はじめに
皮膚にできたしこりから独特の臭いがする、あるいは粉瘤を押すと嫌な臭いがするという経験をされた方は少なくありません。粉瘤(ふんりゅう)は正式には表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)やアテロームと呼ばれる良性の皮膚腫瘍で、多くの方が一度は経験する身近な皮膚疾患です。
この記事では、粉瘤から臭いが発生する原因、臭いの特徴、そして適切な対処法について、医学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。粉瘤の臭いにお悩みの方、適切な治療法を知りたい方はぜひ最後までお読みください。

粉瘤とは何か
粉瘤の基本的な特徴
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まってしまう状態を指します。医学用語では表皮嚢腫と呼ばれ、皮膚良性腫瘍の中で最も頻度の高いものの一つです。
粉瘤の特徴として以下の点が挙げられます。
皮膚の下に半球状のしこりとして触れることができます。大きさは数ミリから数センチまでさまざまで、時間とともにゆっくりと大きくなる傾向があります。中央部に黒い点状の開口部(へそ)が見られることがあり、これは粉瘤の特徴的な所見です。
粉瘤ができやすい部位は、顔面、首、背中、耳たぶの裏側などです。皮脂の分泌が盛んな部位や、衣服との摩擦が多い部位にできやすい傾向があります。
粉瘤ができる原因
粉瘤の発生メカニズムについては、現在も研究が進められていますが、主に以下のような原因が考えられています。
皮膚の外傷や炎症がきっかけとなり、表皮が皮膚の深部に入り込んでしまうことがあります。この入り込んだ表皮が袋状の構造を作り、その中に角質が溜まっていくことで粉瘤が形成されます。
また、毛穴の奥にある毛包が何らかの原因で閉塞し、そこに皮脂や角質が蓄積することでも粉瘤が発生します。打撲や擦り傷、ニキビ痕なども粉瘤の発生につながることがあります。
遺伝的要因も関与していると考えられており、家族に粉瘤ができやすい方がいる場合、同様に粉瘤ができやすい体質である可能性があります。
粉瘤が臭う理由
臭いの主な原因物質
粉瘤から独特の臭いが発生する理由は、嚢腫の内容物の組成と関係しています。粉瘤の中には、剥がれ落ちた角質細胞、皮脂、そして細菌などが含まれています。
角質は皮膚の表面を構成するタンパク質の一種であるケラチンでできています。この角質が長期間にわたって嚢腫内に蓄積すると、タンパク質の分解が進み、独特の臭いを発するようになります。
また、皮脂腺から分泌される皮脂も粉瘤の内容物に含まれます。皮脂は本来無臭に近いものですが、時間の経過とともに酸化したり、細菌によって分解されたりすることで、不快な臭いを発するようになります。
特に粉瘤の臭いを強くする要因として、嫌気性菌を含む細菌の活動があります。粉瘤の内部は酸素が少ない環境であるため、嫌気性菌が増殖しやすい条件が整っています。これらの細菌が内容物を分解する過程で、揮発性の臭い物質が生成されます。
臭いの表現と特徴
粉瘤の臭いは、患者さんによってさまざまな表現で形容されます。「チーズのような臭い」「腐った臭い」「酸っぱい臭い」「魚が腐ったような臭い」などと表現されることが多く、総じて不快な臭いと感じられます。
この臭いは、粉瘤を押したり、自分で潰してしまったりした際に特に強く感じられます。嚢腫の内容物が外に出ることで、臭い物質が大気中に放出されるためです。
また、粉瘤の大きさや存在期間によっても臭いの強さは変わります。長期間存在している粉瘤ほど内容物が多く蓄積しており、それに比例して臭いも強くなる傾向があります。
炎症時の臭いの変化
粉瘤が炎症を起こした状態(炎症性粉瘤)では、臭いの質や強さが変化します。炎症性粉瘤では、細菌感染により化膿が進むため、通常の粉瘤よりもさらに強い悪臭を放つことがあります。
炎症を起こした粉瘤からは、膿特有の臭いも加わります。これは白血球の死骸や細菌の代謝物が含まれるためで、腐敗臭に近い非常に強い臭いとなることがあります。
感染を起こした粉瘤では、発赤、腫脹、熱感、疼痛などの炎症症状も伴います。このような状態になった場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
臭いが発生しやすい状況
粉瘤を圧迫した場合
粉瘤を指で押したり圧迫したりすると、開口部から内容物が排出されることがあります。この時に特に強い臭いを感じることになります。
内容物は白色から黄白色のペースト状またはクリーム状の物質で、これが臭いの源となります。一度内容物を排出しても、嚢腫の袋自体が残っている限り、再び内容物が蓄積し、同様の症状を繰り返します。
自己判断で粉瘤を潰すことは、感染のリスクを高めるだけでなく、炎症を悪化させる可能性があるため、避けるべき行為です。
粉瘤が破裂した場合
粉瘤が大きくなりすぎたり、強い圧力が加わったりすると、皮膚が破れて内容物が自然に排出されることがあります。この状態を粉瘤の破裂と呼びます。
破裂した粉瘤からは、大量の内容物が一度に排出されるため、非常に強い臭いが発生します。また、破裂した部分から細菌感染を起こしやすくなり、炎症性粉瘤へと移行するリスクも高まります。
衣服との摩擦が多い部位や、座ったときに圧迫される部位にできた粉瘤は、破裂しやすい傾向があります。
夏場や運動後の臭いの増強
気温が高い夏場や、運動後などで体温が上昇している状態では、粉瘤の臭いがより強く感じられることがあります。
これは、温度が上がることで細菌の活動が活発になり、また臭い物質の揮発性が高まるためです。汗をかくことで皮膚が湿潤な状態になると、細菌の増殖がさらに促進されます。
特に粉瘤が脇の下や陰部など、もともと細菌が繁殖しやすい部位にある場合は、夏場の臭いの増強が顕著になることがあります。
粉瘤の臭いへの対処法
してはいけない対処法
粉瘤の臭いが気になるからといって、自己判断で以下のような対処を行うことは避けるべきです。
自分で粉瘤を潰したり、針で刺して内容物を出そうとしたりする行為は、感染のリスクを著しく高めます。消毒が不十分な状態で粉瘤に穴を開けると、そこから細菌が侵入し、炎症性粉瘤となってしまう可能性があります。
また、粉瘤を強く圧迫し続けることも推奨されません。圧迫によって嚢腫が破裂し、内容物が皮膚の深部に漏れ出すと、より広範囲の炎症を引き起こすことがあります。
市販のニキビ治療薬や抗菌薬を粉瘤に使用しても、根本的な解決にはなりません。粉瘤は嚢腫という構造物であり、外用薬では嚢腫自体を消失させることはできないためです。
日常生活でできる対策
粉瘤の臭いを最小限に抑えるための日常的な対策としては、以下のような方法があります。
患部を清潔に保つことが基本です。毎日の入浴時に、粉瘤のある部位を刺激の少ない石鹸で優しく洗浄します。ただし、ゴシゴシと強く擦ることは避け、泡で包み込むように洗うことが大切です。
粉瘤が衣服と擦れて刺激を受けないよう、締め付けの少ない衣服を選ぶことも有効です。特に背中や臀部に粉瘤がある場合は、衣服との摩擦を減らすことで、破裂や炎症のリスクを低減できます。
汗をかいた後は、できるだけ早く着替えることで、細菌の増殖を抑えることができます。通気性の良い素材の衣服を選ぶことも、皮膚の湿潤環境を改善するのに役立ちます。
ただし、これらの対策はあくまで一時的な症状の軽減に過ぎません。粉瘤の根本的な治療のためには、医療機関での適切な処置が必要です。
医療機関を受診すべきタイミング
以下のような症状が見られる場合は、速やかに皮膚科や形成外科を受診することをお勧めします。
粉瘤が急速に大きくなってきた場合、これは嚢腫内の内容物が急速に蓄積している可能性があります。また、粉瘤部分が赤く腫れ、痛みや熱感を伴う場合は、炎症や感染を起こしている可能性が高いため、早期の治療が必要です。
粉瘤から膿や血が出てくる場合、すでに感染が進行している可能性があります。発熱を伴う場合は、感染が全身に広がっている可能性もあるため、緊急の対応が必要です。
臭いが非常に強く、日常生活に支障をきたしている場合も、医療機関での相談をお勧めします。また、見た目が気になる、繰り返し同じ場所に粉瘤ができるといった場合も、専門医の診察を受けることが望ましいでしょう。
粉瘤の診断と検査
診察の流れ
皮膚科や形成外科を受診すると、まず医師による視診と触診が行われます。粉瘤は特徴的な外観を持つため、多くの場合、視診と触診だけで診断が可能です。
医師は粉瘤のサイズ、形状、硬さ、可動性、中央部の開口部の有無などを確認します。また、炎症の有無、周囲の皮膚の状態、リンパ節の腫れなども併せて評価します。
問診では、粉瘤がいつ頃からあるのか、大きさの変化、痛みや臭いの有無、過去の治療歴などが確認されます。
他の疾患との鑑別
粉瘤と似た症状を示す他の皮膚疾患がいくつかあるため、正確な診断が重要です。
脂肪腫は、粉瘤と同様に皮膚の下のしこりとして触れますが、より柔らかく、中央部の開口部がない点で粉瘤と区別されます。また、脂肪腫は一般的に臭いを伴いません。
リンパ節の腫れも皮膚の下のしこりとして触れることがありますが、可動性が少なく、体の左右対称な位置に複数現れることが多いという特徴があります。
悪性腫瘍との鑑別も重要です。粉瘤は通常ゆっくりと大きくなる良性腫瘍ですが、急速な増大や硬いしこり、潰瘍形成などが見られる場合は、悪性腫瘍の可能性も考慮して検査が行われます。
必要に応じた検査
ほとんどの粉瘤は視診と触診だけで診断できますが、診断が難しい場合や悪性腫瘍との鑑別が必要な場合には、追加の検査が行われることがあります。
超音波検査(エコー)は、皮膚の下の構造を可視化するのに有用で、粉瘤の大きさや深さ、内部の状態を確認できます。また、血流の有無なども評価できるため、炎症の程度を把握するのにも役立ちます。
MRI検査やCT検査は、粉瘤が非常に大きい場合や、深部に存在する場合、周囲の重要な構造物との位置関係を確認する必要がある場合などに実施されます。
悪性腫瘍が疑われる場合には、生検(組織の一部を採取して顕微鏡で調べる検査)が行われることもあります。
粉瘤の治療方法
保存的治療
炎症を起こしていない粉瘤に対しては、まず経過観察が選択されることもあります。小さく、症状がない粉瘤であれば、急いで治療する必要はありません。
ただし、粉瘤は自然に消失することはなく、時間とともに徐々に大きくなる傾向があります。また、いつ炎症を起こすかは予測できないため、将来的には手術が必要になる可能性が高いと言えます。
炎症を起こした粉瘤に対しては、まず炎症を抑える治療が優先されます。抗生物質の内服や外用により細菌感染を治療し、消炎鎮痛剤で痛みや炎症を和らげます。
膿が溜まっている場合は、切開して膿を排出する処置(切開排膿)が行われることがあります。ただし、この処置はあくまで一時的なもので、根本的な治療にはなりません。
手術による根治療法
粉瘤を完全に治すためには、嚢腫の袋ごと摘出する手術が必要です。内容物だけを取り除いても、袋が残っている限り再発してしまうためです。
粉瘤の手術には主に以下のような方法があります。
従来の摘出術では、粉瘤の上の皮膚に紡錘形の切開を加え、嚢腫を袋ごと摘出します。嚢腫が破れないよう慎重に剥離し、完全に摘出した後、皮膚を縫合します。この方法は確実に粉瘤を摘出できる一方、切開創がやや大きくなる傾向があります。
くり抜き法(へそ抜き法)は、粉瘤の中央部の開口部から円筒状のメスで小さな穴を開け、そこから内容物と嚢腫を摘出する方法です。切開創が小さく済むため、術後の傷跡が目立ちにくいという利点があります。ただし、嚢腫の一部が残ってしまうリスクもあり、適応症例が限られます。
レーザーを用いた治療法もありますが、これは主に小さな粉瘤に対して行われます。レーザーで開口部を広げ、内容物を排出する方法ですが、嚢腫の袋を完全に除去することは難しく、再発のリスクがあります。
手術は通常、局所麻酔下で行われるため、手術中の痛みはほとんどありません。手術時間は粉瘤の大きさや部位にもよりますが、通常15分から30分程度です。
炎症を起こした粉瘤の治療
炎症を起こした粉瘤(炎症性粉瘤)の治療は、非炎症時とは異なるアプローチが必要です。
炎症が強い時期に無理に摘出手術を行うと、周囲の組織との境界が不明瞭で手術が困難になるだけでなく、術後の創部感染のリスクも高まります。そのため、まず抗生物質による治療で炎症を鎮静化させることが優先されます。
膿瘍形成がある場合は、切開して膿を排出し、炎症の沈静化を図ります。この処置により、痛みや腫れは急速に改善しますが、粉瘤自体は治癒していないため、後日改めて根治手術を行う必要があります。
炎症が完全に治まってから、通常数週間から数ヶ月後に、摘出手術を行うのが一般的な治療の流れです。
術後のケアと注意点
手術後は、適切なケアにより傷の治りを促し、感染を予防することが重要です。
手術当日から翌日にかけては、創部を清潔に保ち、ガーゼで保護します。シャワーや入浴については、医師の指示に従いますが、通常は翌日から患部を濡らさないようにシャワーを浴びることができます。
抗生物質が処方された場合は、指示通りに内服を続けます。痛みがある場合は、鎮痛剤を使用できます。
縫合した場合の抜糸は、部位にもよりますが、顔面では5日から7日後、体幹では7日から14日後に行われることが一般的です。
傷跡をきれいに治すためには、紫外線を避けることが大切です。術後数ヶ月間は、日焼け止めを使用したり、衣服で覆ったりして、傷跡を紫外線から保護します。
術後に発熱、強い痛み、創部からの膿の流出、著しい腫れなどが見られた場合は、速やかに手術を受けた医療機関に連絡し、受診してください。
粉瘤の予防
粉瘤の発生を完全に防ぐことは難しい
残念ながら、粉瘤の発生を完全に予防する方法は現在のところ確立されていません。粉瘤の発生メカニズムには、遺伝的要因や体質的な要因が関与していると考えられており、これらを変えることは困難だからです。
しかし、粉瘤の発生リスクを減らしたり、粉瘤が炎症を起こすのを予防したりすることは可能です。
皮膚を清潔に保つ
日常的に皮膚を清潔に保つことで、毛穴の詰まりや細菌感染のリスクを減らすことができます。
毎日の入浴やシャワーで、適切な洗浄料を使って体を洗いましょう。ただし、過度に強く擦ったり、洗いすぎたりすることは、かえって皮膚のバリア機能を損なう可能性があるため注意が必要です。
洗顔や体を洗う際は、泡立てた洗浄料で優しく洗い、しっかりとすすぐことが大切です。
皮膚への外傷を避ける
皮膚への外傷や炎症が粉瘤の発生につながることがあるため、以下のような点に注意しましょう。
ニキビができた場合、無理に潰さないようにします。ニキビを潰すことで皮膚に傷ができ、そこから粉瘤が発生する可能性があります。
髭剃りや体毛の処理の際は、肌を傷つけないよう注意します。カミソリの刃は定期的に交換し、シェービングクリームなどを使用して肌への負担を減らしましょう。
虫刺されや擦り傷などの小さな傷も、清潔に保ち、適切に処置することが大切です。
既存の粉瘤の炎症予防
すでに粉瘤がある場合は、それが炎症を起こさないよう以下の点に気をつけましょう。
粉瘤を触ったり、押したりしないようにします。刺激を加えることで炎症のリスクが高まります。
粉瘤がある部位への摩擦を減らすため、締め付けの少ない衣服を選びます。特にベルトの位置や下着のゴムの部分など、常に圧迫される部位に粉瘤がある場合は注意が必要です。
粉瘤が大きくなってきたり、違和感を感じたりした場合は、炎症を起こす前に医療機関で相談することをお勧めします。小さいうちに手術で摘出すれば、傷跡も小さく済みます。
生活習慣の改善
健康的な生活習慣を維持することで、皮膚の健康状態を良好に保つことができます。
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動は、皮膚の代謝を促進し、免疫機能を維持するのに役立ちます。
ストレスは免疫機能を低下させ、炎症を起こしやすくする可能性があるため、ストレス管理も重要です。
喫煙は皮膚の血流を悪化させ、創傷治癒を遅らせることが知られています。粉瘤の炎症や手術後の回復にも悪影響を及ぼす可能性があるため、禁煙が望ましいでしょう。

よくある質問
粉瘤は良性の腫瘍であり、癌化することはほとんどありません。そのため、小さく症状がない粉瘤であれば、急いで治療する必要はありません。
しかし、粉瘤は自然に消失することはなく、時間とともに徐々に大きくなる傾向があります。また、いつ炎症を起こすかは予測できず、一度炎症を起こすと痛みや腫れを伴い、治療が複雑になります。
大きくなると手術の傷跡も大きくなるため、気になる場合は早めに受診し、医師と相談して治療方針を決めることをお勧めします。
粉瘤を自分で潰したり、針で刺して内容物を出そうとしたりすることは、絶対に避けるべきです。
不潔な環境で粉瘤に穴を開けると、そこから細菌が侵入し、感染を起こすリスクが非常に高くなります。炎症性粉瘤となると、強い痛みや腫れを伴い、治療も複雑になります。
また、内容物だけを排出しても、嚢腫の袋が残っている限り、再び内容物が蓄積し、同じことを繰り返します。根本的な治療にはならないのです。
粉瘤が気になる場合は、必ず医療機関を受診し、適切な治療を受けてください。
Q3. 粉瘤の手術は痛いですか?
粉瘤の手術は通常、局所麻酔下で行われます。麻酔の注射時にチクッとした痛みはありますが、麻酔が効いた後は手術中の痛みはほとんどありません。
手術後は、麻酔が切れると多少の痛みを感じることがありますが、処方される鎮痛剤で十分にコントロールできる程度です。
痛みに対する不安が強い場合は、診察時に医師に相談してください。痛みを最小限にする方法を検討してもらえます。
Q4. 粉瘤の手術後、傷跡は残りますか?
粉瘤の手術では皮膚を切開するため、ある程度の傷跡は残ります。しかし、適切な手術手技と術後のケアにより、傷跡を最小限にすることは可能です。
傷跡の目立ち方は、粉瘤の大きさ、部位、手術の方法、個人の体質などによって異なります。顔など目立つ部位の粉瘤については、形成外科的な手技を用いて、できるだけ傷跡が目立たないよう配慮されます。
くり抜き法など、切開創が小さい方法を選択できる場合もあります。傷跡が気になる場合は、手術前に医師とよく相談し、手術方法や術後のケアについて確認しておくと良いでしょう。
術後は、紫外線を避ける、テーピングを行うなど、医師の指示に従って適切にケアすることで、傷跡をより目立たなくすることができます。
Q5. 粉瘤は再発しますか?
粉瘤の手術で嚢腫を袋ごと完全に摘出できた場合、同じ場所に粉瘤が再発することはほとんどありません。
しかし、炎症が強い時期に手術を行った場合や、嚢腫の一部が残ってしまった場合には、再発する可能性があります。また、体質的に粉瘤ができやすい方は、別の場所に新たな粉瘤ができることはあります。
再発のリスクを最小限にするためには、炎症が落ち着いてから手術を行うこと、経験豊富な医師による丁寧な手術を受けることが重要です。
Q6. 粉瘤と脂肪腫の違いは何ですか?
粉瘤と脂肪腫は、どちらも皮膚の下にできるしこりですが、その性質は異なります。
粉瘤は皮膚に由来する嚢腫で、内部に角質や皮脂が溜まっています。中央部に黒い点状の開口部が見られることがあり、押すと臭いのある内容物が出ることが特徴です。
一方、脂肪腫は脂肪組織からなる良性腫瘍で、柔らかく弾力性があります。中央部の開口部はなく、押しても内容物は出ません。また、脂肪腫は臭いを伴いません。
視診や触診である程度の鑑別は可能ですが、確定診断には医師の診察が必要です。
Q7. 粉瘤ができやすい体質はありますか?
粉瘤のできやすさには、遺伝的要因や体質が関与していると考えられています。
家族に粉瘤ができやすい方がいる場合、同様に粉瘤ができやすい可能性があります。また、皮脂の分泌が盛んな体質の方、過去にニキビができやすかった方なども、粉瘤ができやすい傾向があるようです。
ただし、粉瘤ができやすい体質だからといって、必ずしも粉瘤ができるわけではありません。皮膚を清潔に保ち、外傷を避けるなどの予防策を心がけることで、発生リスクを減らすことは可能です。
アイシークリニック東京院での治療
当院の特徴
アイシークリニック東京院では、粉瘤をはじめとする皮膚のできもの全般に対する治療を行っております。経験豊富な医師が、患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案いたします。
粉瘤の治療においては、できるだけ傷跡を小さく目立たなくすることを重視しており、部位や大きさに応じて適切な手術方法を選択いたします。
日帰り手術に対応しており、局所麻酔下での手術であれば、通常の日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
診療の流れ
初診時には、まず医師が丁寧に診察を行い、粉瘤の状態を確認いたします。診断が確定したら、治療方針についてわかりやすく説明し、患者さんのご希望も伺いながら最適な治療計画を立てていきます。
炎症を起こしていない粉瘤であれば、その場で手術の予約を取ることも可能です。炎症性粉瘤の場合は、まず炎症を抑える治療を優先し、炎症が落ち着いてから手術を行います。
手術後は、定期的に経過観察を行い、創部の治癒状態を確認いたします。抜糸が必要な場合は、適切な時期に抜糸を行います。
受診をお勧めするケース
以下のような症状がある場合は、ぜひ当院にご相談ください。
- 皮膚の下にしこりがあり、臭いが気になる
- 粉瘤が赤く腫れて痛みがある
- 粉瘤から膿や血が出ている
- 繰り返し同じ場所に粉瘤ができる
- 粉瘤が大きくなってきた
- 見た目が気になり、治療を希望している
粉瘤は放置していても自然に治ることはありません。気になる症状がある方は、早めの受診をお勧めいたします。
まとめ
粉瘤から発生する臭いは、嚢腫内に蓄積した角質や皮脂が分解されることで生じます。この臭いは不快なものですが、粉瘤自体は良性の腫瘍であり、適切な治療により完治が可能です。
自己判断で粉瘤を潰したりすることは避け、気になる症状がある場合は医療機関を受診することが重要です。粉瘤の根本的な治療には、嚢腫を袋ごと摘出する手術が必要ですが、この手術は局所麻酔下で比較的短時間で行えます。
小さいうちに治療すれば、手術の傷跡も小さく済みます。粉瘤でお悩みの方は、ぜひ専門医にご相談ください。
参考文献
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」 https://www.dermatol.or.jp/qa/
- 国立研究開発法人 国立がん研究センター「がん情報サービス」 https://ganjoho.jp/
- 公益社団法人 日本形成外科学会 https://jsprs.or.jp/
- 厚生労働省「e-ヘルスネット」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務