手のひらにほくろができると、「悪性ではないか」「がんの可能性があるのでは」と不安になる方も多いのではないでしょうか。確かに手のひらは他の部位と比べて刺激を受けやすい場所であり、ほくろの変化には注意が必要です。しかし、手のひらにできるほくろのほとんどは良性であり、過度な心配は不要です。本記事では、手のひらにほくろができる原因から、悪性黒色腫(メラノーマ)との見分け方、医療機関での検査方法、除去治療について詳しく解説します。正しい知識を身につけて、適切な対応ができるようになりましょう。

目次
- 手のひらにほくろができる原因
- 手のひらのほくろが危険といわれる理由
- 良性と悪性のほくろの見分け方
- 手のひらのほくろで受診すべき症状
- 皮膚科での検査方法
- 手のひらのほくろの除去方法
- ほくろ除去後の経過とケア
- 手のひらのほくろに関するよくある質問
- まとめ
🔍 手のひらにほくろができる原因
手のひらにほくろができる原因はさまざまです。ここでは、ほくろが形成されるメカニズムと、手のひらという特殊な部位に発生する理由について解説します。
🧬 ほくろができるメカニズム
ほくろは医学的には「色素性母斑」と呼ばれ、メラノサイト(色素細胞)が皮膚の一部に集まって形成されます。メラノサイトは紫外線から肌を守るためにメラニン色素を作り出す細胞ですが、何らかの原因でこの細胞が局所的に増殖すると、ほくろとして目に見える形になります。
ほくろは以下の2つのタイプに分けられます:
- 生まれつきあるもの
- 後天的に発生するもの(紫外線、遺伝、ホルモンバランスの変化などが原因)
☀️ 紫外線の影響
紫外線はほくろの形成に大きく関与しています。紫外線を浴びるとメラノサイトが活性化し、メラニン色素の産生が促進されます。
手のひらは通常、紫外線に直接さらされる機会は少ない部位ですが、以下のような場合には注意が必要です:
- 屋外でのスポーツ活動
- 手のひらを上に向ける作業
- 長時間の屋外作業
✋ 摩擦や刺激の影響
手のひらは日常生活において物を握ったり、押したりと常に刺激を受けている部位です。このような慢性的な物理的刺激は、メラノサイトの活性化につながる可能性があります。
特に以下の方は注意が必要です:
- 道具を使う職業の方
- スポーツをしている方
- 手作業が多い方
🧬 遺伝的要因
ほくろの発生には遺伝的要因も関係しています。家族にほくろが多い方がいる場合、同様にほくろができやすい体質を受け継いでいる可能性があります。特に、手のひらや足の裏といった特殊な部位にほくろがある家族がいる場合は、同じ部位にほくろが発生しやすい傾向が見られます。
🌸 ホルモンバランスの変化
以下の時期には新しいほくろができやすくなります:
- 思春期
- 妊娠中
- 更年期
これは、ホルモンの変動がメラノサイトの活動に影響を与えるためです。特に妊娠中は女性ホルモンの影響でメラニン色素の産生が活発になり、既存のほくろが濃くなったり、新しいほくろが現れたりすることがあります。
⚠️ 手のひらのほくろが危険といわれる理由
手のひらにできたほくろは特に注意が必要といわれることがありますが、その理由について正しく理解しておくことが大切です。
🎯 末端黒子型黒色腫の好発部位
悪性黒色腫(メラノーマ)にはいくつかのタイプがありますが、日本人に最も多いのが「末端黒子型黒色腫」です。このタイプは以下の部位に発生しやすい特徴があります:
- 手のひら
- 足の裏
- 爪の下
欧米人に多い日光の影響を受けやすい部位に発生するタイプとは異なり、末端黒子型は日本人を含むアジア人に多く見られます。
🔄 慢性的な刺激によるリスク
手のひらは日常生活で常に刺激を受ける部位であり、この繰り返される刺激がほくろの細胞に影響を与える可能性があります。
ただし、以下の点も理解しておくことが大切です:
- 良性のほくろが悪性化する確率は非常に低い
- 通常の日常生活での刺激では問題ない
- 過度な刺激は避ける方が良い
👀 発見の遅れやすさ
手のひらは顔や腕などと比べて、自分では見えにくい部位です。そのため、ほくろの変化に気づきにくく、悪性のほくろであっても発見が遅れる可能性があります。
悪性黒色腫は早期発見・早期治療が非常に重要な疾患であり、発見が遅れると予後に大きく影響します。定期的に手のひらを確認する習慣をつけることで、ほくろの変化を早期に発見することができます。
📊 実際のリスクについて
重要な事実として、手のひらのほくろが悪性である確率は実際には非常に低いものです。
参考データ:
- 日本における悪性黒色腫の発生率:人口10万人あたり1〜2人程度
- すべてのほくろの中で悪性のものはごくわずか
- 手のひらのほくろのほとんどは良性の色素性母斑
🔍 良性と悪性のほくろの見分け方
ほくろが良性か悪性かを見分けるためには、いくつかのチェックポイントがあります。医学的には「ABCDEルール」と呼ばれる基準が広く用いられています。
📏 ABCDEルールとは
ABCDEルールは、悪性黒色腫を早期に発見するための自己チェック方法です。
- A:非対称性(Asymmetry)
- B:境界不整(Border irregularity)
- C:色の不均一(Color variegation)
- D:直径(Diameter)
- E:進展(Evolution)
A️⃣ A:非対称性(Asymmetry)
良性のほくろは左右対称な円形または楕円形をしています。一方、悪性のほくろは非対称な形をしていることが多く、ほくろの中心で線を引いたときに左右の形が一致しません。
チェックポイント:
- 形が左右対称か
- いびつな形ではないか
- 左右で明らかに形状が異なっていないか
B️⃣ B:境界不整(Border irregularity)
良性のほくろは境界がはっきりしており、周囲の皮膚との境目が明確です。悪性のほくろは境界がギザギザしていたり、ぼやけていたりします。
注意すべき特徴:
- 輪郭が不明瞭
- 縁が不規則な形状
- 周囲の皮膚に染み出すように広がっている
C️⃣ C:色の不均一(Color variegation)
良性のほくろは均一な茶色や黒色をしています。悪性のほくろは一つのほくろの中に複数の色が混在していることがあります。
危険な色の変化:
- 茶色、黒、青、赤、白などの混在
- 色むらがある
- 以前と比べて色が変化した
D️⃣ D:直径(Diameter)
一般的に、直径が6mm以上のほくろは悪性の可能性が高くなるといわれています。6mmは鉛筆の消しゴム部分の直径とほぼ同じ大きさです。
ただし、以下の点も重要です:
- 6mm未満の悪性黒色腫も存在する
- 大きさだけで判断することはできない
- 短期間で急速に大きくなった場合は要注意
E️⃣ E:進展(Evolution)
ほくろの変化は悪性を疑う重要なサインです。以下のような変化がある場合は注意が必要です:
- 大きさの変化
- 形の変化
- 色の変化
- 表面の質感の変化
- かゆみ、痛み、出血
- ジクジクするなどの症状
🚨 その他の注意すべき特徴
ABCDEルール以外にも、以下の特徴がある場合は注意が必要です:
- ほくろから出血する
- 表面がただれる
- 周囲に小さな衛星病変ができる
- ほくろが盛り上がってくる
- 成人になってから新しくできた大きなほくろ
🏥 手のひらのほくろで受診すべき症状
手のひらにほくろがあるすべての方が医療機関を受診する必要はありませんが、以下のような症状がある場合は皮膚科を受診することをおすすめします。
⚡ 急速な変化がある場合
数週間から数ヶ月の間にほくろの大きさ、形、色が明らかに変化した場合は受診が必要です。
特に注意すべき変化:
- 短期間で2倍以上の大きさになった
- 色が急に濃くなった
- 形が不規則になった
🩸 出血やただれがある場合
ほくろから出血したり、表面がジクジクしてただれたりする場合は要注意です。良性のほくろは外傷を受けない限り出血することはありません。
危険なサイン:
- 自然に出血する
- 軽く触れただけで出血する
- 表面がかさぶたのようになる
- 潰瘍ができる
😣 かゆみや痛みがある場合
通常、良性のほくろはかゆみや痛みを伴いません。ほくろにかゆみや痛みが生じた場合は、何らかの変化が起きているサインである可能性があります。
🆕 新しくできたほくろが大きい場合
成人になってから手のひらに新しくできたほくろで、最初から大きめ(6mm以上)のものは注意が必要です。
安心できるほくろと注意が必要なほくろ:
- ✅ 生まれつきあるほくろ
- ✅ 子どもの頃からあるほくろ
- ⚠️ 大人になってから突然現れた大きなほくろ
- ⚠️ 急速に大きくなっているほくろ
👁️ 見た目に違和感がある場合
ABCDEルールに当てはまらなくても、何となく気になる、他のほくろと様子が違うと感じる場合は受診してください。ご自身の感覚も大切な判断材料です。
🔬 皮膚科での検査方法
手のひらのほくろが気になって受診した場合、皮膚科ではいくつかの検査を行って良性か悪性かを判断します。
👀 視診による診察
まず、皮膚科医が肉眼でほくろを観察します。
チェック項目:
- 形
- 大きさ
- 色
- 境界の状態
ABCDEルールに基づいて悪性の可能性を評価し、ほくろの経過について詳しい問診が行われます。
🔍 ダーモスコピー検査
ダーモスコピーは、皮膚を拡大して観察するための特殊な機器を用いた検査です。
検査の特徴:
- 肉眼では見えない皮膚の微細な構造を観察
- ほくろの色素パターンや血管構造を詳しく確認
- 良性と悪性の鑑別に役立つ
- 痛みはなく、数分で終わる簡便な検査
🧪 皮膚生検
ダーモスコピー検査で悪性が疑われる場合や、確定診断が必要な場合には皮膚生検が行われます。
皮膚生検の流れ:
- ほくろの一部または全部を切除
- 病理検査に提出
- 顕微鏡で細胞を詳しく調べる
- 良性か悪性かを確定的に診断
- 局所麻酔下で実施
- 通常は外来で実施可能
📱 画像検査
悪性黒色腫と診断された場合、転移の有無を調べるために画像検査が行われることがあります。
主な画像検査:
- CTスキャン
- MRI
- PET-CT
これらの検査により、リンパ節や他の臓器への転移の有無を確認し、病期(ステージ)を決定して適切な治療方針を立てます。
✂️ 手のひらのほくろの除去方法
手のひらのほくろを除去する方法にはいくつかの選択肢があります。ほくろの性質や大きさ、患者様のご希望によって適切な方法が選択されます。
🔪 外科的切除術
メスを使ってほくろを切除する方法です。ほくろの周囲に数ミリの正常皮膚を含めて切除し、縫合します。
適応となる場合:
- 悪性が疑われる場合
- 確実にほくろを取り除きたい場合
- 病理検査でほくろの性質を確認したい場合
メリット:
- 手のひらでは傷跡が目立ちにくい
- 病理検査で確実な診断が可能
- 局所麻酔下で外来手術が可能
⚡ レーザー治療
良性であることが確実なほくろに対しては、レーザーを用いた除去も選択肢となります。
使用されるレーザー:
- CO2レーザー
- Qスイッチレーザー
メリットとデメリット:
- ✅ 傷跡が目立ちにくい
- ❌ 病理検査ができない
- ❌ 悪性の可能性がある場合は不適
⚡ 電気焼灼法
電気メスを使ってほくろを焼き取る方法です。
特徴:
- ✅ 出血が少ない
- ✅ 処置時間が短い
- ✅ 小さなほくろに適している
- ❌ 病理検査ができない
- ❌ 良性確定例のみ適応
🧊 凍結療法
液体窒素を用いてほくろを凍結させ、壊死させる方法です。
特徴:
- ✅ 比較的簡便な治療
- ❌ 色素沈着が残りやすい
- ❌ 複数回の治療が必要になることがある
- ❌ 手のひらのほくろ除去には一般的ではない
✋ 手のひら特有の考慮事項
手のひらは物を握ったり、体重をかけたりする部位であるため、治療後の傷の治りやすさを考慮する必要があります。
重要なポイント:
- 手のひらの皮膚は厚く丈夫
- 縫合した場合は一定期間、握る動作を制限
- 傷跡は目立ちにくい部位
- ケロイド体質の方では傷跡が盛り上がることがある
🩹 ほくろ除去後の経過とケア
ほくろを除去した後は、適切なケアを行うことで良好な経過を得ることができます。
📅 術後の経過
治療方法別の経過:
- 外科的切除:約1週間後に抜糸、完全に落ち着くまで2〜3週間
- レーザー治療:かさぶたができ、1〜2週間程度で自然に剥がれ落ちる
手のひらは日常的に使用する部位であるため、他の部位より治癒に時間がかかることがあります。
🏠 日常生活での注意点
術後のケアで重要なポイント:
- 患部を清潔に保つ
- 処方された軟膏や保護テープを指示通りに使用
- 強く握る動作は避ける
- 患部に負担がかかる動作は避ける
- 術後数日間は入浴時に患部を濡らさないよう注意
🌞 傷跡のケア
傷が完全に治った後も、傷跡をきれいに保つためのケアが重要です。
傷跡ケアの方法:
- 紫外線対策(日焼け止め、手袋での保護)
- 保湿ケア
- シリコンジェルシートの使用
- シリコン含有クリームの使用
傷跡部分は紫外線に当たると色素沈着を起こしやすいため、しっかりとした紫外線対策が必要です。
🔄 再発と経過観察
治療後の経過について:
- 良性のほくろ:完全除去すれば同じ場所への再発は稀
- 除去が不完全な場合:再発の可能性あり
- 体質的にほくろができやすい方:新たなほくろが発生することがある
- 悪性が疑われたほくろ:定期的な経過観察が必要
🚨 受診が必要なサイン
以下の症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください:
- 傷口の強い痛みが続く
- 大量の出血がある
- 傷口が化膿している
- 発熱がある
- 除去した場所に再び色素が現れた

❓ 手のひらのほくろに関するよくある質問
手のひらのほくろすべてを除去する必要はありません。ほとんどの手のひらのほくろは良性であり、経過観察で問題ないケースが多いです。ただし、急速に大きくなる、形や色が変化する、出血やかゆみがあるなどの症状がある場合は皮膚科を受診して専門医の判断を仰ぐことをおすすめします。気になる場合は一度受診して、定期的な経過観察が必要か、除去が推奨されるかを相談しましょう。
子どもの手のひらにほくろがあることは珍しくなく、多くの場合は良性です。子どもの成長とともにほくろも大きくなることがありますが、これは正常な変化です。ただし、急速に変化する、形がいびつになる、色が変わるなどの場合は小児科または皮膚科を受診してください。心配な場合は専門医に相談することで安心を得られます。
悪性の疑いがある場合や、医師が医学的に除去が必要と判断した場合は保険適用となります。一方、美容目的での除去は自費診療となります。まずは皮膚科を受診して診察を受け、保険適用になるかどうかを確認することをおすすめします。
絶対にご自身で取ろうとしないでください。自己処理は感染症のリスク、傷跡が残るリスク、そして悪性だった場合に適切な治療の機会を逃すリスクがあります。また、不完全な除去は再発や悪化につながる可能性もあります。ほくろの除去は必ず医療機関で行ってください。
短期間に手のひらに複数のほくろが急に現れた場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。通常、ほくろは徐々に形成されるものであり、急激な増加は何らかの原因がある可能性があります。紫外線への過度な曝露、ホルモンバランスの変化、まれに内臓疾患のサインである場合もありますので、専門医の診察を受けてください。
📋 まとめ
手のひらにできたほくろは、多くの場合良性の色素性母斑であり、過度に心配する必要はありません。しかし、日本人に多い末端黒子型黒色腫が発生しやすい部位でもあるため、定期的なセルフチェックと、変化があった場合の早期受診が重要です。
ABCDEルールを参考に、以下の特徴がある場合は皮膚科を受診してください:
- 形が非対称
- 境界が不整
- 色が不均一
- 大きさが6mm以上
- 変化がある
皮膚科ではダーモスコピー検査などで詳しく診察し、必要に応じて適切な治療が行われます。ほくろの除去は外科的切除やレーザー治療など、状況に応じた方法が選択されます。
アイシークリニック東京院では、ほくろに関するご相談を承っておりますので、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。
参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
手のひらのほくろは確かに注意が必要な部位ですが、過度に心配する必要はありません。重要なのは定期的な観察とABCDEルールに基づくチェックです。少しでも気になる変化があれば、迷わずに皮膚科を受診してください。早期発見により適切な治療が可能になります。