突然の嘔吐や下痢は、日常生活に大きな支障をきたす辛い症状です。「熱がないから大したことはない」と思いがちですが、大人が嘔吐や下痢を起こす原因は多岐にわたり、中には適切な対処が必要なケースもあります。本記事では、大人が熱を伴わない嘔吐・下痢を起こす原因や、自宅でできる対処法、医療機関を受診すべきタイミングについて詳しく解説します。症状でお悩みの方はぜひ参考にしてください。

🤒 大人の嘔吐・下痢で熱がない場合の基本的な特徴
📊 症状の特徴と見極めポイント
大人が嘔吐や下痢の症状を呈する場合、必ずしも発熱を伴うわけではありません。むしろ、発熱がないか軽度にとどまるケースは珍しくありません。
たとえば、ウイルス性胃腸炎の代表格であるノロウイルス感染症では、主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度(37℃〜38℃程度)か、まったく発熱しないこともあります。また、大人の場合は子どもと比較して嘔吐の症状が出にくい傾向があり、下痢が主症状となることも多いとされています。
⚠️ 注意すべき症状の判断基準
「熱がないから胃腸炎ではない」と自己判断するのは危険です。発熱の有無だけで原因を特定することはできませんし、熱がなくても脱水症状などの合併症を起こす可能性があります。症状の経過や程度をしっかり観察し、適切な対処を行うことが大切です。
🔍 大人の嘔吐・下痢で熱がない場合の主な原因
熱を伴わない嘔吐・下痢を引き起こす原因として、以下のようなものが考えられます。
🦠 ウイルス性胃腸炎(感染性胃腸炎)
ウイルス性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスなどのウイルスが胃腸に感染することで起こる病気です。「おなかの風邪」や「嘔吐下痢症」とも呼ばれ、秋から冬にかけて流行のピークを迎えます。
発熱は軽度であることが多く、「熱がないのに嘔吐や下痢が続く」という状態になりやすいのが特徴です。感染力が非常に強く、わずか10〜100個程度のウイルスでも感染・発症することがあります。
🍴 細菌性胃腸炎・食中毒
サルモネラ菌、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌などの細菌やその毒素によって引き起こされる胃腸炎です。夏場に多い傾向がありますが、年間を通じて発生します。
細菌の種類によって発熱を伴うものとそうでないものがあります。たとえば、黄色ブドウ球菌による食中毒は潜伏期間が1〜5時間と短く、嘔吐や悪心が主症状で、発熱はほとんど伴いません。一方、サルモネラ菌やカンピロバクターによる食中毒は発熱を伴うことが多いですが、個人差があります。
食中毒の症状や対処法について詳しく知りたい方は、食中毒で下痢のみ・熱なしの場合の対処法と受診の目安を解説の記事もご参照ください。
🎯 過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は、大腸内視鏡検査などで腸に目に見える異常が見つからないにもかかわらず、慢性的に腹痛や下痢、便秘などの症状が続く病気です。日本における有病率は10〜20%と報告されており、決して珍しい病気ではありません。
😰 ストレス性の消化器症状
強いストレスや過度の緊張は、自律神経を介して胃腸の働きに影響を与えます。その結果、吐き気や嘔吐、下痢といった消化器症状を引き起こすことがあります。試験や重要な会議の前に腹痛や下痢を起こしやすい人は、このタイプに該当する可能性があります。
ストレスと消化器症状の関係について詳しくは、自律神経の乱れをリセットする方法|症状・原因・効果的なセルフケアを解説の記事もご参考ください。
🦠 ウイルス性胃腸炎の詳細と感染対策
🟡 ノロウイルス感染症の特徴
ノロウイルスは、感染性胃腸炎の原因として最も多いウイルスです。厚生労働省の統計によると、食中毒の患者数ではノロウイルスが最も多く、年間を通じて発生しますが、特に11月頃から増加し、12月〜翌年1月にピークを迎えます。
🔄 ロタウイルス感染症について
ロタウイルスは主に乳幼児に多くみられるウイルス性胃腸炎の原因ですが、大人でも感染することがあります。特に小さな子どもと接する機会の多い保護者や医療従事者、保育士などは感染のリスクがあります。
大人の場合、症状は軽いことが多いですが、嘔吐、下痢、腹痛、倦怠感などが現れることがあります。発熱は必ずしも伴いません。便が白っぽくなるのがロタウイルス感染症の特徴の一つです。
🛡️ 感染経路と予防法
ウイルス性胃腸炎の主な感染経路は以下のとおりです:
- 経口感染:ノロウイルスに汚染された食品(特に二枚貝)を生または加熱不十分な状態で食べることで感染
- 接触感染:感染者の糞便や嘔吐物に触れた後、十分に手を洗わずに口に触れることで感染
- 飛沫感染・空気感染:嘔吐物が乾燥すると、ウイルスを含む粒子が空気中に舞い上がり、それを吸い込むことで感染
🏠 自宅でできる大人の嘔吐・下痢の対処法
💧 水分補給の重要性
嘔吐や下痢が続くと、体内の水分と電解質(ナトリウム、カリウムなど)が急速に失われ、脱水症状を起こす危険があります。脱水症状は軽度であっても体調を悪化させ、重度になると意識障害やけいれん、ショック状態などの深刻な事態を招くことがあります。
🥤 経口補水液の正しい飲み方
脱水症状の改善や予防には、経口補水液が効果的です。経口補水液は、水、ナトリウム(塩分)、ブドウ糖をバランスよく含んだ飲料で、体液に近い組成になっています。
経口補水液の飲み方のポイント:
- 5〜10分ごとに50〜100mL程度を少量ずつこまめに飲む
- 1日あたりの摂取量の目安は500〜1000mL
- 一度に大量に飲むと嘔吐を誘発する可能性があるため注意
経口補水液の詳しい作り方については、経口補水液の作り方|自宅で簡単にできるレシピと正しい飲み方を解説の記事もご参考ください。
🍽️ 食事の工夫と注意点
症状が強いときは無理に食事をする必要はありません。まずは胃腸を休めることを優先し、水分補給に専念しましょう。
症状が落ち着いてきたら摂取してよいもの:
- おかゆ
- うどん
- 白いパン
- バナナ
- りんごのすりおろし
🏥 医療機関受診の判断基準と治療について
🚨 すぐに受診が必要な症状
以下のような症状がある場合は、早急に医療機関を受診してください:
- 脱水症状が強い:
- 水分を摂っても吐いてしまい、ほとんど水分が摂れない状態が続く
- 尿量が極端に減っている
- 意識がもうろうとしている
- ぐったりしている
- 激しい腹痛:
- お腹を触られるのも辛いほどの激しい腹痛
- 腹痛が特定の場所に限局している
- どんどん痛みが強くなる
- 血便や血の混じった嘔吐:
- 便に鮮血が混じっている
- 黒いタール状の便
- 吐いたものに血が混じっている
💊 治療の基本方針
ウイルス性胃腸炎には特効薬(抗ウイルス薬)がなく、治療は症状を和らげる対症療法が中心となります。基本的には自己の免疫力で回復していくのを待つことになります。
- 脱水の予防と改善:経口補水液などによる水分補給が最も重要
- 下痢止め薬:安易に使用しないことが推奨(病原体や毒素の排出を妨げる可能性)
- 整腸剤:腸内環境を整え、症状の改善を助ける
- 吐き気止め:嘔吐がひどく水分摂取が困難な場合に処方
🛡️ 感染予防と日常生活での注意点
🏠 家庭内での感染予防対策
ウイルス性胃腸炎は感染力が非常に強いため、家族内での感染拡大を防ぐ対策が重要です:
- 石けんを使った丁寧な手洗い(ノロウイルスにはアルコール消毒の効果が低い)
- タオルや食器を共用しない
- 便座やドアノブ、水道の蛇口などを塩素系消毒剤で消毒
- 感染者は最後に入浴するか、シャワーで済ませる
- 感染者の衣類や寝具は他の洗濯物とは分けて洗濯
🧽 嘔吐物・排泄物の処理方法
感染者の嘔吐物や排泄物には大量のウイルスが含まれているため、適切に処理することが重要です:
- 使い捨てのマスクと手袋を着用
- ペーパータオルや古い布で静かに覆い、外側から内側に向かって拭き取る
- 塩素系消毒剤(塩素濃度約1000ppm)で床や周囲を消毒
- 処理に使用した道具や手袋はビニール袋に密封して廃棄
- 処理後は石けんを使って丁寧に手を洗う
- 処理は速やかに行い、換気を十分に行う
🔒 予防のために日頃から気をつけること
嘔吐・下痢を予防するために、日常生活で以下の点に気をつけましょう:
- 手洗いの習慣化:
- 外出先から帰宅したとき
- トイレの後
- 調理の前後
- 食事の前
- 石けんを使い、指の間や爪の間まで丁寧に洗う
- 食品の適切な取り扱い:
- 肉や魚介類は中心部まで十分に加熱
- 特に二枚貝は中心温度85〜90℃で90秒以上の加熱
- 生の肉や魚を扱った調理器具はよく洗い、消毒

📝 まとめ
大人が熱を伴わずに嘔吐や下痢を起こす原因には、ウイルス性胃腸炎、細菌性胃腸炎(食中毒)、過敏性腸症候群、ストレス、薬剤の副作用など、さまざまなものがあります。
多くの場合は数日で自然に回復しますが、以下の場合は早めに医療機関を受診することが大切です:
- 水分が摂れない状態が続く
- 激しい腹痛や血便がある
- 症状が長引く
- 脱水症状が強い
自宅での対処としては、経口補水液などによる水分補給を最優先し、胃腸を休めながら回復を待ちましょう。また、ウイルス性胃腸炎は感染力が強いため、家族や周囲への感染を防ぐための対策も重要です。
❓ よくある質問
はい、十分に可能性があります。ノロウイルスなどのウイルス性胃腸炎では、発熱がないか軽度(37℃〜38℃程度)にとどまることが多く、特に大人では嘔吐よりも下痢が主症状となることがあります。発熱の有無だけで原因を判断せず、症状の経過を観察することが重要です。
症状が治まってから24〜48時間は様子を見ることをお勧めします。ウイルス性胃腸炎の場合、症状が改善した後も1週間程度は便中にウイルスが排出され続けるため、手洗いなどの感染予防対策を徹底し、体調が完全に回復してから復帰するようにしましょう。職場の規定がある場合はそれに従ってください。
感染性胃腸炎が疑われる場合、下痢止めの安易な使用は推奨されません。下痢は体内の病原体や毒素を排出する防御反応であり、薬で止めてしまうと回復が遅れる可能性があります。脱水予防のための水分補給を優先し、症状がひどい場合は医療機関を受診して適切な治療を受けることが大切です。
石けんを使った丁寧な手洗いを徹底し、タオルや食器の共用を避けてください。便座やドアノブなどは塩素系消毒剤で消毒し、感染者の衣類は他の洗濯物と分けて洗濯します。嘔吐物の処理は使い捨て手袋とマスクを着用し、塩素系消毒剤で消毒してください。アルコール消毒はノロウイルスには効果が低いため注意が必要です。
経口補水液は脱水症状の改善を目的とした飲料で、体液に近い電解質濃度に調整されています。一方、スポーツドリンクは運動時の水分補給を目的としており、糖分が多く塩分が少ない組成です。嘔吐・下痢による脱水時には、電解質濃度の高い経口補水液の方が適しています。市販品がない場合は、水1Lに食塩3g、砂糖20〜40gを溶かして手作りすることも可能です。
📚 参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
ノロウイルスによる嘔吐・下痢は、熱がなくても脱水症状が急速に進行することがあります。特に水分が摂れない状態が続く場合は、早めの点滴治療が効果的です。当院では症状に応じた適切な水分・電解質補給を行い、患者さんの早期回復をサポートしています。