「健康診断で血圧が高めと言われた」「最近、血圧が気になるようになってきた」そんな悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま静かに進行し、放置すると脳卒中や心筋梗塞、腎臓病など重大な疾患を引き起こすリスクがあります。日本には高血圧患者が4,300万人以上いると言われており、まさに国民病と言っても過言ではありません。
高血圧の治療というと「降圧薬」を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実は日々の食生活を見直すことで、血圧のコントロールに大きな効果が期待できます。特に、血圧を下げる働きを持つ栄養素を含む食品を積極的に摂取することは、薬物療法と並んで高血圧対策の重要な柱となっています。
本記事では、科学的なエビデンスに基づいて、血圧を下げる効果が認められている食べ物をランキング形式でご紹介します。また、世界的に注目されている「DASH食」という食事法や、日本人に適した減塩のコツについても詳しく解説していきます。毎日の食卓で実践できる情報をお伝えしますので、ぜひ最後までお読みいただき、血圧管理にお役立てください。

目次
- 高血圧の基準と血圧が上がる原因
- 血圧を下げる栄養素とは
- 血圧を下げる食べ物ランキング
- DASH食とは?高血圧を防ぐ食事法
- 減塩のコツと実践方法
- 血圧を上げてしまう食べ物にも注意
- 食事療法を行う際の注意点
- まとめ
- 参考文献
1. 高血圧の基準と血圧が上がる原因
高血圧の診断基準
まず、高血圧とはどのような状態を指すのかを確認しておきましょう。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では、医療機関で測定した場合に収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上となる状態を高血圧と定義しています。
また、家庭で測定する場合は、医療機関での測定値よりやや低い基準が用いられます。家庭血圧では、収縮期血圧135mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上が高血圧の目安となります。
さらに、収縮期血圧130〜139mmHg、拡張期血圧85〜89mmHgの範囲は「正常高値血圧」と呼ばれ、正常血圧より循環器病のリスクが高く、将来高血圧になりやすい状態とされています。この段階から生活習慣の改善に取り組むことが推奨されています。
高血圧の原因
高血圧の原因はさまざまですが、日本人においては食塩の過剰摂取が最大の原因とされています。厚生労働省の調査によると、日本人の1日の食塩摂取量は平均で約10gとなっており、日本高血圧学会が推奨する6g未満の約1.7倍にもなっています。
そのほかにも、以下のような要因が高血圧のリスクを高めることが知られています。
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
- 運動不足
- 過度の飲酒
- 喫煙
- ストレス
- 加齢
- 遺伝的要因
これらの要因は複合的に作用することが多く、生活習慣全般を見直すことが高血圧の予防と改善には重要です。
2. 血圧を下げる栄養素とは
血圧を下げる効果がある食品を理解するためには、まずどのような栄養素が血圧に関係しているのかを知っておく必要があります。以下に、血圧を下げる働きを持つ主要な栄養素を解説します。
カリウム
カリウムは、血圧を下げる栄養素として最も注目されているミネラルです。カリウムには、体内の余分なナトリウム(塩分)を腎臓から尿中へ排出する働きがあります。塩分を摂りすぎると体内の水分量が増え、血液量が増加することで血圧が上昇しますが、カリウムを十分に摂取することで、この塩分の悪影響を軽減することができます。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、カリウムの摂取目標量として男性3,000mg/日、女性2,600mg/日以上が設定されています。WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、成人は1日3,510mg以上のカリウム摂取が推奨されています。
カリウムは野菜、果物、芋類、豆類、海藻などに豊富に含まれています。ただし、カリウムは水溶性であるため、茹でると水に溶け出してしまう性質があります。カリウムを効率よく摂取するためには、生で食べたり、蒸し調理や電子レンジ調理を活用したり、煮汁ごと食べられる料理にするなどの工夫が効果的です。
マグネシウム
マグネシウムは、血管を柔らかくして血管を拡張させる働きがあります。また、ナトリウムの排出を促進する作用もあり、血圧を下げる効果が期待できます。
マグネシウムは、ナッツ類、海藻類、大豆製品、玄米などに多く含まれています。特に、ひじきやわかめなどの海藻類は、日本人の食卓になじみ深い食材であり、マグネシウム摂取に適しています。
カルシウム
カルシウムが不足すると、血管が収縮しやすくなり、血圧が上がりやすくなることが知られています。カルシウムを十分に摂取することで、血圧を安定させる効果が期待できます。
カルシウムは、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品から最も効率よく吸収されます。また、小魚、大豆製品、緑黄色野菜なども良い供給源となります。乳製品が体質に合わない方は、これらの食材からカルシウムを摂取するとよいでしょう。
食物繊維
食物繊維には、腸内でナトリウムを吸着して体外に排出する働きがあります。また、食物繊維を多く含む食事は満腹感を得やすく、食べ過ぎを防ぐことで肥満予防にもつながります。肥満は高血圧の重要なリスク因子であるため、食物繊維の摂取は間接的にも血圧コントロールに貢献します。
食物繊維は、野菜、果物、全粒穀物、豆類、きのこ類などに豊富に含まれています。
EPA・DHA(オメガ3脂肪酸)
青魚に豊富に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、n-3系多価不飽和脂肪酸とも呼ばれ、血圧を下げる効果があることが複数の研究で示されています。
米国心臓学会が発表した研究によると、EPAとDHAを1日2〜3g摂取した人は、摂取しなかった人に比べて、収縮期血圧と拡張期血圧が平均して2mmHg低下したと報告されています。さらに、高血圧のある人では最高血圧が平均4.5mmHg低下したという結果も出ています。
EPA・DHAは、サバ、イワシ、サンマ、アジなどの青魚に多く含まれています。また、えごま油やアマニ油に含まれるα-リノレン酸も同じn-3系脂肪酸の仲間であり、体内でEPA・DHAに変換されます。
タンパク質
良質なタンパク質は、血管を丈夫にする働きがあります。特に、魚や大豆製品から摂取するタンパク質は、血圧を下げる効果があることが報告されています。
3. 血圧を下げる食べ物ランキング
ここからは、血圧を下げる効果が期待できる食べ物をランキング形式でご紹介します。科学的なエビデンスと実践のしやすさを考慮して順位付けしていますが、どの食品も毎日の食事にバランスよく取り入れることが大切です。
第1位:緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜、ブロッコリーなど)
緑黄色野菜が第1位である理由は、血圧を下げるために重要なカリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維をバランスよく含んでいるからです。
特にほうれん草や小松菜はカリウムが豊富で、ブロッコリーはビタミンCも豊富に含まれています。ビタミンCには抗酸化作用があり、血管の状態を良好に保つ効果があります。
緑黄色野菜を効果的に摂取するコツは、茹で時間を短くしたり、電子レンジや蒸し調理を活用したりすることです。これにより、水溶性のカリウムが流出するのを最小限に抑えることができます。また、味噌汁やスープの具として入れることで、溶け出した栄養素も一緒に摂取できます。
1日の野菜摂取量の目標は350g以上とされていますが、そのうち120g以上を緑黄色野菜から摂ることが推奨されています。
第2位:バナナ
バナナは、カリウムを非常に効率よく摂取できる果物として知られています。中くらいのバナナ1本(約100g)には約360mgのカリウムが含まれており、手軽に食べられることから、毎日の習慣として取り入れやすい食品です。
バナナにはカリウムだけでなく、マグネシウムや食物繊維も含まれており、血圧対策に理想的な食品と言えます。また、生のまま食べられるため、カリウムの損失がほとんどありません。
ただし、バナナには糖質も多く含まれているため、糖尿病の方や肥満が気になる方は食べ過ぎに注意が必要です。1日1本程度を目安にするとよいでしょう。
第3位:青魚(サバ、イワシ、サンマ、アジなど)
青魚には、血圧を下げる効果が認められているEPAとDHAが豊富に含まれています。これらの成分は、血管内皮の状態を良好に保ち、血管を広げる働きがあります。また、血液をサラサラにして血栓ができるのを防ぐ効果もあり、心血管疾患や脳卒中のリスクを下げることにも貢献します。
研究によると、魚を1日100g以上食べることで高血圧のリスクが減少する可能性があるとされています。サバやイワシの缶詰は、骨ごと食べられるためカルシウムも摂取でき、手軽に青魚を取り入れることができる便利な食品です。
週に2〜3回は魚を主菜にすることを心がけ、特に青魚を積極的に選ぶようにしましょう。
第4位:大豆製品(納豆、豆腐、味噌など)
大豆製品は、良質な植物性タンパク質の供給源であると同時に、カリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維を豊富に含んでいます。
特に納豆は、大豆の栄養に加えて、納豆菌が産生するナットウキナーゼという酵素を含んでいます。ナットウキナーゼには、末梢血流を改善することで血圧を下げる機能があることが報告されています。
豆腐は低カロリーでありながら栄養価が高く、肉の代わりに使うことで脂質の摂取量を抑えることができます。味噌は塩分を含みますが、カリウムも豊富であり、具だくさんの味噌汁にすることで、減塩しながらも満足感のある食事を実現できます。
毎日の食卓に、何らかの大豆製品を取り入れることをおすすめします。
第5位:乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)
乳製品、特に低脂肪のものは、カルシウムを効率よく摂取できる食品として高血圧対策に有効です。カルシウムには血圧を安定させる効果があり、乳製品のカルシウムは体内への吸収率が高いことが知られています。
研究でも、乳製品、特にヨーグルトの摂取が高血圧の発症リスクを低下させることが示されています。また、ヨーグルトに含まれる乳酸菌は腸内環境を整え、間接的に血圧のコントロールにも寄与すると考えられています。
牛乳であれば1日コップ1杯(150〜200ml)程度、ヨーグルトであれば100g程度を目安に摂取するとよいでしょう。脂質が気になる方は、低脂肪タイプを選ぶことをおすすめします。
第6位:海藻類(わかめ、昆布、ひじき、もずくなど)
海藻類は、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど血圧を下げるミネラルを豊富に含んでいる食品です。特に昆布はカリウムの含有量が非常に高く、刻み昆布10gには約820mgものカリウムが含まれています。
また、海藻類に含まれる水溶性食物繊維には、余分な塩分や脂質を体外に排出する働きがあります。さらに、海藻類はカロリーが非常に低いため、量を気にせず食べることができます。
わかめの味噌汁、ひじきの煮物、もずく酢など、日本の伝統的な食事には海藻類が多く使われています。これらの料理を日常的に取り入れることで、自然と血圧対策ができます。
第7位:芋類(さつまいも、じゃがいも、里芋など)
芋類は、カリウムと食物繊維を豊富に含む食品です。特にさつまいもはカリウム含有量が高く、中くらいのさつまいも1本(約200g)には約940mgのカリウムが含まれています。
芋類の良い点は、茹でてもカリウムの損失が比較的少ないことです。また、満腹感を得やすいため、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できます。
ただし、芋類は炭水化物を多く含むため、ご飯やパンと同時に大量に食べると糖質の摂り過ぎになる可能性があります。主食の一部として置き換えたり、おやつとして適量を食べたりするのがおすすめです。
第8位:ナッツ類(アーモンド、くるみ、カシューナッツなど)
ナッツ類には、マグネシウム、カリウム、不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。これらの成分には血管を拡張し、血圧を安定させる効果があります。
特にくるみには、α-リノレン酸というn-3系脂肪酸が豊富に含まれており、体内でEPA・DHAに変換されることで、青魚と同様の効果が期待できます。アーモンドはビタミンEも豊富で、抗酸化作用により血管の老化を防ぐ効果があります。
ナッツ類は間食として取り入れやすい食品ですが、カロリーが高いため、食べ過ぎには注意が必要です。1日に片手に軽く乗る程度(20〜25g)を目安にしましょう。無塩タイプを選ぶことも重要です。
第9位:トマト
トマトは、カリウムとリコピンを豊富に含む野菜です。カリウムによるナトリウム排出効果に加え、リコピンには強力な抗酸化作用があり、血管の状態を良好に保つ効果があります。
トマトは生でも加熱しても美味しく食べられ、リコピンは加熱することで吸収率が高まるという特徴があります。トマトソースやトマトスープ、トマトジュースなども効果的な摂取方法です。
毎日トマト1個程度、またはトマトジュース200ml程度を摂取することで、血圧対策の効果が期待できます。
第10位:キウイフルーツ
キウイフルーツは、カリウム、ビタミンC、ポリフェノール、食物繊維をバランスよく含む果物です。ある研究では、高血圧患者に1日3個のキウイを8週間摂取させたところ、収縮期血圧が3.6mmHg、拡張期血圧が2.3mmHg低下したという結果が報告されています。
キウイフルーツに含まれるビタミンCには、活性酸素を取り除くことで血管の状態を良好にし、血管を柔らかくする効果があります。また、ポリフェノールにも血圧を下げる作用があることが知られています。
1日1〜2個程度を目安に摂取するとよいでしょう。グリーンキウイとゴールドキウイでは栄養成分が異なりますので、両方をバランスよく食べることをおすすめします。
4. DASH食とは?高血圧を防ぐ食事法
DASH食の概要
DASH食とは「Dietary Approaches to Stop Hypertension」の略で、日本語では「高血圧を防ぐ食事法」という意味です。1990年代にアメリカ国立衛生研究所(NIH)が高血圧改善のために研究・開発した食事法であり、科学的なエビデンスに基づいた効果的な食事療法として、世界中で推奨されています。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」にもDASH食が掲載されており、降圧のための食事療法の一つとして臨床の現場でも活用されています。
DASH食の特徴
DASH食の最大の特徴は、血圧を下げる効果のあるカリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、良質なタンパク質を豊富に含む食品を積極的に摂取し、同時に飽和脂肪酸やコレステロール、砂糖を控えるという点にあります。
具体的には、以下のような食品を積極的に摂ることが推奨されています。
積極的に摂る食品として、野菜と果物、全粒穀物(玄米、全粒粉パン、オートミールなど)、低脂肪乳製品、魚、鶏肉(皮なし)、豆類、ナッツ類、海藻類があります。
一方、控える食品として、赤身肉(牛肉、豚肉)、加工肉(ハム、ソーセージなど)、バターやラードなどの動物性脂肪、甘いお菓子や砂糖入り飲料、塩分の多い食品が挙げられます。
DASH食の効果
アメリカで行われた臨床試験では、DASH食を2ヶ月続けたところ、最高血圧が平均して11.4mmHgも低下したという結果が報告されています。また、その後の研究を統合したメタ解析でも、DASH食は対照食に比べて収縮期血圧が約3.2mmHg、拡張期血圧が約2.5mmHg低下することが示されています。
DASH食の効果は高血圧の有無にかかわらず得られますが、特に若年層やナトリウム摂取量が多い人で効果が大きいことが特徴です。また、DASH食と減塩を組み合わせることで、より高い降圧効果が得られることも証明されています。
さらに、DASH食は高血圧だけでなく、冠動脈疾患のリスクを24%、脳卒中のリスクを18%低下させる可能性があるという報告もあり、心血管疾患の予防にも有効であることが示されています。
日本人向けDASH食
アメリカ発祥のDASH食は、低脂肪乳製品やナッツ類、シリアルなどを多く使用するメニューが中心であり、そのままでは日本人の食習慣に馴染みにくい面がありました。
そこで、日本では和食の食材を活用した「日本人向けDASH食」の研究が進められています。ポイントは、出汁や香辛料を活用して満足感のある味付けにすること、日本人になじみ深い食材を中心に使用すること、減塩を組み合わせて降圧作用を最大化することです。
例えば、昆布やかつおの出汁、酢、柑橘類、薬味(しょうが、しそ、ねぎなど)、香味野菜を活用することで、塩分に頼らない「うま味と風味」で満足できる味づくりができます。これは日本の食文化が持つ最大の強みであり、和食でもDASH食に近い栄養バランスの食事を実現することが可能です。
5. 減塩のコツと実践方法
血圧を下げる食品を積極的に摂ることと同時に、塩分の摂取量を減らすことも高血圧対策には欠かせません。ここでは、日常生活で実践できる減塩のコツをご紹介します。
減塩の目標値
日本高血圧学会は、高血圧患者に対して1日の食塩摂取量を6g未満にすることを推奨しています。これは高血圧のない方にとっても、予防の観点から望ましい目標とされています。
一方、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満という目標値が設定されています。また、WHO(世界保健機関)は国際的な目標値として5g未満を推奨しており、日本人の摂取量は世界的に見ても多い水準にあります。
現在の日本人の平均食塩摂取量は約10gであり、目標値の約1.5〜2倍もの塩分を摂取している状況です。いきなり半分にすることは難しいかもしれませんが、できることから少しずつ取り組んでいくことが大切です。
減塩の具体的なコツ
調味料の使い方を見直す
醤油やソースは「かける」から「つける」に変えることで、使用量を大幅に減らすことができます。また、減塩タイプの調味料を活用することも効果的です。日本高血圧学会では、減塩率20%以上の優良な食品をリストとして公表しており、参考にすることができます。
塩分の代わりに、出汁のうま味、酢や柑橘類の酸味、香辛料やハーブの香り、しょうがやにんにくなどの薬味を活用することで、満足感のある味付けが可能です。
加工食品に注意する
ハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工肉、漬物、干物、練り物などには多くの塩分が含まれています。これらの食品は控えめにするか、減塩タイプの製品を選ぶようにしましょう。
また、食品の栄養表示を確認する習慣をつけることも重要です。「ナトリウム」と表示されている場合は、その値に2.54を掛けると食塩相当量になります。
麺類の汁は残す
ラーメンやうどんなどの汁を全部飲んでしまうと、それだけで5〜6gもの塩分を摂取してしまうことがあります。麺類を食べるときは、汁を残すことを習慣にしましょう。
外食・中食に注意する
外食や市販の弁当・惣菜は、一般的に塩分量が多い傾向にあります。外食する際は、定食スタイルで野菜が多いメニューを選んだり、味付けを薄めにしてもらうようお願いしたりすることができます。
汁物は具だくさんに
味噌汁やスープは具を増やすことで、汁の量が相対的に減り、塩分摂取量を抑えることができます。野菜、きのこ、海藻、豆腐などを具として入れることで、カリウムなど血圧を下げる栄養素も同時に摂取できます。
新鮮な食材を使う
新鮮な食材は、素材そのものの味が生きているため、調味料を控えめにしても美味しく食べることができます。旬の食材を活用することで、自然と減塩につながります。
「排塩」という考え方
減塩がなかなか難しいという方には、「排塩」という考え方も参考になります。これは、摂取した塩分を体外に排出しやすくするという発想です。
カリウムを多く含む食品(野菜、果物、海藻など)を積極的に摂ることで、腎臓からのナトリウム排出が促進されます。「塩分を摂り過ぎてしまったら、排塩する」という前向きな意識で取り組むことで、減塩のストレスを軽減しながら血圧対策ができます。
6. 血圧を上げてしまう食べ物にも注意
血圧を下げる食品を知ることと同時に、血圧を上げてしまう食品についても理解しておくことが重要です。
塩分の多い食品
漬物、梅干し、塩蔵品、干物、練り物、ハム・ソーセージなどの加工肉、スナック菓子、インスタント食品、カップ麺などは塩分含有量が高い食品の代表例です。これらは食べる頻度や量を控えるようにしましょう。
飽和脂肪酸の多い食品
牛肉や豚肉の脂身、鶏皮、バター、ラード、生クリームなどに多く含まれる飽和脂肪酸は、動脈硬化を進行させ、間接的に血圧上昇のリスクを高めます。肉類を食べる際は、脂身の少ない部位を選び、調理法も揚げ物より蒸し物や焼き物を選ぶとよいでしょう。
糖分の多い食品
砂糖を多く含む菓子類や甘い飲料の摂り過ぎは、肥満につながり、高血圧のリスクを高めます。特に清涼飲料水には想像以上の糖分が含まれていることがあるため、注意が必要です。
アルコール
過度の飲酒は血圧を上昇させます。適量の飲酒(日本酒換算で1日1合程度)であれば問題ないとされていますが、毎日大量に飲むことは避けるべきです。
カフェインの摂り過ぎ
コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、一時的に血圧を上昇させることがあります。適量であれば問題ありませんが、1日に何杯も飲む習慣がある方は控えめにすることをおすすめします。
7. 食事療法を行う際の注意点
血圧を下げる食品を積極的に摂ることは重要ですが、いくつかの注意点があります。
腎臓病がある方はカリウム摂取に注意
腎臓の機能が低下している方は、カリウムを体外に排出する能力が低下しているため、カリウムを摂り過ぎると血液中のカリウム濃度が上昇し、不整脈などの危険な症状を引き起こす可能性があります。
腎臓病がある方や、医師からカリウム制限の指示を受けている方は、カリウムを多く含む食品の摂取について主治医に相談してください。
糖尿病がある方は果物の摂取量に注意
果物にはカリウムが豊富に含まれていますが、同時に糖分(果糖)も多く含まれています。糖尿病の方や血糖値が気になる方は、果物の摂取量に注意が必要です。1日200g程度(りんご1個、またはみかん2個程度)を目安にしましょう。
服薬中の方は医師に相談を
降圧薬を服用している方が食事療法を始める場合は、必ず主治医に相談してください。食事療法によって血圧が下がりすぎてしまう可能性があるためです。特に、グレープフルーツは一部の降圧薬との相互作用があるため、服用している薬の種類によっては避ける必要があります。
バランスの良い食事が基本
特定の食品だけを大量に食べるのではなく、さまざまな食品をバランスよく摂取することが基本です。「これさえ食べれば血圧が下がる」という魔法の食品はありません。多様な食品を組み合わせることで、栄養素の相乗効果が得られ、より効果的な血圧コントロールが可能になります。
継続することが大切
食事療法の効果は、すぐに現れるものではありません。少なくとも数週間から数ヶ月は継続して取り組むことで、徐々に効果が表れてきます。無理なく続けられる範囲で、できることから始めていきましょう。

8. まとめ
本記事では、血圧を下げる食べ物についてランキング形式でご紹介するとともに、DASH食や減塩のコツなど、高血圧対策に役立つ食事法について解説してきました。
血圧を下げるために重要な栄養素として、カリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維、EPA・DHAがあります。これらの栄養素を効率よく摂取できる食品として、緑黄色野菜、バナナ、青魚、大豆製品、乳製品、海藻類、芋類、ナッツ類、トマト、キウイフルーツなどがランキング上位に挙がりました。
また、これらの食品を効果的に組み合わせた食事法として、世界的に推奨されているDASH食についてもご紹介しました。DASH食は科学的なエビデンスに基づいた食事療法であり、日本人の食習慣に合わせてアレンジすることも可能です。
さらに、血圧を下げる食品を摂ることと並んで重要なのが、減塩の実践です。調味料の使い方を見直す、加工食品を控える、出汁やうま味を活用するなど、さまざまなコツを日常生活に取り入れることで、無理なく塩分摂取量を減らすことができます。
高血圧対策は、一時的な取り組みではなく、長期間継続することが大切です。すべてを完璧にしようとする必要はありません。できることから少しずつ取り組み、徐々に習慣化していくことで、血圧の改善と健康な毎日につなげていきましょう。
食事療法だけでは血圧のコントロールが難しい場合は、運動療法の併用や薬物療法が必要になることもあります。血圧が気になる方は、ぜひ一度医療機関を受診し、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
9. 参考文献
- 高血圧 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
- 栄養・食生活と高血圧 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
- カリウム | e-ヘルスネット(厚生労働省)
- さあ、減塩!(減塩・栄養委員会から一般のみなさまへ)| 日本高血圧学会
- 減塩食について | 国立循環器病研究センター
- カリウムの働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット
- 高血圧を改善する「DASH食」って何?| オムロン ヘルスケア
- DASH食とは | 三井物産
- DASH食 ~今話題の健康ワード!~ | 日本成人病予防協会
- 野菜や果物のカリウム摂取で、高血圧が防げる | 神奈川県
- 高血圧には減塩とカリウム摂取を | 奈良県医師会
- 魚を食べると高血圧リスクは減少 EPA・DHAの効果 | 保健指導リソースガイド
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務