はじめに
お尻に痛みを伴う赤いできものができると、座るときの不快感や痛みだけでなく、人に相談しづらい悩みとして一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。「病院に行くべきなのか」「自然に治るのか」「何が原因なのか」と不安を感じている方も多いでしょう。
お尻にできる痛みを伴う赤いできものには、さまざまな原因があります。毛穴の炎症による単純なニキビのようなものから、専門的な治療が必要な疾患まで幅広く存在します。症状を正しく理解し、適切な対処をすることで、早期の改善が期待できます。
本記事では、お尻にできる痛みを伴う赤いできものの主な原因、それぞれの特徴、治療法、そして日常生活でできる予防法について詳しく解説していきます。

お尻にできものができやすい理由
お尻は体の中でも特にできものができやすい部位といえます。その理由を理解することで、予防や対処の参考になります。
1. 蒸れやすい環境
お尻は下着や衣服で常に覆われているため、湿度が高く蒸れやすい環境にあります。特に夏場や運動後は汗をかきやすく、細菌が繁殖しやすい条件が整ってしまいます。高温多湿な環境は、毛穴の詰まりや細菌感染を引き起こす要因となります。
2. 摩擦や圧迫
座る動作では体重がお尻に集中してかかります。また、歩行時には太ももとの摩擦も生じます。この継続的な圧迫や摩擦によって、皮膚が刺激を受け、炎症を起こしやすくなります。特にデスクワークで長時間座り続ける方や、きつい下着を着用している方は注意が必要です。
3. 皮脂腺や汗腺が多い
お尻には皮脂腺や汗腺が多く分布しています。皮脂や汗の分泌が過剰になると、毛穴が詰まりやすくなり、細菌の温床となってしまいます。特に体質的に皮脂分泌が多い方は、お尻にもできものができやすい傾向があります。
4. 清潔を保ちにくい
お尻は自分の目で直接確認しにくい部位であり、また洗浄も他の部位に比べて十分に行えないことがあります。シャワーで簡単に済ませてしまったり、石鹸の洗い残しがあったりすると、清潔が保たれず、皮膚トラブルの原因となります。
痛みを伴う赤いできものの主な原因
お尻にできる痛みを伴う赤いできものには、いくつかの代表的な原因があります。それぞれの特徴を理解することで、適切な対処が可能になります。
1. 毛嚢炎(もうのうえん)
症状の特徴
毛嚢炎は、毛穴の奥にある毛包(毛嚢)に細菌が感染して炎症を起こす疾患です。お尻にできる赤く痛いできものの中で最も一般的な原因の一つです。
初期段階では、毛穴を中心に小さな赤いブツブツができます。触れると痛みがあり、中心部に白い膿を持つこともあります。大きさは通常数ミリ程度ですが、炎症が進行すると1センチ程度まで大きくなることもあります。
原因
主な原因菌は黄色ブドウ球菌です。この細菌は健康な皮膚にも常在していますが、何らかの理由で毛穴から侵入すると感染を引き起こします。
毛嚢炎を引き起こす要因として以下が挙げられます:
- 蒸れや不衛生な環境
- カミソリや除毛による皮膚の損傷
- 摩擦や圧迫による刺激
- 免疫力の低下
- ステロイド薬の長期使用
治療法
軽度の場合は、清潔を保つことで自然に治癒することもあります。しかし、痛みが強い場合や範囲が広がる場合は、医療機関での治療が必要です。
抗生物質の外用薬や内服薬による治療が基本となります。膿が溜まっている場合は、切開して排膿する処置が行われることもあります。
2. おでき(せつ・よう)
症状の特徴
おできは、毛嚢炎がさらに進行して深い部分まで炎症が広がった状態です。医学的には「せつ」と呼ばれ、複数のおできが融合したものを「よう」と呼びます。
毛嚢炎よりも大きく、1〜3センチ程度の赤く腫れたしこりができます。痛みも強く、ズキズキとした拍動性の痛みを感じることがあります。中心部に膿の芯ができ、成熟すると自然に破れて膿が出ることもあります。
周囲の皮膚も赤く腫れ上がり、熱を持つことがあります。全身症状として発熱やリンパ節の腫れを伴うこともあります。
原因
毛嚢炎と同様に、主に黄色ブドウ球菌の感染が原因です。以下のような状態で発症しやすくなります:
- 糖尿病など免疫力が低下する疾患
- 栄養状態の不良
- 疲労やストレスの蓄積
- 不衛生な環境
- 肥満
治療法
おできの治療には、抗生物質の投与が基本となります。軽症の場合は外用薬で対応できますが、多くの場合、内服薬が必要になります。
膿が十分に溜まっている場合は、局所麻酔下で切開して排膿する処置が行われます。この処置により痛みが劇的に改善することが多くあります。
炎症が広範囲に及んでいる場合や、全身症状がある場合は、点滴による抗生物質投与が必要になることもあります。
3. 粉瘤(ふんりゅう・アテローム)
症状の特徴
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まってしこりを形成する良性腫瘍です。「表皮嚢腫」とも呼ばれます。
通常は痛みのない皮膚色〜やや黄色みを帯びたしこりですが、細菌感染を起こすと「炎症性粉瘤」となり、赤く腫れて強い痛みを伴います。感染した粉瘤は急速に大きくなり、周囲の皮膚も赤く腫れ上がります。
特徴的なのは、しこりの表面に黒い点(開口部)が見られることがあることです。また、圧迫すると悪臭を伴うドロドロした内容物が出ることがあります。
原因
粉瘤ができる明確な原因は完全には解明されていませんが、以下のような要因が考えられています:
- 外傷による表皮の陥入
- 毛穴の詰まり
- 体質的要因
- ウイルス感染(ヒトパピローマウイルスなど)
お尻は圧迫や摩擦を受けやすく、これらの要因が重なりやすい部位といえます。
治療法
炎症を起こしている場合は、まず抗生物質で感染を抑える治療が行われます。膿が溜まっている場合は切開排膿が必要です。
しかし、粉瘤は袋状の構造物が残っている限り再発する可能性があります。根本的な治療には、袋ごと摘出する手術が必要です。
炎症が治まった後、数週間〜数ヶ月経過してから、局所麻酔下で摘出手術を行うのが一般的です。炎症が激しい時期に手術を行うと、再発リスクが高まるため、時期を選ぶことが重要です。
4. 化膿性汗腺炎(かのうせいかんせんえん)
症状の特徴
化膿性汗腺炎は、アポクリン汗腺が多く分布する部位に慢性的な炎症を起こす疾患です。お尻のほか、わきの下や鼠径部(股の付け根)にも発症します。
初期には、毛嚢炎やおできのような赤く痛いしこりができます。しかし、この疾患の特徴は再発を繰り返すことです。炎症を繰り返すうちに、皮膚の下でトンネル状の構造(瘻孔)が形成され、複数の開口部から膿が出るようになります。
進行すると皮膚が硬く肥厚し、瘢痕(傷跡)が残ります。慢性的な痛みと膿の排出に悩まされ、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
原因
化膿性汗腺炎の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています:
- 毛包の閉塞
- 免疫系の異常
- 遺伝的要因
- 喫煙
- 肥満
- ホルモンバランスの乱れ
男性より女性にやや多く、思春期以降に発症することが多い疾患です。
治療法
化膿性汗腺炎の治療は段階的に行われます。
軽症の場合は、抗生物質の内服や外用、レチノイド(ビタミンA誘導体)の使用が試みられます。生活習慣の改善、特に禁煙と体重管理も重要です。
中等症以上では、生物学的製剤(TNFα阻害薬など)の投与が検討されます。これらの薬剤は免疫系の過剰な反応を抑制し、炎症を改善させます。
瘻孔が形成された重症例では、外科的治療が必要になります。病変部を広範囲に切除し、皮膚移植を行うこともあります。
5. 毛巣洞(もうそうどう・毛巣瘻)
症状の特徴
毛巣洞は、お尻の割れ目(仙骨部)に発症する特殊な疾患です。皮膚に小さな穴(洞)ができ、その中に毛が入り込んで炎症を起こします。
感染すると、お尻の割れ目の上部(尾骨付近)に赤く腫れた痛みのあるしこりができます。膿や血液が混じった分泌物が出ることもあります。座るときに強い痛みを感じ、長時間座ることが困難になることもあります。
原因
毛巣洞の発症には以下の要因が関与しています:
- 体毛が濃い
- 長時間の座位(運転手など)
- 肥満
- 深いお尻の割れ目
- 外傷
特に若い男性に多く見られる疾患です。体毛が皮膚に入り込み、異物反応を起こして炎症が生じると考えられています。
治療法
急性期で炎症が強い場合は、抗生物質の投与と切開排膿が行われます。
しかし、毛巣洞も根本的な治療には手術が必要です。洞(穴)と周囲の感染組織を完全に切除します。切除範囲によって、縫合閉鎖する方法と、開放創として治癒させる方法があります。
再発を防ぐためには、術後の毛の処理(レーザー脱毛など)が推奨されることもあります。
6. 尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう・ニキビ)
症状の特徴
一般的に「ニキビ」と呼ばれる尋常性痤瘡は、顔だけでなくお尻にもできることがあります。お尻のニキビは、顔のニキビと比べて炎症が強く、痛みを伴いやすい傾向があります。
初期には、白ニキビ(閉鎖面皰)や黒ニキビ(開放面皰)として現れます。これらが炎症を起こすと、赤く腫れて痛みを伴う赤ニキビ(炎症性痤瘡)になります。さらに進行すると、膿を持つ黄ニキビ(膿疱性痤瘡)や、しこりのような硬いニキビ(硬結性痤瘡)になることもあります。
原因
お尻のニキビの原因は、顔のニキビと基本的には同じメカニズムです:
- 毛穴の詰まり(角化異常)
- 皮脂の過剰分泌
- アクネ菌の増殖
- 炎症反応
お尻特有の要因として、座位による圧迫、蒸れ、摩擦などが症状を悪化させます。また、ホルモンバランスの乱れ、ストレス、不規則な生活習慣なども影響します。
治療法
軽症の場合は、適切なスキンケアで改善することもあります。しかし、炎症が強い場合は医療機関での治療が推奨されます。
治療には以下のような方法があります:
- 外用薬:過酸化ベンゾイル、アダパレン、抗生物質など
- 内服薬:抗生物質、ビタミン剤、ホルモン療法(女性の場合)
- ケミカルピーリング:皮膚表面の角質を除去
- レーザー治療:アクネ菌の殺菌や皮脂分泌の抑制
診断のプロセス
お尻の痛みを伴う赤いできものの診断は、以下のようなプロセスで行われます。
問診
医師は症状の詳細について質問します:
- いつから症状があるか
- どのような経過をたどっているか
- 痛みの程度と性質
- 過去に同様の症状があったか
- 基礎疾患の有無
- 使用している薬剤
- 生活習慣(座位時間、運動習慣、衛生習慣など)
視診・触診
患部を直接観察し、触れて確認します。医師が確認するポイントは:
- できものの大きさ、形状、色
- 圧痛の有無と程度
- 波動(膿が溜まっているときに感じる揺れ)の有無
- 熱感の有無
- 周囲の皮膚の状態
- 開口部や瘻孔の有無
検査
必要に応じて以下の検査が行われます:
- 細菌培養検査:膿や分泌物を採取し、原因菌を特定
- 血液検査:炎症の程度や全身状態を確認
- 超音波検査:皮膚の深部の状態を確認
- MRI検査:化膿性汗腺炎など、深部の病変を評価
- 病理検査:摘出した組織を顕微鏡で観察し、良性・悪性を判定
治療の選択肢
お尻の痛みを伴う赤いできものの治療は、原因疾患に応じて選択されます。
保存的治療
1. 外用薬
抗生物質軟膏、抗炎症薬、角質溶解薬などが使用されます。清潔にした患部に適量を塗布します。
2. 内服薬
- 抗生物質:細菌感染に対して使用
- 抗炎症薬:痛みや炎症を軽減
- ビタミン剤:皮膚の修復を促進
- 免疫調整薬:化膿性汗腺炎などで使用
3. 注射療法
炎症が強い場合、ステロイドの局所注射が行われることがあります。炎症を迅速に抑制する効果があります。
外科的治療
1. 切開排膿
膿が溜まっている場合の応急処置として行われます。局所麻酔下で小さく切開し、膿を排出します。痛みが速やかに軽減されますが、根本的な治療ではないため、再発する可能性があります。
2. 摘出手術
粉瘤や毛巣洞など、袋状の構造物が原因の場合は、これを完全に摘出する手術が行われます。局所麻酔下で行われることが多く、日帰り手術が可能な場合もあります。
3. 広範囲切除術
化膿性汗腺炎の重症例では、病変部を広範囲に切除し、必要に応じて皮膚移植を行います。入院が必要になることもあります。
最新の治療法
1. 生物学的製剤
化膿性汗腺炎に対して、TNFα阻害薬などの生物学的製剤が使用されるようになっています。免疫系の過剰な反応を抑制し、症状を改善させます。
2. レーザー治療
毛根を破壊するレーザー脱毛は、毛嚢炎や毛巣洞の予防に効果的です。また、ニキビに対する特殊なレーザー治療も開発されています。
3. 光線力学療法(PDT)
特殊な薬剤と光を組み合わせてアクネ菌を殺菌する治療法です。重症ニキビに対して効果が期待されています。
自宅でできるケアと予防法
医療機関での治療と並行して、日常生活でのケアも症状改善には重要です。
清潔の保持
1. 適切な洗浄
- 1日1回以上、お尻を丁寧に洗う
- 低刺激性の石鹸やボディソープを使用
- よく泡立てて、優しく洗う
- すすぎ残しがないようにしっかり流す
- 洗った後は清潔なタオルで優しく拭き取る
2. 洗いすぎに注意
過度な洗浄は皮膚のバリア機能を低下させ、かえって症状を悪化させることがあります。ゴシゴシこすったり、1日に何度も石鹸で洗ったりするのは避けましょう。
下着と衣服の選び方
1. 通気性の良い素材
綿や吸湿速乾性の素材を選びましょう。化繊100%の下着は蒸れやすいため避けるのが賢明です。
2. 適切なサイズ
きつすぎる下着は摩擦や圧迫を増やします。体に合ったサイズで、締め付けが少ないものを選びましょう。
3. こまめな着替え
汗をかいたら、できるだけ早く着替えることが重要です。特に運動後や夏場は注意しましょう。
座り方の工夫
1. 長時間座位の回避
デスクワークの方は、1時間に一度は立ち上がって軽く体を動かしましょう。
2. クッションの使用
お尻への圧力を分散させるクッションを使用すると効果的です。ドーナツ型クッションなども販売されています。
3. 姿勢の改善
正しい姿勢で座ることで、お尻への負担を軽減できます。
生活習慣の改善
1. バランスの良い食事
- ビタミンB群:皮膚の健康維持に重要
- ビタミンC:免疫力向上、コラーゲン生成
- 亜鉛:創傷治癒の促進
- 食物繊維:腸内環境の改善
脂質や糖質の過剰摂取は皮脂分泌を増やすため、控えめにしましょう。
2. 十分な睡眠
睡眠不足は免疫力を低下させ、皮膚のターンオーバーも乱れます。1日7〜8時間の睡眠を心がけましょう。
3. ストレス管理
ストレスはホルモンバランスを崩し、皮膚トラブルを悪化させます。適度な運動や趣味の時間を持つなど、ストレス解消法を見つけましょう。
4. 禁煙
喫煙は化膿性汗腺炎の危険因子です。また、創傷治癒も遅らせるため、禁煙が推奨されます。
5. 適正体重の維持
肥満は皮膚の摩擦を増やし、汗をかきやすくします。適正体重を保つことは皮膚トラブルの予防に有効です。
避けるべき行為
1. 自己判断での穿刺
自分で針などを使ってできものを潰すのは絶対に避けてください。感染を悪化させたり、瘢痕を残したりする原因になります。
2. 過度な刺激
患部を強く押したり、こすったりするのは避けましょう。
3. 不適切な薬剤の使用
自己判断でステロイド軟膏などを長期間使用すると、かえって症状を悪化させることがあります。
受診のタイミング
以下のような場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
すぐに受診すべき症状
- 激しい痛み:日常生活に支障がある程度の強い痛み
- 急速な増大:数日で大きく腫れ上がってきた
- 発熱:38度以上の発熱を伴う
- 広範囲の発赤:周囲の皮膚が広く赤く腫れている
- 全身症状:悪寒、倦怠感、食欲不振などを伴う
- リンパ節の腫れ:鼠径部のリンパ節が腫れて痛む
これらの症状は、感染が深部に広がっている可能性や、全身への影響が懸念される状態です。
早めの受診が望ましい症状
- 1週間以上改善しない:自己ケアを続けても改善が見られない
- 再発を繰り返す:同じ場所に繰り返しできものができる
- 複数箇所に発症:お尻の複数の場所にできものがある
- 硬いしこり:痛みはなくても硬いしこりが触れる
- 分泌物がある:膿や血液が出続けている
- 日常生活への支障:座ることが困難など、生活の質が低下している
適切な診療科
お尻のできものは、以下の診療科で診療を受けることができます:
- 皮膚科:皮膚疾患全般を扱い、多くの場合、最初に受診すべき診療科です
- 形成外科:手術的治療が必要な場合や、傷跡への配慮が必要な場合
- 外科:化膿性汗腺炎の重症例など、広範囲の手術が必要な場合
- 肛門外科:肛門に近い部位の疾患の場合
迷った場合は、まず皮膚科を受診することをお勧めします。必要に応じて、適切な診療科へ紹介してもらえます。
合併症と注意点
適切な治療を受けずに放置すると、以下のような合併症を起こす可能性があります。
蜂窩織炎(ほうかしきえん)
感染が皮膚の深層から皮下組織に広がった状態です。広範囲の発赤、腫脹、熱感、痛みを伴い、発熱などの全身症状も現れます。抗生物質の点滴治療が必要になることがあります。
膿瘍形成
深部に膿が溜まり、大きな膿瘍を形成することがあります。切開排膿が必要となり、治癒に時間がかかります。
瘻孔形成
慢性化した感染により、皮膚の下にトンネル状の通路(瘻孔)ができることがあります。特に化膿性汗腺炎や毛巣洞で見られます。
瘢痕・色素沈着
炎症が強かった部位は、治癒後に瘢痕(傷跡)や色素沈着を残すことがあります。早期の適切な治療により、これらのリスクを軽減できます。
敗血症
稀ですが、感染が血液中に入り込み、全身に広がる敗血症を起こすことがあります。生命に関わる重篤な状態であり、緊急の治療が必要です。

よくある質問
軽症の毛嚢炎やニキビであれば、抗生物質を含む外用薬やニキビ治療薬で改善することもあります。ただし、1週間使用しても改善しない場合や、症状が悪化する場合は、医療機関を受診してください。
急性期の炎症が強い時期(赤く腫れて熱を持っている状態)は、冷やすことで痛みや腫れを軽減できます。一方、慢性期や血行を促進したい場合は、温めることが有効なこともあります。状態によって対応が異なるため、医師に相談することをお勧めします。
症状や原因によって大きく異なります。軽度の毛嚢炎であれば数日〜1週間程度で改善することもあります。一方、粉瘤の手術後は完全に傷が治るまで数週間〜1ヶ月程度かかることもあります。化膿性汗腺炎のような慢性疾患は、長期的な治療が必要です。
本記事で紹介した予防法を継続的に実践することが重要です。特に、清潔の保持、通気性の良い下着の着用、長時間座位の回避、生活習慣の改善などが効果的です。また、原因となる基礎疾患がある場合は、その治療も並行して行うことが必要です。
痛みがなくても、しこりが徐々に大きくなる場合や、長期間消失しない場合は、粉瘤などの可能性があります。また、稀に悪性腫瘍の可能性もありますので、一度医療機関で診察を受けることをお勧めします。
まとめ
お尻にできる痛みを伴う赤いできものは、毛嚢炎、おでき、粉瘤、化膿性汗腺炎、毛巣洞、ニキビなど、さまざまな原因が考えられます。お尻は蒸れやすく、摩擦や圧迫を受けやすい部位であるため、これらの症状が発生しやすい環境にあります。
多くの場合、適切な治療により改善が期待できます。軽症であれば保存的治療で対応できますが、膿瘍形成や慢性化した症状には外科的治療が必要になることもあります。
早期発見・早期治療が重要であり、症状が軽いうちに医療機関を受診することで、治療期間の短縮や合併症の予防につながります。また、日常生活でのケアと予防も同様に重要です。清潔の保持、適切な下着の選択、生活習慣の改善などを心がけることで、発症リスクを低減できます。
お尻のできものは人に相談しにくい悩みかもしれませんが、決して恥ずかしいことではありません。症状が気になる場合は、一人で悩まず、早めに医療機関に相談することをお勧めします。
アイシークリニック東京院では、専門医が丁寧に診察し、患者様一人ひとりに最適な治療法をご提案いたします。お尻のできものでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」https://www.dermatol.or.jp/qa/
- 公益社団法人日本皮膚科学会「尋常性痤瘡治療ガイドライン2023」
- 厚生労働省「皮膚感染症」e-ヘルスネット https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
- 日本化膿性汗腺炎研究会「化膿性汗腺炎診療の手引き」
- 一般社団法人日本創傷外科学会「創傷治癒のメカニズム」
- 医学書院「標準皮膚科学 第11版」
- 南江堂「皮膚科臨床アセット 皮膚感染症の診療実践」
- 日本臨床皮膚科医会「毛嚢炎・せつ・よう診療ガイドライン」
- 金原出版「皮膚外科学」
- 文光堂「今日の治療指針 皮膚疾患」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務