WEB予約
料金表
アクセス

はじめに

2019年末に確認されて以来、私たちの生活に大きな影響を与え続けている新型コロナウイルス感染症。2023年5月に感染症法上の5類感染症に移行したものの、ウイルスは依然として変異を繰り返しながら流行しています。

2025年現在も新型コロナウイルス感染症は終息しておらず、季節を問わず感染者が確認されています。特に気になるのは、初期症状が風邪やインフルエンザと似ているため、自身が感染したかどうかの判断が難しいという点です。

このコラムでは、新型コロナウイルス感染症の初期症状について、最新の医学的知見を交えながら、一般の方にもわかりやすく解説していきます。アイシークリニック東京院では、患者様の健康と安全を第一に考え、正確な情報提供に努めています。

新型コロナウイルス感染症とは

新型コロナウイルス感染症は、正式名称をCOVID-19といい、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる感染症です。2020年1月に世界保健機関(WHO)により国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態が宣言されましたが、2023年5月にその宣言は解除されました。

日本においても2023年5月8日に感染症法上の分類が2類相当から5類感染症へと変更され、季節性インフルエンザと同じ扱いになりました。これにより、外出自粛などの行動制限は個人の判断に委ねられることとなりましたが、ウイルスが消滅したわけではありません。

現在でもウイルスは変異を繰り返しており、新たな変異株が次々と出現しています。2024年から2025年にかけては、オミクロン株の派生型であるNB.1.8.1株(通称:ニンバス)やPQ.2株などが主流となっており、感染は依然として続いています。

感染経路と感染力

新型コロナウイルスは主に以下の経路で感染します。

まず、飛沫感染です。感染者の咳、くしゃみ、会話の際に口や鼻から排出されるウイルスを含んだ飛沫を吸い込むことで感染します。特に密閉された空間での会話は感染リスクが高まります。

次に、エアロゾル感染です。飛沫よりもさらに小さな粒子(エアロゾル)が空気中を漂い、それを吸入することで感染する経路です。換気の悪い密閉空間では特に注意が必要です。

そして、接触感染です。ウイルスが付着した物や手指を介して、目、鼻、口などの粘膜に触れることで感染します。ドアノブ、手すり、スマートフォンなど、多くの人が触れる物品には注意が必要です。

新型コロナウイルスの特徴的な点は、症状が出る前の段階や、症状が軽い段階でも他者に感染させる可能性があることです。厚生労働省の報告によると、発症2日前から発症後7~10日間は感染性のウイルスを排出しているとされています。特に発症後3日間は感染性のウイルスの平均的な排出量が非常に多く、5日間経過すると大きく減少することから、発症後5日間が他人に感染させるリスクが最も高い期間です。

また、無症状の感染者(無症状病原体保有者)からも感染する可能性があることが確認されており、これが感染拡大を防ぐ難しさの一因となっています。

潜伏期間について

潜伏期間とは、ウイルスに感染してから初めて症状が現れるまでの期間を指します。新型コロナウイルス感染症の潜伏期間は、個人差がありますが、一般的には2日から7日程度とされています。

当初の流行時と比較すると、オミクロン株以降の変異株では潜伏期間が短くなる傾向が見られています。現在主流となっている変異株では、感染から2~3日程度で発症するケースが多く報告されています。ただし、中には7日以上経過してから症状が現れる方もいらっしゃるため、感染の可能性がある接触があった場合は、1週間程度は体調の変化に注意を払う必要があります。

潜伏期間中であっても、特に発症直前の時期にはウイルスを排出している可能性があるため、感染リスクのある行動をした後は、症状がなくても他者との接触を控えめにすることが推奨されます。

新型コロナウイルス感染症の初期症状

主な初期症状の特徴

新型コロナウイルス感染症の初期症状は、風邪やインフルエンザと非常に似ているため、症状だけで見分けることは医師でも困難とされています。しかし、いくつかの特徴的な症状を知っておくことで、早期発見と適切な対応につなげることができます。

2025年現在、医療機関で実際に診療された患者様のデータをもとにした調査によると、以下のような症状が多く報告されています。

喉の痛み

現在最も多く訴えられる症状が喉の痛みです。特に2025年に流行しているNB.1.8.1株(ニンバス)では、非常に強い喉の痛みが特徴として報告されています。患者様の中には「剃刀を飲み込んだような痛み」「ガラスの破片が喉に刺さっているような感覚」と表現される方もいらっしゃるほど、激しい痛みを伴うケースがあります。

喉の痛みは感染初期から現れることが多く、唾を飲み込むだけでも痛みを感じたり、食事が困難になったりすることもあります。この症状は数日間持続することが一般的です。

発熱

発熱は新型コロナウイルス感染症の代表的な症状の一つです。感染者の多くで37.5度以上の発熱が見られ、中には39度を超える高熱を出される方もいらっしゃいます。

2023年5月の5類感染症への移行に伴い、以前のような具体的な受診基準(37.5度以上の発熱が4日以上)は撤廃されましたが、発熱があった場合は感染の可能性を考慮した行動が必要です。

発熱のパターンには個人差があり、急激に高熱が出る方もいれば、微熱から徐々に熱が上がっていく方もいらっしゃいます。解熱剤を使用すると一時的に熱が下がることもありますが、薬の効果が切れると再び熱が上がることも珍しくありません。

咳も頻繁に見られる初期症状の一つです。最初は乾いた咳(空咳)から始まることが多く、時間の経過とともに痰を伴う湿った咳に変化していくことがあります。

咳は発症初期から現れることもあれば、発熱や喉の痛みに遅れて出現することもあります。一度咳が始まると長引く傾向があり、他の症状が改善した後も数週間にわたって咳だけが残るケースも少なくありません。

特に夜間や早朝に咳がひどくなることがあり、睡眠の質が低下することで体力の回復が遅れる可能性もあります。

倦怠感

全身のだるさや倦怠感も、新型コロナウイルス感染症の特徴的な症状です。「体が鉛のように重い」「起き上がることさえつらい」といった表現をされる方が多く、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

倦怠感は他の症状と同時に現れることもあれば、単独で最初の症状として現れることもあります。また、発熱などの急性症状が改善した後も、倦怠感だけが長く続くケースも報告されています。

頭痛

頭痛を訴える方も少なくありません。調査によると、感染者の約30~40%が頭痛を経験しているとされています。

頭痛の特徴としては、鈍痛から締め付けられるような痛み、ズキズキとした拍動性の痛みまで様々です。市販の鎮痛剤で一時的に改善することもありますが、発熱に伴う頭痛の場合は、熱が下がらない限り完全には治まらないことがあります。

鼻水・鼻づまり

鼻水や鼻づまりの症状も報告されていますが、最近の変異株では喉の症状と比較すると訴える方は減少傾向にあります。

鼻水の性状は、初期は透明でサラサラしたものから、感染が進むにつれて粘り気のある黄色味がかったものに変化することがあります。副鼻腔炎を二次的に発症するケースもあるため、症状が長引く場合は注意が必要です。

筋肉痛・関節痛

全身の筋肉痛や関節痛を感じる方もいらっしゃいます。特に背中や腰、手足の痛みが報告されています。

これらの痛みは、ウイルスに対する免疫反応の一環として生じると考えられており、インフルエンザの際に感じる痛みと似た性質のものです。湿布を貼っても効果が得られにくいことがあり、基本的には体を休めることが重要です。

消化器症状

2024年から2025年にかけて、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛といった消化器症状を訴える方が増加しています。オミクロン株が腸管細胞にも侵入できるという特徴があるためと考えられています。

新型コロナウイルスによる消化器症状は15~50%と高い頻度で認められ、特に下痢は感染者の約40%に見られたという報告もあります。これらの症状は感染初期から始まり、通常は1週間ほどで改善することが多いです。

嗅覚・味覚障害

パンデミック初期に特徴的な症状として注目された嗅覚・味覚障害ですが、オミクロン株流行期以降は発生頻度が減少しています。ただし、完全になくなったわけではなく、現在でも一部の方に見られる症状です。

嗅覚・味覚障害が現れた場合、数日で回復する方もいれば、数か月以上続く方もいらっしゃり、個人差が大きい症状です。

変異株による症状の違い

新型コロナウイルスは変異を繰り返しており、変異株によって症状の特徴が異なることがわかっています。

初期の武漢株・アルファ株

パンデミック初期の武漢株やアルファ株では、発熱、咳、倦怠感に加えて、嗅覚・味覚障害が高い頻度で見られました。また、肺炎を発症し重症化するリスクが比較的高かったのが特徴です。

デルタ株

2021年に流行したデルタ株は、感染力が非常に強く、重症化リスクも高い変異株でした。高熱や強い倦怠感、呼吸困難を伴うことが多く、入院が必要となるケースも多く見られました。

現在、デルタ株はほとんど検出されていません。

オミクロン株とその派生型

2021年末から流行が始まったオミクロン株は、それまでの変異株と比較して症状が風邪に似た特徴を持っています。特に喉の強い痛みを訴える方が多く、これはオミクロン株が鼻から喉の間で増えやすい性質を持つためと考えられています。

一方で、嗅覚・味覚障害は減少し、肺炎を起こして重症化するリスクも以前の変異株と比べて低くなっています。ただし、感染力は非常に強く、短期間で多くの人に広がる特徴があります。

2025年の主流株

2025年現在主流となっているNB.1.8.1株(ニンバス)やPQ.2株などのオミクロン株派生型では、特に以下の特徴が見られます。

喉の強い痛みがより顕著になっており、「これまでに経験したことがないほどの喉の痛み」と表現される方が増えています。咳や鼻水などの上気道症状が中心で、下気道から上気道、上咽頭への炎症が主体となっているケースが多く報告されています。

消化器症状を訴える方の割合も比較的高く、吐き気、下痢、腹痛などが初期症状として現れることがあります。

ワクチンや過去の感染による免疫を部分的に回避する能力を持つため、過去に感染した方やワクチン接種済みの方でも再感染する可能性があります。

他の疾患との見分け方

新型コロナウイルス感染症の初期症状は、風邪やインフルエンザ、その他の呼吸器感染症と非常に似ているため、症状だけで正確に判断することは困難です。

風邪との違い

一般的な風邪は、鼻水や鼻づまりから始まることが多く、症状は比較的軽度です。喉の痛みがあっても新型コロナほど激しくないことが多く、全身の倦怠感も軽度です。

しかし、現在の変異株では風邪との区別がさらに難しくなっており、症状だけでの判断は避けるべきです。

インフルエンザとの違い

インフルエンザは、新型コロナウイルス感染症と症状が非常に似ています。高熱、倦怠感、筋肉痛、頭痛などが急激に現れるのが特徴です。

インフルエンザの場合、発熱が38度以上の高熱になることが多く、関節痛や筋肉痛がより強く現れる傾向があります。ただし、これらの特徴も絶対的なものではなく、確実に区別するには検査が必要です。

溶連菌感染症

溶連菌感染症も強い喉の痛みが特徴的な疾患ですが、多くの場合、扁桃腺の腫れや白い膿の付着、首のリンパ節の腫れを伴います。小児に多い疾患ですが、成人でも感染することがあります。

RSウイルス感染症

RSウイルス感染症は、咳や鼻水、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)が特徴的です。特に乳幼児では重症化しやすい疾患ですが、成人でも感染することがあります。

アレルギー性鼻炎・花粉症

鼻水やくしゃみが主症状の場合、アレルギー性鼻炎や花粉症との区別も必要です。これらのアレルギー疾患では、発熱や倦怠感を伴うことは稀で、目のかゆみを伴うことが多いのが特徴です。

結局のところ、症状だけでこれらの疾患を区別することは専門家でも困難であり、確実な診断のためには医療機関での検査が必要です。

症状が出た時の対応方法

新型コロナウイルス感染症が疑われる症状が出た場合の適切な対応について説明します。

初期対応

まず、可能な限り他者との接触を避けることが重要です。家族と同居している場合でも、別の部屋で過ごす、マスクを着用する、食事の時間をずらすなど、接触を最小限にする工夫をしましょう。

体調の記録をつけることも大切です。いつから、どのような症状が現れたのかを記録しておくと、医療機関を受診する際に役立ちます。体温、症状の種類と程度、食事や水分の摂取状況などを記録しておきましょう。

医療機関への受診

2023年5月の5類感染症への移行後は、新型コロナウイルス感染症が疑われる場合でも、一般の医療機関を受診することができます。

受診する際は、事前に電話で連絡し、症状を伝えた上で受診時間や方法について指示を仰ぐことが推奨されます。多くの医療機関では、感染症の可能性がある患者様に対して特別な対応(別の入口からの入室、専用の待合室の使用など)を行っています。

かかりつけ医がいる場合は、まずかかりつけ医に相談することをお勧めします。かかりつけ医がいない場合や、夜間・休日の場合は、お住まいの地域の医療機関案内や相談窓口に連絡しましょう。

検査について

新型コロナウイルス感染症の診断には、PCR検査と抗原検査があります。

PCR検査は精度が高く、ウイルス量が少ない感染初期でも検出できる可能性がありますが、結果が出るまでに時間がかかります。

抗原検査は、結果が15~30分程度で出る利点があります。ただし、ウイルス量が少ない時期には検出できないこともあるため、陰性でも症状がある場合は再検査が必要な場合があります。

5類感染症への移行後、多くの医療機関では結果が早く出る抗原検査を優先的に使用しています。

自宅療養

軽症の場合、自宅で療養することになります。自宅療養の際の注意点は以下の通りです。

十分な休息と睡眠を取ることが最も重要です。体力を回復させ、免疫力を高めるために、無理をせず体を休めましょう。

こまめな水分補給も大切です。発熱により体内の水分が失われるため、経口補水液やスポーツドリンク、水、お茶などで十分な水分を補給しましょう。

栄養バランスの取れた食事を心がけます。食欲がない場合は無理に食べる必要はありませんが、消化の良いものを少量ずつでも摂取するようにしましょう。

症状に応じた対症療法として、解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)を使用することもできます。ただし、使用する際は用法用量を守り、不安な場合は薬剤師や医師に相談しましょう。

外出を控える期間

厚生労働省の指針では、発症日を0日目として5日間は外出を控えることが推奨されています。また、5日目に症状が続いている場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは、外出を控え様子を見ることが推奨されています。

10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があることから、不織布マスクを着用したり、高齢者などハイリスクの方との接触は控えるなど、周りの方へうつさないよう配慮することが大切です。

家族への感染を防ぐために

同居家族がいる場合、以下の対策が推奨されます。

できるだけ個室で過ごし、共用スペースの使用を最小限にします。トイレや浴室を共用する場合は、使用後に消毒を行いましょう。

マスクを着用することで、飛沫による感染リスクを減らすことができます。特に部屋から出る時や、家族と接触する時は必ず着用しましょう。

こまめな換気も重要です。2方向の窓を開けて、1時間に数回、数分間の換気を行いましょう。

手指衛生にも注意が必要です。こまめに石けんで手を洗う、またはアルコール消毒液を使用しましょう。

タオルや食器の共用は避け、洗濯物も可能であれば分けて洗うことが望ましいです。

重症化のサインと危険因子

新型コロナウイルス感染症の多くは軽症で済みますが、一部の方は重症化するリスクがあります。

重症化のサイン

以下のような症状が見られた場合は、急速に状態が悪化する可能性があるため、速やかに医療機関に連絡するか、救急車を呼ぶ必要があります。

顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている場合は、酸素が十分に体に行き渡っていない可能性があります。

息が荒くなった、呼吸をするのが苦しい、少し動いただけで息切れがするといった呼吸困難の症状も危険なサインです。

胸の痛みがある場合や、横になれない、座らないと息ができない状態も要注意です。

意識がもうろうとする、ぼんやりしている、反応が鈍い場合も、すぐに医療機関への連絡が必要です。

脈が触れにくい、脈が不規則である、頻脈(脈が速い)などの循環器症状も重症化のサインの可能性があります。

重症化リスク因子

以下の要因を持つ方は、重症化のリスクが高いことがわかっています。

年齢は重要な要因で、特に65歳以上の高齢者は重症化リスクが高まります。30歳代を基準とすると、60歳代で25倍、70歳代で47倍、80歳代で71倍、90歳代で78倍と、年齢が上がるにつれてリスクが顕著に上昇します。

基礎疾患として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性呼吸器疾患、糖尿病、高血圧、心血管疾患、脳血管疾患、慢性腎臓病、肥満(BMI 30以上)、がんなどを持つ方もリスクが高くなります。

免疫抑制状態にある方、例えば臓器移植後や免疫抑制剤を使用している方、HIV感染症の方なども注意が必要です。

妊娠中の方、特に妊娠後期の方も重症化リスクがあるとされています。

喫煙習慣がある方も、リスクが高まることが報告されています。

また、男性の方が女性よりも重症化しやすい傾向があることもわかっています。

これらのリスク因子を持つ方は、症状が現れた際には早めにかかりつけ医などに相談することが推奨されます。

罹患後症状(後遺症)について

新型コロナウイルス感染症から回復した後も、様々な症状が続くことがあり、これを罹患後症状または後遺症と呼びます。

後遺症の定義

厚生労働省の定義によると、罹患後症状とは「新型コロナウイルスに罹患した後に、感染性は消失したにもかかわらず、他に原因が明らかでなく、罹患してすぐの時期から持続する症状、回復した後に新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる症状の全般」を指します。

世界保健機関(WHO)は、「新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2か月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないもの。通常はCOVID-19の発症から3か月経った時点にもみられる」としています。

主な後遺症の症状

最も多く報告されている症状が倦怠感です。「以前のように動けない」「すぐに疲れてしまう」といった症状が続くことがあります。

呼吸困難感や息切れも多く見られます。階段を上る、少し歩くなどの軽い運動でも息が切れやすくなることがあります。

筋力低下により、日常生活の動作が以前よりも困難になることがあります。

集中力の低下や記憶力の低下、いわゆる「ブレインフォグ」と呼ばれる症状も報告されています。考えがまとまらない、物忘れが増えたといった症状です。

その他、咳が長引く、頭痛、胸痛、動悸、脱毛、嗅覚・味覚障害、不眠、抑うつ気分など、多岐にわたる症状が報告されています。

後遺症の頻度と経過

罹患後症状の発生頻度については、研究によって定義や調査手法が異なるため、正確な数値は不明ですが、感染者の約6~20%に何らかの後遺症が発生するという報告があります。

多くの場合、時間の経過とともに症状は改善していきますが、症状が残存する方も一定数いらっしゃいます。症状の持続期間や程度には個人差が大きく、数か月で改善する方もいれば、1年以上症状が続く方もいらっしゃいます。

高齢の方、女性、感染時の症状が重かった方は、後遺症のリスクが高いとされています。ワクチンを2回以上接種した方は、罹患後症状を発症するリスクが有意に低かったという報告もあります。

後遺症への対応

罹患後症状に特化した治療方法は確立されておらず、現在も研究が進められています。現時点では、各症状に応じた対症療法が中心となります。

症状が長引く場合や、日常生活に支障をきたすほど症状が強い場合は、かかりつけ医や地域の医療機関に相談することが大切です。症状によっては、他の疾患が隠れている可能性もあるため、適切な診察と検査が必要です。

予防と対策

新型コロナウイルス感染症を予防するためには、基本的な感染対策を継続することが重要です。

手洗い

最も基本的で効果的な予防策です。外出から帰った時、食事の前、トイレの後など、こまめに石けんを使って手を洗いましょう。手洗いは30秒以上、指の間、爪の周り、手首までしっかりと洗うことが推奨されます。

流水と石けんでの手洗いができない場合は、アルコール濃度70%以上のアルコール消毒液を使用することも効果的です。

マスクの着用

マスク着用については個人の判断に委ねられていますが、以下のような場面ではマスク着用が効果的です。

医療機関を受診する時は、他の患者様や医療従事者への感染を防ぐためにマスクを着用しましょう。

高齢者施設や病院を訪問する時も、重症化リスクの高い方を守るためにマスク着用が推奨されます。

通勤ラッシュ時など混雑した電車やバスに乗車する時も、マスク着用が効果的です。

自身に症状がある場合は、周囲への感染を防ぐためにマスクを着用することが重要です。

マスクは不織布マスクの使用が推奨されており、鼻と口を完全に覆い、隙間ができないように正しく装着することが大切です。

換気

室内の換気も重要な予防策です。2方向の窓を開けて、1時間に数回、数分間の換気を行いましょう。換気が十分にできない場合は、空気清浄機やサーキュレーターを使用することも効果的です。

三密の回避

密閉空間、密集場所、密接場面の三密を避けることも大切です。特に、換気の悪い密閉空間で多くの人が密集し、近距離で会話や発声をする場面は感染リスクが高くなります。

ワクチン接種

ワクチン接種は、重症化予防に効果があることが確認されています。特に高齢者や基礎疾患のある方には、定期的な接種が推奨されています。

ワクチン接種により、感染そのものを完全に防ぐことはできませんが、感染した場合の重症化リスクを大きく減らすことができます。また、後遺症の発生リスクも低減させる可能性が報告されています。

体調管理

日頃から健康的な生活習慣を心がけることも、感染予防や重症化予防につながります。

十分な睡眠を取り、バランスの取れた食事を摂り、適度な運動を行うことで、免疫力を維持することができます。

過度なストレスは免疫力を低下させる可能性があるため、適度にリラックスする時間を持つことも大切です。

早期発見・早期対応

少しでも体調に異変を感じたら、無理をせず休息を取り、必要に応じて医療機関に相談することが、感染拡大の防止と自身の健康を守ることにつながります。

まとめ

新型コロナウイルス感染症は、2025年現在も私たちの生活と密接に関わり続けている感染症です。感染症法上の分類が5類に移行し、行動制限は緩和されましたが、ウイルスが消滅したわけではなく、依然として注意が必要です。

初期症状として最も多いのは、喉の痛み、発熱、咳、倦怠感などで、これらは風邪やインフルエンザと非常に似ています。症状だけで新型コロナウイルス感染症を他の疾患と区別することは困難であり、確実な診断には医療機関での検査が必要です。

2025年現在主流となっているNB.1.8.1株(ニンバス)などの変異株では、特に強い喉の痛みが特徴的で、消化器症状を伴うケースも多く報告されています。

感染が疑われる症状が現れた場合は、他者との接触を避け、医療機関に事前連絡の上で受診することが推奨されます。軽症の場合は自宅療養となりますが、十分な休息と水分補給、症状に応じた対症療法が基本となります。

高齢者や基礎疾患のある方は重症化リスクが高いため、症状が現れた際には早めの医療機関への相談が大切です。また、息苦しさや意識障害などの重症化のサインが見られた場合は、速やかに救急対応が必要です。

感染から回復した後も、倦怠感や呼吸困難感などの後遺症が残ることがあります。症状が長引く場合は、医療機関に相談し、適切な対応を受けることが大切です。

予防対策としては、手洗い、適切な場面でのマスク着用、換気、三密の回避などの基本的な感染対策を継続することが重要です。また、ワクチン接種は重症化予防に効果があるため、特に重症化リスクの高い方には定期的な接種が推奨されます。

新型コロナウイルス感染症は「終わった病気」ではありません。しかし、適切な知識を持ち、基本的な感染対策を継続し、症状が現れた際には適切に対応することで、多くの方が回復されています。過度に恐れる必要はありませんが、油断せず、自身と周囲の健康を守る行動を心がけることが大切です。

参考文献

  1. 厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
  2. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A
  3. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の国内発生状況等について
  4. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.1版」
  5. 国立感染症研究所「新型コロナウイルス(COVID-19)関連情報」

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
PAGE TOP
電話予約
0120-140-144
1分で入力完了
簡単Web予約