30分以上処理
  • 梅雨時期や冬季の湿気対策に有効

防ダニカバー

  • 織り目が細かく、ダニアレルゲンの通過を防ぐ
  • 布団、枕、マットレスすべてに使用
  • 2-3ヶ月に1回洗濯

4. 室内環境の改善

床材の変更

  • カーペットから畳やフローリングへ変更
  • カーペットが必要な場合は、洗濯可能なものを選択

家具の選択

  • 布製ソファよりも皮製や合成皮革製を選択
  • ベッドフレームは隙間の少ないデザインを選択

ぬいぐるみの管理

  • 定期的な洗濯(週1回)
  • 洗濯できないものは冷凍庫で48時間処理後、掃除機がけ

個人レベルでの対策

1. スキンケア

保湿

  • 入浴後すぐ(5分以内)に保湿剤を塗布
  • 1日2回以上の保湿を心がける
  • セラミド、ヘパリン類似物質含有製剤が効果的

入浴方法

  • ぬるめのお湯(38-40℃)
  • 入浴時間は10-15分程度
  • 石鹸は低刺激性のものを使用
  • ゴシゴシ洗いは避ける

2. 衣類の選択

素材

  • 綿100%など天然素材を優先
  • 化学繊維は静電気を起こしやすく、アレルゲンが付着しやすい

洗濯

  • 柔軟剤の使用は最小限に
  • すすぎを十分に行う

3. 生活習慣

睡眠環境

  • 寝室の温度は18-22℃に保つ
  • 寝る前の換気で新鮮な空気を取り入れる

ストレス管理

  • 適度な運動
  • 十分な睡眠
  • リラクゼーション法の実践

季節別対策

春季(3-5月)

  • 花粉との複合アレルギーに注意
  • 窓開け換気の際は花粉対策も併せて実施
  • 寝具の本格的な手入れ開始

夏季(6-8月)

  • ダニ繁殖のピーク期
  • エアコンを活用した除湿強化
  • 汗対策(こまめなシャワー、着替え)

秋季(9-11月)

  • 夏に繁殖したダニの死骸が飛散するピーク
  • 大掃除の実施
  • 暖房器具の手入れ

冬季(12-2月)

  • 乾燥対策と保湿強化
  • 暖房による室内の乾燥に注意
  • 加湿器の適切な使用(過度の加湿は逆効果)

よくある質問(FAQ)

Q1. ダニ湿疹と蚊刺されの見分け方は?

A1. 主な違いは以下の通りです:

ダニ湿疹の特徴

  • 刺咬時期が不明確
  • 症状が1週間以上持続
  • 衣服で覆われた部位にも発症
  • 複数箇所に散在性に出現
  • 季節を問わず発症

蚊刺されの特徴

  • 刺咬時期が明確
  • 数日以内に自然治癒
  • 主に露出部位に限局
  • 中央に刺し口が確認できることがある
  • 主に夏季に限定

Q2. 引越しすればダニ湿疹は治りますか?

A2. 引越しにより症状が軽快する可能性はありますが、以下の点に注意が必要です:

  • ダニは一般的な住環境に広く存在するため、新居でも適切な環境管理が必要
  • 持参する寝具や家具にダニが付着している可能性
  • 新居での環境整備をしっかりと行うことで、より良い効果が期待できる
  • 築年数、立地条件、構造などを考慮した住居選択が重要

Q3. 完全にダニを除去することは可能ですか?

A3. 完全な除去は困難ですが、症状改善に十分なレベルまで減少させることは可能です:

  • 目標:ハウスダスト1gあたりのダニアレルゲンを2μg以下に減少
  • 方法:継続的な環境管理と掃除
  • 現実的な期待:症状の著明な改善と日常生活の質の向上

Q4. 子供の湿疹治療で注意すべき点は?

A4. 小児の治療では以下の点に特に注意が必要です:

薬物療法

  • ステロイド外用薬は成人より弱いランクから開始
  • 顔面や首など敏感な部位への使用は特に慎重に
  • 内服薬の用量は体重に応じて調整

環境整備

  • 学校や保育園との連携
  • アレルゲン除去の重要性を子供にも理解させる
  • 家族全体での取り組みが重要

スキンケア

  • 保湿剤は子供用の低刺激性製品を選択
  • 爪を短く切り、掻破を防ぐ
  • 入浴は親が適切に管理

Q5. 妊娠中・授乳中の治療について

A5. 妊娠中・授乳中でも安全に使用できる治療法があります:

使用可能な薬剤

  • ステロイド外用薬(適切な強さのものを選択)
  • 一部の抗ヒスタミン薬(医師と相談の上)
  • 保湿剤(制限なし)

環境整備の重要性

  • 薬物療法に制限がある時期だからこそ、環境整備がより重要
  • 家族の協力を得た徹底的な掃除と湿度管理

定期的な医師との相談

  • 症状の変化を定期的に医師に報告
  • 薬剤の安全性について不安があれば遠慮なく相談

Q6. 治療効果が実感できるまでの期間は?

A6. 治療効果の現れ方は個人差がありますが、一般的な目安は以下の通りです:

薬物療法

  • ステロイド外用薬:数日~1週間で症状軽減
  • 抗ヒスタミン薬:2-4週間で効果判定
  • 免疫療法:3-6ヶ月で効果出現、1-2年で安定

環境整備

  • 掃除・湿度管理:2-4週間で効果実感
  • 寝具の完全な対策:1-2ヶ月で効果実感

長期的な改善

  • 6ヶ月~1年の継続的な治療で安定した改善
  • 2-3年の維持療法で再発リスクの大幅な低下

新しい治療の展望

革新的治療法の開発

JAK阻害薬の発展

  • 選択性の高い新薬の開発
  • 外用薬としての応用
  • 副作用の軽減

生物学的製剤の進歩

  • より特異性の高い分子標的治療
  • 投与間隔の延長
  • 小児への適応拡大

診断技術の向上

バイオマーカーの活用

  • 病勢評価のための血液マーカー
  • 治療効果予測因子の同定
  • 個別化医療への応用

遺伝子検査の実用化

  • アトピー性皮膚炎関連遺伝子の解析
  • 薬物代謝酵素の遺伝子多型
  • 治療選択の最適化

環境工学の発展

住環境技術

  • 高性能空気清浄機の開発
  • 建材の抗アレルゲン加工
  • スマートホーム技術による自動環境管理

寝具・繊維技術

  • より効果的な防ダニ素材
  • 抗菌・抗アレルゲン加工の向上
  • 機能性繊維の開発

まとめ

ダニによる湿疹は、現代社会において多くの方が直面する健康問題です。しかし、正しい知識と適切な対策により、症状の改善と生活の質の向上は十分に可能です。

重要なポイント

  1. 早期診断の重要性
    • 症状の特徴を理解し、適切な医療機関を受診
    • アレルギー検査による原因の特定
    • 他の皮膚疾患との鑑別診断
  2. 包括的な治療アプローチ
    • 薬物療法による症状のコントロール
    • 環境整備によるアレルゲンの除去
    • スキンケアによる皮膚バリア機能の維持
  3. 継続的な管理の必要性
    • 症状改善後も維持療法の継続
    • 定期的な医師との相談
    • 生活習慣の改善と環境管理の徹底
  4. 患者教育の重要性
    • 疾患に対する正しい理解
    • 自己管理能力の向上
    • 家族や周囲の理解と協力
  5. 個別化医療の推進
    • 患者一人ひとりの症状や生活環境に応じた治療計画
    • 定期的な治療効果の評価と調整
    • 新しい治療選択肢の検討

今後への期待

医学の進歩により、より効果的で副作用の少ない治療法が開発されています。また、環境工学や建築技術の発展により、ダニの繁殖しにくい住環境の実現も期待されています。

当院では、最新の医学的知見に基づいた治療を提供するとともに、患者様一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を心がけております。湿疹でお悩みの方は、症状が軽微であっても、お気軽にご相談ください。早期の適切な対応により、より良い予後が期待できます。

皮膚の健康は、全身の健康と密接に関連しています。適切な治療と生活習慣の改善により、快適で充実した日常生活を取り戻すことが可能です。専門医との連携を密にし、継続的な管理を行うことで、ダニ湿疹との適切な付き合い方を見つけていきましょう。


参考文献

  1. 日本皮膚科学会 疥癬(かいせん)- 皮膚科Q&A
  2. 日本アレルギー学会 アトピー性皮膚炎Q&A
  3. 国立成育医療研究センター アトピー性皮膚炎
  4. アレルギーポータル アトピー性皮膚炎
  5. かゆみナビ 間違いやすい皮膚疾患

日常管理チェックリスト

毎日のチェック項目

  • [ ] 朝の換気(15分間)
  • [ ] 夜の換気(15分間)
  • [ ] 保湿剤の塗布(朝・夜)
  • [ ] 症状の観察記録

週単位のチェック項目

  • [ ] 寝具の洗濯
  • [ ] 掃除機がけ(寝室・リビング)
  • [ ] 湿度計の確認
  • [ ] 治療薬の残量確認

月単位のチェック項目

  • [ ] エアコンフィルターの清掃
  • [ ] カーペット・ソファの掃除
  • [ ] 薬の効果確認
  • [ ] 医師の診察

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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