咳エチケットとは、咳やくしゃみをする際に周囲への飛沫感染を防ぐためのマナーです。インフルエンザや新型コロナウイルス、風邪などの感染症は、咳やくしゃみによって飛び散る飛沫を介して広がることが多いため、正しい咳エチケットを身につけることは、自分だけでなく周囲の人々の健康を守るうえで非常に重要です。本記事では、咳エチケットの正しいやり方から、なぜそれが必要なのか、日常生活での実践ポイントまで詳しく解説します。感染症対策の基本として、ぜひ正しい知識を身につけてください。

目次
- 咳エチケットの基本知識と重要性
- 咳エチケットのやり方を徹底解説!正しい方法
- マスクとティッシュの効果的な使い分け
- 袖・上腕を使った緊急時の対処法
- 場面別の実践方法と注意点
- 子どもへの教え方と習慣化のコツ
- よくある質問とトラブル対処法
🤧 咳エチケットの基本知識と重要性
咳エチケットとは、咳やくしゃみをする際に、口や鼻から飛び散る飛沫が周囲の人に直接かからないようにするためのマナーや行動のことを指します。厚生労働省では、感染症対策の一環として咳エチケットの実践を推奨しており、特にインフルエンザや新型コロナウイルス感染症の流行期には、その重要性が繰り返し強調されています。
咳エチケットの基本的な考え方は、自分が感染源となる可能性を認識し、周囲への配慮を行うことです。風邪の症状がなくても、無症状で病原体を保有している場合があるため、日常的に咳エチケットを意識することが大切です。
咳エチケットには主に以下の3つの方法があります:
- マスクを着用すること
- ティッシュやハンカチで口と鼻を覆うこと
- 何も持っていない場合に袖や上腕の内側で口と鼻を覆うこと
これらの方法を状況に応じて適切に使い分けることが、効果的な感染症予防につながります。
🦠 感染症拡大のメカニズム
咳エチケットが必要な理由を理解するためには、まず飛沫感染のメカニズムを知ることが重要です。人が咳やくしゃみをすると、口や鼻から微小な水滴(飛沫)が勢いよく飛び出します。この飛沫には、もし感染症にかかっている場合、ウイルスや細菌などの病原体が含まれています。
💨 飛沫の飛散距離と危険性
咳をすると、飛沫は約2メートルの範囲に飛散するとされています。くしゃみの場合はさらに勢いが強く、3メートル以上飛ぶこともあります。
- 1回の咳:約3,000個の飛沫が放出
- 1回のくしゃみ:約40,000個の飛沫が放出
これらの飛沫が周囲の人の口や鼻から体内に入ることで感染が成立します。
飛沫は空気中に数秒から数分間浮遊した後、床や物の表面に落下します。落下した飛沫に含まれる病原体は、物の表面で一定時間生存することができるため、それに触れた手で自分の顔を触ることによる接触感染のリスクも生じます。
🛡️ 咳エチケット実践の効果
咳エチケットを実践することで、飛沫の飛散を大幅に抑制できます。マスクを着用した場合、飛沫の飛散量は70〜80%以上削減されるとの研究結果もあります。
特に以下の場所では、咳エチケットが感染症拡大防止に重要な役割を果たします:
- 電車やバスなどの公共交通機関
- オフィス
- 学校
- 医療機関
- 商業施設
また、咳エチケットは自分自身を守る効果もあります。咳やくしゃみをする際に正しい方法で口と鼻を覆うことを習慣化すると、手を介した接触感染のリスクも軽減できます。
✋ 咳エチケットのやり方を徹底解説!正しい方法
厚生労働省が推奨する咳エチケットには、主に3つの方法があります。それぞれの方法について、正しいやり方と注意点を詳しく解説します。
😷 マスクによる咳エチケット
マスクの着用は、咳エチケットの中でも最も効果的な方法です。咳やくしゃみをする際に飛び出す飛沫を、マスクのフィルター部分で物理的にブロックすることができます。
咳やくしゃみの症状がある場合は、外出時には必ずマスクを着用するようにしましょう。マスクは正しく着用することが重要です:
- 鼻と口の両方をしっかり覆う
- 顔との隙間ができないように装着
- 使い捨てタイプは1日1枚を目安に交換
- 布マスクは毎日洗濯して清潔な状態を保つ
🤧 ティッシュ・ハンカチで覆う方法
マスクを着用していない状況で咳やくしゃみが出そうになった場合は、ティッシュやハンカチで口と鼻を覆います。
- ティッシュ:使用後すぐにゴミ箱に捨てる
- ハンカチ:汚れた面を内側にして畳み、なるべく早く洗濯する
使用後はすぐに手を洗うか、アルコール消毒液で手指を消毒することで、接触感染のリスクを軽減できます。
💪 袖・上腕による緊急時の対応
マスクもティッシュもハンカチも手元にない緊急の場合は、袖や上腕の内側で口と鼻を覆います。この方法は「エルボースニーズ」や「肘ブロック」とも呼ばれ、欧米では以前から推奨されてきた方法です。
袖や上腕で覆う理由は、この部分は他の物や人に触れる機会が少ないためです。手のひらで口を覆ってしまうと、その手でドアノブや電車のつり革、エスカレーターの手すりなどに触れることで、病原体を広げてしまう可能性があります。
❌ やってはいけない咳エチケット
咳エチケットには正しい方法があるように、避けるべき行動もあります。間違った咳エチケットは、感染症の拡大につながる可能性があるため、注意が必要です。
- 手のひらで口を覆うこと
- 何も覆わずに咳やくしゃみをすること
- 使用済みティッシュの放置
- マスクを顎にずらすこと
😷 マスクとティッシュの効果的な使い分け
マスクは咳エチケットの中核となるアイテムですが、正しく使用しなければ十分な効果を発揮できません。ここでは、マスクとティッシュを効果的に使い分ける方法を詳しく解説します。
🔍 マスクの種類と選び方
市販されているマスクには、主に以下の種類があります:
- 不織布マスク
- 布マスク
- ウレタンマスク
感染症予防の観点からは、不織布マスクが最も効果的とされています。不織布マスクは細かい繊維が密に絡み合った構造になっており、飛沫の捕集効率が高いという特徴があります。
マスクを選ぶ際のポイント:
- 自分の顔のサイズに合ったものを選ぶ
- 大きすぎると顔との間に隙間ができる
- 小さすぎると鼻や口を十分に覆えない
- プリーツ型、立体型、カップ型など、自分の顔に合った形状を選ぶ
👆 マスクの正しい着用方法
1. 装着前の準備
- 手を洗うか消毒する
- マスクの上下と表裏を確認する
- ノーズワイヤーが入っている方が上
- プリーツが下向きになっている方が表
2. 装着方法
- ノーズワイヤーを鼻の形に合わせて曲げる
- 鼻と頬の隙間をなくす
- プリーツを上下に広げて顎まで覆う
- 耳にかけるゴムを適度に調整する
📄 ティッシュの効果的な活用法
咳やくしゃみが出そうになったら、素早くティッシュを取り出し、口と鼻を覆います。
ポイント:
- ポケットティッシュを常に携帯しておく
- 1枚だけでなく、数枚重ねて使用する
- できるだけ隙間ができないようにしっかりと押さえる
- 使用後はすぐにゴミ箱に捨てる
- ゴミ箱が近くにない場合はビニール袋に入れて持ち帰る
🧼 使用後の手洗いと消毒
ティッシュやハンカチを使用した後は、できるだけ早く手を洗うか、アルコール消毒液で手指を消毒することが重要です。
手洗いの手順:
- 石鹸を使って20秒以上かける
- 手のひら、手の甲、指の間、爪の中、手首まで丁寧に洗う
- 流水でしっかりとすすぐ
- 清潔なタオルで水分を拭き取る
手洗い場がすぐに見つからない場合は、アルコール消毒液を携帯しておくと便利です。
💪 袖・上腕を使った緊急時の対処法
マスクもティッシュもハンカチも手元にない緊急の場合に備えて、袖や上腕で口を覆う方法を覚えておきましょう。この方法は、手のひらで口を覆うよりも衛生的で、接触感染のリスクを軽減できます。
🤲 エルボースニーズ(肘ブロック)のやり方
咳やくしゃみが出そうになったら、以下の手順で行います:
- 腕を曲げて肘の内側を口と鼻に当てる
- できるだけ顔を腕に近づける
- 飛沫が漏れないようにしっかりと覆う
この動作は「エルボースニーズ」や「肘ブロック」と呼ばれています。
使い分けのコツ:
- 右利きの人は左腕を使う
- 左利きの人は右腕を使う
- とっさの場合はどちらの腕でも構わない
- 大切なのは手のひらではなく袖や上腕の内側で覆うこと
🤔 袖・上腕を使う理由
袖や上腕の内側は、日常生活で物や人に触れる機会が非常に少ない部位です。
一方、手のひらが触れるもの:
- ドアノブ
- 手すり
- スマートフォン
- パソコンのキーボード
- エスカレーターの手すり
- 電車のつり革
手のひらで口を覆って咳やくしゃみをすると、手に付着した飛沫がそれらの物に付着し、他の人が触れることで感染が広がる可能性があります。
🔄 実施後の注意点
袖や上腕で咳やくしゃみを受けた後の注意点:
- その部分を他のものに触れさせないよう注意
- 可能であれば早めに着替える
- その部分を拭き取る
- 念のため手を洗うか消毒する
🏢 場面別の実践方法と注意点
職場や公共の場では、多くの人と接する機会があるため、咳エチケットの重要性がさらに高まります。社会人としてのマナーとしても、適切な咳エチケットを心がけましょう。
💼 オフィス・職場での対応
オフィスでは、同僚や上司と近い距離で長時間過ごすことが多いため、咳エチケットは特に重要です:
対応策:
- 咳やくしゃみの症状がある場合はできるだけマスクを着用
- 会議中にマスクを外している場面ではティッシュやハンカチで対応
- 可能であれば一時的に席を外す
- 咳やくしゃみが続く場合は在宅勤務を検討
- 周囲への配慮として有効
🚃 公共交通機関での実践
公共交通機関は多くの人が密集する空間です:
必須対応:
- マスクの着用が特に推奨
- 咳やくしゃみの症状がある場合は必ずマスク着用
- 周囲の人に飛沫がかからないよう下を向く
- 人のいない方向を向く
- 手すりやつり革に触れた後は降車後に手洗いや消毒
🍽️ 飲食店での配慮
飲食店では食事中はマスクを外すため、咳やくしゃみの際の対応に注意が必要です:
対応方法:
- ティッシュやハンカチで口を覆う
- マスクをすぐに着用できるよう手元に準備
- 咳やくしゃみの症状が強い場合はテイクアウトを利用
- 症状が落ち着いてから来店することを検討
🏥 医療機関での特別な注意
医療機関には様々な理由で体調を崩している患者さんが訪れます:
特別な配慮:
- 免疫力が低下している方もいるため特に重要
- 受診の際は必ずマスクを着用
- 発熱や咳などの症状があることを受付時に申し出
- 待合スペースを分けてもらえる場合がある
- 入館時と退館時に手指消毒を実施
咳やくしゃみの症状が続く場合は、痰が絡む咳が長引く原因について詳しく解説した記事もご参考ください。また、鼻うがいの正しいやり方を実践することで、鼻や喉の健康維持にも役立ちます。

👶 子どもへの教え方と習慣化のコツ
咳エチケットは、子どもの頃から身につけておくことが大切です。しかし、小さな子どもには抽象的な説明が難しいため、わかりやすく、楽しく教える工夫が必要です。
📚 年齢別の指導方法
3〜4歳の幼児
- 「咳やくしゃみをするときは、お口をかくしてね」といったシンプルな言葉で伝える
- ティッシュで口を覆うことを教える
- 使ったティッシュはゴミ箱に捨てることも一緒に教える
5〜6歳
- なぜ口を覆う必要があるのかを簡単に説明
- 「咳やくしゃみをすると、バイキンが飛んでいって、お友達にうつっちゃうことがあるんだよ」
- 原因と結果の関係を伝える
小学生以上
- 飛沫感染のメカニズムを理解できるようになる
- 様々な咳エチケットの方法(マスク、ティッシュ、袖)について説明
- 状況に応じて適切な方法を選べるよう指導
🎭 実践的な練習方法
子どもに咳エチケットを教える際は、実際に練習することが効果的です:
- 保護者がお手本を見せる
- 子どもに真似させる
- ティッシュがない場面を想定して袖で口を覆う練習
- 「ティッシュがないときは、腕でお口をかくすんだよ」と教える
- 肘の内側を口に当てる動作を繰り返し練習
🎮 楽しく身につけるための工夫
子どもが楽しく咳エチケットを覚えられる方法:
- ゲーム感覚で練習
- 「咳が出そうになったらどうする?」というクイズ形式
- ぬいぐるみを使って咳エチケットごっこ
- 正しくできたときはしっかりと褒める
- ポジティブな強化で良い行動として認識させる
🧼 手洗いとセットでの指導
咳エチケットと手洗いは、感染症予防の両輪です。どちらか一方だけでは十分な効果が得られないため、両方を適切に組み合わせることが重要です。
以下のタイミングで手洗いを行いましょう:
- 咳やくしゃみをした後(特にティッシュやハンカチを使った場合)
- うっかり手のひらで口を覆ってしまった場合
- 外出先から帰宅した時
- 食事の前
- トイレの後
- マスクを外した後
❓ よくある質問とトラブル対処法
咳エチケットという概念は、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行をきっかけに世界的に広まりました。日本では、2009年の新型インフルエンザの流行時に厚生労働省が積極的に啓発活動を行い、一般に認知されるようになりました。現在では、感染症対策の基本として学校や職場でも広く指導されています。
はい、症状がなくても咳エチケットを意識することは重要です。感染症によっては、症状が出る前や無症状でも他の人に感染させる可能性があります。日常的に咳エチケットを習慣化しておくことで、自分が気づかないうちに感染源となることを防ぐことができます。
不織布マスクの方が飛沫の捕集効率が高く、咳エチケットとしてより効果的です。不織布マスクは細かい繊維が密に絡み合った構造になっており、飛沫をより効果的にブロックできます。ただし、布マスクも一定の効果はありますので、不織布マスクが手に入らない場合は布マスクを使用しても構いません。
咳が長期間続く場合は、医療機関を受診することをおすすめします。咳が続く原因には、風邪やインフルエンザなどの感染症だけでなく、アレルギー、喘息、逆流性食道炎など様々な可能性があります。2週間以上咳が続く場合は、早めに医師の診察を受けましょう。受診の際はマスクを着用し、受付で咳の症状があることを伝えてください。
基本的な対処法は同じです。くしゃみも咳も、マスクの着用、ティッシュやハンカチで覆う、袖や上腕で覆うといった方法で飛沫の飛散を防ぎます。ただし、くしゃみは咳よりも飛沫の量が多く、飛散距離も長い傾向があるため、より確実に口と鼻を覆うことが重要です。
咳エチケットの実践と合わせて、喉のイガイガの治し方やくしゃみが連続で止まらない原因と対処法についても理解を深めることで、より効果的な感染症対策を行うことができます。
📚 まとめ
咳エチケットは、感染症予防の基本中の基本です。本記事では、咳エチケットのやり方を徹底解説し、正しい方法を詳しくお伝えしました。
重要なポイントをおさらいすると:
- マスクの着用が最も効果的
- ティッシュやハンカチで口と鼻を覆う
- 緊急時は袖や上腕の内側を使用
- 手のひらで覆うのは避ける
- 使用後は必ず手洗いまたは消毒
咳エチケットは単なるマナーではなく、科学的根拠に基づいた重要な感染予防策です。日常生活の中で習慣化することで、自分だけでなく周囲の人々の健康も守ることができます。
咳が長引く場合や、症状が気になる場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。当クリニックでは、呼吸器症状に関する専門的な診察と治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
咳エチケットは単なるマナーではなく、科学的根拠に基づいた感染予防策です。特に呼吸器感染症の流行期においては、一人ひとりの心がけが社会全体の健康を守る重要な行動となります。日常的に実践することで、自分も周囲の人も守ることができる有効な手段です。