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「適応障害」と診断されたとき、多くの方が「これからどうすればいいのだろう」という不安を抱えるのではないでしょうか。適応障害は、特定のストレス要因によって心身のバランスが崩れ、日常生活に支障をきたす状態です。近年、働く世代を中心に患者数が増加傾向にあり、決して珍しい疾患ではありません。本記事では、適応障害と診断された方やそのご家族に向けて、診断後にすべきこと、治療法、休職中の過ごし方、利用できる公的支援制度、復職に向けたポイントまで、心療内科・精神科の観点から詳しく解説します。適応障害は適切な治療と環境調整によって回復が期待できる疾患です。焦らず、一歩ずつ回復への道を歩んでいきましょう。

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目次

  1. 適応障害とは何か
  2. 適応障害の主な症状
  3. 適応障害の診断基準(DSM-5・ICD-11)
  4. 適応障害と診断されたらまずすべきこと
  5. 適応障害の治療法
  6. 休職と休養について
  7. 利用できる公的制度・支援制度
  8. 回復までの過ごし方(回復の3つのステージ)
  9. 復職に向けて準備すべきこと
  10. 適応障害とうつ病の違い
  11. 家族や周囲の方へ(サポートのポイント)
  12. よくある質問
  13. 参考文献

🔍 適応障害とは何か

適応障害(適応反応症)とは、日常生活の中で何らかのストレスが原因となって心身のバランスが崩れ、社会生活に支障が生じた状態をいいます。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、「原因が明確でそれに対して過剰な反応が起こった状態」と定義されています。

適応障害の特徴として最も重要なのは、発症のきっかけとなる「ストレス因」が明確であるという点です。

以下のようなストレス因が原因となり得ます:

  • 職場での人間関係
  • 業務過多・過重な業務負荷
  • 異動や転勤
  • 家庭内の問題
  • 学業のプレッシャー
  • 病気やケガ
  • 離婚や別れ
  • 転校・転職

適応障害は誰にでも起こり得る疾患です。同じストレスを受けても、その人の性格特性、過去の経験、周囲のサポート状況などによって、適応障害を発症するかどうかは異なります。決して「心が弱いから」「甘えている」というわけではありません。むしろ、真面目で責任感が強く、周囲への気遣いができる方ほど発症しやすい傾向があるともいわれています。

近年、適応障害の患者数は増加傾向にあります。レセプトデータを用いた調査によると、昨シーズンより約20%増加したという報告もあります。また、年代別では20代が最も多いとされており、新社会人や転職後の環境変化がきっかけとなるケースが少なくありません。

適応障害の症状は、ストレスによる蕁麻疹緊張による動悸のような身体症状として現れることもあり、心身の密接な関係を示しています。

🩺 適応障害の主な症状

適応障害の症状は多岐にわたり、人によって現れ方が異なります。大きく分けると、精神的な症状、身体的な症状、行動面の変化の3つに分類できます。

💭 精神的な症状

精神的な症状としては、以下のようなものが挙げられます:

  • 抑うつ気分
  • 不安感・焦燥感
  • イライラ・緊張
  • 集中力の低下
  • 意欲の減退
  • 反芻思考(同じことを何度も考えてしまう)

特定のストレス因について繰り返し考えてしまう「反芻思考」も特徴的な症状の一つです。仕事のことが頭から離れない、同じことを何度も考えてしまうといった状態が続くことがあります。

🏃 身体的な症状

身体的な症状としては、以下のようなものがみられます:

  • 不眠や過眠などの睡眠障害
  • 頭痛・めまい
  • 動悸
  • 胃痛や腹痛
  • 食欲不振または過食
  • 全身の倦怠感
  • 起床困難

ストレスが自律神経系に影響を与えることで、さまざまな身体症状として現れるのです。これらの症状は自律神経の乱れと密接に関連しており、適切な対処法を知ることが重要です。

⚠️ 行動面の変化

行動面では、以下のような変化が現れることがあります:

  • 遅刻や欠勤の増加
  • 仕事のパフォーマンス低下
  • 人付き合いの回避
  • 過度な飲酒や喫煙
  • 暴食
  • 危険な運転
  • 攻撃的な言動

特に若年層では、不登校や引きこもり、ルールを逸脱した行動として現れることもあります。

これらの症状の大きな特徴は、ストレス因から離れているときには比較的症状が軽減するという点です。たとえば、仕事がストレス因である場合、休日には比較的元気に過ごせることが多いです。これは、後述するうつ病との重要な鑑別ポイントの一つとなります。

📋 適応障害の診断基準(DSM-5・ICD-11)

適応障害の診断には、国際的な診断基準が用いられます。主に使用されるのは、アメリカ精神医学会が作成した「DSM-5」(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)と、世界保健機関(WHO)が作成した「ICD-11」(国際疾病分類第11版)の2つです。

📖 DSM-5による診断基準

DSM-5では、適応障害は「心的外傷およびストレス因関連障害群」に分類されています。診断基準の主なポイントは以下の通りです:

  • はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから3か月以内に情動面または行動面の症状が出現していること
  • ストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛、または社会的・職業的・その他の重要な領域における機能の重大な障害があること
  • 他の精神疾患の基準を満たしておらず、すでに存在している精神疾患の単なる悪化でもないこと
  • ストレス因またはその結果が終結すると、症状は6か月以内に消失すること

DSM-5では症状の様相によって、以下の6つのサブタイプに分類されます:

  1. 抑うつ気分を伴うもの
  2. 不安を伴うもの
  3. 不安と抑うつ気分の混合を伴うもの
  4. 行為の障害を伴うもの
  5. 情動と行為の混合した障害を伴うもの
  6. 特定不能

🌏 ICD-11による診断基準

2022年から正式に施行されたICD-11では、適応障害の診断基準がより明確化されました。ICD-11の特徴は、「とらわれ」と「適応の失敗」を診断の必須要素としている点です。

「とらわれ」とは:

  • ストレス因やその結果についての過度な心配
  • 繰り返し思い返してしまうこと
  • その意味についての絶え間ない反芻思考

「適応の失敗」とは:

  • 日常の個人・家族・社会生活上の役割遂行に著しい支障をきたすこと

また、ICD-11ではストレス因への曝露から症状出現までの期間を「1か月以内」と規定しており、DSM-5の「3か月以内」よりも短くなっています。これは、ストレスへのより即時的な反応であることを重視しているためです。

いずれの診断基準でも、適応障害の診断において重要なのは、ストレス因の存在が明確であること、他の精神疾患では説明できないこと、そしてストレス因が解消されれば症状も改善に向かうという一過性の特徴があることです。

高桑康太 医師・当院治療責任者

適応障害の診断では、症状の背景にある明確なストレス因を特定することが何より重要です。症状だけを見るのではなく、患者様の生活状況、職場環境、人間関係などを詳しくお聞きしながら、総合的な判断を行います。また、他の精神疾患との鑑別も大切で、特にうつ病との違いを見極めることが適切な治療につながります。

✅ 適応障害と診断されたらまずすべきこと

適応障害と診断されたとき、何から始めればよいのか戸惑う方も多いでしょう。ここでは、診断後にまず取り組むべきことを順を追って説明します。

🤝 自分の状態を受け入れる

最初に大切なのは、「今の自分は治療が必要な状態である」ということを受け入れることです。

適応障害は決して甘えや怠けではありません。心身が限界を迎えているサインであり、医学的に認められた疾患です。「もう少し頑張れば」「自分が弱いだけ」といった考えは、回復を遅らせる原因になりかねません。

まずは自分の状態を客観的に認識し、治療に専念することの重要性を理解しましょう。

👨‍⚕️ 主治医の指示に従う

診断を受けたら、主治医の治療方針に従うことが基本です。以下のポイントを心がけましょう:

  • 処方された薬がある場合は指示通りに服用
  • 定期的な通院を継続
  • 体調の変化や薬の副作用があれば必ず相談
  • 自己判断での服薬中止や通院中断は避ける

症状が改善してきたからといって、自己判断で服薬を中止したり通院をやめたりすることは、再発や悪化のリスクを高めます。

🚪 ストレス因から距離を取る

適応障害の治療において最も重要なのは、ストレス因から距離を取ることです。

具体的な対策例:

  • 職場が原因の場合:休職を検討、業務内容や配置転換を相談
  • 人間関係が原因の場合:その人物との接触を減らす
  • 学業が原因の場合:休学や学習方法の見直し
  • 家庭環境が原因の場合:一時的に距離を置く、相談窓口を利用

ストレス因が存在し続ける限り、症状の根本的な改善は難しいためです。

📞 職場や学校への報告・相談

仕事や学業がストレス因となっている場合、適切な報告と相談が必要です:

  • 職場の上司や人事担当者への状況説明
  • 学校の担任や保健室の先生への相談
  • 休職が必要な場合の診断書提出
  • 産業医面談の活用(いる職場の場合)

伝え方に不安がある場合は、主治医に相談してアドバイスをもらうとよいでしょう。

💰 利用できる制度を確認する

休職する場合、収入が途絶えることへの不安は大きいものです。以下の制度について早めに確認しておきましょう:

  • 傷病手当金
  • 自立支援医療制度
  • 労災保険(業務が原因の場合)
  • 国民年金保険料の免除・猶予制度
  • 国民健康保険料の減額制度

これらの制度については後述しますが、申請には一定の手続きが必要なため、早めの準備が重要です。

🩺 適応障害の治療法

適応障害の治療は、大きく分けて「環境調整」「薬物療法」「精神療法(心理療法)」の3つのアプローチがあります。これらを組み合わせて、患者さん一人ひとりの状態に合った治療を行います。

🔄 環境調整

適応障害の治療において最も基本となるのが環境調整です。ストレスの原因となっている状況から距離を取り、ストレス要因を軽減または除去することを意味します。

具体的な環境調整の例:

  • 休職や休学
  • 部署異動や配置転換
  • 業務量の調整
  • 人間関係の整理
  • 住環境の変更
  • 学習環境の見直し

適応障害は特定のストレス因への反応として発症するため、原因を取り除かない限り症状の根本的な改善は難しいのです。

💊 薬物療法

適応障害の薬物療法は、あくまで対症療法として位置づけられます。不安や不眠、抑うつ気分などの症状を和らげるために、以下のような薬が処方されることがあります:

  • 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など)
  • 睡眠導入剤
  • 抗うつ薬(SSRI、SNRI)
  • 漢方薬

ただし、薬物療法だけで適応障害を治すことはできません。環境調整と併用することで、症状を軽減しながら回復を目指します。

薬を処方された場合の注意点:

  • 医師の指示通りに服用する
  • 抗うつ薬は効果が現れるまでに数週間かかることを理解する
  • 自己判断での服薬中止は避ける
  • 副作用があれば必ず医師に相談する

🧠 精神療法(心理療法)

精神療法は、カウンセリングや心理療法を通じて、ストレスへの対処能力を高めたり、考え方のパターンを修正したりするアプローチです。

適応障害に効果的な精神療法:

  • 認知行動療法(CBT):考え方と行動のパターンを修正
  • 来談者中心療法:傾聴と共感を通じて気づきを促す
  • 問題解決療法:具体的な問題解決スキルを習得
  • 対人関係療法:対人関係の改善を通じて症状軽減

特に認知行動療法では、「失敗したら自分はダメな人間だ」という極端な考え方を、「失敗することもあるが、それで自分の価値が決まるわけではない」といったバランスのとれた考え方に修正していきます。

精神療法を受けることで、今後同じようなストレス状況に遭遇したときにも、より柔軟に対処できる力を身につけることができます。これは再発予防の観点からも非常に重要です。

😴 休職と休養について

仕事がストレス因となっている場合、休職は治療の重要な選択肢の一つです。「休職は逃げではないか」と感じる方もいるかもしれませんが、休職は回復のために必要な治療の一環です。無理に働き続けることで症状が悪化し、回復に時間がかかったり、うつ病などより重篤な疾患に移行したりするリスクがあります。

📝 休職の手続き

休職を決断したら、以下の手順で進めます:

  1. 主治医に診断書を書いてもらう
  2. 診断書を職場に提出
  3. 休職の手続きを行う
  4. 必要な書類の提出・手続き

診断書には以下の内容が記載されます:

  • 病名
  • 休職が必要な旨
  • 休職期間の目安
  • 就業上の配慮事項

休職制度の内容は会社によって異なります。以下の点を人事担当者に確認しておきましょう:

  • 休職できる期間
  • 休職中の給与の有無
  • 復職の条件
  • 健康保険の継続

⏰ 休職期間の目安

適応障害による休職期間は個人差が大きいですが、一般的には3か月から6か月程度が一つの目安とされています。

休職期間の設定方法:

  • 最初の診断書:1か月から3か月程度
  • その後:回復状況を見ながら延長を検討
  • 医師の判断を仰ぎつつ調整

ただし、最も大切なのは期間にこだわりすぎないことです。「早く治さなければ」という焦りは、かえってストレスとなり回復を遅らせる原因になります。主治医と相談しながら、自分のペースで回復を目指しましょう。

📞 休職中の会社との連絡

休職中も、会社との最低限の連絡は必要です:

  • 定期的な状況報告
  • 診断書の提出
  • 復職時期の相談
  • 必要書類の手続き

連絡に関する取り決め事項:

  • 連絡の頻度(月1回など)
  • 連絡方法(メール、電話など)
  • 連絡窓口(直属の上司、人事担当者など)
  • 緊急時の連絡方法

連絡すること自体がストレスになる場合は、主治医に相談し、会社に配慮を求めることも可能です。

🏛️ 利用できる公的制度・支援制度

適応障害で休職する場合、経済的な不安を軽減するためにさまざまな公的制度を活用することができます。主な制度について解説します。

💰 傷病手当金

傷病手当金は、健康保険に加入している方が、業務外の病気やケガで働けなくなり、給与が支払われない場合に受けられる給付です。適応障害も対象となります。

傷病手当金の概要:

  • 支給額:おおよそ給与の3分の2程度
  • 支給期間:支給開始日から通算して最長1年6か月
  • 支給日:休業4日目から

受給のための主な条件:

  • 業務外の理由による病気やケガであること
  • 仕事に就くことができない状態であること
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること
  • 休んでいる期間に給与の支払いがないこと

申請に必要な書類:

  • 傷病手当金支給申請書
  • 医師の証明(医師記入欄)
  • 会社の証明(会社記入欄)
  • 本人の申請(本人記入欄)

定期的な通院を続けていないと、医師記入欄を書いてもらえない場合があるため、月に1回程度は通院することが重要です。

🏥 自立支援医療制度(精神通院医療)

自立支援医療制度は、精神疾患の治療のために継続して通院が必要な方の医療費自己負担を軽減する制度です。

制度の内容:

  • 自己負担割合:通常3割→原則1割に軽減
  • 月額上限額:世帯所得に応じて設定
  • 対象:通院医療費、薬代、デイケア等
  • 有効期間:1年間(更新可能)

申請に必要な書類:

  • 自立支援医療費支給認定申請書
  • 医師の診断書(指定様式)
  • 健康保険証の写し
  • マイナンバーがわかるもの
  • 所得証明書類

申請窓口は住んでいる市区町村の障害福祉課などです。制度を利用できる医療機関は都道府県が指定した病院や薬局に限られますが、指定医療機関は非常に多いため、通院可能な範囲内に見つかることがほとんどです。

⚡ 労災保険(休業補償給付)

適応障害の原因が業務によるものである場合、労災保険の休業補償給付を受けられる可能性があります。

労災認定の対象となる例:

  • パワハラ・セクハラ
  • 長時間労働
  • 過重な業務負担
  • 職場での嫌がらせ
  • 極度の緊張・プレッシャー

労災認定の要件:

  • 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  • 発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められること
  • 業務以外の心理的負荷や個人的要因で発病したとは認められないこと

労災保険の給付内容:

  • 休業補償給付:給付基礎日額の80%(保険給付60%+特別支給金20%)
  • 療養補償給付:治療費の全額給付
  • その他:障害補償給付、傷病補償年金など

労災の可能性がある場合は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。

🌟 その他の制度

その他にも、状況に応じて利用できる制度があります:

  • 国民年金保険料の免除・猶予制度:所得減少時の年金保険料負担軽減
  • 国民健康保険料の減額制度:退職後の健康保険料負担軽減
  • 雇用保険の受給期間延長:求職活動ができない期間の失業給付延長
  • 住宅確保給付金:住居費の支援
  • 生活福祉資金貸付制度:低利または無利子での生活資金貸付

退職を検討している場合や、すでに退職した場合は、これらの制度についても確認しておくとよいでしょう。

🌱 回復までの過ごし方(回復の3つのステージ)

適応障害からの回復は、一般的に「休養期」「リハビリ期」「復職準備期」の3つの段階を経て進みます。それぞれの段階に適した過ごし方を理解しておくことで、無理なく回復を目指すことができます。

😴 休養期(休職初期〜1か月程度)

休養期は、心身ともに最も疲弊している時期です。この時期に最も大切なことは、徹底的に心と体を休ませることです。

休養期の過ごし方:

  • 「何もしない」「動きたいときに動く」
  • 生活リズムを気にしすぎない
  • 睡眠をしっかり取り、睡眠負債を解消
  • 刺激の少ない環境で過ごす
  • スマートフォンやパソコンの使用を控える

注意すべきポイント:

  • 仕事や対人関係から完全に離れる
  • 情報過多にならないよう注意
  • 昼夜逆転しても最初は無理をしない
  • 「休んでいることに罪悪感」は正常な反応として受け入れる

「休んでいることに罪悪感を感じる」という方も多いですが、これは治療の一環として必要なプロセスです。

🚶 リハビリ期(1〜3か月程度)

心身が安定してきたら、徐々に活動量を増やしていくリハビリ期に入ります。この時期のポイントは、少しずつ生活リズムを整えていくことです。

リハビリ期の取り組み:

  • 起床・就寝時間を一定にする
  • 朝に日光を浴びる
  • 規則正しく食事を取る
  • 散歩や軽い運動を始める
  • 買い物への外出など、無理のない範囲で活動量を増やす

この時期の重要な作業:

  • 休職に至った原因を振り返る
  • ストレスの要因を整理する
  • 今後の対処法を考える
  • 認知行動療法などの精神療法に集中的に取り組む

回復の過程には波があることを理解しておきましょう。調子がよい日が続いた後に、また調子が悪くなることもあります。一喜一憂せず、長い目で回復を見守ることが大切です。

この時期には、質の高い睡眠を確保することも重要です。良質な睡眠は心身の回復を促進し、ストレス耐性を高める効果があります。

💼 復職準備期(3か月以降)

生活リズムが安定し、日常生活を問題なく送れるようになったら、復職に向けた準備を始めます。

復職準備期の取り組み:

  • 就労を想定した生活リズムで過ごす
  • 朝、通勤時間に合わせて起床する
  • 日中は図書館やカフェなど自宅以外で過ごす
  • 通勤のシミュレーション(会社の近くまで行ってみる)
  • 集中力を要する作業の練習

この時期には、リワーク(復職支援プログラム)の活用も検討できます:

  • 生活リズムの調整
  • ストレス対処法の習得
  • コミュニケーションスキルのトレーニング
  • 模擬的な職場環境での練習
  • 復職への不安の解消

リワークは医療機関や地域障害者職業センターなどが提供する、職場復帰に向けたリハビリテーションプログラムです。安全な復職を目指すために有効な選択肢の一つです。

🔄 復職に向けて準備すべきこと

復職を考える段階になったら、以下のポイントを押さえて準備を進めましょう。

👨‍⚕️ 主治医との相談

復職のタイミングは、主治医と相談して決めることが基本です。自分では「もう大丈夫」と思っていても、専門家の目から見るとまだ回復が不十分な場合があります。

主治医との相談で確認すべきポイント:

  • 症状の改善状況
  • 生活リズムの安定度
  • ストレス対処能力の回復度
  • 復職時期の適切性
  • 復職後の注意点

🏢 職場との調整

復職にあたっては、職場との十分な調整が必要です。

職場との調整事項:

  • 復職の時期
  • 復職後の業務内容
  • 勤務時間(時短勤務の可能性)
  • 配置(部署異動の必要性)
  • 業務量の調整
  • 段階的復職の計画

いきなりフルタイムで復帰するのではなく、段階的復職が推奨されることが多いです:

  1. 短時間勤務から開始
  2. 軽減業務から始める
  3. 徐々に業務量を増加
  4. 最終的に通常業務に復帰

もし休職の原因となったストレス因が職場環境にある場合は、その環境が改善されているかどうかを確認することが重要です。部署異動や業務内容の変更など、再発を防ぐための環境調整を会社に求めることも検討しましょう。

🛡️ 再発予防の準備

復職後に最も大切なのは、再発を防ぐことです。

再発予防のための準備:

  • 自分のストレス反応パターンを理解する
  • 早期警告サインを把握する
  • ストレス対処法をリストアップする
  • 相談できる相手を確保する
  • 定期的な通院計画を立てる

ストレスを感じたときの対処法の例:

  • 深呼吸・リラクゼーション法
  • 適度な運動・散歩
  • 趣味の時間を確保
  • 信頼できる人への相談
  • 早めの休息・睡眠

復職後しばらくは、無理をしないことを心がけましょう。「休職前と同じように働かなければ」というプレッシャーは、再発のリスクを高めます。周囲の期待に応えようとしすぎず、自分のペースで仕事に慣れていくことが大切です。

🤔 適応障害とうつ病の違い

適応障害とうつ病は、症状が似ているため混同されやすいですが、いくつかの重要な違いがあります。正しく理解しておくことで、適切な治療につなげることができます。

🎯 発症の原因

適応障害

  • 明確なストレス因がきっかけとなって発症
  • 「〇〇があってから調子が悪くなった」と特定できる
  • 原因となる出来事と発症時期が明確

うつ病

  • 明確な原因が特定できないことも多い
  • 遺伝的要因、性格的要因、慢性的ストレスの蓄積など複数要因
  • 複合的な要因が絡み合って発症

⏱️ ストレスから離れたときの症状

適応障害

  • ストレス因から離れると症状が軽減する傾向
  • 仕事がストレス因なら休日は比較的元気
  • 環境が変われば症状が改善することが多い

うつ病

  • ストレスから離れても症状が持続
  • 休んでいても気分の落ち込みが続く
  • 何をしても楽しめない状態が特徴的

📅 症状の期間

適応障害

  • ストレス因が解消されれば通常6か月以内に症状が改善
  • 一過性の反応として位置づけられる
  • 環境調整により比較的早期に回復することが多い

うつ病

  • 抑うつ状態が2週間以上、ほとんど毎日続く
  • 治療なしに自然回復することは少ない
  • 長期的な治療が必要になることが多い

⚠️ 適応障害からうつ病への移行

適応障害を適切に治療せずに放置すると、うつ病に移行する可能性があります

移行のリスク要因:

  • ストレス因が継続している
  • 適切な治療を受けていない
  • 環境調整が不十分
  • 周囲のサポートが不足
  • 本人の認識不足

そのため、「適応障害だから軽い」と楽観視せず、早期に適切な治療を受けることが重要です。

主な鑑別ポイントの比較:

項目適応障害うつ病
原因明確なストレス因複合的要因
発症時期ストレス因の1〜3か月以内特定困難
症状の変動環境により変化持続的
回復期間6か月以内が多い長期化することが多い
治療の中心環境調整薬物療法+精神療法

👥 家族や周囲の方へ(サポートのポイント)

適応障害の方を支えるご家族や周囲の方々にとって、どのように接すればよいか悩むことも多いでしょう。ここでは、サポートする際のポイントを解説します。

📚 病気への理解を深める

まず大切なのは、適応障害という病気について正しく理解することです。

理解しておくべきポイント:

  • 「怠けている」「気持ちの問題」ではない
  • 心身が限界を迎えているサインである
  • 医学的に認められた疾患である
  • 適切な治療により回復が期待できる
  • 回復には時間がかかる

避けるべき言動:

  • 「頑張れ」という励まし
  • 「気持ちの持ちよう」という発言
  • 責める言葉や態度
  • 比較や評価
  • 急かす言動

👂 話を聴く姿勢を大切に

本人が話したいときには、批判や評価をせずに耳を傾けましょう

効果的な聴き方:

  • 批判や評価をしない
  • アドバイスより共感を優先
  • 「つらかったね」「大変だったね」といった共感の言葉
  • 本人のペースを尊重する
  • 最後まで話を聞く

避けるべき対応:

  • すぐに解決策を提示する
  • 「そんなことで」と軽視する
  • 他人と比較する
  • 話を遮る
  • 自分の体験談で話をすり替える

👀 見守る姿勢で

回復には時間がかかります。「早く良くなってほしい」という気持ちはあっても、焦らせるような言動は避けましょう

見守りのポイント:

  • 本人のペースを尊重する
  • 調子が良さそうでも無理をさせない
  • 回復には波があることを理解する
  • 小さな変化を見逃さない
  • 必要な時はそばにいることを伝える

適切な距離感:

  • 過度な干渉は避ける
  • 必要以上に気を遣わせない
  • 普段通りの接し方を心がける
  • 本人の自主性を尊重する
  • プレッシャーを与えない

💆‍♀️ 自分自身のケアも忘れずに

サポートする側も、精神的に疲弊することがあります。一人で抱え込まず、自分自身のケアも忘れないようにしましょう。

サポートする側のケア:

  • 医療機関の家族相談を活用する
  • 支援団体や家族会に参加する
  • 自分の時間を確保する
  • ストレス発散の方法を見つける
  • 必要に応じて専門家に相談する

利用できるサポート:

  • 病院の家族向け相談
  • 精神保健福祉センター
  • 市町村の相談窓口
  • 家族向け支援グループ
  • オンライン相談サービス

サポートする側が健康でいることが、結果的に本人への良いサポートにつながります。

💆‍♀️ 自分自身のケアも忘れずに

❓ よくある質問

適応障害は完治しますか?

適応障害は、ストレス因から離れて適切な治療を受けることで、多くの場合は回復が期待できます。一般的に、ストレス因が解消されれば6か月以内に症状が改善するとされています。ただし、ストレス因が継続する場合や、適切な治療を受けずに放置した場合は、症状が長引いたり、うつ病などに移行したりする可能性もあります。早期に専門医を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

適応障害で休職する場合、どのくらいの期間が必要ですか?

適応障害による休職期間は個人差がありますが、一般的には3か月から6か月程度が目安とされています。ただし、回復のスピードは人それぞれであり、ストレス因の性質や重症度、治療への反応、周囲のサポート状況などによって大きく異なります。焦らず、主治医と相談しながら、自分のペースで回復を目指すことが大切です。

適応障害と診断されましたが、仕事を続けることはできますか?

症状の程度や職場環境によっては、休職せずに仕事を続けながら治療することも可能です。ただし、業務量の調整、部署異動、時短勤務などの環境調整が必要になることが多いです。無理に仕事を続けることで症状が悪化するリスクもあるため、主治医や職場と相談しながら、自分に合った働き方を検討することが重要です。

適応障害で傷病手当金は受け取れますか?

健康保険に加入していて、業務外の理由による病気で仕事を休み、給与が支払われない場合、傷病手当金を受け取ることができます。適応障害も対象となります。支給額はおおよそ給与の3分の2程度で、支給期間は最長1年6か月(通算)です。申請には医師の証明が必要なため、定期的に通院を続けることが重要です。

適応障害の再発を防ぐにはどうすればよいですか?

再発を防ぐためには、まず自分がどのような状況でストレスを感じやすいかを理解することが重要です。ストレスの早期警告サインを把握し、適切な対処法を身につけておきましょう。また、定期的な通院を継続し、生活リズムを整え、適度な運動や趣味の時間を確保することも大切です。職場復帰後は無理をせず、段階的に業務量を増やしていくことをおすすめします。

📚 参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

保有資格

ミラドライ認定医

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任
  • 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
  • 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
  • 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
  • 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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