新型コロナウイルス感染症に関する対応は、2023年5月8日の5類感染症への移行を経て大きく変化しました。かつては法律に基づく厳格な隔離期間が設けられていましたが、現在は個人の判断を尊重する形に移行しています。しかし、感染拡大を防ぐためには、適切な期間の自宅待機や周囲への配慮が依然として重要です。
この記事では、新型コロナウイルス感染症の隔離期間について、最新の医学的知見と厚生労働省のガイドラインに基づいて詳しく解説します。一般の方、学校関係者、職場の方々それぞれが知っておくべき情報を網羅的にお伝えします。

新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行とは
2023年5月8日、新型コロナウイルス感染症は感染症法上の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」へと変更されました。この変更により、感染症対策の基本的な考え方が大きく転換しました。
5類感染症とは、季節性インフルエンザや水痘(水ぼうそう)などと同じ分類であり、法律に基づく行政の関与が最小限となり、個人の選択を尊重する対応へと移行したことを意味します。具体的には、感染者や濃厚接触者に対する法律に基づく外出自粛要請がなくなり、医療費の自己負担が発生するようになりました(一部公費支援あり)。
この位置づけ変更は、新型コロナウイルスの病原性の変化、国民の多くがワクチン接種や感染により免疫を獲得したこと、治療薬が開発されたことなど、複合的な要因を考慮した結果です。厚生労働省の5類感染症移行に関する公式文書によれば、法律に基づく様々な要請から、国民の自主的な取り組みをベースとした対応に変わることが明確に示されています。
現在の隔離期間に関する基本的な考え方
5類感染症移行後は、「隔離期間」という法的な拘束力のある概念は存在しなくなりました。しかし、医学的な観点からは、他者への感染リスクを考慮した自主的な外出自粛が推奨されています。
一般の方の外出を控える推奨期間
新型コロナウイルス感染症と診断された場合、外出を控えるかどうかは個人の判断に委ねられますが、厚生労働省は以下の期間の自主的な外出自粛を推奨しています。
有症状者の場合、発症日を0日目として5日間は外出を控えることが推奨されます。さらに、5日目に症状が続いていた場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快してから24時間程度経過するまで外出を控えることが望ましいとされています。ここでいう「症状軽快」とは、解熱剤を使用せずに解熱し、かつ呼吸器症状(咳や息苦しさなど)が改善傾向にあることを指します。
無症状者の場合は、検体採取日を0日目として5日間経過するまで外出を控えることが推奨されています。
これらの推奨期間の根拠は、新型コロナウイルスの感染性とウイルス排出期間に関する科学的データに基づいています。発症後5日間は特に感染性が高く、他者にウイルスを感染させるリスクが最も高い期間であることが知られています。
10日間の配慮期間
外出自粛の推奨期間が終了した後も、発症日から10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があることに注意が必要です。この期間は以下のような配慮が求められます。
まず、不織布マスクの着用が推奨されます。マスクは飛沫やエアロゾルの拡散を防ぐ効果があり、他者への感染リスクを低減させます。次に、高齢者や基礎疾患を有する方など、重症化リスクの高い方との接触を控えることが望ましいとされています。さらに、こまめな手洗いや手指消毒、換気などの基本的な感染対策を継続することも重要です。
新型コロナウイルスの感染性とウイルス排出期間
隔離期間の考え方を理解するためには、新型コロナウイルスの感染性とウイルス排出期間について知ることが重要です。ここでは、医学的なエビデンスに基づいて詳しく解説します。
ウイルス排出期間の医学的根拠
新型コロナウイルス感染症では、鼻やのどからのウイルスの排出期間には個人差がありますが、一般的に発症2日前から発症後7~10日間は感染性のウイルスを排出していると考えられています。これは、厚生労働省の療養に関するQ&Aにおいて明確に示されている情報です。
特に注目すべきは、発症後3日間は感染性ウイルスの平均的な排出量が非常に多いという点です。国立感染症研究所のデータによれば、発症日を0日目として3日間程度は平均的に高いウイルス量となっていますが、4日目(3日間経過後)から6日目(5日間経過後)にかけて大きく減少します。
具体的には、6日目(5日間経過後)前後のウイルス排出量は発症日の20分の1から50分の1にまで減少することが確認されています。一般に、ウイルス排出量が下がると他者への感染リスクも低下するため、発症後5日間が特に重要な期間とされているのです。
さらに、国立感染症研究所のデータによれば、感染力のあるウイルスを排出する患者の割合は、発症日を0日目として8日目(7日間経過後)で約15パーセント、11日目(10日間経過後)で約4パーセントまで低下することが報告されています。
症状とウイルス排出の関係
排出されるウイルス量は、発熱や咳などの症状が軽快するとともに減少する傾向があります。しかし、重要な点として、症状が軽快した後も一定期間はウイルスを排出し続けることが知られています。
このことは、症状が改善したからといって直ちに他者への感染リスクがなくなるわけではないことを意味します。特に発症後5日間は、たとえ症状が軽快したように感じても、ウイルス排出が続いている可能性が高いため、外出を控えることが推奨されているのです。
また、無症状の感染者(無症状病原体保有者)の場合も、ウイルス排出は起こります。国立感染症研究所の研究によれば、無症状者においても呼吸器検体中のウイルスRNA量は診断後経時的に減少傾向にありますが、診断8日目以降も持続的に検出されることが確認されています。ただし、ウイルス分離可能な症例(実際に感染力のあるウイルスが存在する症例)は診断6日目以降に減少し、診断8日目以降には認められなくなるという報告があります。
潜伏期間と感染可能期間
新型コロナウイルスの潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は、変異株によって異なりますが、現在流行している変異株では概ね2~3日程度とされています。最長で7日程度の潜伏期間を経て発症する場合もあります。
重要なのは、発症前の段階、具体的には発症2日前からすでにウイルスを排出しており、他者に感染させる可能性があるという点です。これは、自分が感染していることに気づく前から、無意識のうちに周囲にウイルスを広げてしまう可能性があることを意味します。
このため、感染者との接触があった場合は、接触後少なくとも5日間程度は自身の体調の変化に注意を払い、発熱や咽頭痛、咳などの症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。
学校における出席停止期間
学校保健安全法に基づき、学校や幼稚園などの教育施設では、新型コロナウイルス感染症に罹患した児童生徒等に対する出席停止期間が明確に定められています。
学校保健安全法に基づく出席停止基準
文部科学省の通知によれば、新型コロナウイルス感染症への感染が確認された児童生徒等に対する出席停止期間は、「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで」とされています。
この基準は、5類感染症移行後も維持されており、集団生活の場である学校での感染拡大を防ぐために重要な役割を果たしています。出席停止は欠席とは異なり、児童生徒の成績評価などで不利益を被ることはありません。感染拡大防止のための公的な措置として位置づけられています。
無症状感染者の出席停止期間
無症状の感染者(無症状病原体保有者)の場合、検体を採取した日(検査を受けた日)を0日目として、5日を経過するまでが出席停止期間となります。無症状であっても、前述のとおりウイルス排出は起こり得るため、一定期間の出席停止が必要とされています。
症状軽快の定義
学校における出席停止期間の判断において、「症状軽快」という言葉が重要な意味を持ちます。症状軽快とは、解熱剤を使用せずに解熱し、かつ呼吸器症状(咳や息苦しさなど)が改善傾向にあることを指します。
つまり、薬を飲んで一時的に熱が下がっただけでは「症状軽快」とは見なされません。薬を使わなくても熱が出ない状態が続き、さらに咳などの症状も良くなってきている状態を確認することが必要です。
出席停止解除後の配慮
出席停止が解除された後も、発症から10日を経過するまでは、児童生徒に対してマスクの着用が推奨されています。これは、10日間経過するまではウイルス排出の可能性が完全にはなくならないためです。
また、登校を再開する際、学校に陰性証明を提出する必要はありません。医療機関が発行する検査結果を証明する書類も不要です。これは、検査による陰性確認が必ずしもウイルス排出の完全な停止を意味しないこと、また医療機関の負担を軽減するための措置です。
濃厚接触者の扱い
5類感染症移行後は、同居している家族が新型コロナウイルス感染症に感染した児童生徒や、学校で新型コロナウイルス感染症の患者と接触があった児童生徒について、濃厚接触者として特定されることはなくなりました。したがって、感染者でなければ、接触があったことのみを理由として直ちに出席停止の対象とする必要はありません。
ただし、本人に発熱や咽頭痛、咳などの症状がみられた場合は、自宅での休養が推奨されます。また、保護者から感染が不安で休ませたいという相談があった場合、同居家族に高齢者や基礎疾患がある者がいるなどの事情があって、他に手段がない場合など、合理的な理由があると校長が判断する場合には、出席停止として扱うことも可能です。
職場における対応
職場における新型コロナウイルス感染症への対応は、学校とは異なり、法律による明確な就業制限はありません。しかし、従業員の健康管理と職場での感染拡大防止の観点から、適切な対応が求められます。
一般企業の就業制限の考え方
多くの企業では、学校保健安全法の基準や厚生労働省の推奨する外出自粛期間を参考に、独自の就業規則を定めています。一般的には、「発症後5日以上かつ症状軽快後24時間以上」を復帰の目安としている企業が多いようです。
職場での対応は各企業の就業規則に従うことが基本ですが、従業員が感染した場合は速やかに上司や人事部門に報告し、指示を仰ぐことが重要です。在宅勤務が可能な職種であれば、体調が許す範囲で業務を継続することも検討できます。
医療機関・高齢者施設等での対応
医療機関や高齢者施設等では、一般企業よりも厳格な対応が求められます。これらの施設では重症化リスクの高い方々が多く生活・療養しているため、感染拡大防止により一層の注意が必要です。
厚生労働省は、これらの施設に対して、新型コロナウイルスに罹患した従事者の就業制限を考慮することを推奨しています。具体的には、一般の推奨期間よりも長めの期間を設定したり、復帰前の検査を実施したりするなど、施設の判断で追加的な対策を講じることが可能です。
有給休暇と傷病手当金
新型コロナウイルス感染症で仕事を休む場合の休暇の扱いは、企業によって異なります。有給休暇を使用するか、病気休暇として扱うかは、各企業の就業規則によります。
また、療養のために連続して3日間休み、4日目以降も休業が続く場合は、健康保険の傷病手当金の対象となる可能性があります。傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けない期間について、給与の約3分の2相当額が支給される制度です。詳細は加入している健康保険組合や会社の人事部門に確認することをお勧めします。
濃厚接触者の扱いについて
5類感染症移行後の大きな変更点の一つが、濃厚接触者の扱いです。現在は、法律に基づく濃厚接触者の特定や外出自粛要請は行われていません。
濃厚接触者として特定されなくなった背景
かつては、新型コロナウイルス感染症の陽性者が確認されると、保健所が濃厚接触者を特定し、一定期間の外出自粛や健康観察を要請していました。しかし、5類感染症移行後は、一般に保健所から濃厚接触者として特定されることはなくなり、法律に基づく外出自粛も求められなくなりました。
この変更は、オミクロン株以降の変異株の特性や、ワクチン接種の普及、医療提供体制の整備などを総合的に考慮した結果です。また、保健所の業務負担の軽減という側面もあります。
家族が感染した場合の対応
家族が新型コロナウイルス感染症に感染した場合でも、濃厚接触者として外出自粛を求められることはありませんが、発症のリスクがあることを認識し、標準的な感染対策を継続することが重要です。
具体的には、可能な限り感染者と部屋を分けること、共有スペースの換気を徹底すること、こまめな手洗いや手指消毒を行うこと、必要な場面でマスクを着用することなどが推奨されます。また、発症日を0日目として5日間は特に注意し、体調の変化に気を配ることが大切です。
症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診し、検査を受けることをお勧めします。また、高齢者や基礎疾患を有する方との接触は控えるなどの配慮も必要です。
自宅療養中の過ごし方
新型コロナウイルス感染症と診断され自宅で療養する場合、適切な過ごし方を知っておくことが重要です。自身の回復を促すとともに、同居する家族への感染を防ぐための対策を講じる必要があります。
基本的な療養方法
自宅療養中は、まず十分な休息を取ることが最も重要です。無理をせず、体を休めることで免疫力を維持し、回復を促進させます。また、水分補給をこまめに行い、脱水を防ぐことも大切です。特に発熱がある場合は、普段以上に水分を失いやすいため、意識的に水分を摂取しましょう。
栄養バランスの取れた食事を心がけることも重要ですが、食欲がない場合は無理に食べる必要はありません。消化の良いものを少量ずつ摂取するなど、体調に合わせた食事を選びましょう。
室温や湿度を適切に保つことも忘れてはいけません。特に冬季は、暖房を使用しながらも定期的に換気を行い、新鮮な空気を取り入れることが大切です。
家族への感染を防ぐための対策
自宅に家族がいる場合、可能な限り感染者と他の家族の生活空間を分けることが推奨されます。個室で療養し、食事も別々に取るなどの対応が理想的です。トイレや洗面所などの共有スペースを使用する際は、使用後に消毒を行うことも有効です。
感染者が使用したタオルや食器は、他の家族と分けて管理し、洗濯や洗浄を行います。洗濯物は通常の洗濯で問題ありませんが、取り扱う際は手洗いを忘れずに行いましょう。
ゴミの処理にも注意が必要です。使用したティッシュやマスクなどは、密閉できる袋に入れて捨て、ゴミを捨てた後は手を洗います。
換気は非常に重要な対策です。可能であれば常時、少なくとも1時間に1回は窓を開けて空気の入れ替えを行いましょう。エアロゾルによる感染を防ぐために、十分な換気を心がけることが大切です。
医療機関への相談が必要な症状
自宅療養中でも、以下のような症状が現れた場合は、速やかに医療機関に連絡し、指示を仰ぐ必要があります。
呼吸困難や息苦しさが強い場合、唇や顔色が青白くなっている場合、意識がもうろうとする場合、横になれないほどの息苦しさがある場合などは、重症化のサインである可能性があります。特に、持続する胸痛や呼吸困難は緊急性が高い症状です。
また、高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患など)を有する方、妊娠中の方などは、症状が軽度であっても早めに医療機関に相談することをお勧めします。これらの方々は重症化リスクが高いため、早期の医療介入が重要です。
小児の場合は、顔色が悪い、ぐったりしている、呼吸が苦しそう、水分が取れないなどの症状に注意が必要です。保護者の方は、お子様の様子をよく観察し、異常を感じたら速やかに医療機関に相談してください。
検査と診断について
新型コロナウイルス感染症の検査と診断についても、5類感染症移行後に変更がありました。ここでは、現在の検査体制と診断方法について解説します。
検査方法の種類
新型コロナウイルス感染症の検査には、主にPCR検査と抗原検査の2種類があります。
PCR検査は、ウイルスの遺伝子を検出する方法で、感度が高く精度の高い検査です。医療機関で鼻咽頭拭い液や唾液を採取し、検査機関で分析を行います。結果が出るまでに数時間から1日程度かかることが一般的です。
抗原検査には、医療機関で行う抗原定量検査と、自宅で使用できる抗原定性検査キット(市販の検査キット)があります。抗原検査は15分から30分程度で結果が出る迅速性が特徴ですが、PCR検査に比べるとウイルス量が少ない場合に偽陰性(感染しているのに陰性と判定される)となる可能性があります。
医療機関での検査
5類感染症移行後は、発熱外来などの限られた医療機関だけでなく、幅広い医療機関で新型コロナウイルス感染症の診療が可能となりました。発熱や咽頭痛、咳などの症状がある場合は、まずかかりつけ医に電話で相談し、受診の予約を取ることをお勧めします。
医療機関での検査費用は、5類感染症移行後は健康保険が適用され、自己負担割合(1割から3割)に応じた負担が発生します。ただし、一部の治療薬については、急激な負担増を避けるため、期限を区切って公費支援が継続されています。
自宅での検査キット使用
体調に異変を感じた場合、まずは市販の抗原定性検査キットでセルフチェックを行うことも一つの方法です。検査キットを使用する際は、「体外診断用医薬品」または「第1類医薬品」と表示されたものを選ぶことが重要です。これらは国が承認したもので、一定の精度が保証されています。
検査キットで陽性となった場合は、医療機関に連絡して受診することをお勧めします。特に重症化リスクの高い方(高齢者、基礎疾患を有する方、妊婦など)や症状が重い方は、速やかに医療機関を受診してください。
一方、検査キットで陰性となった場合でも、症状が続く場合や悪化する場合は医療機関を受診することが大切です。検査のタイミングによっては偽陰性となる可能性もあるため、症状がある場合は医師の診察を受けることをお勧めします。
治療薬と医療費について
新型コロナウイルス感染症の治療については、複数の治療薬が承認されており、患者の症状や重症化リスクに応じて使用されています。
利用可能な治療薬
現在、日本で承認されている新型コロナウイルス感染症の治療薬には、抗ウイルス薬や中和抗体薬などがあります。これらの薬剤は、重症化リスクの高い患者や、すでに重症化している患者に対して、医師の判断により処方されます。
抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑える働きがあり、発症早期に使用することで重症化を予防する効果が期待されます。中和抗体薬は、ウイルスの働きを阻害する抗体を投与する治療法で、重症化リスクの高い患者に使用されます。
これらの治療薬の処方は、患者の年齢、基礎疾患の有無、症状の程度などを総合的に判断して医師が決定します。すべての感染者に治療薬が処方されるわけではなく、多くの場合は対症療法(症状を和らげる治療)が中心となります。
医療費の自己負担
5類感染症移行後は、新型コロナウイルス感染症の医療費についても、他の疾患と同様に健康保険が適用され、自己負担割合(1割から3割)に応じた負担が発生します。
ただし、急激な負担増を避けるため、一部の高額な治療薬の費用については、期限を区切って公費支援が継続されています。また、入院医療費についても、高額療養費の自己負担限度額から2万円を減額する措置が取られています(自己負担が2万円未満の場合はその額)。
医療費が高額になった場合は、高額療養費制度の適用があります。この制度は、1か月の医療費が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される仕組みです。所得に応じて自己負担の上限額が設定されているため、詳細は加入している健康保険組合に確認することをお勧めします。
予防接種(ワクチン)について
新型コロナウイルス感染症の予防において、ワクチン接種は重要な役割を果たしています。現在も定期的に接種が行われており、特に重症化リスクの高い方には接種が推奨されています。
ワクチンの効果
新型コロナワクチンは、感染そのものを完全に防ぐものではありませんが、重症化や死亡のリスクを大幅に低減する効果があることが多くの研究で示されています。また、感染した場合でも、ワクチン接種により症状が軽症で済む傾向があります。
ワクチンの種類や接種回数は、年齢や健康状態、過去の接種歴などによって異なります。最新の接種スケジュールについては、厚生労働省のホームページや自治体の情報を確認することをお勧めします。
接種の対象と費用
2025年現在、新型コロナワクチンの接種は、高齢者や基礎疾患を有する方、医療従事者などを中心に実施されています。接種対象や接種間隔については、流行状況やワクチンの供給状況に応じて変更される可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。
ワクチン接種の費用については、公費負担の制度が設けられており、対象者は無料または低額で接種を受けることができます。詳細は居住地の自治体にお問い合わせください。
感染予防の基本的な対策
新型コロナウイルス感染症の予防には、日常生活での基本的な感染対策が重要です。5類感染症移行後は、政府として一律に対策を求めることはなくなりましたが、個人や事業者の判断で適切な対策を継続することが推奨されています。
効果的な感染対策
手洗いと手指消毒は、最も基本的で効果的な感染対策の一つです。外出先から帰宅した時、食事の前、トイレの後などには、石鹸を使って20秒以上かけて丁寧に手を洗いましょう。手洗いができない場合は、アルコール消毒液による手指消毒も有効です。
換気も重要な対策です。屋内では定期的に窓を開けて空気の入れ替えを行い、新鮮な空気を取り入れることで、空気中のウイルス濃度を下げることができます。特に多くの人が集まる場所や、長時間滞在する部屋では、1時間に1回程度の換気を心がけましょう。
マスクの着用については、個人の判断に委ねられていますが、医療機関や高齢者施設を訪問する際、混雑した公共交通機関を利用する際、症状がある時に外出する場合などには、着用が推奨されます。特に、自身が咳やくしゃみなどの症状がある場合は、他者への配慮として不織布マスクを着用することが望ましいでしょう。
重症化リスクの高い方への配慮
高齢者や基礎疾患を有する方など、重症化リスクの高い方は、流行期において特に注意が必要です。換気の悪い場所や、不特定多数の人がいるような混雑した場所、近接した会話を伴う場面を避けることが感染防止対策として有効です。これらの場面を避けられない場合は、マスクを着用することが推奨されます。
また、これらの方々と接する際には、周囲の人も配慮が必要です。体調が優れない時は訪問を控える、訪問時はマスクを着用する、十分な換気を行うなどの対策を講じることが大切です。
職場や学校での感染対策
職場や学校など、多くの人が集まる場所での感染対策も重要です。個々の状況に応じた適切な対策を講じることで、集団感染のリスクを低減することができます。
職場での対応
企業や事業所では、従業員の健康管理と感染拡大防止の観点から、適切な感染対策を継続することが推奨されます。具体的には、体調不良者の出勤停止、十分な換気の確保、手指消毒設備の設置、必要に応じたマスク着用の推奨などが挙げられます。
また、テレワークやフレックスタイム制の活用により、通勤時の混雑を避けることも有効な対策です。可能な範囲で柔軟な働き方を取り入れることで、感染リスクを低減できます。
会議や打ち合わせについては、オンラインツールの活用も検討に値します。対面での会議が必要な場合は、参加人数を最小限にする、換気を十分に行う、距離を保つなどの配慮が望ましいでしょう。
学校での対応
学校では、児童生徒の健康観察を継続し、発熱や咽頭痛、咳などの症状がある場合は登校を控えるよう保護者に呼びかけることが重要です。また、教室の換気を定期的に行う、手洗い場に石鹸を常備する、共用部分の清掃を適切に行うなどの対策が推奨されます。
給食時には、食事前の手洗いを徹底し、会話を控えめにするなどの配慮も有効です。また、部活動や課外活動においても、活動内容や場所に応じた適切な感染対策を講じることが大切です。
学校内で感染者が発生した場合の対応については、学校設置者や学校医と相談しながら、臨時休業(学級閉鎖、学年閉鎖、学校閉鎖)の必要性を判断することになります。感染が広がっている可能性が高い場合には、適切な範囲で臨時休業の措置を取ることが感染拡大防止に有効です。
今後の見通しと注意点
新型コロナウイルス感染症への対応は、ウイルスの変異や流行状況、医療提供体制などに応じて今後も変化していく可能性があります。最新の情報を把握し、状況に応じた適切な対応を取ることが重要です。
変異株への注意
新型コロナウイルスは変異を続けており、新たな変異株が出現する可能性があります。変異株によっては感染力や病原性が変化することがあるため、厚生労働省や国立感染症研究所が発信する情報に注意を払うことが大切です。
変異株の流行状況については、国立感染症研究所が定期的にゲノムサーベイランスの結果を公表しています。これらの情報を参考に、必要に応じて対策を強化することも検討しましょう。
季節性の流行への備え
新型コロナウイルス感染症は、季節性インフルエンザと同様に、冬季に流行する傾向があります。気温が低く空気が乾燥する時期には、ウイルスが活性化しやすく、また人々が室内で過ごす時間が長くなることで感染リスクが高まります。
冬季に向けては、ワクチン接種を検討する、基本的な感染対策を徹底する、体調管理に気を配るなどの準備を行うことが望ましいでしょう。特に重症化リスクの高い方は、早めの対策を心がけることをお勧めします。
医療機関の受診について
新型コロナウイルス感染症を疑う症状がある場合は、まずかかりつけ医に電話で相談し、指示を仰ぐことが基本です。突然の受診は医療機関の混乱を招く可能性があるため、必ず事前に連絡を入れましょう。
かかりつけ医がいない場合や、どこに相談すればよいか分からない場合は、自治体が設置している発熱相談センターや受診・相談センターに電話で相談することができます。これらの窓口では、症状に応じて適切な医療機関を紹介してもらえます。
夜間や休日に症状が悪化した場合は、自治体の夜間・休日診療所や、救急相談窓口(東京都の場合は#7119など)に相談してください。生命に関わるような重篤な症状(呼吸困難、意識障害など)がある場合は、ためらわずに119番で救急車を要請してください。

まとめ
新型コロナウイルス感染症の隔離期間については、5類感染症移行後に大きく変化しました。現在は法律に基づく外出自粛要請はなくなりましたが、医学的な観点から、発症後5日間は外出を控えることが推奨されています。さらに、発症後10日間はウイルス排出の可能性があるため、マスク着用や高齢者との接触を控えるなどの配慮が必要です。
学校では、学校保健安全法に基づき、「発症後5日を経過し、かつ症状軽快後1日を経過するまで」が出席停止期間と定められています。職場での対応は各企業の就業規則に従うことが基本ですが、多くの企業では学校の基準を参考にしています。
感染予防の基本は、手洗い、換気、必要な場面でのマスク着用などです。個人の判断で適切な対策を継続することが、自分自身と周囲の人々を守ることにつながります。
体調に異変を感じた場合は、早めに医療機関に相談し、適切な対応を取ることが大切です。特に重症化リスクの高い方は、軽症であっても早めに相談することをお勧めします。
新型コロナウイルス感染症への対応は今後も変化していく可能性があるため、厚生労働省や自治体が発信する最新情報を定期的に確認し、状況に応じた適切な行動を取るようにしましょう。
参考文献
本記事は以下の公的機関の資料を参考に作成しました。
- 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」
- 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A(一般の方向け)」
- 厚生労働省「感染症法上の位置づけ変更後の療養に関するQ&A」
- 文部科学省「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令の施行について」
- 国立感染症研究所「発症からの感染可能期間と再陽性症例における感染性・二次感染リスクに関するエビデンスのまとめ」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務