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糖尿病と診断されると、「もう好きなものは食べられないのでは」と不安になる方も多いのではないでしょうか。実は、糖尿病だからといって「絶対に食べてはいけない食品」というものは基本的に存在しません。しかし、血糖値のコントロールや合併症の予防のために「なるべく避けた方がよい食品」や「食べ過ぎに注意すべき食品」があることも事実です。

本コラムでは、糖尿病の方が食事において特に気をつけるべき食品をランキング形式でご紹介するとともに、血糖値の急上昇を防ぐための食事療法のポイントについて詳しく解説します。糖尿病の方はもちろん、糖尿病予備群と言われた方や、ご家族に糖尿病の方がいらっしゃる方にも参考にしていただける内容となっています。


目次

  1. 糖尿病の食事療法の基本的な考え方
  2. 糖尿病で避けるべき食品ランキング
  3. 第1位:清涼飲料水・ジュース類
  4. 第2位:菓子パン・甘いパン類
  5. 第3位:お菓子・スイーツ類
  6. 第4位:白米・白パン・うどんなど精製された炭水化物
  7. 第5位:揚げ物・ファストフード
  8. 第6位:加工肉(ベーコン・ハム・ソーセージなど)
  9. 第7位:アルコール(特に甘いお酒)
  10. 血糖値を上げにくい食品の選び方
  11. GI値(グリセミック・インデックス)とは
  12. 糖尿病の食事で気をつけるべき調味料と塩分
  13. 糖尿病の合併症を防ぐ食事のポイント
  14. 外食やコンビニ食との上手な付き合い方
  15. まとめ
  16. 参考文献

1. 糖尿病の食事療法の基本的な考え方

糖尿病の食事療法と聞くと、厳しい制限をイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、糖尿病の食事療法の基本は、特別な食事をすることではなく、正しい食習慣を身につけ、過食を避け、栄養バランスの良い食事を規則正しく摂ることにあります。

厚生労働省や日本糖尿病学会が推奨する糖尿病の食事療法の基本原則は以下の通りです。

まず、適正なエネルギー量を守ることが重要です。1日に必要なエネルギー量は、体格(身長・体重)と日常の身体活動量によって決まります。過食は肥満の原因となり、インスリンの効きが悪くなって高血糖を助長してしまいます。

次に、栄養バランスの良い食事を心がけることです。炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素に加え、ビタミン、ミネラル、食物繊維を過不足なく摂取することが大切です。どれか一つの栄養素に偏った食事は避けましょう。

また、1日3食を規則正しく食べることも重要なポイントです。朝食を抜いたり、夜遅くに食事をしたりする不規則な食習慣は、血糖コントロールを乱す原因となります。

さらに、ゆっくりよく噛んで食べることで、満腹感を得やすくなり、食後の血糖値の急上昇を抑えることができます。

糖尿病情報センターでも「糖尿病だからといって食べてはいけないものはありません」と明記されています。ただし、高血圧を合併している方は減塩が必要であり、腎臓の合併症が進行している場合は、たんぱく質やカリウムなど、量を控えた方がよい栄養素があります。個々の状態に応じた食事療法が必要ですので、主治医や管理栄養士と相談しながら進めていくことが大切です。


2. 糖尿病で避けるべき食品ランキング

糖尿病の方が血糖コントロールを良好に保ち、合併症を予防するために、特に注意が必要な食品をランキング形式でご紹介します。このランキングは、血糖値への影響、摂取しやすさ(つい食べ過ぎてしまいやすいか)、健康への総合的な影響などを考慮して作成しています。

繰り返しになりますが、これらの食品が「絶対に食べてはいけない」というわけではありません。大切なのは、これらの食品の特徴を理解し、摂取量や頻度をコントロールすることです。


3. 第1位:清涼飲料水・ジュース類

糖尿病の方が最も注意すべき食品の第1位は、清涼飲料水やジュース類です。コーラ、サイダー、スポーツドリンク、エナジードリンク、フルーツジュース、加糖コーヒー飲料などがこれに該当します。

なぜ清涼飲料水が問題なのか

清涼飲料水には驚くほど多量の砂糖が含まれています。例えば、一般的な炭酸飲料500mlには約50〜60gもの砂糖が含まれており、これは角砂糖にして約15〜20個分に相当します。

液体に含まれる糖分は、固形食品に含まれる糖分よりも吸収が速く、飲んだ直後から血糖値を急激に上昇させてしまいます。食物繊維による吸収の緩衝効果もないため、血糖値スパイク(急激な血糖値の上昇)を引き起こしやすいのです。

また、清涼飲料水は飲みやすく、のどの渇きを感じたときについ大量に摂取してしまいがちです。気づかないうちに大量の糖分を摂取してしまうリスクが高い食品と言えます。

ペットボトル症候群に注意

「ペットボトル症候群」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。これは、清涼飲料水を常飲することで急性の糖尿病を発症する状態を指します。特に暑い季節に、水分補給のつもりで清涼飲料水を大量に摂取し続けることで発症するケースが報告されています。

健康な人であっても、清涼飲料水の常飲は体重増加や糖尿病発症のリスクを高めます。すでに糖尿病と診断されている方にとっては、血糖コントロールを著しく乱す原因となりますので、できる限り摂取を控えることが望ましいでしょう。

果汁100%ジュースも要注意

「果汁100%だから健康的」と思われがちなフルーツジュースですが、糖尿病の方は注意が必要です。果汁100%ジュースには、果物本来の果糖に加えて、製造過程で濃縮されることで糖分濃度が高くなっています。また、ジュースにする過程で食物繊維の多くが取り除かれてしまうため、果物そのものを食べるよりも血糖値の上昇が速くなります。

果物を摂取したい場合は、ジュースではなく、新鮮な果物を適量食べる方が、食物繊維やビタミンを効率的に摂取でき、血糖値への影響も緩やかになります。

代替案

水分補給には、水、お茶(緑茶、麦茶、ほうじ茶など)、無糖のコーヒーや紅茶がおすすめです。どうしても甘みが欲しい場合は、人工甘味料を使用したゼロカロリー飲料を選ぶことも一つの選択肢ですが、これらも過剰摂取は避けた方がよいでしょう。


4. 第2位:菓子パン・甘いパン類

第2位は菓子パンや甘いパン類です。あんパン、ジャムパン、クリームパン、メロンパン、デニッシュ、シナモンロール、チョコレートパンなどが該当します。

菓子パンの問題点

菓子パンは、糖質と脂質の両方を大量に含んでいます。一般的な菓子パン1個に含まれる糖質は40〜60gにも達し、これは茶碗1杯半〜2杯分のご飯に相当する量です。さらに、バターやマーガリン、ショートニングなどの油脂類も多く使用されているため、カロリーも非常に高くなります。

菓子パン1個のカロリーは300〜600kcalにもなることがあり、1個では満足できずに2個食べてしまうと、1食だけで1000kcal近くを摂取してしまうことになります。

栄養バランスの問題

菓子パンは糖質と脂質が多い一方で、たんぱく質、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素はほとんど含まれていません。菓子パンだけで食事を済ませてしまうと、栄養バランスが大きく偏ってしまいます。

糖尿病の食事療法では、栄養バランスの良い食事が重要とされていますので、菓子パンに頼りがちな食生活は改善が必要です。

手軽さが落とし穴に

菓子パンの問題点の一つに、その手軽さがあります。「時間がないから」「面倒だから」という理由で菓子パンで食事を済ませてしまう習慣がついてしまうと、血糖コントロールの改善は難しくなります。

また、コンビニやスーパーで手軽に購入でき、小腹が空いたときについ手が伸びてしまいやすい食品でもあります。

代替案

パンを食べたい場合は、菓子パンではなく食パンやフランスパンなどのシンプルなパン、あるいは全粒粉パンやライ麦パンを選びましょう。全粒粉やライ麦には食物繊維が豊富に含まれており、血糖値の急上昇を抑える効果があります。

また、パンを食べる際は、たんぱく質(卵、チーズ、ハム)や野菜と一緒に摂取することで、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。


5. 第3位:お菓子・スイーツ類

第3位はお菓子やスイーツ類です。ケーキ、クッキー、チョコレート、飴、グミ、まんじゅう、ようかん、大福、アイスクリーム、プリン、ゼリーなど、甘いお菓子全般が該当します。

砂糖と脂質のダブルパンチ

お菓子やスイーツには、砂糖が大量に含まれており、血糖値を急激に上昇させます。特に飴やグミなどは、ほぼ糖分の塊と言っても過言ではありません。

また、ケーキやクッキー、アイスクリームなどには、砂糖に加えてバターや生クリームなどの脂質も多く含まれています。糖質と脂質の組み合わせは、体重増加を促進し、インスリン抵抗性を悪化させる原因となります。

和菓子も油断禁物

「和菓子は洋菓子よりヘルシー」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、和菓子も砂糖をたっぷり使用しているため、血糖値への影響は大きいです。ようかんや大福、まんじゅうなどは、見た目以上に糖質を多く含んでいます。

スナック菓子の隠れたリスク

ポテトチップス、せんべい、クラッカーなどのスナック菓子は、甘くないため「糖分は少ない」と思われがちですが、糖質、脂質、塩分を多く含んでいます。

スナック菓子の食べ過ぎは、カロリーの過剰摂取による肥満だけでなく、飽和脂肪酸や塩分の過剰摂取による脂質異常症や高血圧のリスクも高めます。糖尿病の方は、心血管疾患のリスクが高いため、これらの食品にも注意が必要です。

代替案

どうしても甘いものが食べたいときは、量を決めて少量だけ楽しむか、低糖質のお菓子を選ぶとよいでしょう。また、果物を少量食べることで甘みを補うのも一つの方法です。

間食をする場合は、素焼きナッツ、チーズ、ゆで卵、無糖ヨーグルトなど、たんぱく質を含む食品を選ぶと、血糖値への影響が少なく、満足感も得られます。


6. 第4位:白米・白パン・うどんなど精製された炭水化物

第4位は、白米、白パン、うどん、そうめんなど、精製された炭水化物です。これらは日本人の食生活に欠かせない主食ですが、糖尿病の方は摂取量に注意が必要です。

精製炭水化物が血糖値を上げるメカニズム

精製された炭水化物は、製造過程で食物繊維やビタミン、ミネラルの多くが取り除かれています。そのため、消化吸収が速く、食後の血糖値を急激に上昇させやすい特徴があります。

例えば、白米のGI値(後述)は84程度と高く、高GI食品に分類されます。白パンも同様にGI値が高く、食後の血糖値上昇が速いです。

食べ過ぎに注意

炭水化物そのものが悪いわけではありませんが、問題は摂取量です。ご飯を大盛りで食べたり、麺類をおかわりしたりする習慣がある方は、知らず知らずのうちに糖質を過剰摂取している可能性があります。

ご飯1杯(180g)に含まれる糖質は60〜70g程度です。茶碗の大きさや盛り方によっては、これ以上の糖質を1食で摂取していることもあります。

丼ものや麺類の落とし穴

丼ものや麺類は、ご飯や麺が主体となるため、どうしても糖質の摂取量が多くなりがちです。また、これらの料理は味付けが濃く、塩分も多く含まれていることが多いため、高血圧のリスクがある糖尿病の方は特に注意が必要です。

さらに、カツ丼や天丼などには揚げ物が含まれ、ラーメンにはスープに多量の脂質が含まれているなど、高カロリーになりやすい特徴もあります。

代替案

主食を完全に抜くのではなく、量を調整することが大切です。現在の摂取量の半分〜2/3程度に減らすことから始めてみましょう。

また、白米を玄米や雑穀米に、白パンを全粒粉パンやライ麦パンに、うどんをそばに置き換えることで、食物繊維の摂取量が増え、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。

食べ方の工夫としては、野菜やたんぱく質のおかずを先に食べてから主食を食べる「ベジファースト」や「カーボラスト」と呼ばれる方法も効果的です。


7. 第5位:揚げ物・ファストフード

第5位は、揚げ物やファストフードです。フライドチキン、フライドポテト、唐揚げ、天ぷら、トンカツ、コロッケ、ハンバーガー、ピザなどが該当します。

高カロリー・高脂質の問題

揚げ物は調理の過程で大量の油を吸収するため、同じ食材でも焼いたり茹でたりするよりも格段にカロリーが高くなります。脂質は三大栄養素の中で最もカロリーが高く、1gあたり9kcalものエネルギーがあります。

ファストフードのセットメニュー(ハンバーガー、フライドポテト、清涼飲料水)を注文すると、1食で1000kcal以上を摂取してしまうことも珍しくありません。

飽和脂肪酸とトランス脂肪酸

揚げ物やファストフードには、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が多く含まれていることがあります。これらの脂肪酸は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やし、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らす作用があり、動脈硬化を促進します。

糖尿病の方は、もともと動脈硬化が進みやすい状態にありますので、これらの脂肪酸の過剰摂取は心筋梗塞や脳卒中のリスクをさらに高めてしまいます。

農林水産省や欧州食品安全機関(EFSA)も、トランス脂肪酸の過剰摂取が冠動脈疾患のリスクを高めることを報告しています。

アクリルアミドの問題

食材を120℃以上の高温で加熱調理すると、「アクリルアミド」という化学物質が生成されます。フライドポテトやポテトチップスなどに多く含まれており、がんの発症リスクを高める可能性が指摘されています。

代替案

揚げ物を食べる頻度を減らし、蒸す、茹でる、焼くなどの調理法を選ぶようにしましょう。どうしても揚げ物が食べたいときは、衣の少ない素揚げや唐揚げを選び、量を控えめにすることが大切です。

外食でファストフードを利用する場合は、サイドメニューをフライドポテトからサラダに変更する、ドリンクを清涼飲料水からお茶や水に変更するなどの工夫をしましょう。


8. 第6位:加工肉(ベーコン・ハム・ソーセージなど)

第6位は、加工肉です。ベーコン、ハム、ソーセージ、ウインナー、サラミ、コンビーフなどが該当します。

加工肉の問題点

加工肉は長期保存を可能にするため、塩漬け、燻製、発酵などの加工が施されています。そのため、塩分含有量が非常に高く、高血圧のリスクを高めます。糖尿病の方は高血圧を合併しやすく、両方の疾患が重なると心血管疾患のリスクが相乗的に高まります。

また、加工肉には脂質も多く含まれており、飽和脂肪酸の摂取源となります。

朝食の定番に潜むリスク

ベーコンエッグやハムサンド、ソーセージなど、加工肉は朝食の定番メニューとして使われることが多い食品です。毎朝のように加工肉を摂取する習慣がある方は、塩分と脂質の過剰摂取につながっている可能性があります。

代替案

加工肉の代わりに、鶏のささみや胸肉、魚、卵、豆腐などのたんぱく質源を選ぶようにしましょう。これらの食品は、加工肉に比べて塩分や脂質が少なく、良質なたんぱく質を摂取することができます。

加工肉を使用する場合は、頻度を減らし、使用量を控えめにすることが大切です。


9. 第7位:アルコール(特に甘いお酒)

第7位はアルコール飲料です。特に糖分を多く含むカクテル、リキュール、甘口ワイン、チューハイなどには注意が必要です。

アルコールと血糖値の複雑な関係

アルコールは血糖値に複雑な影響を与えます。飲酒直後は血糖値が上昇することがありますが、その後、肝臓がアルコールの分解を優先するため、肝臓からのブドウ糖の放出が抑制され、血糖値が低下することがあります。

インスリン注射や血糖降下薬で治療中の方は、この作用により低血糖を起こすリスクがあります。特に空腹状態での飲酒や、食事を摂らずにアルコールだけを摂取することは危険です。

甘いお酒の問題

カクテルやチューハイ、甘口ワインなどには多量の糖分が含まれており、血糖値を急激に上昇させます。これらの飲料は飲みやすいため、つい飲み過ぎてしまいがちです。

アルコールのカロリー

アルコール自体も1gあたり7kcalのエネルギーを持っています。これは炭水化物やたんぱく質(1gあたり4kcal)よりも高く、脂質(1gあたり9kcal)に次ぐ高カロリー成分です。

また、飲酒時にはおつまみとして高カロリー・高塩分の食品を摂取しがちで、結果的に食事全体のカロリーや塩分が増えてしまいます。

適量の目安

厚生労働省が推進する「健康日本21」では、節度ある適度な飲酒量として1日あたり純アルコール約20g程度を推奨しています。これは、ビール中瓶1本(500ml)、日本酒1合(180ml)、ワイングラス2杯(180ml)、焼酎0.6合(100ml)程度に相当します。

女性はアルコールの代謝能力が男性より低いため、この半分程度(純アルコール10g程度)が適量とされています。

糖尿病の方がお酒を飲む場合は、血糖コントロールが良好であること、合併症がないこと、肝機能が正常であることなどの条件を満たす必要があります。必ず主治医と相談の上、適量を守って楽しむようにしましょう。

休肝日の設置

週に2〜3日は休肝日を設け、肝臓を休ませることが大切です。毎日の飲酒習慣は、肝機能障害や脂肪肝のリスクを高め、血糖コントロールにも悪影響を与えます。


10. 血糖値を上げにくい食品の選び方

ここまで避けるべき食品について解説してきましたが、では逆に、どのような食品を積極的に選べばよいのでしょうか。血糖値を上げにくい食品の特徴と具体例をご紹介します。

食物繊維が豊富な食品

食物繊維は、糖質の吸収を緩やかにし、食後の血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。特に水溶性食物繊維は、胃の中で水分を吸収してゲル状になり、食べ物の胃から腸への移動を遅らせ、小腸での糖質の吸収を緩やかにします。

食物繊維が豊富な食品には、野菜類(特にブロッコリー、ほうれん草、キャベツ、ごぼう、れんこんなど)、海藻類(わかめ、ひじき、昆布など)、きのこ類(しいたけ、しめじ、えのきなど)、豆類(大豆、納豆、枝豆など)、全粒穀物(玄米、全粒粉パン、オートミールなど)があります。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、18〜64歳の1日あたりの食物繊維の目標量として、男性21g以上、女性18g以上が設定されています。

良質なたんぱく質

たんぱく質は血糖値への影響が炭水化物に比べて小さく、満腹感を得やすい栄養素です。筋肉量を維持し、基礎代謝を保つためにも、適切なたんぱく質の摂取は重要です。

良質なたんぱく質源としては、魚(特に青魚にはEPAやDHAなどのn-3系多価不飽和脂肪酸が豊富です)、鶏肉(特にささみや胸肉は低脂質です)、卵、大豆製品(豆腐、納豆、豆乳など)、低脂肪の乳製品などがあります。

低GI食品

GI値(後述)が55以下の低GI食品を選ぶことで、血糖値の急上昇を防ぐことができます。低GI食品には、玄米、全粒粉パン、そば、オートミール、大豆製品、多くの野菜や果物などがあります。


11. GI値(グリセミック・インデックス)とは

糖尿病の食事を考える上で、GI値(グリセミック・インデックス)という指標を知っておくと便利です。

GI値の定義

GI値とは、食品が血糖値に与える影響を数値化したものです。ブドウ糖を摂取したときの血糖値上昇を100として、各食品を摂取したときの血糖値上昇の速さを相対的に表しています。

一般的に、GI値が70以上の食品を高GI食品、56〜69の食品を中GI食品、55以下の食品を低GI食品と分類します。

主な食品のGI値の目安

高GI食品(70以上)としては、白米(84程度)、白パン(95程度)、じゃがいも(90程度)、砂糖(109程度)、せんべい(89程度)などがあります。

中GI食品(56〜69)としては、玄米(56程度)、さつまいも(55〜65程度)、バナナ(62程度)、パイナップル(59程度)などがあります。

低GI食品(55以下)としては、そば(46程度)、全粒粉パン(50程度)、大豆(18程度)、りんご(36程度)、牛乳(27程度)、ほとんどの野菜などがあります。

GI値を下げる食べ方

同じ食品でも、食べ方によってGI値を下げることができます。

まず、食物繊維と一緒に食べることで、糖質の吸収が緩やかになります。ご飯を食べる前に野菜サラダを食べる「ベジファースト」は、この原理を利用した方法です。

また、よく噛んでゆっくり食べることも効果的です。噛む回数が増えると、食べ物が小さな粒子になり、消化・吸収がゆっくり進みます。また、満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを防ぐこともできます。

さらに、酢やレモン汁などの酸味を加えることで、胃から腸への食べ物の移動が遅くなり、血糖値の上昇が緩やかになるという報告もあります。

GI値とGL値

GI値は血糖値の上昇スピードを表す指標ですが、実際の食事では「どのくらいの量を食べるか」も重要です。この点を考慮した指標がGL値(グリセミック・ロード)です。

GL値は、GI値に1食あたりの炭水化物量を掛けて100で割った値で、実際の食事における血糖値への影響をより正確に反映します。例えば、スイカはGI値が高い(72程度)ですが、1食あたりの炭水化物量が少ないため、GL値は比較的低くなります。


12. 糖尿病の食事で気をつけるべき調味料と塩分

糖尿病の食事では、食品だけでなく調味料にも注意が必要です。特に塩分の摂取量は、高血圧や腎臓病などの合併症予防の観点から重要です。

塩分の摂取目標

糖尿病情報センターでは、糖尿病のある方の塩分摂取量の目安として、男性1日7.5g未満、女性1日6.5g未満を推奨しています。高血圧を合併している場合は、さらに厳しく1日6g未満が目標となります。

塩分の過剰摂取は血圧を上昇させ、腎臓に負担をかけます。また、動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めます。

塩分の多い食品・調味料

塩分が多い食品としては、漬物、佃煮、塩辛、干物、加工肉、インスタント食品、カップ麺、練り物(かまぼこ、ちくわなど)などがあります。

調味料では、醤油、味噌、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシングなどに塩分が多く含まれています。特に醤油は大さじ1杯で約2.6gもの塩分を含んでいます。

減塩のコツ

減塩を実践するためのコツをいくつかご紹介します。

だしをしっかりとることで、薄味でもうま味を感じやすくなります。昆布、かつお節、干ししいたけなどの天然だしを活用しましょう。

香辛料やハーブを活用することも効果的です。こしょう、唐辛子、カレー粉、しょうが、にんにく、バジル、パセリなどを使うことで、塩分を控えめにしても風味豊かな料理を作ることができます。

酸味を利用することもおすすめです。レモン汁、酢、ゆず、かぼすなどの柑橘類を使うことで、塩分を控えても満足感のある味付けになります。

新鮮な食材を使うことで、素材本来の味を活かした調理ができます。

減塩調味料を活用することも一つの方法です。最近は減塩醤油や減塩味噌など、様々な減塩調味料が市販されています。

調味料は「かける」より「つける」ことで使用量を減らせます。料理全体に調味料をかけるのではなく、小皿に出して食べる直前につけるようにしましょう。


13. 糖尿病の合併症を防ぐ食事のポイント

糖尿病の食事療法の最終的な目標は、血糖コントロールを良好に保ち、合併症を予防することにあります。糖尿病の合併症には、細い血管が傷つく「細小血管症」(網膜症、腎症、神経障害)と、動脈硬化による「大血管症」(心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患)があります。

三大合併症「しめじ」を防ぐ

糖尿病に特有の細小血管症は、「しめじ」と覚えると良いでしょう。「し」は神経障害、「め」は網膜症、「じ」は腎症を表しています。

これらの合併症を予防するためには、血糖コントロールを良好に保つことが最も重要です。食後の血糖値スパイクを防ぐ食事を心がけ、定期的に血糖値やHbA1cをチェックしましょう。

大血管症を防ぐ

動脈硬化による大血管症を防ぐためには、血糖コントロールに加えて、血圧や脂質のコントロールも重要です。

脂質異常症の予防・改善のために、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取を控え、魚に含まれるEPAやDHAなどのn-3系多価不飽和脂肪酸を積極的に摂取しましょう。厚生労働省のe-ヘルスネットでも、青魚や脂が多い魚を積極的に食べることが推奨されています。

高血圧の予防・改善のために、前述の減塩を実践しましょう。

食物繊維の重要性

食物繊維は、血糖値の急上昇を防ぐだけでなく、コレステロールの吸収を抑え、腸内環境を整える効果もあります。野菜、海藻、きのこ、豆類を積極的に摂取し、1日20〜25gの食物繊維摂取を目指しましょう。

抗酸化物質の摂取

動脈硬化の進行には、LDLコレステロールの酸化が関わっています。ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化物質を含む食品を摂取することで、酸化ストレスを軽減できます。

緑黄色野菜、果物、緑茶、ナッツ類などに抗酸化物質が豊富に含まれています。


14. 外食やコンビニ食との上手な付き合い方

忙しい現代社会では、外食やコンビニ食を完全に避けることは難しいでしょう。糖尿病の方が外食やコンビニ食と上手に付き合うためのポイントをご紹介します。

外食のポイント

メニュー選びでは、定食スタイルを選ぶと栄養バランスが取りやすくなります。丼ものや麺類単品よりも、主食・主菜・副菜がセットになった定食を選びましょう。

ご飯の量を調整することも大切です。多くの飲食店では、ご飯の量を「少なめ」や「半分」で注文できます。遠慮せずにお願いしましょう。

野菜を意識的に注文することも効果的です。サラダや野菜の小鉢を追加で注文したり、野菜が多く入ったメニューを選んだりしましょう。

揚げ物を避け、焼き物や煮物を選ぶようにしましょう。同じ食材でも、調理法によってカロリーは大きく変わります。

塩分の多いスープや汁物は、全部飲まずに残すことで塩分摂取量を減らせます。

コンビニ食のポイント

栄養成分表示を確認する習慣をつけましょう。エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量などが表示されています。

サラダや野菜スティックを追加することで、食物繊維の摂取量を増やし、血糖値の急上昇を防ぐことができます。

おにぎりやサンドイッチを選ぶ場合は、具材の種類に注目しましょう。鮭、納豆、ツナ、卵などたんぱく質が摂れるものを選ぶと良いでしょう。

菓子パンではなく、シンプルな食パンやロールパンを選び、サラダチキンやゆで卵と組み合わせると、栄養バランスが改善します。

飲み物は無糖のお茶や水を選びましょう。

注意すべきコンビニ食品

カップ麺やインスタント食品は、塩分と糖質が多く、野菜が少ないため避けた方がよいでしょう。

菓子パンや総菜パンは、糖質と脂質が多いため控えめにしましょう。

揚げ物(フライドチキン、コロッケなど)の頻繁な摂取は避けましょう。

清涼飲料水やフルーツジュースは、水やお茶に置き換えましょう。


15. まとめ

本コラムでは、糖尿病の方が食事で特に注意すべき食品をランキング形式でご紹介してきました。改めてポイントを整理します。

糖尿病だからといって「絶対に食べてはいけない食品」というものは基本的にありません。しかし、血糖コントロールと合併症予防のために「なるべく避けた方がよい食品」や「食べ過ぎに注意すべき食品」があります。

特に注意が必要な食品は以下の通りです。

第1位は清涼飲料水・ジュース類です。液体の糖分は吸収が速く、血糖値を急上昇させます。水やお茶に置き換えましょう。

第2位は菓子パン・甘いパン類です。糖質と脂質が多く、栄養バランスが悪いです。全粒粉パンやライ麦パンを選びましょう。

第3位はお菓子・スイーツ類です。砂糖と脂質が多く、血糖値と体重増加の原因になります。量を決めて少量を楽しむか、低糖質のものを選びましょう。

第4位は白米・白パン・うどんなど精製された炭水化物です。食物繊維が少なく血糖値が上がりやすいです。量を控えめにし、全粒穀物に置き換えましょう。

第5位は揚げ物・ファストフードです。高カロリー・高脂質で、動脈硬化を促進します。蒸す・茹でる・焼くなどの調理法を選びましょう。

第6位は加工肉です。塩分と脂質が多く、高血圧や脂質異常症のリスクを高めます。魚や鶏肉、豆製品に置き換えましょう。

第7位はアルコール(特に甘いお酒)です。カロリーが高く、低血糖のリスクもあります。適量を守り、休肝日を設けましょう。

食事療法を成功させるコツは、厳しい制限ではなく、正しい知識に基づいた賢い選択です。「何を食べるか」だけでなく、「どのくらいの量を」「どのような順番で」「どのような調理法で」食べるかも重要です。

また、食事療法は一人で頑張る必要はありません。主治医や管理栄養士と相談しながら、自分に合った無理のない食事計画を立てていきましょう。小さな改善を積み重ねることで、血糖コントロールの改善と合併症の予防につなげることができます。

糖尿病とうまく付き合いながら、おいしく楽しく健康的な食生活を送っていただければ幸いです。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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