はじめに
「カロナールを2錠飲んでしまった」という経験は、誰にでも起こりうる服薬ミスの一つです。痛みや発熱があるとき、つい間違って指示された量より多く飲んでしまったり、前に飲んだことを忘れて再度服用してしまったりすることがあります。このような状況に直面すると、「大丈夫だろうか」「すぐに病院に行くべきか」と不安になるのは当然のことです。
本記事では、カロナールの基本的な知識から、誤って多く服用してしまった場合の対処法、そして日頃から気をつけるべきポイントまで、医療の専門家の視点から詳しく解説していきます。アイシークリニック東京院では、患者様の安全な医薬品使用を支援するため、正確な情報提供を心がけています。

カロナールとは:基礎知識
カロナールの成分と特徴
カロナールは、アセトアミノフェンを主成分とする解熱鎮痛薬です。アセトアミノフェンは世界中で広く使用されている医薬品で、日本では1960年代から使用されてきた歴史のある薬剤です。
一般的な特徴として、以下の点が挙げられます。
カロナールは比較的穏やかな作用を持つ解熱鎮痛薬として知られています。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と比べて胃腸への負担が少ないとされており、高齢者や胃腸の弱い方にも処方されやすい薬です。また、小児から成人まで幅広い年齢層で使用できる点も特徴の一つです。
カロナールの作用機序
アセトアミノフェンがどのように効くのかについては、中枢神経系における作用が主であると考えられています。脳の体温調節中枢や痛みを感じる中枢に作用することで、熱を下げたり痛みを和らげたりする効果を発揮します。
ただし、NSAIDsのような強い抗炎症作用は持っていません。そのため、炎症を直接抑える必要がある場合には、他の薬剤が選択されることもあります。
カロナールの種類と規格
カロナールには複数の規格があり、患者の年齢や症状に応じて使い分けられています。
主な製剤として、カロナール錠200mg、カロナール錠300mg、カロナール錠500mgなどの錠剤のほか、細粒やシロップ剤、坐剤なども存在します。それぞれ含まれるアセトアミノフェンの量が異なるため、服用する際には必ず処方された規格を確認することが重要です。
カロナールの適正用量
成人の標準的な用量
成人の場合、アセトアミノフェンの1回量は通常300mgから500mg程度、1日の総量は最大4000mgまでとされていますが、実際の処方では安全性を考慮してより少ない量が設定されることが一般的です。
具体的には、1回300mgから500mgを1日3回から4回程度、必要に応じて服用するという指示が多く見られます。服用間隔については、最低4時間から6時間空けることが推奨されています。
体重や年齢による調整
小児の場合は、体重1kgあたり10mgから15mg程度が1回量の目安とされ、これを1日3回から4回に分けて服用します。ただし、1日の総量には上限があり、適切な量を超えないよう注意が必要です。
高齢者の場合は、肝機能や腎機能が低下していることが多いため、通常よりも少ない量から開始したり、服用間隔を長めに設定したりすることがあります。
処方指示の重要性
医師から処方されたカロナールには、必ず服用方法が記載されています。この指示は、患者個人の状態を考慮して決められたものですので、必ず守ることが大切です。
「1回1錠、1日3回まで」という指示であれば、1日に服用できるのは3錠までということになります。この指示を超えて服用することは、意図しない健康リスクを招く可能性があります。
カロナール2錠を飲んでしまった場合のリスク評価
状況による危険度の違い
「カロナール2錠を飲んでしまった」という場合、その危険度は状況によって大きく異なります。重要なのは、以下のような点です。
まず、本来1回1錠のところを2錠飲んでしまったのか、それとも短時間のうちに2回分を飲んでしまったのかによって、リスクは変わってきます。また、飲んだのがカロナール200mgなのか500mgなのかによっても、摂取した総量が異なります。
1回量として2錠飲んだ場合
例えば、カロナール300mgを1回1錠のところ、誤って2錠(合計600mg)飲んでしまった場合を考えてみましょう。この場合、1回の摂取量としてはやや多めですが、成人の1回量の範囲内または許容範囲に近い量であることが多いです。
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、個人の体重、年齢、肝機能の状態などによって安全域は変わってきます。特に体重の軽い方や肝機能に問題がある方の場合は、通常よりも注意が必要です。
短時間に2回分飲んだ場合
より問題となるのは、前回の服用を忘れて短時間のうちにもう1回分飲んでしまった場合です。例えば、2時間前にカロナールを飲んだことを忘れて、再度服用してしまったようなケースです。
この場合、服用間隔が短すぎることで、血中濃度が想定より高くなる可能性があります。アセトアミノフェンの血中濃度が高すぎる状態が続くと、肝臓への負担が増大するリスクがあります。
小児や高齢者の場合
小児や高齢者では、成人と比べて薬物の代謝能力が異なるため、同じ量でも影響が大きく出る可能性があります。
特に小児の場合、体重が少ないことから、成人と同じ量を服用すれば相対的な過剰摂取となります。高齢者の場合は、肝臓や腎臓の機能が低下していることが多く、薬が体内に長く留まりやすくなります。
アセトアミノフェン過剰摂取の症状と時間経過
初期段階(服用後24時間以内)
アセトアミノフェンを過剰に摂取した場合、初期には特に症状が現れないことも少なくありません。この無症状期があることが、過剰摂取の発見を遅らせる要因の一つとなっています。
症状が出る場合、最初に現れるのは以下のような消化器症状です。吐き気、嘔吐、食欲不振、腹痛、発汗などが見られることがあります。これらの症状は、他の消化器疾患と区別がつきにくいこともあります。
中期段階(24時間から72時間)
服用後24時間から48時間が経過すると、肝臓への影響が現れ始める可能性があります。この段階では、右上腹部の痛みや圧痛が出現することがあります。また、血液検査を行うと、肝機能を示す数値(AST、ALT、ビリルビンなど)の上昇が認められることがあります。
重症例での進行
大量のアセトアミノフェンを摂取した重症例では、さらに時間が経過すると肝不全に進行する可能性があります。黄疸、意識障害、出血傾向などの症状が現れる場合があります。
ただし、これは通常の服用量の数倍以上を摂取した場合に起こりうる事態であり、1錠や2錠多く飲んだ程度では、このような重篤な状態に至ることは稀です。
慢性的な過剰摂取
注意が必要なのは、毎日少しずつ多めに服用し続けるような慢性的な過剰摂取です。急性の大量摂取ほど劇的な症状は出なくても、長期的には肝臓に負担をかけ続けることになります。
特に、飲酒習慣がある方、もともと肝機能に問題がある方、他の薬剤を併用している方などでは、通常量でも影響が出やすいことがあります。
2錠飲んでしまった直後の対処法
まず確認すべきこと
カロナールを誤って多く飲んでしまったことに気づいたら、まず落ち着いて以下の点を確認しましょう。
何mgの錠剤を何錠飲んだのか、前回の服用からどれくらい時間が経っているか、現在の体調はどうか、他に服用している薬はあるか、アルコールを飲んでいないか、といった情報を整理します。
医療機関への相談
少しでも不安がある場合や、以下のような状況に該当する場合は、医療機関や薬剤師に相談することをお勧めします。
小児や高齢者が誤って多く飲んだ場合、カロナール500mgを2錠以上飲んだ場合、短時間(4時間以内)に2回分飲んだ場合、肝機能に問題があることがわかっている場合、普段からアルコールを多く飲む習慣がある場合などです。
電話相談の活用
すぐに医療機関を受診すべきか判断に迷う場合は、以下のような相談窓口を利用できます。
日本中毒情報センターの中毒110番は、化学物質や医薬品による中毒について、無料で相談できるサービスです。一般市民向けには、大阪中毒110番(365日24時間対応)と、つくば中毒110番(365日9時から21時対応)があります。
また、処方を受けた医療機関や調剤薬局に電話で相談することも有効です。休日や夜間であっても、地域の救急医療情報センターや、自治体の医療相談窓口などを利用できる場合があります。
自己判断での対処
少量の誤服用で、明らかな症状がない場合は、以下のような対処を行います。
まず、次の服用時間まで十分な間隔を空けることです。通常の服用間隔である4時間から6時間以上、できれば8時間程度空けるとより安全です。
水分を十分に摂取することも大切です。ただし、無理に嘔吐を誘発することは避けてください。アセトアミノフェンは吸収が早いため、飲んでから時間が経っている場合は、嘔吐を誘発しても効果が期待できないばかりか、かえって危険な場合があります。
すぐに医療機関を受診すべき症状
緊急性の高い症状
カロナールを多く飲んだ後、以下のような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
持続する吐き気や嘔吐、激しい腹痛、特に右上腹部の痛み、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)、意識がもうろうとする、異常な眠気、尿の色が濃くなる、出血しやすくなる(鼻血、歯茎からの出血など)といった症状です。
これらは肝機能障害を示唆する可能性がある症状で、早期の医療介入が必要となる場合があります。
受診時に伝えるべき情報
医療機関を受診する際は、以下の情報を正確に伝えることが重要です。
飲んだ薬の名前と規格(例:カロナール300mg)、飲んだ錠数、飲んだ時刻、普段の処方内容、前回の服用時刻、現在の症状、併用している他の薬、飲酒の有無、もともとの肝機能の状態(わかれば)などです。
可能であれば、薬の説明書や処方箋、お薬手帳などを持参すると、より正確な判断が可能になります。
検査と治療
医療機関では、必要に応じて以下のような対応が行われます。
血液検査により、肝機能(AST、ALT、ビリルビンなど)を確認します。摂取量が多い場合や、症状がある場合は、アセトアミノフェンの血中濃度を測定することもあります。
治療としては、アセトアミノフェンの解毒剤であるN-アセチルシステイン(商品名:ムコフィリンなど)の投与が検討される場合があります。この薬剤は、アセトアミノフェンの有害な代謝産物を無毒化し、肝臓を保護する作用があります。
ただし、通常の服用量の数倍程度の摂取であれば、経過観察のみで済むことも多くあります。
肝臓への影響とリスク因子
アセトアミノフェンと肝臓の関係
アセトアミノフェンは主に肝臓で代謝されます。通常の用量では、大部分が無害な代謝産物に変換されて尿中に排泄されますが、一部は有害な代謝産物(N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン、略してNAPQI)に変換されます。
通常量であれば、このNAPQIは肝臓に豊富に存在するグルタチオンという物質によって速やかに無毒化されます。しかし、過剰摂取によってNAPQIが大量に生成されると、グルタチオンが枯渇し、肝細胞が障害を受ける可能性があります。
リスクを高める要因
以下のような要因がある場合、通常量でも肝臓への影響が出やすくなることがあります。
慢性的な飲酒習慣は、肝臓のアセトアミノフェン代謝能力に影響を与えます。アルコールは肝臓の代謝酵素を誘導し、有害な代謝産物の生成を増やす可能性があります。また、慢性的な飲酒により肝臓のグルタチオンが減少していることもあります。
もともと肝疾患がある方(慢性肝炎、肝硬変など)、栄養状態が不良な方、長期間の絶食状態にある方なども、グルタチオンが減少していることがあります。
他の薬剤との相互作用
一部の薬剤は、アセトアミノフェンの代謝に影響を与えることがあります。
例えば、抗てんかん薬(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピンなど)や、抗結核薬(リファンピシンなど)は、肝臓の代謝酵素を誘導し、有害な代謝産物の生成を増やす可能性があります。
また、複数の薬剤を服用している場合、それぞれが肝臓で代謝されるため、肝臓への負担が増加することがあります。
安全な使用のための肝機能管理
肝機能に不安がある方、長期的にカロナールを使用する必要がある方は、定期的に血液検査で肝機能をチェックすることが推奨されます。
特に、他の薬剤も併用している場合や、基礎疾患がある場合は、医師と相談しながら適切な服用量と服用期間を決めることが大切です。
カロナールを含む市販薬との重複に注意
市販薬にもアセトアミノフェンが含まれている
カロナールの成分であるアセトアミノフェンは、多くの市販薬にも含まれています。特に、総合感冒薬(風邪薬)や解熱鎮痛薬には、高い確率でアセトアミノフェンが配合されています。
代表的な市販薬としては、タイレノール、バファリンプレミアム、ノーシンなど、多数の製品があります。商品名だけでは成分がわかりにくいため、注意が必要です。
重複服用のリスク
医師から処方されたカロナールを服用しながら、さらに市販の風邪薬を飲むと、知らず知らずのうちにアセトアミノフェンを過剰摂取してしまう可能性があります。
例えば、「カロナール300mgを1日3回」という処方を受けている方が、さらに市販の総合感冒薬(アセトアミノフェン300mgから900mg含有)を1日3回服用すると、1日の総摂取量が大幅に増えてしまいます。
成分表示の確認方法
市販薬を購入する際は、必ず成分表示を確認しましょう。「アセトアミノフェン」または「Acetaminophen」という記載があれば、カロナールと同じ成分が含まれています。
パッケージの裏面や添付文書に、配合成分が記載されています。わからない場合は、薬剤師に相談することをお勧めします。
市販薬使用時の注意点
処方薬としてカロナールを服用している場合、市販薬を購入する前に以下の点を確認しましょう。
市販薬にアセトアミノフェンが含まれていないか、含まれている場合は、処方薬と合わせた総量が1日の上限を超えないか、可能であれば、購入前に処方医や薬剤師に相談する、といった点です。
また、お薬手帳を活用し、処方薬と市販薬の両方を記録しておくことで、重複を防ぐことができます。
アルコールとの併用リスク
アルコールがアセトアミノフェンに与える影響
アルコールとアセトアミノフェンの併用は、肝臓へのリスクを高める可能性があります。これには、急性的な影響と慢性的な影響の両方があります。
急性的には、アルコールを飲んだ直後にアセトアミノフェンを服用しても、通常量であれば大きな問題となることは少ないとされています。しかし、慢性的な飲酒習慣がある場合は、注意が必要です。
慢性飲酒者におけるリスク
1日に3杯以上のアルコール飲料を習慣的に飲む方は、アセトアミノフェンの代謝が変化していることがあります。
慢性的な飲酒により、肝臓の代謝酵素(CYP2E1)が誘導され、有害な代謝産物の生成が増える可能性があります。また、栄養状態の悪化により、グルタチオンが減少していることもあります。
このような状態で通常量のアセトアミノフェンを服用しても、肝障害のリスクが高まる可能性があります。
安全な使用のための指針
アルコールを飲む習慣がある方は、以下の点に注意してください。
カロナールを服用する場合は、できるだけアルコールを控えること、やむを得ず飲酒する場合は、カロナール服用から少なくとも4時間から6時間以上空けること、慢性的に飲酒している場合は、医師にその旨を伝え、適切な薬の選択や用量調整を相談すること、などです。
また、二日酔いの頭痛にカロナールを使用する場合も、前夜の飲酒量が多かった場合は注意が必要です。
添付文書の警告
多くのアセトアミノフェン含有製品の添付文書には、「1日に3杯以上アルコール飲料を飲む方は、医師または薬剤師に相談してください」という警告が記載されています。
これは、慢性的な飲酒者における肝障害リスクを考慮したものです。該当する方は、自己判断せず、必ず医療専門家に相談することが重要です。
服薬管理と誤飲防止のための実践的な方法
服薬記録の活用
カロナールを含め、複数の薬を服用している場合は、服薬記録をつけることが効果的です。
簡単な方法として、スマートフォンのメモ機能やカレンダーアプリを利用する方法があります。服用時刻と薬の種類を記録しておくことで、「飲んだかどうかわからない」という状況を防げます。
また、市販の服薬管理アプリも多数ありますので、自分に合ったものを選んで使用するのもよいでしょう。
お薬カレンダーやピルケースの使用
視覚的に服薬状況を確認できるツールとして、お薬カレンダーやピルケースがあります。
お薬カレンダーは、曜日や時間帯ごとに薬を入れておくポケットがついた壁掛けまたは卓上のツールです。朝・昼・夕・就寝前などに分けて薬をセットしておけば、飲み忘れや重複服用を防ぐことができます。
ピルケースも同様に、1週間分や1日分の薬を分けて入れておくことができます。飲んだ後は空になるので、服用したかどうかが一目でわかります。
アラーム機能の活用
服薬時刻にアラームを設定しておくことも有効です。スマートフォンのアラーム機能を使えば、毎日決まった時間に通知を受け取ることができます。
また、服薬時刻だけでなく、次回服用可能な時刻もアラームに設定しておくと、短時間での重複服用を防ぐことができます。
家族や介護者との情報共有
高齢者や小児の場合、家族や介護者が服薬管理をサポートすることも重要です。
服用時には可能な限り立ち会い、確実に服用したことを確認します。また、誤って多く飲んでしまった場合にすぐに気づけるよう、薬の保管場所や服用記録を共有しておくことが大切です。
薬の保管方法の工夫
誤飲を防ぐためには、薬の保管方法も重要です。
複数の薬を服用している場合は、それぞれを明確に区別できるよう、ラベルを貼ったり、別々の容器に入れたりします。特に、同じような外見の薬がある場合は、混同しないよう注意が必要です。
また、薬は子供の手の届かない場所、直射日光や高温多湿を避けた場所に保管します。使用期限が切れた薬は速やかに処分しましょう。
長期使用時の注意点
カロナールの長期使用について
カロナールは比較的安全な薬とされていますが、長期間にわたって連用する場合は、いくつかの注意点があります。
慢性的な痛みに対して長期間使用する場合、定期的に医師の診察を受け、肝機能などをチェックすることが推奨されます。また、痛みの原因そのものに対する治療も並行して行うことが重要です。
薬剤性頭痛のリスク
頭痛に対してカロナールを頻繁に使用していると、逆に「薬剤の使用過多による頭痛」(薬物乱用頭痛)を引き起こす可能性があります。
月に10日以上、頭痛薬を使用している場合は、この可能性を考慮する必要があります。該当する方は、頭痛専門医や神経内科医に相談することをお勧めします。
依存や耐性について
カロナール自体に精神依存を起こす作用はほとんどありませんが、痛みへの不安から薬に頼りがちになることはあります。
また、長期使用により効果が感じにくくなったと感じる場合もあります。このような場合、自己判断で量を増やすのではなく、医師に相談して適切な対処法を検討することが大切です。
定期的な見直しの重要性
長期間カロナールを使用している場合は、定期的に以下のような見直しを行いましょう。
本当に現在も薬が必要な状態か、効果は適切に得られているか、副作用や肝機能への影響は出ていないか、より適切な治療法はないか、などです。
慢性痛に対しては、薬物療法以外にも、理学療法、運動療法、心理的アプローチなど、多角的な治療が有効な場合があります。
小児における注意点
小児の服薬管理の重要性
小児の場合、誤飲のリスクが特に高いため、保護者の方の十分な注意が必要です。
小児用のカロナールは、シロップ剤や細粒など、飲みやすい剤形で提供されることが多いですが、甘い味がついているため、子供が喜んで飲んでしまうことがあります。
適切な用量の確認
小児の用量は体重に基づいて計算されるため、成長に伴って用量が変わることがあります。以前処方された薬が残っていても、それが現在の体重に適した量とは限りません。
必ず最新の処方に従い、古い薬は使用しないようにしましょう。不明な点があれば、処方医や薬剤師に確認することが大切です。
誤飲防止のための保管
小児がいる家庭では、薬の保管には特に注意が必要です。
チャイルドロック付きの容器に入れる、高い場所や鍵のかかる場所に保管する、子供の目につく場所に置かない、「お薬は大人と一緒に飲もうね」と日頃から教育する、などの対策が有効です。
誤飲時の対応
万が一、小児がカロナールを誤飲してしまった場合は、速やかに医療機関に連絡し、指示を仰いでください。
その際、何をどれだけ飲んだのか、いつ飲んだのか、現在の症状はどうか、などの情報を正確に伝えることが重要です。
妊娠・授乳中の使用について
妊娠中のカロナール使用
妊娠中の解熱鎮痛薬の使用については、慎重な判断が必要です。カロナールは、妊娠中でも比較的安全に使用できる薬とされていますが、必要最小限の使用にとどめることが推奨されます。
特に妊娠後期の長期使用は避けるべきとされています。妊娠中に発熱や痛みがある場合は、自己判断せず、必ず産科医に相談してください。
授乳中のカロナール使用
カロナールは母乳中への移行が少ないため、授乳中でも使用できるとされています。ただし、やはり必要最小限の使用が原則です。
授乳中に薬が必要な場合は、医師や薬剤師に授乳中であることを必ず伝え、適切な薬と用量を選択してもらいましょう。
代替療法と非薬物的アプローチ
軽度の痛みや発熱への対処
軽度の症状であれば、まず非薬物的な方法を試してみることも一つの選択肢です。
発熱時は、十分な水分補給、涼しい環境での安静、氷枕や冷却シートの使用などが有効です。頭痛に対しては、静かな暗い部屋で休む、首や肩のマッサージ、温かいタオルでの温罨法などが効果的な場合があります。
生活習慣の見直し
慢性的な痛みの場合、生活習慣の見直しが根本的な改善につながることがあります。
適度な運動、十分な睡眠、バランスの取れた食事、ストレス管理などは、体の自然な治癒力を高めます。
薬に頼りすぎない姿勢
薬は症状を和らげる有効な手段ですが、万能ではありません。症状の根本原因に対処せず、薬だけに頼っていると、かえって状態が悪化することもあります。
特に、痛みが長期間続く場合や、頻繁に薬を必要とする場合は、医師に相談し、原因の精査や総合的な治療計画を立てることが重要です。
医療機関での適切な情報提供
受診時に伝えるべき情報
医療機関を受診する際は、以下のような情報を正確に伝えることが、適切な診断と治療につながります。
現在服用している全ての薬(処方薬、市販薬、サプリメントを含む)、過去の薬に対するアレルギーや副作用の経験、肝臓や腎臓の病気の有無、飲酒習慣、他の医療機関にかかっているかどうか、などです。
お薬手帳の活用
お薬手帳は、これらの情報を一元管理するのに非常に便利なツールです。複数の医療機関や薬局を利用していても、お薬手帳を提示することで、重複処方や相互作用のチェックが可能になります。
最近では、スマートフォンで管理できる電子版のお薬手帳もありますので、自分に合った方法で記録を残しましょう。
正直な申告の重要性
医師や薬剤師に対しては、正直に情報を伝えることが大切です。
例えば、「実は処方された量より多く飲んでしまうことがある」「市販薬も併用している」「お酒を結構飲む」といった情報は、医療者にとって重要な判断材料となります。
責められることはありませんので、安心して相談してください。

まとめ:安全な服薬のために
カロナール2錠飲んでしまった場合の基本対応
本記事で解説してきたように、カロナールを誤って多く飲んでしまった場合の対応は、状況によって異なります。
少量の誤服用であれば、次の服用までの間隔を十分に空け、症状の変化に注意しながら経過を見ることで問題ない場合が多いです。一方で、大量に飲んでしまった場合や、何らかの症状が現れた場合は、速やかに医療機関に相談することが重要です。
予防が最も重要
しかし、何よりも大切なのは、誤服用を予防することです。服薬記録をつける、お薬カレンダーやピルケースを活用する、アラームを設定する、といった簡単な工夫で、多くの誤服用は防ぐことができます。
正しい知識を持つこと
カロナールは広く使われている安全性の高い薬ですが、使い方を誤れば健康リスクとなる可能性があります。薬の作用、適切な用量、リスク因子などについて正しい知識を持つことが、安全な使用の第一歩です。
困ったときは専門家に相談
薬について不安や疑問がある場合は、自己判断せず、医師や薬剤師に相談しましょう。些細な質問でも構いません。専門家は、あなたの安全な服薬をサポートするために存在しています。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました。
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医薬品インタビューフォーム カロナール錠」
https://www.pmda.go.jp/ - 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性肝障害」
https://www.mhlw.go.jp/ - 日本中毒情報センター「アセトアミノフェンの中毒情報」
https://www.j-poison-ic.jp/ - 一般社団法人日本肝臓学会「肝疾患診療マニュアル」
https://www.jsh.or.jp/ - 公益社団法人日本薬剤師会「一般用医薬品の適正使用」
https://www.nichiyaku.or.jp/ - 国立研究開発法人国立国際医療研究センター「薬剤師のための臨床情報」
https://www.ncgm.go.jp/ - 厚生労働省「医薬品・医療機器等安全性情報」
https://www.mhlw.go.jp/
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務