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「最近、シミが気になるようになってきた」「肝斑をなんとかしたい」——そんなお悩みをお持ちの方にとって、トラネキサム酸という成分は非常に心強い味方となり得ます。もともとは医療現場で止血剤や抗炎症薬として使われてきたこの成分が、なぜ今、美容分野でこれほど注目を集めているのでしょうか。

トラネキサム酸は2002年に厚生労働省から美白有効成分として正式に認可を受けて以降、医薬品から化粧品まで幅広い製品に配合されるようになりました。特に、従来のシミ治療では対応が難しかった「肝斑」への効果が認められたことで、美容皮膚科の現場でも欠かせない存在となっています。

本記事では、トラネキサム酸の基本的な作用メカニズムから、内服薬・外用薬・美容施術での活用法、効果を実感するまでの期間、そして安全に使用するための注意点まで、幅広く解説いたします。美白ケアやシミ治療を検討されている方にとって、確かな情報をお届けできれば幸いです。


目次

  1. トラネキサム酸とは
  2. トラネキサム酸の美白効果とメカニズム
  3. トラネキサム酸が効果を発揮するシミの種類
  4. トラネキサム酸の摂取方法と使用形態
  5. 効果が現れるまでの期間と継続の重要性
  6. トラネキサム酸と相性の良い成分・治療法
  7. 副作用と注意すべきポイント
  8. 市販薬と処方薬の違い
  9. 美容皮膚科での治療について
  10. よくある質問
  11. まとめ

1. トラネキサム酸とは

トラネキサム酸(Tranexamic Acid)は、1962年に日本で開発された人工合成のアミノ酸です。化学的には「trans-4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸」という名称を持ち、必須アミノ酸であるリシンをもとに人工的に合成されました。

開発の歴史と医療での使用

トラネキサム酸はもともと、出血を止める「止血剤」として開発されました。血液中にはプラスミンという酵素があり、これは血液を固まりにくくする作用を持っています。トラネキサム酸はこのプラスミンの働きを抑える「抗プラスミン作用」を持つため、止血効果を発揮します。

医療現場では長らく以下のような用途で使用されてきました。

まず、外科手術時の止血や、月経過多の治療といった出血に関連する症状への対応があります。また、風邪による喉の腫れや痛み、口内炎、扁桃炎などの炎症症状の緩和にも用いられてきました。さらに、じんましんや湿疹といったアレルギー症状の治療にも処方されることがあります。

美容分野への応用

トラネキサム酸が美容分野で注目されるようになったのは1990年代に入ってからです。炎症を抑える薬として使用していた患者のシミや肝斑が改善したことがきっかけとなり、研究が進められました。

1995年には厚生労働省により「肌荒れを防ぐ成分」として、2002年には「シミの改善に効果のある美白有効成分」として認可を受けました。さらに2007年には、肝斑改善のための一般用医薬品(市販薬)が発売され、多くの方が手軽にトラネキサム酸を取り入れられるようになりました。

現在では、内服薬はもちろんのこと、化粧水や美容液、クリームといったスキンケア製品にも広く配合されています。美容皮膚科ではイオン導入や水光注射などの施術にも活用されており、美白ケアの中核を担う成分として確固たる地位を築いています。


2. トラネキサム酸の美白効果とメカニズム

トラネキサム酸が美白効果を発揮するメカニズムは、従来の美白成分とは大きく異なります。ビタミンC誘導体やアルブチンといった多くの美白成分が「チロシナーゼ」という酵素を抑えることでメラニン生成を阻害するのに対し、トラネキサム酸はより上流の段階でメラニン生成をブロックします。

メラニン生成のメカニズム

シミができる過程を理解するために、まずメラニン生成のメカニズムを確認しておきましょう。

私たちの肌が紫外線を浴びると、表皮の角化細胞(ケラチノサイト)が刺激を受けます。すると、「プラスミン」や「プロスタグランジン」といった情報伝達物質が放出されます。これらの物質は、メラニンを作り出す細胞である「メラノサイト」に「メラニンを作れ」という指令を送ります。

指令を受けたメラノサイトは活性化し、チロシナーゼという酵素の働きによってメラニン色素を生成します。このメラニンが肌に蓄積することで、シミやくすみとなって現れるのです。

トラネキサム酸の作用ポイント

トラネキサム酸は、メラニン生成の「指令段階」に作用します。具体的には、プラスミンの前駆体である「プラスミノーゲン」がプラスミンへと変換されるのを阻害します。

プラスミンの働きが抑えられると、メラノサイトへの「メラニンを作れ」という指令自体が届きにくくなります。つまり、メラニン生成の初期段階でシグナルを遮断することで、シミの発生を根本から防ぐことができるのです。

この作用メカニズムには、いくつかの利点があります。

第一に、シミの予防だけでなく、すでにできてしまったシミの改善にも効果が期待できる点です。メラノサイトの活性化が継続的に抑えられることで、色素沈着している部位のメラニン生成も徐々に低下し、肌のターンオーバーとともにシミが薄くなっていきます。

第二に、炎症を抑える作用があるため、紫外線ダメージによる肌の炎症を鎮め、それに伴うシミの悪化を防ぐことができます。肝斑のように炎症が関与するタイプのシミに特に効果的とされる理由も、ここにあります。

第三に、刺激性が低いため、敏感肌の方でも比較的使いやすいという特徴があります。ハイドロキノンなど一部の美白成分では肌への刺激が問題になることがありますが、トラネキサム酸は肌への負担が少ない成分として知られています。


3. トラネキサム酸が効果を発揮するシミの種類

一口に「シミ」といっても、その原因や特徴によっていくつかの種類に分類されます。トラネキサム酸はすべてのシミに同等の効果を発揮するわけではなく、特に効果が期待できるタイプとそうでないタイプがあります。

肝斑(かんぱん)

肝斑は、トラネキサム酸が最も効果を発揮するシミのタイプです。30代から40代の女性に多く見られ、両頬を中心に左右対称にもやっとした茶色い色素沈着が現れるのが特徴です。額や口の周り、あごにできることもあります。

肝斑の発症には女性ホルモンの変動が関わっていると考えられており、妊娠中やピルの服用中に出現・悪化することがあります。また、紫外線や皮膚への摩擦刺激も悪化因子となります。

一般的なシミ(老人性色素斑)に対して有効なレーザー治療は、肝斑に対しては逆効果になることがあります。強いレーザー照射による刺激が肝斑を悪化させてしまうためです。このため、肝斑治療においてはトラネキサム酸の内服が第一選択の治療法として推奨されています。

日本皮膚科学会を含む5学会が共同で作成した「美容医療診療指針」においても、肝斑に対するトラネキサム酸の有効性が言及されており、遮光と美白剤外用に次ぐ治療法として位置づけられています。

老人性色素斑(日光黒子)

老人性色素斑は、いわゆる「シミ」として最も一般的なタイプです。主に紫外線の蓄積ダメージによって生じ、40歳以降に顔や手の甲、腕などの日光に当たりやすい部位に現れます。境界がはっきりとした褐色から黒褐色の斑点が特徴です。

このタイプのシミに対しても、トラネキサム酸は一定の効果を示します。ただし、単独での使用よりも、ビタミンC誘導体やレーザー治療など他の治療法との併用が推奨されることが多いです。

炎症後色素沈着

ニキビや傷、虫刺されなどの炎症が治った後に残る色素沈着です。肌の炎症によってメラノサイトが刺激され、メラニンが過剰に生成されることで起こります。

トラネキサム酸の抗炎症作用とメラニン生成抑制作用の両方が、このタイプの色素沈着に対して効果を発揮します。特に、美容施術後やレーザー治療後の色素沈着予防にも活用されています。

そばかす(雀卵斑)

そばかすは遺伝的な要因が大きく関与する色素斑で、幼少期から思春期にかけて現れることが多いです。トラネキサム酸による改善効果は限定的ですが、紫外線によるそばかすの悪化を予防する目的では一定の効果が期待できます。

太田母斑・真皮メラノサイトーシス

これらは真皮(皮膚の深い層)にメラニンが存在するタイプの色素沈着で、トラネキサム酸の効果は期待しにくいとされています。これらの治療には、Qスイッチレーザーなどのレーザー治療が適しています。


4. トラネキサム酸の摂取方法と使用形態

トラネキサム酸を美容目的で取り入れる方法は、大きく分けて「内服」「外用」「美容施術」の3つがあります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の目的や肌の状態に合った方法を選ぶことが大切です。

内服薬(飲み薬)

内服薬はトラネキサム酸を体の内側から取り入れる方法で、特に肝斑治療において最も効果的とされています。

医療機関で処方される場合、先発医薬品の「トランサミン」または後発医薬品(ジェネリック)の「トラネキサム酸錠」が用いられます。1錠あたり250mgまたは500mgの製剤があり、通常は1日750mg〜1500mgを2〜3回に分けて服用します。

トラネキサム酸は半減期(血中濃度が半分になるまでの時間)が1〜1.5時間と短いため、1日3回に分けて服用することで、血中濃度を安定させることが推奨されています。

市販薬としては「トランシーノII」(第一三共ヘルスケア)が代表的で、1日あたりトラネキサム酸750mgを摂取できます。ただし、市販薬は処方薬に比べて最大配合量が少なく設定されているため、より高い効果を求める場合は医療機関での処方を検討することをお勧めします。

なお、トラネキサム酸は食品から摂取することはできません。人工合成されたアミノ酸であるため、果物や野菜などの食品には含まれていないのです。

外用薬・スキンケア製品

トラネキサム酸を肌から取り入れる方法です。化粧水、美容液、クリームなど、さまざまなスキンケア製品に配合されています。

外用での使用は、内服に比べると成分の浸透が限定的なため、効果は比較的マイルドです。しかし、副作用のリスクが低く、毎日のスキンケアに取り入れやすいというメリットがあります。また、血栓症などの全身性の副作用を心配する必要がないため、内服が難しい方でも安心して使用できます。

トラネキサム酸配合の化粧品は「医薬部外品」として販売されており、「メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ」という効能効果が認められています。医薬部外品におけるトラネキサム酸の配合濃度は通常2%で申請されています。

外用と内服を併用する「ダブルケア」は、より効果的なアプローチとして多くの医療機関で推奨されています。内側からメラニン生成の指令を抑え、外側から肌表面の炎症を抑えることで、相乗効果が期待できます。

美容施術での活用

美容皮膚科では、より積極的にトラネキサム酸を肌に届けるための施術が行われています。

イオン導入は、微弱な電流を利用してトラネキサム酸を肌の深部まで浸透させる施術です。通常のスキンケアでは届きにくい真皮層にまで成分を届けることができ、外用だけでは得られない効果が期待できます。

水光注射は、トラネキサム酸を含む薬剤を皮膚に直接注入する施術です。ヒアルロン酸やビタミンCなどの成分と組み合わせることで、美白効果に加えて保湿やハリの改善なども同時に得られます。

局所注射は、肝斑や色素沈着が気になる部位に直接トラネキサム酸を注射する方法です。1cm程度の間隔で細い針を使って注射を行い、2〜4週間に1回のペースで3〜5回程度の治療が推奨されています。


5. 効果が現れるまでの期間と継続の重要性

トラネキサム酸は即効性のある成分ではありません。「飲み始めて1〜2週間で効果を実感したい」という期待には応えにくいのが実情です。効果を得るためには、正しい使用方法で継続することが何より大切です。

効果が現れるまでの目安

内服の場合、効果が現れ始める目安は一般的に4〜8週間とされています。肝斑に対する臨床研究では、8週間の服用で効果が認められ、さらに長期間継続することでより顕著な改善が見られたと報告されています。

効果の現れ方には個人差があり、これはいくつかの要因に左右されます。

第一に、肌のターンオーバー周期の違いがあります。健康な20代で約28日、30代で約40日、40代になると約55日とされており、年齢とともに周期は長くなります。トラネキサム酸でメラニン生成を抑えても、すでに生成されたメラニンが排出されるにはターンオーバーの周期を待つ必要があるのです。

第二に、シミの種類や症状の程度があります。肝斑は比較的効果が現れやすいですが、長年蓄積された濃いシミほど改善に時間がかかります。

第三に、生活習慣の影響も大きいです。紫外線対策が不十分だったり、肌をこすりすぎる習慣があったりすると、せっかくの効果が相殺されてしまいます。

継続の重要性と休薬について

トラネキサム酸は継続することで効果を発揮する成分です。不規則な服用や頻繁に飲み忘れると、十分な効果が得られません。

一方で、長期間の連続服用については慎重な意見もあります。2ヶ月を超える連続服用時のデータが十分でないことから、2ヶ月服用したら2〜4週間の休薬を推奨する医師もいます。服用期間や休薬については、必ず担当医師の指示に従うようにしてください。

また、トラネキサム酸の服用を中止すると、シミや肝斑が再発する可能性があります。これは、トラネキサム酸を使用しなくなるとプラスミンの働きが戻り、メラノサイトの活性化が再び起こるためです。

肝斑は寛解と増悪を繰り返す疾患であり、一度きれいになっても日常のケアを怠ると再発します。トラネキサム酸の内服で改善した後も、遮光の徹底と肌を刺激しない生活を継続することが重要です。再び肝斑が目立ってきた際には、トラネキサム酸の内服再開を検討しましょう。


6. トラネキサム酸と相性の良い成分・治療法

トラネキサム酸は単独でも効果がありますが、他の美白成分や治療法と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。それぞれが異なるメカニズムでメラニン生成に働きかけるため、多角的なアプローチが可能になります。

ビタミンC(アスコルビン酸)

ビタミンCはトラネキサム酸との併用で最も一般的な成分です。強い抗酸化作用を持ち、メラニンの生成を抑制するとともに、すでに酸化して黒くなったメラニンを還元(淡色化)する作用があります。

医療機関では「シナール」という製剤がよく処方されます。これはビタミンCにパントテン酸(ビタミンCの働きをサポートする成分)を配合したもので、トラネキサム酸との相乗効果でシミや肝斑の改善をサポートします。

外用としてはビタミンC誘導体配合の化粧品が多く市販されており、トラネキサム酸配合製品と組み合わせて使用することで、より効果的な美白ケアが可能です。

ハイドロキノン

ハイドロキノンは「肌の漂白剤」とも呼ばれる強力な美白成分で、チロシナーゼの働きを阻害してメラニン生成を強力に抑制します。

トラネキサム酸がメラニン生成の「指令段階」で作用するのに対し、ハイドロキノンは「生成段階」で作用するため、両者を併用することで異なる段階からメラニン生成をブロックできます。

ただし、ハイドロキノンは刺激性があるため、肝斑のような炎症が関与するシミには慎重な使用が必要です。トラネキサム酸の抗炎症作用と組み合わせることで、ハイドロキノンの刺激を軽減しながら美白効果を得るアプローチも行われています。

トレチノイン

トレチノインはビタミンA誘導体で、肌のターンオーバーを促進する作用があります。メラニンを含んだ古い角質の排出を早めることで、シミの改善を助けます。

ハイドロキノンとトレチノインを組み合わせた「Kligman処方」は肝斑治療のゴールドスタンダードとして知られており、これにトラネキサム酸の内服を組み合わせることで、より効果的な治療が可能になります。

ただし、トレチノインも刺激性があり、使用には注意が必要です。肝斑は炎症によって悪化することがあるため、外用薬による炎症が増強しないよう、医師の指導のもとで使用することが重要です。

ナイアシンアミド(ビタミンB3)

ナイアシンアミドは、メラニンがメラノサイトから角化細胞へ移動するのを抑制する作用があります。トラネキサム酸やビタミンCとは異なるメカニズムで働くため、相乗効果が期待できます。

肌のバリア機能を高める効果もあり、敏感肌の方でも使いやすい成分です。

レーザー・光治療との併用

肝斑以外のシミ(老人性色素斑など)に対しては、レーザー治療との併用が効果的です。レーザー治療後の炎症後色素沈着を予防する目的でトラネキサム酸を使用することもあります。

肝斑に対するレーザー治療は一般的に推奨されませんが、低フルエンスのQスイッチNd:YAGレーザー(レーザートーニング)を、遮光やトラネキサム酸内服などの保存的治療で十分な効果が得られない場合に併用することがあります。ただし、レーザートーニングには脱色素斑(白斑)のリスクがあるため、慎重な判断が必要です。


7. 副作用と注意すべきポイント

トラネキサム酸は比較的安全性の高い成分ですが、医薬品である以上、副作用のリスクがゼロではありません。正しく使用するために、知っておくべき注意点があります。

一般的な副作用

内服の場合、以下のような副作用がごくまれに報告されています。

消化器症状として、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、胸やけなどが挙げられます。皮膚症状としては、発疹やかゆみが生じることがあります。このほか、頭痛や倦怠感を感じる方もいらっしゃいます。

これらの症状が現れた場合は、服用を中止して医師に相談してください。

外用(スキンケア製品)の場合は、肌に塗る程度の量では全身性の副作用リスクは極めて低いとされています。ただし、肌に合わない場合は赤みやかゆみ、肌荒れなどが生じることがあります。異常を感じたら使用を中止し、症状が改善しない場合は皮膚科を受診しましょう。

血栓症のリスク

トラネキサム酸の最も重要な副作用として、血栓症のリスクがあります。

トラネキサム酸は止血作用を持つ薬であり、血液を固まりにくくするプラスミンの働きを抑えます。これは裏を返すと、「血液が固まりやすくなる」ということを意味します。

通常の用量で短期間使用する分には問題ありませんが、血栓ができやすい状態にある方は注意が必要です。

以下に該当する方は、トラネキサム酸を使用できない場合があります。

血栓性の疾患(脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症など)の既往がある方、または現在治療中の方は使用を控える必要があります。また、血栓を形成する可能性のある薬剤を併用している方も同様です。ピル(経口避妊薬)を服用中の方は、ピル自体に血栓リスクがあるため、トラネキサム酸との併用は避けるべきとされています。妊娠中や授乳中の方についても、安全性が十分に確立されていないため、使用は推奨されません。人工透析を受けている方は、けいれんなどの副作用が出る可能性があるため、使用が制限されます。

過剰摂取に注意

トラネキサム酸は風邪薬(のどの痛みを抑える薬)にも配合されていることがあります。美容目的でトラネキサム酸を服用している方が風邪薬を併用すると、知らないうちに過剰摂取になる恐れがあります。

市販薬を購入する際や、医療機関を受診する際は、トラネキサム酸を服用していることを必ず伝えてください。お薬手帳を活用することをお勧めします。

自己判断での長期服用を避ける

「効果があるから」「予防したいから」という理由で、自己判断で何ヶ月も飲み続けることは推奨されません。定期的に医師の診察を受け、効果や副作用をチェックしながら、必要に応じて休薬や治療方針の見直しを行うことが大切です。

3ヶ月ごとに効果を評価し、必要があれば休薬や他の治療への切り替えを検討することが望ましいとされています。


8. 市販薬と処方薬の違い

トラネキサム酸は、薬局やドラッグストアで購入できる市販薬と、医療機関で処方される処方薬の両方があります。どちらも同じトラネキサム酸を含んでいますが、いくつかの重要な違いがあります。

配合量の違い

最も大きな違いは、トラネキサム酸の配合量です。

市販薬の場合、1日あたりの最大摂取量は750mgに制限されています。これは、医師の診察なしに使用されることを考慮し、安全性を重視して設定されたものです。

一方、処方薬は1日あたり750mg〜2000mgの範囲で処方されることがあり、症状に応じてより高い用量を使用できます。肝斑の治療においては、1日1000〜1500mgの用量が用いられることもあります。

適応症の違い

市販薬のトランシーノIIは、「肝斑」に対してのみ効能効果が認められています。一方、処方薬のトランサミンは、止血、炎症、アレルギーなど幅広い適応を持っています。

ただし、処方薬を「肝斑」や「シミ」の治療目的で処方する場合は保険適用外(自費診療)となります。保険が適用されるのは、喉の炎症や出血などの適応症に対する処方の場合のみです。

その他の成分の違い

市販薬の多くは、トラネキサム酸以外にもビタミンCやL-システインなど、美白をサポートする成分が配合されています。これは手軽に複合的なケアができるというメリットがある一方、トラネキサム酸単体の効果を純粋に得たい場合には処方薬の方が適しています。

どちらを選ぶべきか

軽度の肝斑やシミの予防目的であれば、市販薬から始めてみるのも一つの選択肢です。手軽に入手でき、用法用量を守れば安全に使用できます。

しかし、以下のような場合は医療機関の受診をお勧めします。

まず、すでにできてしまったシミを根本的に治療したい場合です。処方薬の方が高い効果が期待でき、他の治療法との組み合わせも検討できます。次に、自分のシミが肝斑なのか、それとも他のタイプのシミなのか分からない場合は、正しい診断のもとで適切な治療を受けることが重要です。また、市販薬を2ヶ月程度使用しても効果が感じられない場合は、専門医の診察を受けて、より効果的な治療法を相談することをお勧めします。


9. 美容皮膚科での治療について

シミや肝斑の治療を本格的に行いたい場合は、美容皮膚科を受診することをお勧めします。医師の診察を受けることで得られるメリットは多くあります。

正確な診断

シミには様々な種類があり、それぞれ最適な治療法が異なります。肝斑と老人性色素斑の見分けがつきにくいケースも多く、自己判断で間違った対処をしてしまうこともあります。

特に肝斑は、他のシミと混在していることも珍しくありません。医師による診察では、ダーモスコピー(拡大鏡)などを使用して詳細に観察し、正確な診断を下します。

また、悪性腫瘍(悪性黒子など)との鑑別も重要です。シミだと思っていたものが実は皮膚がんだったというケースもあり得ます。心配な場合は必ず専門医の診察を受けてください。

個別に最適化された治療プラン

美容皮膚科では、患者様一人ひとりの肌の状態、シミの種類と程度、ライフスタイルなどを考慮して、最適な治療プランを提案します。

トラネキサム酸の内服だけでなく、ビタミンC製剤の併用、外用薬の選択、必要に応じたレーザー治療の検討など、総合的なアプローチが可能です。

専門的な施術

イオン導入、エレクトロポレーション、水光注射、レーザートーニングなど、医療機関でしか受けられない施術もあります。これらは家庭でのスキンケアでは得られない効果が期待できます。

経過観察とフォローアップ

定期的な診察を通じて、治療効果の評価や副作用のチェックを行います。効果が不十分な場合は治療方針の見直しを、副作用が出た場合は適切な対応をとることができます。

治療費用について

美容目的でのトラネキサム酸処方や、シミ治療の多くは保険適用外の自費診療となります。費用はクリニックによって異なりますが、トラネキサム酸の内服薬は1ヶ月あたり数千円程度から処方されています。

初診時には診察料がかかりますが、シミの状態を正しく診断してもらい、適切な治療法を相談できることを考えると、決して高い投資ではないでしょう。


10. よくある質問

トラネキサム酸に関してよく寄せられる質問にお答えします。

トラネキサム酸はどれくらいの期間服用すれば効果が出ますか?

効果が現れ始める目安は4〜8週間です。ただし、シミの状態や個人差により、もう少し時間がかかる場合もあります。少なくとも2〜3ヶ月は継続して効果を評価することをお勧めします。

効果が出たら服用をやめても大丈夫ですか?

服用を中止すると、シミや肝斑が再発する可能性があります。肝斑は慢性的な疾患であり、根本的に治すことは難しいとされています。いったん改善した後も、紫外線対策や肌への刺激を避けるケアを継続し、再発の兆候が見られたら早めに内服を再開することが推奨されます。

トラネキサム酸と他の薬を一緒に飲んでも大丈夫ですか?

風邪薬や止血剤にトラネキサム酸が含まれていることがあるため、併用すると過剰摂取になる恐れがあります。また、ピル(経口避妊薬)との併用は血栓リスクが高まる可能性があるため避けてください。服用中の薬がある場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。

妊娠中・授乳中でも使用できますか?

美容目的での使用は推奨されていません。トラネキサム酸が胎児や乳児に与える影響について十分なデータがないためです。妊娠・授乳中の方は、内服だけでなく外用についても使用前に医師に相談してください。

男性でも使用できますか?

はい、男性でも使用できます。肝斑は女性に多い疾患ですが、男性にも発症することがあります。また、老人性色素斑やニキビ跡の色素沈着など、男性に多いシミの悩みにもトラネキサム酸は効果が期待できます。

スキンケア製品と内服薬は併用しても問題ありませんか?

併用しても問題ありません。むしろ、内服と外用の「ダブルケア」は推奨されており、相乗効果が期待できます。

トラネキサム酸配合の化粧品はどう選べばいいですか?

トラネキサム酸が有効成分として配合されている「医薬部外品」を選ぶことをお勧めします。また、ビタミンC誘導体やナイアシンアミドなど、相乗効果が期待できる成分が一緒に配合されているものも良い選択です。自分の肌質に合い、継続しやすい価格帯のものを選ぶことも大切です。


11. まとめ

トラネキサム酸は、日本で開発された美白有効成分として、シミや肝斑の治療・予防に広く活用されています。その特徴と活用のポイントを改めて整理しておきましょう。

トラネキサム酸は、メラニン生成の「指令段階」で作用することで、シミの発生を根本から抑えます。特に肝斑に対しては第一選択の治療薬として位置づけられており、内服薬としての有効性が多くの臨床研究で示されています。

取り入れ方としては、内服薬、外用薬(スキンケア製品)、美容施術と、様々な選択肢があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の目的や肌の状態に合った方法を選ぶことが大切です。より高い効果を求める場合は、美容皮膚科での処方や施術を検討することをお勧めします。

効果を実感するには時間がかかります。4〜8週間を目安に、焦らず継続することが重要です。また、トラネキサム酸だけに頼るのではなく、紫外線対策や肌への刺激を避けるといった日常のケアも欠かせません。

安全性は比較的高い成分ですが、血栓症のリスクには注意が必要です。ピル服用中の方、血栓性疾患の既往がある方などは使用を避け、不安な点がある場合は必ず医師に相談してください。

シミや肝斑の悩みは、適切な治療とケアによって改善が期待できます。トラネキサム酸という心強い味方を上手に活用して、透明感のある健やかな肌を目指しましょう。

当院では、患者様一人ひとりの肌の状態を丁寧に診察し、最適な治療プランをご提案しております。シミや肝斑でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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