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はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、発熱や咳、倦怠感などの呼吸器症状が広く知られていますが、実は消化器症状、特に下痢も重要な症状の一つとして注目されています。多くの方が「コロナで下痢になることがあるの?」と疑問に思われるかもしれません。

実際、新型コロナウイルスに感染した方の中には、下痢や腹痛などの消化器症状を経験する方が少なくありません。場合によっては、発熱や咳などの典型的な症状よりも先に下痢症状が現れることもあり、診断を難しくする要因となっています。

この記事では、アイシークリニック東京院が、新型コロナウイルス感染症における下痢症状について、その発生メカニズムから具体的な対処法まで、医学的根拠に基づいて詳しく解説いたします。コロナと下痢の関係を正しく理解することで、適切な対応と早期の回復につながることを願っています。

新型コロナウイルスと下痢症状の関係

消化器症状は決して珍しくない

世界保健機関(WHO)は当初、下痢や腹痛などの消化器症状を「あまり一般的ではない症状」としていました。しかし、実際の臨床現場からの報告や研究データを見ると、状況は異なります。

新型コロナウイルス感染者における消化器症状の発生頻度は、研究によって15〜50%と幅がありますが、決して稀な症状ではないことが明らかになっています。特に下痢症状については、感染者の約40%に認められたという報告もあり、発熱や咳に次いで多い症状の一つと言えるでしょう。

下痢が最初の症状となることも

注目すべき点は、下痢が新型コロナウイルス感染症の初発症状となるケースがあることです。中国・武漢で実施された調査では、比較的軽症だった患者206人のうち、19.4%の方が下痢を最初の症状として経験していました。また、全体の57%に消化器系の症状が見られ、これらの症状は平均5.4日間続いたと報告されています。

別の研究では、新型コロナウイルス感染症患者204人のうち、約18.6%の方が腹痛、下痢、嘔吐などの消化器症状を経験していました。消化器症状があった患者では、症状のない患者に比べて肝酵素値が高く、血液検査の結果に特徴的な変化が見られたことも報告されています。

さらに重要なのは、呼吸器症状が全く現れずに消化器症状だけを訴える患者も存在することです。日本消化器病学会によると、消化器症状を主訴に来院してCOVID-19と診断された例も約3%認められたとされています。このような場合、通常の胃腸炎との鑑別が難しく、診断が遅れる可能性があるため注意が必要です。

なぜ新型コロナウイルスで下痢が起こるのか

ACE2受容体の役割

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が人体に感染する際、ウイルス表面にある突起状のスパイクたんぱく質が、私たちの細胞表面にある「ACE2受容体」という入り口に結合することで感染が成立します。

東京都医学総合研究所の報告によると、このACE2受容体は呼吸器系の肺胞細胞だけでなく、腸上皮細胞、内皮細胞、眼や腎臓の上皮細胞など、体内の様々な場所に広く分布していることが明らかになっています。

特に注目すべきは、腸管におけるACE2受容体の分布です。ACE2受容体は肺よりも腸管、特に小腸や大腸に多く分布しており、大腸のACE2 mRNAレベルは肺の約300倍高いという報告もあります。このため、新型コロナウイルスは腸管の細胞に直接感染し、消化器症状を引き起こすことができるのです。

腸内環境の変化

新型コロナウイルスが腸管に感染すると、腸内環境に大きな変化が生じます。ウイルスは腸管上皮細胞に侵入し、細胞を破壊したり機能を障害したりします。これにより、腸管での水分吸収が妨げられたり、腸の動きが異常になったりすることで下痢が発生します。

興味深い研究として、新型コロナウイルスに罹患した方の腸内環境を調査したところ、感染から回復した後も長期間にわたって腸内環境の変化が続いていることが分かりました。罹患後半年経っても腸内にウイルスの断片(スパイク、エンベロープ、カプシドなどのコロナウイルスの構成成分)が残っていることがあり、これが免疫応答の異常と関係している可能性が指摘されています。

炎症反応と免疫系の影響

新型コロナウイルス感染によって、体内では免疫系が活性化し、様々な炎症性物質(サイトカイン)が産生されます。これらの物質が腸管に影響を与え、腸の動きを変化させたり、腸粘膜に炎症を引き起こしたりすることで、下痢や腹痛などの症状が現れることがあります。

重症例では、免疫系の過剰反応によるサイトカインストームが起こることがあり、これが多臓器障害の原因となります。消化器系も例外ではなく、このような全身性の炎症反応が消化器症状を悪化させる要因となり得ます。

新型コロナウイルスによる下痢症状の特徴

下痢の性状と程度

新型コロナウイルスによる下痢は、水様性の下痢であることが多く、「水下痢だけが続く」という訴えをよく聞きます。一般的な食中毒や感染性胃腸炎と似た症状を呈するため、症状だけでは区別がつきにくいことがあります。

下痢の程度は個人差が大きく、軽度の軟便程度から、頻回の水様便まで様々です。重症者、軽症者ともに下痢症状が報告されており、症状の重症度と消化器症状の強さは必ずしも比例しません。

症状の持続期間

新型コロナウイルスによる下痢や腹痛、嘔吐などの消化器症状は、通常4〜5日で改善することが多いとされています。症状が長引いた場合でも、多くは約1週間で回復します。

ただし、これは急性期の症状についての話であり、後述する罹患後症状(いわゆる後遺症)として下痢が続く場合は、より長期間にわたって症状が持続することがあります。

発症のタイミング

下痢症状は新型コロナウイルスを発症してから早期に現れることが多いとされています。前述のように、発熱や咳などの典型的な症状に先行して下痢が出現することもあります。

一方で、回復期に入ってからいきなり下痢になるケースも少なくありません。呼吸器症状が改善した後に消化器症状が出現することもあるため、症状が一旦改善した後も注意が必要です。

下痢以外の消化器症状

新型コロナウイルス感染症では、下痢以外にも様々な消化器症状が現れることがあります。

悪心・嘔吐

吐き気や嘔吐も比較的よく見られる症状です。これらの症状は下痢と同時に現れることもあれば、単独で現れることもあります。脱水のリスクを高めるため、特に注意が必要な症状です。

腹痛

腹痛は下痢に伴って現れることが多いですが、時には強い腹痛が主症状となることもあります。腸管の炎症や腸の動きの異常によって引き起こされます。

食欲不振

多くの患者さんが食欲不振を経験します。これは消化器症状だけでなく、全身の倦怠感や発熱なども関係しています。適切な栄養摂取ができないことで、回復が遅れる可能性もあります。

味覚・嗅覚障害との関連

新型コロナウイルス感染症の特徴的な症状である味覚・嗅覚障害は、間接的に消化器症状に影響を与えることがあります。味やにおいを感じにくくなることで食欲が低下し、栄養状態の悪化につながることがあります。

罹患後症状(後遺症)としての下痢

罹患後症状とは

厚生労働省によると、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)とは、COVID-19に罹患した後に、感染性は消失したにもかかわらず、他に原因が明らかでなく、以下のいずれかの状態を指します。

  1. 罹患してすぐの時期から持続する症状
  2. 回復した後に新たに出現する症状
  3. 症状が消失した後に再び生じる症状

世界保健機関(WHO)は、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に罹患した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないもの。通常はCOVID-19の発症から3ヵ月経った時点にもみられる」と定義しています。

下痢・腹痛も罹患後症状の一つ

厚生労働省が公表している代表的な罹患後症状には、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などが含まれています。

つまり、下痢や腹痛は急性期だけでなく、罹患後症状としても現れる可能性があるのです。これは、前述した腸内環境の変化が長期間持続することや、ウイルスの断片が腸内に残存することと関連していると考えられています。

罹患後症状の経過

罹患後症状の多くは、時間経過とともに症状が改善することが多いとされています。腸内にウイルスの残骸が存在する場合でも、時間とともにそれらは徐々に排除されていくため、後遺症もゆっくりと改善していくと考えられています。

ただし、症状が残存する方も一定程度いるという結果も報告されており、個人差が大きいのが実情です。症状が改善せずに持続する場合は、他の疾患による症状の可能性もあるため、医療機関での相談が推奨されます。

診断と検査

新型コロナウイルス感染症の診断

下痢症状がある場合に新型コロナウイルス感染症を疑うポイントとしては、以下のような点が挙げられます。

  1. 発熱や咳、倦怠感などの呼吸器症状を伴う
  2. 味覚・嗅覚障害がある
  3. 新型コロナウイルス感染者との接触歴がある
  4. 流行地域への渡航歴や滞在歴がある

ただし、これらの症状がなくても新型コロナウイルス感染症である可能性は否定できません。特に消化器症状のみを呈する場合は、診断が難しくなります。

検査方法

新型コロナウイルス感染症の診断には、主に以下の検査が用いられます。

抗原定性検査

現在最も一般的に使用されている検査方法です。自宅でも実施可能で、15分程度で結果が分かります。ドラッグストアや薬局、インターネット通販などで抗原定性検査キットを購入できます。

注意点として、「抗原定性検査キット」と「抗体検査キット」を間違えないようにすることが重要です。WHOは抗体検査キットについて「診断目的として単独で用いることは推奨しない」としています。

PCR検査

鼻咽頭ぬぐい液や唾液などを採取し、ウイルスの遺伝子を検出する検査です。抗原検査よりも高感度ですが、結果が出るまでに時間がかかります。

便からのウイルス検出

新型コロナウイルスは便中からも検出されることが明らかになっています。咽頭でウイルスが検出されなくなった後も、腸管や便中にウイルスが残っているケースが報告されています。これは、PCR検査が一旦陰性になったのに再陽性になったり、何度検査しても陰性にならない人がいる理由の一つと考えられています。

他の疾患との鑑別

下痢症状は様々な原因で起こるため、新型コロナウイルス感染症以外の疾患との鑑別が重要です。

主な鑑別疾患としては以下が挙げられます。

  1. 急性胃腸炎(細菌性、ウイルス性)
  2. 食中毒
  3. 過敏性腸症候群
  4. 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
  5. 薬剤性下痢
  6. その他の感染症

特に夏季には食中毒による細菌性胃腸炎が増加するため、新型コロナウイルス感染症との鑑別が必要になります。

新型コロナウイルスによる下痢の治療とホームケア

基本的な治療方針

新型コロナウイルスによる下痢や腹痛に対する治療は、基本的に対症療法が中心となります。罹患後症状に特化した治療方法は現時点では確立されておらず、各症状に応じた対症療法が行われます。

下痢止めの使用について

重要なポイントとして、新型コロナウイルス感染による下痢の場合、安易に下痢止めを使用することは推奨されません。

その理由は以下の通りです。

  1. 下痢止めを使用すると、体内のウイルスや病原体を腸内にとどめてしまう
  2. ウイルスが体内に長く留まることで、症状が長引いたり悪化したりする可能性がある
  3. 下痢は、体がウイルスを排出しようとする防御反応の一つである

そのため、基本的には便とともにウイルスを体の外に出すことを優先します。下痢の程度が強くない場合は、下痢止めを使わずに経過を見ることが推奨されます。

ただし、症状が非常につらい場合や日常生活に大きな支障をきたす場合は、医師に相談して適切な判断を受けることが大切です。

整腸剤の使用

新型コロナウイルスによる下痢や腹痛に対して、医療機関で処方される薬剤としては、整腸剤の組み合わせが多い傾向にあります。整腸剤は腸内環境を整え、腸の機能回復を助けることで、症状の改善を促します。

その他の対症療法

腹痛や吐き気の症状がひどい場合には、医師の判断により、それらの症状を和らげる薬が処方されることもあります。症状の程度や患者さんの状態に応じて、適切な薬剤が選択されます。

ホームケアの重要性

自宅療養中の方、または症状が軽度の方のために、以下のホームケアが重要です。

水分補給

下痢や嘔吐がある場合、脱水のリスクが高まります。こまめな水分補給が非常に重要です。

推奨される水分補給方法:

  • 経口補水液(OS-1、アクアライトORS など)を少量ずつ頻回に摂取する
  • スポーツドリンクも利用可能ですが、糖分が多いため希釈して飲むのも一つの方法
  • 常温または人肌程度の温度のものが腸への刺激が少ない
  • 一度に大量に飲むのではなく、少量ずつ分けて飲む

脱水の兆候(口の渇き、尿量の減少、尿の色が濃い、頭痛、めまいなど)に注意し、脱水が疑われる場合は速やかに医療機関を受診してください。

食事の工夫

胃腸に優しい食事を心がけることが大切です。

推奨される食事:

  • お粥やうどんなど、消化しやすい炭水化物
  • バナナ、リンゴ(すりおろし)などの果物
  • スープや味噌汁(具は小さく切ったもの)
  • 豆腐や白身魚など、脂肪の少ないたんぱく質

避けるべき食品:

  • 脂っこい食品(揚げ物、脂身の多い肉など)
  • 刺激の強い香辛料
  • カフェインやアルコール
  • 冷たすぎる食べ物や飲み物
  • 繊維質の多すぎる食品(下痢がひどい時期)

体力維持のために栄養バランスも意識しながら、無理のない範囲で食事を摂ることが重要です。食欲がない場合は、無理に食べる必要はありませんが、水分だけは必ず摂取するようにしてください。

休息と睡眠

十分な休息と睡眠は、免疫機能を高め、回復を促進します。下痢症状があるときは、無理をせず安静にすることが大切です。

衛生管理

新型コロナウイルスは便中にも排出されるため、トイレの後の手洗いを徹底することが重要です。

衛生管理のポイント:

  • トイレの後は必ず石けんで手洗いをする(20秒以上)
  • アルコール消毒も併用する
  • トイレを流す際は蓋を閉めてから流す(飛沫の拡散防止)
  • トイレのドアノブや便座、水洗レバーなどをこまめに消毒する
  • タオルの共用を避ける

いつ医療機関を受診すべきか

緊急で受診が必要な症状

以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶ必要があります。

  1. 呼吸困難や息切れが強い
  2. 発話や可動性の喪失、または混乱
  3. 胸痛
  4. 唇や顔が青白い(チアノーゼ)
  5. 意識レベルの低下
  6. 激しい腹痛が持続する
  7. 血便や黒色便が見られる
  8. 頻回の嘔吐で水分が全く摂取できない
  9. 尿量が著しく減少している(脱水の徴候)
  10. 高熱(38.5度以上)が続く

相談を検討すべき状況

以下のような場合は、医療機関への相談を検討してください。

  1. 下痢が1週間以上続いている
  2. 症状が改善せずに持続または悪化している
  3. 脱水症状が見られる(強い口渇、めまい、立ちくらみなど)
  4. 基礎疾患がある(糖尿病、心疾患、呼吸器疾患など)
  5. 免疫抑制薬を使用している
  6. 高齢者や妊婦の方
  7. 乳幼児や小児の場合

受診時の注意点

医療機関を受診する際は、以下の点に注意してください。

  1. 事前に電話で連絡する:発熱や下痢症状があることを伝え、受診方法について相談する
  2. マスクを着用する:感染拡大防止のため
  3. 公共交通機関の利用を避ける:可能な限り自家用車や徒歩で移動する
  4. 症状の経過をメモしておく:いつから、どのような症状が、どの程度あるかを記録しておくと診察がスムーズ

2023年5月以降、新型コロナウイルス感染症は5類感染症に分類され、一般の診療所でも診療が可能となりました。かかりつけ医がいる場合は、まずそちらに相談することをお勧めします。

感染予防と注意点

基本的な感染予防対策

新型コロナウイルス感染症の主な感染経路は、飛沫感染、接触感染、そして換気の悪い環境での空気感染です。しかし、糞便も感染経路の一つと考えられているため、消化器症状がある場合は特に注意が必要です。

標準的な予防対策

  1. 手洗いの徹底:石けんで20秒以上洗う、特にトイレの後は必須
  2. 手指消毒:アルコール消毒液の使用
  3. マスクの着用:感染リスクの高い場所では引き続き推奨
  4. 換気:定期的な室内の換気
  5. ソーシャルディスタンス:人混みを避ける
  6. うがい:帰宅後のうがい

トイレでの感染予防

便中にウイルスが排出されることを考慮し、以下の点に特に注意してください。

  1. トイレ使用後の手洗いを徹底する
  2. トイレを流す際は必ず蓋を閉める
  3. トイレの清掃・消毒をこまめに行う
  4. 同居家族がいる場合は、できれば別のトイレを使用する
  5. タオルの共用を避ける
  6. ハンドドライヤーの使用を避ける(飛沫を拡散させる可能性があるため)

家庭内感染の予防

下痢症状がある場合、家庭内での感染リスクが高まります。

家庭内感染予防のポイント:

  1. 可能な限り個室で過ごす
  2. 共有スペースの使用は最小限にする
  3. 食器やタオル、寝具を共用しない
  4. 部屋の換気を定期的に行う
  5. 症状のある方が触れた場所を消毒する
  6. ゴミは密閉して捨てる
  7. 洗濯物は別にするか、消毒してから洗う

再感染の予防

新型コロナウイルス感染症は再感染の可能性があります。一度感染したからといって油断せず、引き続き感染予防対策を継続することが重要です。

また、ワクチン接種は重症化予防に有効とされているため、接種機会がある場合は検討することをお勧めします。

よくある質問

Q1. 下痢だけの症状でも新型コロナウイルス感染症の可能性はありますか?

はい、あります。発熱や咳などの典型的な症状がなく、下痢症状のみを呈する方も報告されています。実際、症状の軽い方の中には、下痢のみを経験する方が約5%いるという報告もあります。
下痢症状がある場合は、新型コロナウイルス感染の可能性を念頭に置き、人との接触を避け、検査を受けることを検討してください。

Q2. 新型コロナウイルスによる下痢と通常の下痢の違いは?

症状だけでは明確に区別することは難しいですが、以下のような点が参考になります。
新型コロナウイルスによる下痢の特徴:

水様性の下痢が多い
4〜5日程度続くことが多い(長くて1週間程度)
他の症状(発熱、倦怠感、味覚・嗅覚障害など)を伴うことがある
感染者との接触歴や流行状況との関連がある

ただし、確実な診断には検査が必要です。

Q3. 市販の下痢止めを使ってもいいですか?

基本的には、新型コロナウイルス感染による下痢の場合、下痢止めの使用は推奨されません。下痢止めを使うと、ウイルスが体内に留まってしまい、症状が長引いたり悪化したりする可能性があります。

ただし、症状が非常につらい場合や、血便、発熱、味覚・嗅覚異常などの特徴的な症状がない場合は、医師や薬剤師に相談の上、適切に使用することは可能です。自己判断での使用は避け、必ず専門家に相談してください。

Q4. いつまで他の人にうつる可能性がありますか?

新型コロナウイルスは便中からも検出されるため、下痢症状がある間は感染力がある可能性があります。一般的には、症状が現れてから7〜10日程度は他の人にうつす可能性があるとされています。

便中のウイルスは、咽頭でウイルスが検出されなくなった後も残っていることがあるため、症状が改善した後も数日間は注意が必要です。

Q5. 新型コロナウイルス感染後、いつまで下痢が続くことがありますか?

急性期の下痢症状は通常4〜5日、長くても1週間程度で改善することが多いです。

ただし、罹患後症状(後遺症)として、より長期間下痢や腹痛が続くことがあります。症状が2ヵ月以上持続する場合は、罹患後症状の可能性があります。時間とともに改善することが多いですが、症状が改善せずに持続する場合は、医療機関での相談が推奨されます。

Q6. 子どもや高齢者の場合、特に気をつけることはありますか?

乳幼児、小児、高齢者は脱水になりやすいため、特に注意が必要です。

注意すべきポイント:

  • こまめな水分補給を心がける
  • 尿の量や回数を観察する
  • 皮膚の張りや口の湿り具合をチェックする
  • ぐったりしていないか、意識レベルに変化がないか注意する
  • 症状が悪化する場合は早めに医療機関を受診する

また、高齢者や基礎疾患のある方は重症化リスクが高いため、より慎重な対応が求められます。

まとめ

新型コロナウイルス感染症における下痢症状について、重要なポイントをまとめます。

  1. 新型コロナウイルス感染症で下痢症状が現れることは決して珍しくなく、感染者の15〜50%に消化器症状が見られます。
  2. ウイルスが腸管のACE2受容体に結合することで、直接的に腸管に感染し、下痢などの消化器症状を引き起こします。
  3. 下痢が最初の症状として現れることもあり、呼吸器症状がなく消化器症状のみを呈する場合もあるため、注意が必要です。
  4. 新型コロナウイルスによる下痢の場合、基本的には下痢止めの使用は推奨されず、ウイルスを体外に排出することを優先します。
  5. 水分補給と適切な食事、十分な休息が回復のために重要です。特に脱水に注意し、経口補水液などでこまめに水分を摂取してください。
  6. 便中にもウイルスが排出されるため、トイレの後の手洗いを徹底し、衛生管理に十分注意することが感染拡大防止につながります。
  7. 罹患後症状(後遺症)として、長期間下痢や腹痛が続くことがあります。時間とともに改善することが多いですが、症状が持続する場合は医療機関に相談してください。
  8. 症状が重い場合、改善しない場合、脱水の兆候がある場合などは、速やかに医療機関を受診することが重要です。

新型コロナウイルス感染症は、呼吸器疾患としての側面だけでなく、消化器系を含む全身性の疾患として理解することが大切です。下痢症状についても正しい知識を持ち、適切に対応することで、早期回復と感染拡大の防止につながります。

症状や対応方法について不安がある場合は、一人で悩まず、医療機関に相談することをお勧めします。

参考文献

  1. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A」
  2. 日本消化器病学会「健康情報誌『消化器のひろば』No.18-3」
  3. 東京都医学総合研究所「新型コロナウイルスの症状の多様性とウイルスの受容体の関係」
  4. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第3.1版)」
  5. 富山県「新型コロナウイルスの後遺症について」
  6. 静岡県公式ホームページ「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について」
  7. 新潟県ホームページ「新型コロナウイルス感染症のいわゆる後遺症(罹患後症状)について」
  8. 山形県「新型コロナウイルス感染症罹患後症状(後遺症)について」

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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