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はじめに

頬にできたしこりやふくらみが気になっている方は少なくありません。鏡を見るたびに目に入る頬のできものは、見た目の問題だけでなく、炎症を起こすと痛みや腫れを伴うこともあり、日常生活に支障をきたすことがあります。このような症状の原因として多いのが「粉瘤(ふんりゅう)」です。

頬の粉瘤は顔という目立つ部位にできるため、多くの方が治療を希望されます。しかし、「手術が必要と言われたけれど、顔に傷が残るのではないか」「痛みはどの程度なのか」「仕事を休まなければならないのか」といった不安を抱えている方も多いでしょう。

本記事では、頬の粉瘤の特徴から診断方法、手術の種類、術後のケアまで、患者さんが知っておくべき情報を網羅的に解説します。適切な知識を持つことで、安心して治療に臨んでいただけるはずです。

粉瘤とは

粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まってできる良性腫瘍です。医学用語では「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」や「アテローム」とも呼ばれます。

皮膚は通常、古くなった角質を自然に剥がれ落とすことで新陳代謝を行っていますが、粉瘤の場合は皮膚の一部が内側に入り込んで袋状の構造を作ってしまいます。この袋の内壁は正常な皮膚と同じように角質を産生し続けるため、袋の中に角質や皮脂が徐々に蓄積していきます。

粉瘤は全身のどこにでもできる可能性がありますが、特に皮脂腺が多い顔、首、背中、耳の後ろなどによく見られます。大きさは数ミリメートルから数センチメートルまでさまざまで、時間とともにゆっくりと大きくなる傾向があります。

粉瘤の中心部には小さな開口部(へそ)があることが特徴的で、ここから白っぽいドロドロした内容物が出てくることがあります。この内容物は独特の臭いを伴うことが多く、これも粉瘤の特徴の一つです。

頬にできる粉瘤の特徴

頬は顔の中でも比較的広い範囲を占める部位であり、皮脂腺も多く分布しているため、粉瘤ができやすい場所の一つです。頬の粉瘤には以下のような特徴があります。

まず、頬の皮膚は比較的柔らかく可動性があるため、粉瘤が大きくなっても初期段階では痛みを感じにくいことがあります。そのため、気づいたときにはある程度の大きさに成長していることも珍しくありません。

また、頬は顔の目立つ部位であるため、美容的な観点から早期の治療を希望される方が多い傾向にあります。特に女性の場合、化粧でカバーしきれないサイズになると、日常生活でのストレスにつながることもあります。

頬の粉瘤は、頬骨の上部、頬の中央部、下顎に近い下部など、さまざまな位置に発生します。発生部位によって、手術のアプローチや傷跡の目立ちやすさが異なるため、治療方法の選択には慎重な判断が必要です。

さらに、頬の粉瘤は炎症を起こしやすい傾向があります。これは頬の皮膚が外部刺激にさらされやすく、また無意識に触ってしまうことが多いためです。炎症を起こすと赤く腫れ上がり、痛みを伴うため、早急な対応が必要になります。

頬の粉瘤の症状

頬の粉瘤は、発生初期から炎症を起こした状態まで、さまざまな症状を呈します。ここでは段階別に症状を詳しく見ていきましょう。

初期段階では、頬に小さなしこりとして触れることができます。この時点では痛みはなく、皮膚の色も正常であることが多いため、気づかないこともあります。しこりの中央部に黒い点(開口部)が見られることがあり、これが粉瘤の特徴的なサインです。

徐々に大きくなると、皮膚表面から盛り上がりが目立つようになります。大きさは個人差がありますが、数ミリメートルから数センチメートルまでさまざまです。この段階でも通常は痛みがなく、触ると弾力のあるしこりとして感じられます。

開口部を圧迫すると、白っぽいまたはクリーム色のドロドロした物質が出てくることがあります。これは角質や皮脂が混ざったもので、特有の不快な臭いを伴います。自分で押し出そうとする方もいらっしゃいますが、これは炎症のリスクを高めるため推奨されません。

炎症を起こすと、症状は大きく変化します。細菌感染により粉瘤の周囲が赤く腫れ、熱感を伴います。この状態を「炎症性粉瘤」または「感染性粉瘤」と呼びます。痛みが強くなり、触れると激痛を感じることもあります。

炎症が進行すると、膿が溜まって膿瘍を形成することがあります。この場合、頬が大きく腫れ上がり、顔の左右非対称が目立つようになります。発熱を伴うこともあり、全身状態に影響を及ぼすこともあります。

炎症性粉瘤が自然に破裂すると、膿や粉瘤の内容物が外に排出されます。一時的に症状は軽減しますが、袋状の構造が残っている限り、再び内容物が溜まって再発します。

粉瘤と似た症状との鑑別

頬にできるしこりは粉瘤だけではありません。適切な治療を受けるためには、他の疾患との鑑別が重要です。

ニキビは皮脂腺の炎症によって起こり、粉瘤と混同されやすい疾患です。しかし、ニキビは通常1〜2週間程度で自然に治癒しますが、粉瘤は自然には消失しません。また、粉瘤には特徴的な開口部(黒い点)がありますが、ニキビにはありません。

脂肪腫は脂肪細胞が増殖してできる良性腫瘍で、触ると柔らかく可動性があります。粉瘤よりも深い部位にできることが多く、開口部がないことが鑑別点です。頬にできることは比較的まれですが、可能性としては考えられます。

リンパ節の腫れも頬のしこりの原因となります。特に下顎に近い部分では、耳下腺リンパ節や顎下リンパ節が腫れることがあります。リンパ節の腫れは風邪や口腔内の炎症に伴って起こることが多く、原因が改善されれば縮小します。

石灰化上皮腫は、主に小児や若年者に見られる良性腫瘍で、頬にできることがあります。触ると硬く、粉瘤とは質感が異なります。画像検査で石灰化が確認されることが診断の決め手となります。

悪性腫瘍の可能性も完全には否定できません。急速に大きくなる、皮膚に潰瘍を形成する、周囲組織に固着しているなどの所見があれば、より詳しい検査が必要です。

これらの鑑別には、専門医による視診・触診に加えて、必要に応じて超音波検査や病理検査などが行われます。自己判断せず、医療機関を受診することが重要です。

頬の粉瘤ができる原因

粉瘤の正確な発生原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。

最も一般的な原因は、外傷や炎症によって皮膚の一部が内側に入り込むことです。打撲や擦り傷、ニキビの跡、毛穴の詰まりなどがきっかけとなり、表皮細胞が真皮内に迷入して袋状の構造を形成します。頬は外部からの刺激を受けやすい部位であるため、このような機序で粉瘤が発生しやすいと考えられます。

毛穴の詰まりも粉瘤の発生に関与します。皮脂の過剰分泌や角質の蓄積により毛穴が塞がれると、毛包の一部が拡張して袋状になることがあります。頬は皮脂腺が多く分布する部位であるため、このタイプの粉瘤が形成されやすい傾向にあります。

体質的な要因も無視できません。家族内で粉瘤ができやすい傾向がある場合、遺伝的な素因が関与している可能性があります。また、脂性肌の方や毛穴が目立ちやすい方は、粉瘤を形成しやすいとされています。

ホルモンバランスの変化も一因となることがあります。思春期や妊娠期、更年期など、ホルモン分泌が変動する時期には皮脂分泌が増加し、毛穴が詰まりやすくなります。これが粉瘤の発生につながることがあります。

まれに、先天的な要因で粉瘤が発生することもあります。胎児期の発生過程で表皮細胞が適切な位置に配置されず、生まれつき粉瘤の素地を持っている場合があります。

ただし、多くの場合、明確な原因を特定することは困難です。日常生活の中で知らず知らずのうちに微小な外傷を受けたり、毛穴が詰まったりすることで、粉瘤が形成されると考えられています。

頬の粉瘤の診断方法

頬の粉瘤を正確に診断するためには、専門医による適切な評価が必要です。診断のプロセスを詳しく見ていきましょう。

問診では、しこりに気づいた時期、大きさの変化、痛みや炎症の有無、過去の外傷歴などが聞かれます。症状の経過を正確に伝えることが、診断の重要な手がかりとなります。

視診では、しこりの大きさ、色、形状、表面の性状などを観察します。粉瘤に特徴的な開口部(黒い点)の有無を確認することは、診断において重要なポイントです。また、周囲の皮膚の状態や炎症の有無も評価されます。

触診では、しこりの硬さ、可動性、圧痛の有無などを調べます。粉瘤は通常、弾力性のあるしこりとして触れ、周囲組織との癒着がなければ可動性があります。炎症を起こしている場合は、熱感や強い圧痛が認められます。

超音波検査は、粉瘤の診断において非常に有用な検査です。皮膚の下にある袋状の構造を画像として捉えることができ、粉瘤の大きさや深さ、内容物の性状を評価できます。また、血流の評価により炎症の程度も判断できます。超音波検査は非侵襲的で痛みもないため、患者さんへの負担が少ない検査です。

ダーモスコピーという拡大鏡を用いた検査を行うこともあります。皮膚表面の微細な構造を観察することで、粉瘤の開口部や周囲の血管構造などを詳しく評価できます。

画像検査としては、必要に応じてCTやMRIが行われることもあります。これらは粉瘤が深部に及んでいる場合や、周囲組織との関係を詳しく評価する必要がある場合に有用です。

病理検査は、摘出した粉瘤の組織を顕微鏡で観察する検査です。袋の内壁が扁平上皮で覆われ、内部に角質が充満している所見が確認されれば、粉瘤の確定診断となります。また、稀に悪性腫瘍が含まれていることもあるため、摘出した組織は必ず病理検査に提出することが推奨されます。

これらの診断方法を組み合わせることで、粉瘤の正確な診断と適切な治療方針の決定が可能となります。

頬の粉瘤の治療法

粉瘤の根本的な治療は手術による摘出です。袋状の構造を完全に取り除かない限り、内容物を排出しても再発を繰り返します。ここでは、頬の粉瘤に対する主な治療法について解説します。

保存的治療としては、抗生物質の投与があります。これは炎症を起こした粉瘤に対する対症療法で、感染をコントロールし症状を軽減することが目的です。経口抗生物質が処方されることが一般的ですが、炎症が強い場合は注射による投与が行われることもあります。ただし、抗生物質は炎症を抑えることはできても、粉瘤そのものを治すことはできません。

炎症が強く膿瘍を形成している場合は、切開排膿が行われることがあります。局所麻酔下で皮膚を小さく切開し、溜まった膿を排出させます。これにより痛みや腫れは一時的に改善しますが、袋状の構造は残っているため、炎症が落ち着いてから根治的な手術が必要になります。

根治的な手術方法としては、主に「くり抜き法」と「小切開摘出術」の2つがあります。それぞれの方法について、次の章で詳しく説明します。

レーザー治療を行う施設もありますが、粉瘤の袋を完全に除去するには手術的摘出が最も確実な方法とされています。レーザーは主に開口部を拡大して内容物を排出させる目的で使用されることがあります。

治療法の選択は、粉瘤の大きさ、部位、炎症の有無、患者さんの希望などを総合的に考慮して決定されます。特に頬という美容的に重要な部位では、傷跡を最小限にすることも治療選択の重要な要素となります。

くり抜き法による粉瘤の手術

くり抜き法は、特殊な円筒状のメスを使用して粉瘤を摘出する方法です。比較的小さな粉瘤に適用され、傷跡を最小限に抑えられることが特徴です。

手術の手順は以下の通りです。まず、粉瘤の周囲に局所麻酔を注射します。頬の皮膚は比較的薄いため、麻酔の効きは良好です。麻酔が効くまでの時間は数分程度で、その後は手術中の痛みはほとんど感じません。

麻酔が効いたら、粉瘤の中心部(開口部がある部分)に円筒状のメスを回転させながら差し込みます。このメスをトレパンまたはパンチといい、直径2〜4ミリメートル程度の大きさのものが使用されます。メスで皮膚に円形の穴を開けた後、粉瘤の袋と内容物を圧迫しながら押し出します。

袋が完全に出てこない場合は、切開部から専用の器具を挿入して袋を剥離し、丁寧に摘出します。袋の一部でも残ってしまうと再発の原因となるため、慎重な操作が求められます。

粉瘤を摘出した後、傷口を洗浄し、必要に応じて縫合を行います。小さな粉瘤の場合は縫合せずに自然治癒を待つこともあります。縫合する場合でも、1〜2針程度の縫合で済むことが多く、抜糸は1週間後に行われます。

くり抜き法のメリットは、傷跡が小さく目立ちにくいことです。顔という目立つ部位であるため、この点は大きな利点となります。また、手術時間が短く、通常10〜20分程度で終了します。

一方、デメリットとしては、大きな粉瘤や深い位置にある粉瘤には適用が難しいことが挙げられます。また、袋の摘出が不完全になりやすく、再発のリスクが小切開摘出術に比べてやや高いという指摘もあります。

くり抜き法が適しているのは、直径1センチメートル以下の比較的小さな粉瘤で、炎症を起こしていない場合です。患者さんの希望や粉瘤の状態を考慮して、適応を判断します。

小切開摘出術による粉瘤の手術

小切開摘出術は、粉瘤の上の皮膚を紡錘形(楕円形)に切開し、袋ごと完全に摘出する方法です。粉瘤の根治的治療として最も確実性が高い方法とされています。

手術は局所麻酔下で行われます。麻酔液を粉瘤の周囲に注射すると、数分で麻酔が効いてきます。麻酔の注射時にはチクッとした痛みがありますが、麻酔が効いた後は手術中の痛みはほとんどありません。

麻酔が効いたら、粉瘤を中心として紡錘形のデザインを描きます。このデザインは、粉瘤の大きさと皮膚の緊張度を考慮して決定されます。頬の場合、できるだけ皮膚のシワの方向に沿って切開線を設定することで、傷跡が目立ちにくくなります。

メスで皮膚を切開した後、粉瘤の袋を周囲組織から丁寧に剥離していきます。袋を破らないように慎重に操作することが重要です。袋が破れて内容物が周囲に漏れ出すと、再発のリスクが高まります。

粉瘤の袋を完全に摘出したら、傷口を十分に洗浄します。出血している血管があれば、電気メスで止血処置を行います。その後、皮下を吸収糸で縫合し、死腔(空間)をなくします。最後に皮膚を細い糸で丁寧に縫合します。

皮膚の縫合には、美容的な仕上がりを重視した真皮縫合という技術が用いられることが多くあります。これは皮膚の深層を縫合することで皮膚表面の緊張を軽減し、傷跡を目立たせなくする方法です。

縫合が終わったら、傷口にテープや絆創膏を貼って保護します。手術時間は粉瘤の大きさにもよりますが、通常20〜40分程度です。

抜糸は1〜2週間後に行われます。頬は動きの多い部位ですが、適切に縫合されていれば、抜糸までの期間中に傷が開くことはほとんどありません。

小切開摘出術のメリットは、袋を確実に完全摘出できるため、再発のリスクが非常に低いことです。また、大きな粉瘤や深い粉瘤にも対応できます。さらに、摘出した組織を病理検査に提出できるため、確定診断が得られます。

デメリットとしては、くり抜き法に比べて切開線が長くなることが挙げられます。ただし、適切な手術手技と術後のケアにより、傷跡を最小限に抑えることは可能です。

頬の粉瘤に対しては、美容的な観点からも小切開摘出術が選択されることが多くあります。確実な治療効果と傷跡の目立ちにくさを両立させることができるためです。

頬の粉瘤手術の流れ

実際に手術を受ける際の流れを、時系列に沿って詳しく説明します。

初診では、まず問診と視診・触診が行われます。粉瘤の状態を評価し、必要に応じて超音波検査などの画像検査を行います。炎症を起こしていない場合は、その場で手術の予約をすることもできます。炎症がある場合は、まず抗生物質で炎症を抑えてから手術を行う方針となることが多いです。

手術当日は、予約時間の少し前にクリニックに到着します。手術前の準備として、メイクを落とし、手術部位を清潔にします。女性の場合、当日はできるだけすっぴんで来院することが推奨されます。

手術室に入ったら、まず手術部位の消毒を行います。その後、局所麻酔を注射します。麻酔の注射時には針を刺すときのチクッとした痛みがありますが、これは数秒程度です。麻酔液が注入されるときにも少し圧迫感がありますが、強い痛みではありません。

麻酔が効くまで数分待った後、手術を開始します。手術中は局所麻酔が効いているため、切開や縫合の痛みは感じません。ただし、触られている感覚や引っ張られる感覚は残ります。手術中に強い痛みを感じる場合は、遠慮なく医師に伝えましょう。追加の麻酔を行うことができます。

手術は通常10〜40分程度で終了します。手術が終わったら、傷口にテープや絆創膏を貼って保護します。頬の場合、比較的小さな絆創膏で済むことが多いです。

手術後は、処置室で少し休んでから帰宅します。術後の注意事項や薬の使い方について説明を受けます。抗生物質と痛み止めが処方されることが一般的です。

手術当日は、激しい運動や飲酒、長時間の入浴は避けます。手術部位を濡らさないように注意しながら、シャワーは可能です。傷口は清潔に保つことが重要です。

翌日以降は、通常の日常生活に戻ることができます。ただし、手術部位を強く押さえたり、こすったりすることは避けます。

術後1〜2週間後に抜糸のために再診します。抜糸は通常数分で終了し、痛みもほとんどありません。抜糸後も、しばらくは傷跡の保護のためにテープを貼っておくことが推奨されます。

その後の経過観察は、必要に応じて行われます。通常は抜糸後1〜3ヶ月後に傷跡の状態をチェックすることが多いです。

手術後の経過とケア

手術後の経過を理解し、適切なケアを行うことは、良好な治療結果を得るために重要です。

手術直後から24時間程度は、軽度の痛みや違和感があることが普通です。処方された痛み止めを適切に服用することで、痛みはコントロールできます。痛みが徐々に強くなる、発熱がある、傷口から膿が出るなどの症状がある場合は、感染の可能性があるため、早めに医療機関に連絡しましょう。

手術後2〜3日間は、手術部位に軽い腫れや赤みが見られることがあります。これは手術による正常な反応で、通常は数日で改善します。アイスパックなどで冷やすと、腫れの軽減に効果的です。ただし、直接氷を当てるのではなく、タオルなどで包んでから使用します。

手術部位は清潔に保つことが重要です。医師の指示に従って、消毒や軟膏の塗布を行います。絆創膏は毎日交換することが推奨されます。防水性の絆創膏を使用すれば、シャワーの際も濡れる心配が少なくなります。

抜糸までの期間は、手術部位に過度な力がかからないよう注意します。頬の場合、大きく口を開けたり、硬いものを噛んだりする動作は控えめにすることが望ましいです。

抜糸は通常、手術から1〜2週間後に行われます。抜糸後も傷は完全には治癒していないため、引き続き注意が必要です。抜糸後は傷跡保護テープを貼ることが推奨されます。これにより、傷跡が広がるのを防ぎ、きれいに治癒することが期待できます。

傷跡のケアは長期的に重要です。抜糸後も3〜6ヶ月間は、紫外線対策をしっかり行いましょう。紫外線は傷跡の色素沈着を引き起こす原因となります。日焼け止めを使用したり、マスクで保護したりすることが有効です。

傷跡保護テープは、抜糸後も数ヶ月間継続して使用することが推奨されます。テープによる圧迫が、傷跡の肥厚や盛り上がりを予防する効果があります。

手術後の運動制限については、軽い運動は術後数日から可能ですが、激しい運動は2週間程度控えることが一般的です。患者さんの回復状況によって異なるため、医師の指示に従いましょう。

飲酒は、抗生物質を服用している期間は控えます。抗生物質の服用が終了し、傷の状態が良好であれば、適量の飲酒は可能です。

喫煙は創傷治癒を遅らせる要因となります。できれば手術前後は禁煙することが望ましいです。少なくとも手術後1〜2週間は控えることを強く推奨します。

頬の粉瘤手術における注意点と傷跡ケア

頬は顔の中でも目立つ部位であるため、手術後の傷跡について心配される方は多いでしょう。ここでは、傷跡を最小限にするための注意点とケア方法について詳しく解説します。

傷跡の目立ちやすさは、いくつかの要因によって決まります。粉瘤の大きさが大きいほど、切開線も長くなり、傷跡も大きくなります。また、手術時に炎症を起こしていた場合、組織のダメージが大きく、傷跡が残りやすい傾向があります。

体質的な要因も重要です。ケロイド体質の方や、傷が盛り上がりやすい体質の方は、傷跡が目立ちやすくなります。このような体質がある場合は、事前に医師に伝えることが大切です。

手術の技術も傷跡に大きく影響します。真皮縫合という深層の縫合を丁寧に行うことで、皮膚表面の緊張を減らし、きれいな傷跡につながります。また、皮膚のシワの方向に沿って切開することで、傷跡が目立ちにくくなります。

適切な術後ケアを行うことで、傷跡をより目立たなくすることができます。前述した傷跡保護テープの使用は非常に効果的です。テープを3〜6ヶ月間継続して使用することで、傷跡の肥厚を予防できます。

ハイドロコロイド素材の絆創膏を使用する方法もあります。これは湿潤環境を保つことで、傷の治癒を促進し、きれいな傷跡につながるとされています。

手術後3ヶ月から6ヶ月の間に、傷跡のマッサージを行うことも推奨されます。これは傷跡の硬さを軽減し、柔らかくする効果があります。ただし、抜糸直後は傷がまだ脆弱なため、医師の許可を得てから開始します。

美容皮膚科的なケアとして、レーザー治療や外用薬を使用する方法もあります。傷跡の赤みにはVビームなどの色素レーザーが、盛り上がった傷跡には炭酸ガスレーザーやフラクショナルレーザーが効果的です。ヘパリン類似物質含有軟膏やトラニキサム酸などの外用薬も、傷跡の改善に役立つことがあります。

傷跡が気になる場合は、遠慮なく担当医に相談しましょう。多くのクリニックでは、術後のフォローアップとして傷跡のケアについてもサポートを提供しています。

頬の粉瘤を放置するリスク

粉瘤は良性腫瘍であり、直ちに生命を脅かすものではありません。しかし、治療せずに放置することには、いくつかのリスクがあります。

最も一般的なリスクは、粉瘤が徐々に大きくなることです。粉瘤の袋の内壁は角質を産生し続けるため、時間とともに内容物が増加し、粉瘤が拡大していきます。大きくなればなるほど、手術時の切開線も長くなり、傷跡も大きくなります。早期に治療することで、より小さな傷跡で済ませることができます。

炎症を起こすリスクも重要です。粉瘤は細菌感染を起こしやすく、一度炎症を起こすと強い痛みや腫れを伴います。炎症性粉瘤は日常生活に大きな支障をきたし、場合によっては発熱などの全身症状を引き起こすこともあります。

炎症を繰り返すと、粉瘤の周囲に瘢痕組織が形成され、手術が困難になることがあります。炎症がない状態で手術を行う方が、手術の難易度が低く、合併症のリスクも少なくなります。

頬の粉瘤は顔という目立つ部位にあるため、美容的な問題も無視できません。大きくなった粉瘤は化粧でカバーすることが難しく、外見的なコンプレックスにつながることがあります。これは精神的なストレスの原因となり、生活の質(QOL)を低下させる可能性があります。

極めて稀ではありますが、長期間放置された粉瘤が悪性化することがあります。これは「粉瘤癌」と呼ばれ、袋の内壁の細胞が悪性変化を起こす現象です。発生頻度は非常に低いものの、長年存在する粉瘤や急速に大きくなる粉瘤は注意が必要です。

粉瘤が破裂すると、内容物が周囲組織に漏れ出し、広範囲の炎症を引き起こすことがあります。これは治療がより複雑になり、傷跡も残りやすくなります。

これらのリスクを考慮すると、粉瘤は小さいうちに、炎症を起こしていない時期に治療することが最も理想的です。症状がないからといって放置せず、早めに専門医に相談することをお勧めします。

医療機関の選び方

頬の粉瘤の治療を受ける際、適切な医療機関を選ぶことは重要です。ここでは、医療機関選びのポイントを紹介します。

まず、専門性を確認しましょう。粉瘤の手術は皮膚科や形成外科の専門領域です。皮膚疾患の診断と治療に精通した医師が在籍しているかを確認します。特に顔の手術では、美容的な仕上がりも重要になるため、形成外科的な技術を持つ医師がいることが望ましいです。

日本皮膚科学会日本形成外科学会の専門医資格を持つ医師が診療しているかも、一つの目安となります。専門医資格は、一定の研修と試験を経て取得されるため、専門的な知識と技術の証明になります。

設備や器具の充実度も確認したいポイントです。超音波検査装置があれば、粉瘤の状態をより正確に評価できます。また、手術室が清潔に管理されているか、滅菌設備が整っているかなども重要です。

手術方法の選択肢が複数あることも、良い医療機関の条件の一つです。患者さんの状態や希望に応じて、くり抜き法や小切開摘出術など、最適な方法を提案してくれるクリニックを選びましょう。

カウンセリングの質も重要です。初診時に、症状や治療方針について丁寧に説明してくれるか、患者さんの質問や不安に真摯に対応してくれるかを確認しましょう。インフォームドコンセント(十分な説明に基づく同意)を大切にしているクリニックは信頼できます。

術後のフォローアップ体制も確認したいポイントです。抜糸後の傷跡のケアや、万が一の合併症に対する対応がしっかりしているかを確認します。

費用について明確に説明してくれることも大切です。手術は保険適用となりますが、使用する材料や方法によって費用が異なることがあります。事前に明確な費用の説明があるクリニックを選びましょう。

アクセスの良さも考慮すべき点です。術後の通院が必要になるため、自宅や職場から通いやすい場所にあるかも検討しましょう。

口コミや評判も参考にはなりますが、すべてを鵜呑みにせず、実際に受診して雰囲気や対応を確認することをお勧めします。

アイシークリニック東京院では、粉瘤をはじめとする皮膚・皮下腫瘍の日帰り手術を専門的に行っています。経験豊富な医師が、患者さん一人ひとりに最適な治療法を提案し、丁寧な説明と確実な手術を提供しています。

よくある質問

頬の粉瘤の手術について、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q: 手術は痛いですか?

A: 手術は局所麻酔下で行われるため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射時にチクッとした痛みがありますが、これは数秒程度です。術後も処方される痛み止めで十分にコントロールできる程度の痛みです。

Q: 手術時間はどのくらいですか?

A: 粉瘤の大きさや手術方法によりますが、通常10〜40分程度です。小さな粉瘤のくり抜き法であれば10〜20分、小切開摘出術でも30〜40分程度で終了します。

Q: 手術後、すぐに仕事に戻れますか? A: デスクワークであれば、手術翌日から仕事に復帰することも可能です。ただし、激しい運動を伴う仕事の場合は、数日間休養することが推奨されます。

Q: 傷跡は目立ちますか? A: 手術直後は赤みがありますが、時間とともに目立たなくなります。適切な術後ケアを行うことで、数ヶ月から1年程度で傷跡は薄くなります。完全に消えることは難しいですが、ほとんど目立たない程度にまで改善することが期待できます。

Q: 手術後、入浴はできますか? A: 手術当日は避け、翌日からシャワーは可能です。傷口を濡らさないように注意するか、防水性の絆創膏で保護します。湯船に浸かるのは、抜糸後からが望ましいです。

Q: 再発の可能性はありますか? A: 粉瘤の袋を完全に摘出すれば、同じ場所に再発することはほとんどありません。ただし、袋の一部が残ってしまった場合や、体質的に粉瘤ができやすい場合は、別の場所に新たな粉瘤ができることがあります。

Q: 健康保険は使えますか? A: 粉瘤の手術は保険適用となります。3割負担の場合、小さな粉瘤で5,000円〜10,000円程度、大きな粉瘤で10,000円〜20,000円程度が目安です。ただし、病理検査や使用する材料によって費用は変動します。

Q: 炎症を起こしている粉瘤も手術できますか? A: 炎症が強い場合は、まず抗生物質で炎症を抑えてから手術を行うことが一般的です。ただし、膿瘍を形成している場合は、切開排膿を先に行い、炎症が落ち着いてから根治的な手術を行います。

Q: 自分で内容物を出しても大丈夫ですか? A: 自分で絞り出すことは推奨されません。細菌感染のリスクが高まり、炎症を起こす原因となります。また、袋が残っている限り再発するため、根本的な解決にはなりません。

Q: 手術しないで治す方法はありませんか? A: 粉瘤は袋状の構造を持つ腫瘍であるため、薬や外用薬だけで完治させることはできません。根本的な治療には手術が必要です。

まとめ

頬の粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に角質や皮脂が溜まってできる良性腫瘍です。顔という目立つ部位にできるため、美容的な問題だけでなく、炎症を起こすと痛みや腫れを伴い、日常生活に支障をきたすこともあります。

粉瘤の根本的な治療は、手術による袋の完全摘出です。主な手術方法として「くり抜き法」と「小切開摘出術」があり、粉瘤の大きさや部位、患者さんの希望に応じて適切な方法が選択されます。手術は局所麻酔下で行われ、痛みはほとんどなく、日帰りで受けることができます。

手術後の適切なケアにより、傷跡を最小限に抑えることができます。傷跡保護テープの使用、紫外線対策、マッサージなどのケアを継続することで、より目立たない傷跡を目指すことができます。

粉瘤を放置すると、徐々に大きくなり、炎症を起こすリスクも高まります。小さいうちに、炎症を起こしていない時期に治療することが、最も良い結果につながります。

頬にしこりやふくらみを見つけたら、自己判断せずに専門医に相談しましょう。適切な診断と治療により、粉瘤の問題を解決し、快適な日常生活を取り戻すことができます。

アイシークリニック東京院では、粉瘤治療の経験豊富な医師が、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供しています。頬の粉瘤でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」 https://www.dermatol.or.jp/qa/
  2. 日本形成外科学会「一般の方へ」 https://jsprs.or.jp/general/
  3. MSDマニュアル家庭版「表皮嚢腫」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/
  4. 厚生労働省「医療安全情報」 https://www.mhlw.go.jp/

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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