「風邪は治ったはずなのに、痰が絡む咳がいつまでも続く」「朝起きると喉に痰が溜まっていて、しばらく咳が止まらない」——こうした症状に悩まされている方は少なくありません。痰が絡む咳は、単なる風邪の名残と思われがちですが、実は様々な病気のサインである可能性があります。
本記事では、痰が絡む咳のメカニズムから、考えられる原因疾患、痰の色からわかる体の状態、そして日常生活でできる対処法まで、呼吸器の専門的な知識をもとにわかりやすく解説します。長引く咳に悩んでいる方、いつ病院を受診すべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

目次
- 痰と咳の基礎知識
- 痰が絡む咳(湿性咳嗽)と乾いた咳(乾性咳嗽)の違い
- 痰が絡む咳を引き起こす主な病気
- 痰の色でわかる体のサイン
- 痰が絡む咳が続くときの対処法
- 医療機関を受診すべきタイミング
- 子どもや高齢者の痰が絡む咳で気をつけたいこと
- 日常生活での予防策
- まとめ
1. 痰と咳の基礎知識
痰とは何か
痰(たん)とは、気道の粘膜から分泌される粘液のことです。健康な人でも、気管支では毎日60〜100mlほどの粘液が作られており、気道にある繊毛(せんもう)の働きによって少しずつ喉へ運ばれています。通常、この粘液は無意識のうちに飲み込まれるため、自分では気づかないことがほとんどです。
痰には、空気と一緒に吸い込んだホコリや細菌、ウイルスなどの異物を絡め取り、体の外へ排出する重要な役割があります。つまり、痰は私たちの体を守るための防御システムの一部なのです。
しかし、風邪をひいたり、気道に炎症が起きたりすると、粘液の分泌量が増加します。その結果、痰の量が増え、喉に絡みつくような不快感を覚えるようになります。
咳のメカニズム
咳もまた、体を守るための自然な反応です。空気の通り道である気道に異物や病原菌が侵入すると、喉や気管にあるセンサーがこれを感知して脳に伝えます。すると脳からの指令によって咳が発生し、異物を体の外へ吐き出そうとします。この一連の反応を「咳反射」と呼びます。
咳には、異物を絡め取った痰を排出する働きもあります。そのため、痰が絡む咳を無理に止めようとすると、本来排出されるべき異物や病原菌が気道に留まり、かえって症状を悪化させてしまう可能性があります。
痰が絡む咳が出るメカニズム
痰が絡む咳は、気道の粘膜表面に強い刺激や炎症が長く続いたことにより、増えた痰を排出しようとするために起こります。炎症によって粘膜から過剰に分泌された粘液には、白血球の死骸などが混じることがあり、これが痰の粘り気を増加させます。
粘り気が増した痰は喉に絡みつきやすくなり、繊毛による自然な排出が困難になります。その結果、痰を外に出すために咳が発生するのです。
2. 痰が絡む咳(湿性咳嗽)と乾いた咳(乾性咳嗽)の違い
咳は大きく「湿性咳嗽(しっせいがいそう)」と「乾性咳嗽(かんせいがいそう)」の2種類に分けられます。
湿性咳嗽(痰が絡む咳)の特徴
湿性咳嗽とは、痰を伴う咳のことです。「ゴロゴロ」「ゴホゴホ」といった重い音がするのが特徴で、咳をすると実際に痰が出てきます。このタイプの咳は、気管支炎や肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの感染症や慢性的な炎症が原因で、気道に溜まった粘液を排出しようとして起こります。
湿性咳嗽の場合、痰を出すことが回復への第一歩となるため、原則として咳止め薬は使用しません。咳を無理に止めてしまうと、痰が気道に溜まり、呼吸がうまくできなくなったり、息が苦しくなったりする可能性があるためです。代わりに、痰を出しやすくする薬(去痰薬)が処方されることが一般的です。
乾性咳嗽(乾いた咳)の特徴
乾性咳嗽とは、痰の絡まない咳のことです。「コンコン」「ケンケン」といった乾いた音がするのが特徴で、喉や胸のムズムズ感、空咳が続きます。このタイプの咳は、咳喘息やアレルギー性鼻炎、胃食道逆流症などが原因で、気道の過敏性によって起こります。
乾性咳嗽は気道の知覚神経が刺激される際に生じるもので、痰が出ないのが特徴です。
咳の種類を見極めることの重要性
咳の性質を見極めることは、原因疾患の早期発見につながります。痰が絡む咳と乾いた咳では、考えられる病気や治療法が異なるため、自分の咳がどちらのタイプなのかを把握することが大切です。
また、咳が続いている期間も重要な判断材料になります。咳が3週間以内であれば「急性咳嗽」、3〜8週間であれば「遷延性咳嗽」、8週間以上続く場合は「慢性咳嗽」と分類されます。期間が長くなるほど、風邪以外の原因が考えられるようになります。
3. 痰が絡む咳を引き起こす主な病気
痰が絡む咳が長引く場合、様々な病気が隠れている可能性があります。ここでは、代表的な疾患について解説します。
急性気管支炎
急性気管支炎は、ウイルスや細菌に感染して気管支に炎症が起こる病気です。風邪の延長線上で発症することが多く、発熱や喉の痛み、痰を伴う咳が主な症状です。
多くの場合、数日から数週間で症状は治まりますが、適切な治療を受けないと慢性化する恐れがあります。気管支炎が慢性化すると、長引く咳に悩まされることになります。
肺炎
肺炎は、細菌やウイルスなどの病原体が肺に感染して炎症を起こす病気です。咳、痰、発熱などの症状が現れますが、これらは風邪とよく似ているため、肺炎にかかっても風邪だと思い込んでしまうことがあります。
しかし、風邪だと思って放置すると重症化して、入院が必要になることもあります。特に高齢者の場合、誤嚥(ごえん)によって発症する誤嚥性肺炎に注意が必要です。飲み込む力が弱っていると、唾液や食物が誤って気管に入り、それがきっかけで肺炎を発症することがあります。
気管支喘息
気管支喘息は、気道が慢性的に炎症を起こし、狭くなることで発作的な呼吸困難や咳、痰の増加を引き起こす病気です。アレルギー性の炎症によって気道が過敏になり、ホコリや冷たい空気、ペットの毛などのわずかな刺激でも激しく咳き込むことがあります。
喘息の痰は通常、粘り気があり白っぽいのが特徴です。発作時には「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)を伴うこともあります。適切な治療を受ければ症状の改善が期待できますが、放置すると気道の炎症が悪化し、発作の頻度や重症度が増す可能性があります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDは、タバコの煙を主とする有害物質を長年吸い込むことなどが原因となり、肺の空気の通りが悪くなる病気です。息切れ、咳、痰などの症状が特徴で、症状が徐々に悪化していきます。
日本では、40歳以上の約12人に1人がCOPDの患者であると推定されていますが、ゆっくりと進行するため自分では気づきにくく、多くの方が診断や治療を受けていないのが現状です。
COPDの痰は白色から黄色で、朝方に特に多く出ることが特徴です。喫煙歴があり、風邪を引いていないのに痰が絡んで咳をすることが多い方、同年代の人と比べて息切れしやすい方は、一度検査を受けることをお勧めします。
一度壊れてしまった肺胞は元に戻すことができないため、COPDの根本的な治療法はありません。だからこそ、早期発見と禁煙が何より重要です。
副鼻腔炎(蓄膿症)と後鼻漏
副鼻腔炎は、鼻の穴の周囲にある空洞(副鼻腔)に炎症が起こり、膿が溜まる病気です。溜まった膿が鼻の中にあふれて流れるため、鼻水の量が増え、粘り気が出てきます。
この鼻水が喉の方へ流れ落ちる状態を「後鼻漏(こうびろう)」と呼びます。後鼻漏による咳は、痰が絡むような湿った咳(湿性咳嗽)となるのが特徴です。
健康な状態でも、1日に作られる鼻水のうち約30%は鼻から喉に流れ、無意識に飲み込まれています。しかし、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などで喉に流れ落ちる鼻水の量が増加すると、それが刺激となって咳が出るようになります。
後鼻漏による咳の特徴として、横になると悪化すること、朝起きた時に痰混じりの咳が多いことが挙げられます。夜間に寝ている間に鼻水が喉に溜まり、粘り気を増して喉に張り付くため、朝の咳が多くなるのです。
このような咳は、咳止めを使うよりも、原因となっている鼻炎の治療を優先した方が効果的です。「鼻水は出ていないし、痰の出る咳なのに、なぜ鼻の薬を処方されるのだろう」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、後鼻漏が原因であれば、耳鼻咽喉科での治療が必要です。
気管支拡張症
気管支拡張症は、先天性の要因や感染を繰り返したことで気管支が異常に広がってしまった状態です。広がった部分には分泌物が溜まりやすく、細菌の温床となるため、感染を繰り返します。
慢性的な咳と痰が主な症状で、痰は大量で膿状のものが混じることがあります。血痰(血が混じった痰)が出ることもあり、注意が必要な疾患です。
肺結核
肺結核は、肺に結核菌が感染して起こる病気です。咳、痰、血痰、倦怠感、発熱、体重減少、寝汗などの症状が見られます。感染者の咳に結核菌が含まれていると、その空気を周りの人が吸い込むことで感染が広がる可能性があります。
結核は過去の病気と思われがちですが、現在でも発症する方はいます。2週間以上咳が続く場合は、結核の可能性も視野に入れて検査を受けることが大切です。
肺がん
肺がんでも、咳や痰が症状として現れることがあります。特に長期間にわたって痰が絡む場合、重大な病気が隠れている可能性を否定できません。血痰が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。
4. 痰の色でわかる体のサイン
痰の色は、体の中で何が起きているかを知る手がかりになります。ただし、痰の色だけで病気を特定することはできませんので、あくまでも目安として参考にしてください。
透明・白色の痰
健康な方であれば、痰は通常無色透明です。また、ウイルス性の風邪やアレルギー性鼻炎、喘息の初期などでも透明から白っぽい痰が見られます。
比較的軽度の炎症が原因で、粘り気があることも特徴です。呼吸器に細菌感染がない場合に多く、経過観察で改善することもありますが、症状が続くようなら受診を検討しましょう。
黄色の痰
痰が黄色くなっている場合は、ウイルスや細菌感染の可能性が考えられます。体の免疫がウイルスや細菌と戦っている証拠で、白血球の死骸などが混じることで黄色くなります。
薄い黄色の痰は、慢性気管支炎や気管支拡張症などの方でも普段から見られることがありますが、量が増加したり、もっと濃い色の痰が出たりした場合は注意が必要です。
緑色の痰
緑色の痰が出る場合は、細菌感染が進んでいる可能性があります。風邪をこじらせた場合や、肺炎、副鼻腔炎(蓄膿症)などでよく見られます。粘り気が強く、出しにくいことが多いです。
サラサラした水っぽい痰が硬くなり、白色から黄色、そして緑色に変わると「膿性(のうせい)のたん」と呼ばれます。これは細菌と白血球と粘液の混ざったものです。緑色の痰が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
茶色・赤錆色の痰
茶色や赤錆色の痰は、肺などの臓器からの出血が考えられます。古い血液が混じった場合に、錆びた鉄のような色になります。肺炎球菌による肺炎では、特徴的な錆び色の痰が見られることがあります。
血が混じった痰(血痰)
痰に血が混じっている場合は、鼻の中、口の中、喉、気管支、肺など、体のどこかで出血が起こっている可能性があります。肺結核や肺がん、気管支拡張症でも血痰が出ることがあり、緊急性の高い状態です。
たとえ少量でも血痰が出た場合は、自己判断で様子を見ることは絶対にやめて、必ず医療機関を受診してください。
ピンク色で泡立つ痰
ピンク色で泡立つような痰は、心臓の機能が低下する心不全で、肺に水が溜まった状態(肺水腫)の時に見られる特徴的なサインです。呼吸困難を伴うことが多く、緊急性の高い状態です。すぐに医療機関を受診してください。
5. 痰が絡む咳が続くときの対処法
痰が絡む咳が続く時は、以下の対処法を試してみてください。
十分な水分補給
こまめな水分補給を心がけましょう。水分を十分に摂ることで痰が柔らかくなり、排出しやすくなります。温かい飲み物やスープなどは、喉を潤しながら体を温める効果もあるのでお勧めです。
逆に、カフェイン入りの飲み物は体の水分の排出を促す作用があるため、摂りすぎに注意しましょう。体が脱水傾向になると、痰の粘り気が増し、症状が悪化することがあります。
室内の湿度管理
室内の湿度を適度に保つことも重要です。乾燥した空気は気道を刺激し、痰の絡みや咳の症状を悪化させる原因となります。加湿器を使用したり、濡れタオルを部屋に干したりして、適度な湿度を保ちましょう。
特に冬場は気温が低いだけでなく、空気も乾燥しやすくなります。また、エアコンを使う季節も室内が乾燥しやすいので注意が必要です。
正しい痰の出し方
痰を出すことは体にとって大切なことですが、間違った方法で無理に出そうとすると、かえって喉を痛めてしまうことがあります。
強い「痰切り」や激しい「咳払い」を繰り返すと、喉の粘膜を傷つけてしまい逆効果です。痰を出す時は、以下の方法を試してみてください。
まず、深呼吸をして十分に空気を吸い込みます。次に、お腹に力を入れながら「ハッ」と強く息を吐き出します。この時、咳き込むのではなく、息を吐く力で痰を押し出すイメージで行います。
また、横向きに寝て背中を軽くたたいてもらう「体位ドレナージ」という方法も効果的です。重力を利用して痰を気管支から喉へ移動させやすくします。
禁煙
喫煙者の方は、禁煙をすることで気道の炎症リスクを減らせます。タバコの煙は気道に慢性的な炎症を引き起こし、痰や咳の原因となります。COPDの最大の原因もタバコであることから、禁煙は痰が絡む咳の改善に最も効果的な対策の一つです。
刺激物を避ける
喉への刺激を避けるため、以下のことに気をつけましょう。
刺激の強い食べ物(辛いもの、酸っぱいものなど)を控える、アルコールを控える、タバコの煙を吸わない(受動喫煙を含む)、冷暖房の風が直接当たらないようにする。
これらの刺激は気道を過敏にし、咳を誘発する原因となります。
6. 医療機関を受診すべきタイミング
痰が絡む咳が続く場合、どのタイミングで医療機関を受診すべきでしょうか。以下の目安を参考にしてください。
すぐに受診すべき場合
以下の症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。
痰に血が混じっている(血痰)。息苦しさを感じる。高熱が下がらない。痰の色が茶色や赤錆色である。ピンク色で泡立つ痰が出る。胸の痛みがある。意識がもうろうとする。喉の近くで「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする。
これらの症状は、肺炎や心不全など、重篤な病気のサインである可能性があります。
2週間以上続く場合
咳が2週間以上続く場合は、風邪以外の病気が隠れている可能性があるため、医療機関を受診しましょう。通常の風邪であれば、2週間以内に咳は治まることがほとんどです。
2週間以上続く咳の原因として、気管支喘息、咳喘息、COPD、副鼻腔炎、逆流性食道炎などが考えられます。
痰の色が変化した場合
痰の色が白から黄色や緑に変化した場合は、細菌感染を起こしている可能性があります。咳の期間が2週間以内であっても、痰の色の変化があれば受診を検討してください。
日常生活に支障が出ている場合
咳がひどくて夜眠れない、食事が摂れない、仕事や学校に集中できないなど、日常生活に支障が出ている場合も受診をお勧めします。咳によって生活の質(QOL)が低下しているなら、治療によって改善できる可能性があります。
何科を受診すべきか
咳が長引いている場合は、呼吸器内科を受診することをお勧めします。長引く咳の原因のほとんどが呼吸器の病気だからです。
ただし、鼻水や鼻づまりなどの症状があり、副鼻腔炎や後鼻漏が疑われる場合は耳鼻咽喉科、胸やけや酸っぱい液体が上がってくる感じがあり胃食道逆流症が疑われる場合は消化器科での治療が必要となることもあります。
まずはかかりつけ医や一般の内科を受診し、必要に応じて専門科を紹介してもらうのも一つの方法です。
7. 子どもや高齢者の痰が絡む咳で気をつけたいこと
痰が絡む咳は、子どもや高齢者では特に注意が必要です。それぞれの年齢層で対策や注意点が異なります。
子どもの場合
子どもは体が未発達であるため、自分でしっかり痰を排出するのが難しいことがあります。そのため、以下の点に注意してケアを行いましょう。
こまめな水分補給を心がける。温かい飲み物やスープを与える。部屋の湿度を適度に保つために加湿器を使用する。蒸気吸入も効果的で、お風呂の湯気を吸わせるなどの方法がある。
通常、子どもの痰絡みの咳は10日以内に約半数、25日以内に約9割が改善するとされています。しかし、以下の場合は早めに小児科を受診しましょう。
咳が長引き、発熱がある。夕方から夜にかけて高熱が出る。息苦しそうにしている。食事がとれない、眠れない。
高齢者の場合
高齢者は免疫力が低下していることが多く、痰が絡む咳が続く場合は、肺炎や肺がんなどの重篤な病気の可能性も考慮する必要があります。
高齢者の場合も、水分をこまめに補給すること、室内の湿度を保つことが大切です。また、嚥下機能が低下している方は誤嚥性肺炎のリスクが高いため、食事の際は姿勢に気をつけ、よく噛んでゆっくり食べることを心がけましょう。
症状が改善しない場合や、発熱、呼吸困難などの他の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
8. 日常生活での予防策
痰が絡む咳を防ぐためには、日常的な予防対策が大切です。
手洗い・うがいの徹底
手洗いやうがいを習慣づけ、細菌やウイルスの感染を防ぎましょう。特に外出後や食事前には、石鹸を使って丁寧に手を洗うことが大切です。
口腔ケア
口腔内の清潔さを保つことも、痰の予防に重要な役割を果たします。口の中が清潔でないと、細菌が繁殖しやすくなり、それが気道へ侵入して炎症を引き起こす原因となります。毎日の歯磨きはもちろん、舌の清掃も心がけましょう。
適度な運動と栄養バランス
免疫力を高めるためには、適度な運動とバランスの良い食事が欠かせません。十分な睡眠をとり、ストレスを溜めないことも大切です。
ワクチン接種
インフルエンザや肺炎球菌のワクチンを受けておくことで、感染による咳や痰の症状を予防できます。特に高齢者や呼吸器疾患をお持ちの方は、ワクチン接種を検討しましょう。
禁煙と受動喫煙の回避
喫煙は気道の慢性的な炎症を引き起こし、痰や咳の原因となります。喫煙者の方は禁煙を、非喫煙者の方も受動喫煙を避けるよう心がけてください。

9. まとめ
痰が絡む咳は、私たちの体が異物や病原菌から身を守ろうとする自然な反応です。しかし、長引く場合は様々な病気のサインである可能性があります。
この記事のポイントをまとめると、以下のようになります。
痰が絡む咳(湿性咳嗽)は、気道の炎症によって増えた痰を排出しようとして起こる。原因となる病気には、気管支炎、肺炎、気管支喘息、COPD、副鼻腔炎(後鼻漏)、気管支拡張症、肺結核、肺がんなどがある。痰の色は体の状態を知る手がかりになり、黄色や緑色の痰は細菌感染、血痰は緊急性の高い状態を示す可能性がある。対処法として、十分な水分補給、室内の湿度管理、正しい痰の出し方、禁煙などが有効。2週間以上咳が続く場合、痰に血が混じる場合、息苦しさを感じる場合は、速やかに医療機関を受診する。子どもや高齢者は特に注意が必要で、症状が改善しない場合は早めに受診を。
痰が絡む咳が続いて気になっている方は、自己判断で様子を見続けるのではなく、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることをお勧めします。早期に原因を特定し、適切な治療を受けることで、症状の改善と重症化の予防につながります。
参考文献
- Q6. 黄色または緑色のたんが出ます。 – 呼吸器Q&A|一般社団法人日本呼吸器学会
- B-01 慢性閉塞性肺疾患(COPD) – B. 気道閉塞性疾患|一般社団法人日本呼吸器学会
- COPD(慢性閉塞性肺疾患) | 健康イベント&コンテンツ | スマート・ライフ・プロジェクト|厚生労働省
- 【知識編】痰の観察|ぜん息などの情報館|独立行政法人環境再生保全機構
- 上手な痰の出し方|ぜん息などの情報館|独立行政法人環境再生保全機構
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状 | 健康長寿ネット|公益財団法人長寿科学振興財団
- 【呼吸器の病気】 肺の生活習慣病といわれる「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」 | 健康サポート | 全国健康保険協会
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD) | 独立行政法人国立病院機構 近畿中央呼吸器センター
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務